このブログを検索

 

 30 丸山ワクチン

丸山ワクチンは日本医科大学の丸山千里教授が開発した癌の免疫療法剤あるが、昭和51年に製造承認申請を提出(ゼリア新薬)したものの、規格試験の設定(本態の研究)や臨床試験成績の不備などにより、有償の治験薬(当時40日分5000円)として使用されていた。

丸山ワクチンは正式にはS.S.M(Specific Substance MARUYAMA)と言われ、癌患者に多数使用され、世間の評判では安全性が高く、効果もあるとされていた。丸山博士は日本医科大学で結核ワクチンの研究を行っていたが、培養したした結核菌から有害な毒素を取り除くことに成功し結核ワクチン(主成分はリポアラビノマンナン)を作った。このワクチンが結核に効果があったという。結核の研究を続けているうちに結核患者やハンセン氏病の患者に癌になる人が少ないことに着目し、このワクチンを癌治療に応用できないかと考えた。副作用が見られないことから安全性に問題がないとして癌患者への応用研究が開始され、一部に著効があり昭和40年代以降「癌の特効薬」との噂が一気に高まり、医薬品の承認手続きよりも世論が先行するすることになり、支持者による署名運動などが行われていた。ところが申請しても承認には至らず、その原因が「クレスチン販売を維持するためにクレスチン承認後の臨床試験の効果判定基準を厳しく作った」からだと主張し始めた。

                   丸山博士


                丸山ワクチン


丸山ワクチンの申請が問題になっていた頃の様子を“丸山ワクチンの受難を追う「権力に弄ばれるガン特効薬」(問題小説、昭和568月号p-164平沢正夫)より概要をまとめてみよう。青字は引用。

51年に申請をし53年になったら、今度は基準が必要だ、この免疫療法剤の資料は、今までの基準と違うから新しい基準をつくろうじゃないかといって今度窓口を変えたわけですよ。これが1年前です。そして1年間たって、この丸山ワクチンに対する評価をどうしようと言うので、その基準をいま作ったわけでしょう。丸4年間遊んだわけです。丸4年間申請者は宙ぶらりんですよ(1980/11/5衆議院社労委議事録。草川議員の質問の一部)。昨年10月、丸山ワクチンの早期承認を要求する約4万人分の署名を集め、東大法学部の篠原一教授が代表になり、厚生省に提出。また、国会でも40人の国会議員有志が超党派で丸山ワクチンを知る会(会長・八田貞義代議士)をつくった。昨年11月のことである。

「不可解なクレスチン認可」

厚生省は、有効性の科学的根拠がないという理由で、丸山ワクチンを承認しようとしない。(中略)

去る319日、社民連の菅直人代議士が、クレスチンの製造承認のイキサツについて国会で質問「まあ言ってみれば、答案を書いた人が採点の途中に今度は私が採点しますと言って採点委員の中に入っているようなものですね(衆議院社労委議事録より)と決め付けた。

ほかでもない、ガンの研究と治療のメッカである癌研の塚越茂氏(癌化学療法センター基礎研究部長)に灰色の霧がかかっているのだ。塚越氏は19751210日に、厚生省の中央薬事審議会の下部機関で、抗がん剤の製造承認の事実上の決定権を持つ抗悪性腫瘍剤調査会のメンバーになった。塚越氏は癌の“権威者”の1人なのだから、その事自体べつに問題ない。

製薬会社が新薬の承認をもとめるの場合、動物実験や人体実験(臨床試験)のデータをそえて、有効性(効き目)と安全性(副作用)を明らかにしなければならない。それらのデータは、外部の大学や研究機関に依頼して作ってもらうのがふつうである。塚越氏はクレスチンのデータ作りに重要な役割をはたした。ところで、クレスチンの製造承認申請は、197581日になされ、1029日と7632日に抗悪性腫瘍剤調査会で審議された。その後薬事審議会での審議を経て820日に承認になった。すると、少なくとも調査会の第2回目の審議の時、塚越氏は、自分が実験データ作りをしたクレスチンの製造承認に携わったことになる。「受験生が答案の採点をするようなもの」という菅代議士の指摘は、決して誇張ではない。しかも、クレスチンの承認を巡っては、今でも業界関係者の間で語り草とされている事情があったのである。

「暁の5人委員会というやつですよ」と業界ジャーナリストの某氏があかす。「調査会の意見が2つに分かれたのですよ。あの時はたしかメンバーが12人で、クレスチンを推したのが5人だった。調査会の決定は多数決ではなく全員一致なんです。そこで、5人が他の7人を懸命に根回しして、説得して、クレスチン承認に持ち込んだんです」某氏は5人の名前を必ずしも正確に覚えていなかったが、塚越氏と調査会長の桜井欽夫氏(癌研化学療法センター所長)との名前をあげた。

