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19 DS対策


医薬品部発足後多くの先生にN専務、O部長らは挨拶に行った。研究所時代にPSK研究会等でお会いしたり顔を知っていたりしたので、よくお供をした。

その中でPSK研究会の基礎部門の座長であった癌研化学療法センターのS先生は厚生省「抗悪性腫瘍剤調査会」の座長でもあったので、お礼を兼ねてたびたび訪れた。

その頃「がん免疫療法」という範疇が勃興しており、その臨床評価方法についても議論されていた。S先生はその評価法として抗がん剤単独と比較して免疫賦活剤を加えたコントロールスタディが今後は必要になるだろうとのことだった。

 

後日S先生がまとめ役となって「悪性腫瘍に対する免疫療法剤の評価法に関する研究」という評価法が公表された。この研究班は昭和54年から55年にかけて計5回開催されてまとめられたものであり、医薬品研究vol11No4(1980)764~に記載されている。
その中で「免疫療法剤としての評価の学問的基礎を明確にし、免疫療法剤の承認審査に役立てることを目的としたものである」と述べており、クレスチンを含む免疫療法剤としての評価をきちんとしたいという厚生省の思惑があったものと思われた。これがその後の丸山ワクチンがらみの問題になるとは予想しなかったであろう。




そこでNはS先生対策としてそのような臨床研究を実施するよう指示した。最初はDrS対策と銘打ったが後ではDS対策と名を変えて三共の協力を得て種々の研究会を立ち上げた。
胃癌、乳癌、結腸・直腸瘤、食道癌、肺癌等の承認された癌以外に子宮癌なども対象として懇意の大学やがんセンター等の病院のドクターをまとめ役として発足した。
胃癌では九州と中国の免疫賦活剤研究会。乳癌では千葉がんセンター外科のDrO、駒込病院外科のDrM。食道癌では東海大外科のM教授。結腸・直腸瘤では駒込病院外科のDrM、東海大外科のM教授、名古屋大外科のK教授、九州免疫研究会。肺癌では駒込病院外科のDrI、がんセンター外科のDrS、京都市立のDrT。子宮癌では信州大婦人科のDrT、新潟大婦人科のDrT等が発足したがいわゆるヒストリカルコントロールスタディや免疫機能の測定などが多く効果を判定するには問題があった。その上これらの研究会はいわゆる「治験」ではなく有償のクレスチンを使用するため、一部を除いて販促用の研究会の様相を呈しクレスチンは必然的に売り上げを伸ばした。このうちいくつかの研究会はデータが公表された?が、後日の再評価に繋がるような成績はなかなか得られなかった。

私は九大2外科I教授が世話人となった免疫賦活剤研究会の担当になった。これは癌患者を対象とした「2重盲検コントロールスタディ」であり、呉羽から私、三共からKが専属として働くことになり、三共の九州の各支店を網羅して運営することになった。詳細は別項に。

抗癌剤の評価法についてはその後も継続的に検討されており、黒川ら(薬史学雑誌49(2)196~204、2014)による2014年のまとめによれば、「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」が1991年2月に厚生省から公表され、2005年1月改訂が行われたと記載されている。




 




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