某氏の話をさらに続けよう。「クレスチンてのは、いわくつきの薬ですね。承認にあたって条件がついた。①薬効成分の正体の研究と解明、②副作用のチェック、③臨床効果の報告などでした。少なくとも去年いっぱい、メーカーはこれらの条件を満たしていませんでしたよ。」

「いわくつき」と言われても仕方がない。①も②も③も新薬の承認にあたっては満たさなければならない必須条件だ。それがウヤムヤのまま承認されたのは、まさに異例中の異例である。

「それに、異例の特急便でしたからね」と某氏は意味深長な笑いを浮かべる。

すでにみたように、クレスチンは製造承認の申請から1年で承認されている。このスピードもまた異例なのだ。おなじくガンの免疫療法剤でも、ピシバニールのほうは一足先に承認されたが、これは申請から承認まで3年ほどかかっている。これがふつうのスピードだ。(中略)

クレスチンは呉羽化学が開発したものを、三共が販売を引き受けている。呉羽化学は製薬業界に足場がないので、既存の製薬会社に販売を依存しなければならなかった。将来有望な制がん剤というわけで、各社が名乗りを上げた。こうなれば結局実弾がものを言う。社運を賭けんばかりの三共は、クレスチンの製造設備費にと二十数億円を呉羽化学に提供して、販売権を手中におさめた。クレスチンは、三共に大きな収穫をもたらした。昨年の年間売上げは実に520億円(薬価ベース)とみられる。これは三共の売上げの約2割であって、いまや完全なドル箱である。』

このように「某氏によれば」とか、又菅代議士が云々と綴っているが不正確な記述が多い。例えば第2回の調査会では第1回調査会で指摘された8項目について議論し、2カ所の文言の訂正を指摘したのみであり塚越先生が関わったとしても微々たるものであったし、①、②、③も今後の課題として指摘し、引き続き検討し後日事務局に提出させるとし、特別部会も本態の研究、副作用及び使用量に関する調査を行うように指示することを条件に承認して良いとし、常任部会にかけられ特段の問題もないので承認して差し支えないとの結果を得たものであった。承認までの審査期間は千差万別であり、特に問題はなかろう。

菅代議士が質問したとされる国会の社会労働委員会での質疑応答を参考資料として記しておく。

(*参考資料)

 第094回国会 社会労働委員会 第4号

昭和五十六年三月十九日(木曜日)

    午前十時七分開議

 出席委員

   委員長 山下 徳夫君

   理事 今井  勇君 理事 戸井田三郎君

   理事 戸沢 政方君 理事 湯川  宏君

   理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君

  理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君

      金子 岩三君    木野 晴夫君

      古賀  誠君    竹内 黎一君

      谷垣 專一君    中野 四郎君

      長野 祐也君    丹羽 雄哉君

      葉梨 信行君    八田 貞義君

      浜田卓二郎君    船田  元君

      牧野 隆守君    箕輪  登君

      池端 清一君    枝村 要作君

      金子 みつ君    川本 敏美君

      佐藤  誼君    栂野 泰二君

      永井 孝信君    草川 昭三君

      浦井  洋君    小沢 和秋君

      石原健太郎君    菅  直人君

 出席国務大臣

        厚 生 大 臣 園田  直君

 出席政府委員

        厚生政務次官  大石 千八君

        厚生大臣官房審

        議官      吉原 健二君

        厚生省公衆衛生

        局長      大谷 藤郎君

        厚生省環境衛生

        局長      榊  孝悌君

        厚生省環境衛生

        局水道環境部長 山村 勝美君

        厚生省医務局長 田中 明夫君

        厚生省薬務局長 山崎  圭君

        厚生省社会局長 山下 眞臣君

        厚生省児童家庭

        局長      金田 一郎君

        厚生省保険局長 大和田 潔君

        厚生省年金局長 松田  正君

        厚生省援護局長 持永 和見君

        社会保険庁医療

        保険部長    吉江 恵昭君

 委員外の出席者

        公正取引委員会

        事務局経済部調

        整課長     厚谷 襄児君

        国税庁直税部法

        人税課長    四元 俊明君

        文部省初等中等

        教育局中学校教

        育課長     垂木 祐三君

        文部省初等中等

        教育局特殊教育

        課長      戸田 成一君

        文部省大学局医

        学教育課長   川村 恒明君

        文部省管理局企

        画調整課長   北橋  徹君

        文部省管理局私

        学振興課長   坂元 弘直君

        厚生大臣官房企

        画室長     長門 保明君

        運輸省港湾局環

        境整備課長   高田 陸朗君

        労働省婦人少年

        局婦人労働課長 佐藤ギン子君

        参  考  人

        (日本赤十字社

        衛生部長)   北村  勇君

        社会労働委員会

        調査室長    河村 次郎君

    ―――――――――――――


(中略)

戸沢委員長代理 次に、菅直人君。

菅委員 きょうは一つは薬事行政について幾つかお伺いをしたいのと、あと時間があればごみの問題、そういったことについて幾つかお伺いをしたいと思います。

 まず、先般から丸山ワクチンの問題などをめぐって私も質問主意書を出したりしていろいろと政府の見解をただしてきたりしたんですけれども、丸山ワクチンを審査している中央薬事審議会というもののあり方についていろいろと調べてみると、密室性とかいった意味での疑問が幾つか生じてきました。特に丸山ワクチンと同じような種類である免疫療法剤の中ですでにクレスチンという薬とピシバニールという薬が許可をされているわけですけれども、その中でも特にクレスチンの許可の経過をずっと追ってみますと、幾つか非常に不自然な点が感じられるわけです。そういった点を含めて具体的にお伺いをしていきたいと思います。

 まず、薬務局の方にお伺いしたいんですが、呉羽化学から認可申請が出て認可されているクレスチンの認可に至る過程を幾つか確認をしていただきたいと思います。つまりいつ認可申請が出され、どういう形で調査会が開かれ、いつ認可がなされたかということをお伺いしたいと思います。

山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。

 御指摘のクレスチンにつきましては五十年八月一日に申請がございました。五十年八月十二日に受け付けをしております。これは県庁経由で時間がかかっております。そして五十年の十一月十日に私どもの内部手続としまして中央薬事審議会に諮問をしております。

 その前に、それは形式的な若干のおくれがありますが、五十年十月二十九日に抗悪性腫瘍剤調査会が開かれ、また五十一年三月二日に同じ調査会が開かれて、二回にわたって調査会の審議が行われました。なお、その後五十一年六月十八日に特別部会で審議が行われました。次いで五十一年七月二十三日に常任部会での審議を了し、同日付で答申が大臣あてに行われました。そして八月二十日承認ということになりましたのが事実の経過でございます。

菅委員 それでは、このクレスチンの認可を実際上調査をした抗悪性腫瘍剤調査会というところに、私が伺った限りでは現在十四名のメンバーがおられるわけですけれども、この中で癌研究所癌化学療法センター基礎研究部長の塚越茂先生という方が現在入っておられるわけですが、この方を同メンバーに委嘱された日時をお伺いしたいと思います。

山崎(圭)政府委員 塚越委員の委嘱は五十年十二月十日にしております。なお、これは橋本嘉幸委員という方のいわば後任でございますが、橋本先生が五十年四月一日に東北大学の方へ転出されまして向こうから出席することがいろいろとむずかしい条件にあるというようなことで、その方の御後任として五十年十二月十日に委嘱を申し上げたわけであります。

菅委員 たしか臨時委員ですね。委員の場合は任期があって、あと追加があった場合はその追加期間ということになっておるようですが、臨時委員の場合は特に任期がなかったのじゃないですか。

山崎(圭)政府委員 臨時委員でございます。当時の扱いといたしましては任期は決めておりませんでした。臨時的な委員であります。

菅委員 この塚越茂先生という方、私もいろいろクレスチン関係のものを調べてみたのですけれども、呉羽化学と共同研究をこのクレスチンに関しては大変やられている。たとえばクレスチンに関する文献集がここに二つありますが、これにも昭和四十九年五月、それから四十九年十一月、五十年一月に論文を出されていて、その論文の末尾には呉羽化学の東京研究所に実験を手伝ってもらったことを感謝するとか、資料を提出してもらったことを感謝するということを書かれているわけです。それから、実際に発売されているクレスチンという薬のお医者さん向けのパンフレットを見ますと、やはりこの中にも、この論文と大体同じものですが、何カ所も塚越茂先生のデータがこういうふうに出ているわけです。

 こういうことからしまして私としては、この申請データを出されているはずなんですが、呉羽化学が五十年八月一日に出された申請のデータの中に塚越先生のデータも入っているんじゃないかというふうに思うのですけれども、この点いかがでしょうか。

山崎(圭)政府委員 お答えします。

 数多くのデータの中には塚越先生の基礎実験に関するデータも含まれております。

菅委員 大臣、このことを大臣いかがお考えでしょうか。

 つまり、この薬事審議会というのはよく御存じのように、実際上に薬を調べて、そしてこれは効果があるとなれば実質上はここで許可をする。最終的には大臣の認可になっているわけですけれども、そうする。そういう中に、実際には申請を出した――呉羽化学から申請を出されているわけですけれども、申請を出した日が、もう一度申しますと五十年八月一日。そしてこの塚越先生がその申請を出された中のデータをとられた本人であるにもかかわらず、その後約四カ月たったときにメンバーになる。そしてその後さらに調査会が開かれ、部会が開かれ、認可がされている、答申が出されているということですね。まあ言ってみれば、答案を書いた人が採点の途中に今度は私が採点しますといって採点委員の中に入っていっているようなものなんですね。このことをどういうふうに大臣は思われますか。

山崎(圭)政府委員 大臣の御答弁に先立ちまして若干お答え申し上げたいと思います。

 先生御案内のように、中央薬事審議会というのは大変数の多いメンバーをそろえておる審議会でございまして、現在でも調査会も六十五の多くを数えておりますし、実人員で五百五十四名、延べ人員で九百三十九名というような大がかりな審議会でございます。そういうことでそれぞれ専門分野におきまして、たとえばがんの問題でありますと、抗悪性腫瘍剤調査会というのが一番下の下部機構にございまして、その上に特別部会があり、さらに常任部会がある、こういうような関係になっておるわけでございますが、その中で、新薬の開発に当たってそれがいいかどうかの判断のためにはどうしても基礎実験なり臨床試験が必須のものと私どもは考えておるわけであります。その基礎実験なり臨床試験というものは、がんの専門家の人たちがみずから研究なさって学会誌等に発表されたものもございましょうし、あるいは製薬メーカーが特定の先生に臨床試験をお願いしてそのデータをつくる、こういうようなこともあるわけでありますけれども、いずれにしましても、そういうものが学会に公表されまして、学会の批判を受けた上で、それが添付資料あるいは新薬の承認のための有力な資料として申請されてくるとか、こういう条件にあるわけであります。

 そこで一つは、私ども審議会の委員としてお願いする立場にある者としましては、その審議会の先生方はできるだけ第一級の先生方を学識経験者としてお願い申し上げるということでございまして、そうなりますと、分野分野におきましてはきわめてその数が限られてまいる、こういう条件に置かれておるわけであります。そういう意味合いにおきまして、たまたまその研究をなさった方が同時に審議会の委員であるという状況も生まれてくる、こういう関係になっておるわけであります。

 そこで、先ほど先生御指摘の、五十年十月に第一回の調査会が開かれまして、五十一年三月に第二回が開かれた、その間に先生を委嘱したではないかということでございますが、これはそういう作為的なことは全くないわけでございまして、たまたまそういうことになった。人事の都合でございます。

菅委員 大臣の御答弁の前に、これは裁判においても、たとえば民事訴訟法三十五条には、自分が証人とか鑑定人になった場合は、当然その裁判の裁判官としては除斥を受けて、裁判にはかかわれないわけです。これはもちろん刑事訴訟法にも出ていますし、発明を審査する特許庁の審査官、審判官についてもこういう規定があるわけです。ですから、わざわざやったとか、わざわざやらないとかいうことよりも、つまり、自分が申請を出した、その申請を出した者を、まさにこの抗悪性腫瘍剤調査会で審議されるその審議の途中にその当事者を審議のメンバーに入れている。

 これは園田厚生大臣の時代ではありませんけれども、大臣の任命なんです。つまり大臣御自身の責任なんですね。このことについてぜひ大臣御自身からお考えをお聞きしたいと思います。

園田国務大臣 大臣の責任は、大臣がかわろうとも責任の継承はすべきでありますから、十分責任を感じます。

 問題は、そういうおしかりを受けたり国民から疑惑を受ける第一の原因は、この審議会で決めたことがどこでどうやってどう決まったのか国民にわからない、何か密室で勝手にやったような印象を与えておる、ここに第一の問題があると存じます。そこで、今度は調査会を公表し、それから審議会が終わったらその経過を公表するつもりで、社会と国民の方々に疑惑を持たれないようにしたいと思っておりますが、いま御指摘の問題は、事実がどうであろうと、偶然がどうであろうと、李下に冠を正さず、出した者が調査会に入るというようなことは、そこに何らかの条件がなければならぬ。意見は言うが議決には加わらぬとか、あるいは参考人として来てもらうとか、そういうことも考える必要があるのではないか。かつまた、偶然であろうと何であろうと、中途で入られたということは、これもまたおしかりを受けても仕方がないことであると考えております。

 それからもう一つは、これは慣例でありますが、この審議会に対する諮問は、私とすればまことに不本意な諮問がずっとなされておるわけでありまして、この審議会に対してこの薬の製造を許可すべきか許可すべきでないかという諮問をしているわけであります。これは筋違いでありまして、いかに微力でありましょうとも、これを許可するかどうかは大臣が判断する事項であります。その大臣が判断するのに必要な学問的事項を審査願うのが審議会であると考えておりますので、今後そういうようなことで、いまの御注意が生きていきますように対応してまいりたいと思います。

菅委員 大臣から御答弁をいただきましたけれども、たとえば五十四年五月二十四日の同じ社会労働委員会で草川委員が、中央薬事審議会について、審議会と学会との間を取り持つのがメーカーの政治力だと言われているけれども、そういうことはありませんかということを聞いているわけです。それに対して当時の本橋政府委員が「それを評価するに値する十分なデータが提出されませんと審議会にかからないわけでございまして、そのデータを十分に出すということが製薬メーカーに課されました責務でございますので、中央薬事審議会の審議に当たりましては、特に厳正中立で行っていただくよう常々申し上げておるところでございます。」という答弁をされているわけです。先ほど薬務局長は、こういう事情で仕方がなかったと言わんばかりの御答弁だったのですけれども、まさにこれが厳正中立のことであると言えるわけですか。

 もう一言添えれば、先ほども大臣から御答弁いただきましたけれども、私もずっとこの過程を調べていて、国民がといいますか、ある意味では私たちがいろいろ伺っても、これは圧力がかかるから名前もなるべくだったら出したくないとか、いろいろな形でいわゆる公開をなかなかされない。片方で国民の前には全く非公開であって、片方の一番当事者であるメーカーは、ある意味では自分の代表なり自分と一緒に研究をした人を審議会の中に、発言ができる場所にまで送り込んでいるわけですよ。これで厳正中立と言えるのでしょうかね、薬務局長。

山崎(圭)政府委員 審議会の先生方の委嘱に当たりましては、私どもは、その専門分野における第一流の方々にお願いしたい、こういう基本線で人選をしておるわけでございます。ただ、その専門分野分野におきまして、先ほど申しましたように非常に限られた研究者しかいないという場面ではそういうような状況も起こる。これはたまたまといいますか、起こるようなこともあると思います。

 ただ、実際の審議会の中におけるその審議のあり方の運用につきましては、関係したデータが御自分の作成にかかるという関係では御自分の意見を通常控える、これが慣例になっているということもございます。

 なおまた、公表問題につきましても、何といっても一番キーポイントである薬の有効性なり安全性の問題につきましては、それが主要な学会誌に原則として公表されている、そういう資料で論議を重ねていくということになっておるわけでありまして、そこのポイントが公正性を保つ、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。

菅委員 運用がそういうふうなことになっていると言われますが、そういう運用を規定した規定は何かありますか。たとえば中央薬事審議会令なり規則なりの中にありますか。

山崎(圭)政府委員 それはまさしく審議会における審議のいわば慣例的な事柄でございまして、規定の上では規定されておりません。

菅委員 私もずっと調べたのですけれども、そうするとだれもわからないわけですよ、自分たちでそういうふうに慣例でやっていますと言われても。

 私はやはりせめてそういう規定をちゃんとつくられるべきだと思うのです。先ほど申し上げたように、裁判の場合にもちゃんと除斥規定というものが決まっていて、何親等内の人が関係していた、また本人が鑑定人になった場合は、そういう審議には、いわゆる裁判には携わらないということが規定にちゃんとあるわけです。だから、そういう運用でやっているという言い方で、片方で、先ほども言ったように国民には見せないというふうな全く不公平な、不公正なやり方になっていることはどうしても変えていただかなければならない。

 どうでしょう、大臣、このあたりをぜひ変えていただけるかどうか。

園田国務大臣 事務当局からお答えしましたけれども、事務当局としては当然であると思いますが、問題は、厳正公平にやっております、これも大事でありますけれども、ほかの方々から厳正公平だと見ていただけるかどうか、疑いを受けないか、こういうことが一番大事でございます。慣例というのは、私は就任以来、慣例にとらわれてはならぬ、惰性でやってはならぬ、よき慣例をつくるということでやってもらいたい、こういうことを言っておりますが、必要であれば省内の規定等でそういうものは一応整理すべきだとは考えております。

菅委員 大変積極的な御答弁をいただきましたので、この問題に関して最後に一つだけ。

 この問題というのは、実は中央薬事審議会にとどまらず、ほかの審議会でもこういったことがあるのじゃないかと当然思われても仕方がないと思うのですね。食品関係の問題もありますし、そういった点では、先ほど大臣の御答弁にもありましたけれども、最低限審議にかかわったメンバーですね、裁判で言えば裁判官の名前、特許庁で言えば審査官とか審判官の名前は、当然公表されるはけです。それから、提出された書類ですね。これはもちろん時点はあると思います。すぐ提出があったら翌日公開ということはないかもしれませんが、少なくともそれが、事前の学会誌に出たから、出ないからというのはわからないわけですから、認可をされるときには、少なくともどういうデータが出されて、それについてこういう答申が出たのだということを公開する。それから、いま申し上げた、たとえば除斥規定を含めてそういうものを取り入れられる。この点について、この中央薬事審議会のみならず、関連の同じような審議会についてぜひ取り入れていただきたい。

 この点、重ねて大臣の御見解をお願いしたいと思います。

園田国務大臣 近ごろやかましく言われておりまする情報公開の原則というものがありますが、これはもう当然のことでありまして、私は、変わった表現でありますが、ガラス張りとまではいかなくても、ビニール張りのことをいたします。と申しますのは、審議会の言論のやりとりを公表することは、審議委員の方々の言論の自由を拘束するおそれがありますから、そこまではまいりませんけれども、審議の経過、データ、こういうものは必要によってなるべく公開する。これはまた薬事審議会だけではなくて、ほかの審議会の方にもぜひお願いをしてそういう方向に持っていくつもりでございます。

菅委員 非常に積極的な御答弁をいただきましたので、これで中央薬事審議会に関する御質問は終わりにいたしまして、次に、いわゆるフェニックス計画、広域臨海環境整備センター法案がまだ当委員会にはかかっておりませんけれども、それに関連した質問を幾つかさしていただきたいと思います。)

 さらに「クレスチンの臨床試験に2重盲検の成績がないから効果があるかどうか判らない。丸山ワクチンとクレスチンは似たり寄ったりの薬である。気休めの要素が強いのであれば、さほど厳重なデータはいらない。そのような考えで、クレスチンを不十分なデータで承認したのだろう。とにかく、丸山ワクチンだけに厳しく当たるのは不公平であり、差別である」と続くのである。結局クレスチンには疑惑があるのだから、それなら丸山ワクチンも通せと目くそ鼻くそ理論を展開している。

ここで草川昭三衆議院議員が衆議院議長あてに丸山ワクチンに関する審査の現況に関する質問主意書を昭和55年10月1日に提出し、内閣総理大臣鈴木善幸の名で答弁書が出されているのでこれも取り上げておこう。


 丸山ワクチンの製造承認申請に係る審査の現況に関する質問主意書

 質問本文情報

昭和五十五年十月一日提出

質問第四号

丸山ワクチンの製造承認申請に係る審査の現況に関する質問主意書右の質問主意書を提出する。

昭和五十五年十月一日      提出者 草川昭三

衆議院議長 福田 一 殿

丸山ワクチンの製造承認申請に係る審査の現況に関する質問主意書

昭和五十一年十一月に、制がん剤として国民の関心と注目を集めている丸山ワクチンの製造承認の申請がなされているが、今なお承認されていない現況にある。

このため、さきの第九十回国会において、「丸山ワクチンの製造承認申請に関する質問主意書」(昭和五十四年十ニ月五日提出、質問第ニ号)を提出したところであるが、これに対する政府の答弁書(昭和五十四年十ニ月十四日受領、答弁第ニ号)は、何らの説明も加えることなく(説明しても専門的事項は理解できないであろうと勝手に推測してか)、有効性が確認できないという結論だけを主張している。

私の質問は、政府の行政上のすべての措置は、何人に対しても公正でなければならず、いささかの差別も許されないという基本的視点に立脚して、政府の態度とその措置の当否を問うものであって、医学的、薬学的論争を試みることが、その主たる目的ではない。しかし、それにしても、さきの政府の答弁は全く容認しがたいものである。

従って、この際あえて私の真意を申し添え、改めてさきの答弁に関する次の事項について質問する。 
  
一 昭和五十ニ年四月十五日、同年六月十七日、同年七月八日、昭和五十三年八月四日及び同年九月ニ十一日の中央薬事審議会における丸山ワクチンに係る審査について、それぞれの内容を詳細に説明されたい。 
 
二 中央薬事審議会が「その有効性を確認するにはいまだ資料が不十分である」とする具体的な問題点について、詳細に説明されたい。また、この点についての厚生省当局の見解も併せて伺いたい。
 
三 中央薬事審議会が、佐藤博博士、石田名香雄教授、水野伝-教授、井村裕夫教援、吉井隆博教授等による実験成績を含む提出資料のどの点について「有効性を実証するものであるという判断には至らなかった」のか、提出資料を引用して具体的に説明されたい。また、この判断に対する厚生省当局の見解も併せて伺いたい。
 
四 中央薬事審議会が、昭和五十三年九月以降丸山ワクチンに係る審査を行っておれば、その内容を詳細に説明されたい。また、審査を行っていないのであれば、その理由を説明されたい。

五 さきの答弁において、「免疫療法剤の治療効果は強力なものではなく、他の治療法と併用することにより有効となると考えられている」と述べられているが、だれのどのような見解に基づく判断であるのか、かかる見解を前提とした審査手続に強い疑念を持つので、特にこの点についての厚生省の明確な見解を伺いたい。

六 免疫療法剤の審査の一層の適正を期するために組織された「研究班」の現在までの検討経過について、詳細に説明されたい。また、この検討経過が丸山ワクチンの製造承認申請とどのような関連を持つものか、説明されたい。

七 さきの答弁において、丸山ワクチンを「免疫療法剤としての審査に切り替えたという事実はない。」と述べられている。従って、厚生省は丸山ワクチンに関する限り審査基準を今後とも変更する考えはないと了解してよいか、厚生省の見解を伺いたい。

八 ピシバニール及びクレスチンの申請から製造承認に至るまでの中央薬事審議会における審議の経過及び「いずれも申請された効能についてその有効性が確認された」とされる審査の内容について説明されたい。また、丸山ワクチンについて、ヒシバニール及びクレスチンの審査基準に当てはめた場合、どの点に問題があると考えるのか、三者を比較対照して説明されたい。

九 昭和五十四年五月ニ十四日の衆議院社会労働委員会における私の質疑に対し、本橋政府委員は「クレスチンあるいはピシバニール等につきましては腫瘍縮小効果が見られた」と答弁している。その実例は恐らく発表されているものと思われるので、その詳細を示されたい。

十 厚生省当局は、新医薬品の製造承認に際し従来副作用を伴うものについては原則として承認しない方針であると了解している一方、この原則の例外として、現在市販されているがん治療剤(免疫療法剤であるピシバニール及ひクレスチンを含む。)の大多数のものは、副作用を伴うが承認されていると理解している。
これらの事実の認識に相違があれば指摘されたい。

十一 丸山ワクチンが副作用を伴わないことは周知の事実であるが、副作用を伴うほとんどのがん治療剤が、厚生省当局の大原則に合致しないまま承認されている理由を説明されたい。また、承認に際し、新医薬品の有効性と副作用の関係について総合的に評価する基準は何か、説明されたい。

十ニ 丸山ワクチンの製造承認申請に係る薬事審議会の今後の審査の見通しについて、重ねて厚生省の見解を明らかにされたい。

 答弁本文情報

(質問の四)

内閣衆質九三第四号

昭和五十五年十月九日

内閣総理大臣鈴木善幸

衆議院議長福田一殿

衆議院議員草川昭三君提出丸山ワクチンの製造承認申請に係る審査の現況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員草川昭三君提出丸山ワクチンの製造承認申請に係る審査の現況に関する質問に対する答弁書

ーについて

「SSMー注射液」の製造承認に係る中央薬事審議会における審議の経過及び内容については、先の内閣衆質九〇第ニ号(昭和五十四年十ニ月十四日)の一についての1及び2において答弁したとおりであるが、申請者から提出された資料のすべてについて十分な審議が行われたものである。

ニについて

中央薬事審議会は、臨床試験成績資料、作用機序を裏付ける基礎的研究資料、規格及び試験方法の内容等が不十分であると判断したものであり、厚生省においてもその意見を尊重することとしている。

三について

医薬品の有効性の評価は、申請者から提出された基礎実験、効力を裏付ける試験、臨床試験等の資料を総合的に審議評価してなされるものであり、中央薬事審議会が佐藤博博士等の個別の実験成績を含む提出資料のすべてを審査しても、なお総合的評価において「SSMー注射液」の有効性を確認するには至らなかったものである。
なお、厚生省においても、同会の意見を尊重することとしている。

四について

中央薬事審議会においては、申請者から追加資料が提出された時点で改めて審議をすることとしており、昭和五十三年九月ニ十ニ日以降現在に至るまで申請者から追加資料が提出されていないので、同日以降審議を行っていない。 
 
五について


悪性腫瘍に対する免疫療法剤の治療効果は強力なものではなく他の治療
去と併用することにより有効となるとの考えは、今日の関係学会における通説とされており、この見解が現時点における最も適切なものであると考えている。

 

六について

昭和五十四年七月以降、悪性腫瘍に対する免疫療法剤の医薬品としての評価の学問的基盤を明確にし、免疫療法剤の承認審査に資することを目的とした研究が行われ、本年四月にその研究成果が報告された。

また、本研究は、「SSMー注射液」の製造承認申請とは直接の関連があるものではない。 
 
七について
 
医学、薬学等の学問水準に照らし、より適切な抗悪性腫瘍剤の審査基準が確立された場合には、この基準に基づいて審査することができるものと考えている。
 
八について
ヒシバニールについては、昭和四十八年八月六日、同月十日、昭和四十九年ニ月ニ十八日、同年六月ニ十五日、同年九月四日、同年十月十八日及ひ同月ニ十五日並びに同年十一月ニ十日の八回にわたり、クレスチンについては、昭和五十年十月ニ十九日、昭和五十一年三月ニ日及び同年六月十八日の三回にわたり中央薬事審議会において審議され、それぞれについて提出された資料を総合的に評価した結果有効性が認められるとされたものである。なお、「SSMー注射液」についての問題点は、ニについて及び三についてで述べたところにより了知されたい。


九について 
御指摘の答弁は、中央薬事審議会の審議において、クレスチン、ピシバニール等には腫瘍縮小効果が認められると評価されたことを踏まえてなされたものである。
 
十及び十一について
医薬品の製造承認は、その有効性及び安全性を比較衡量の上医療上の価値を判断して行うものであり、抗悪性腫瘍剤についてもその例外とはしていない。
 
十ニについて
現在、申請者に対し、更に追加資料の提出を求めており、必要資料が提出された時点で改めて審議されることとなると考えている。



右答弁する。


このようにいろいろ質問しているが結論はクレスチン及びピシバニールの認可に問題はないとの総理大臣の回答が示されている。


更にパブリック・アフェアーズNo129(博報堂PR局制作部昭和56年9月30日)は《争点の追跡》「6.SSM有効論を否定し得ない薬事審の無効説」と題し昭和56年7月10日の第8回目の審議で「丸山ワクチンの有効性を確認できない」との見解が公表されたと記す。
この中で桜井座長と山崎薬務局長が行った記者会見の様子を採録している。(青字葉引用)

 『桜井:提出したデータによる限りでは、SSMによって命が延びるという確証は見ることが出来ません。また、SSMが患者の治療に有効であるという確証は得られませんでした。

――丸山ワクチンには有効性は無いという結論ですか。

桜井:すべての薬がそうですが、我々は“これは効かないものだ”という判定はしていません。ただ、現在、出ているデータで有効だと実証することはできないといっているだけです。

――丸山ワクチンの有効性について認められないと最終結論が出たらどうなりますか。

山崎:それはまあ、医薬品としての承認を与えることは出来ない。ただ、私ども行政的な立場で考えますと、丸山ワクチンの注射を受けている人が25千人もいるわけですから、そのへんの社会的実態は見過ごすことが出来ません。

――医薬品として認められないとなれば、製薬メーカーも製造を中止するかも知れません。その場合、ある種のパニックが起きると思うのですが・・。

山崎:一時的にせよ、患者さんにそういう不安な状況が生じるという事態は避けねばなりません。これは科学的な判断の次元とは別の問題としまして適切な措置をとっていきたいと思います。

このレポートにも『厚生省と業者の癒着がことあるごとにマスコミに指摘され、クレスチン、ピシバニールが異例の早さで認可されたのは、この抗がん剤の研究者が薬事審調査会のメンバーだったからだという見方もある』と記している

 

この間丸山ワクチン支援グループは医療ジャーナリストや代議士を使って「承認されないのはクレスチン、ピシバニール販売に影響が出る」のでその支援者が承認に反対しているからだとしての攻撃を仕掛けていた。典型的な例として東大教授篠原一らが申し立てた薬事審査委員の罷免申立書がある。

これは丸山ワクチンの製造認可を促進する患者、家族の会の代表6名が昭和56年7月21日に厚生大臣村山通雄に出したもので、クレスチン、ピシバニールの開発に関与した人は丸山ワクチンの審査には不適なので罷免して欲しいというものである。癌研化学療法センターの桜井、塚越の両先生、愛知がんセンター太田先生の3名はクレスチン、ピシバニールの開発者であるので審査委員から外すように申立て(実際には彼らは罷免されなかったが)、またクレスチン、ピシバニールの認可に際して比較臨床試験がなく、丸山ワクチンには延命効果が見られるのに認可しないのはおかしいと訴えている。

我々が申請する頃の審査委員は「実際に自分で研究又は臨床試験をしなければ判断のしようがないので、治験薬や試料を持ってくるように」と言うことであった記憶がある。触らないことには判断できないと言うことは、調査会のメンバーの大半はなにがしか研究に携わっている事が多かった。何もクレスチンやピシバニールに限らず、この頃認可されたた医薬品では大半調査会のメンバーが関係したデータが多く見られたので、彼らは実情を知らない空振りの申立書であったといえよう。

                罷免申立書


さらに国際医薬品情報(昭和57222日号p-10)では行政情報として「丸山ワクチンで初の審議概要を公表――クレスチン、ピシバニールの審議内容及びデータも公表」と題しその審議内容を詳細に報告した。一部を引用しよう



『ゼリア新薬工業は51127日、SSMの製造承認申請をした。抗悪性腫瘍剤調査会は52415日の第1回以来、昨年710日まで8回にわたり審議。この間、2回、追加資料の提出を指示した。5626日に追加資料が提出された際、申請書が差換えられている。薬事審の最終判断を求める社会的要請が強かったため、56728日に医薬品特別部会、814日に常任部会でさらに審議された。』

基礎的研究資料については『有効性と安全性を確認するには資料が不十分であり、さらに試験研究が必要とされた。』

『一般臨床試験は2区分からなり、その1つは単独使用例として288例に評価の判定が付された。(中略)この単独使用例について日本癌治療学会効果判定基準又はカルノフスキーの効果判定基準より判定し有効例があると主張されているが、その内容を詳細に検討すると必ずしもそのように判定し得ない。また、症例を選び出すに際して用いられた基準も不明な点があり、症例内容の記載にも具体性と正確さを欠くなどで、症例の有効率の算定は困難だった。また、他の一つは当初申請後に実施された一般臨床試験として66例提出され、うち39例が単独使用とされている。この症例中、癌治療基準による軽快-11例あり有効率は2.6%とされているが、この1例について判定の根拠となる追加資料を求めた結果、前治療に用いられた化学療法の効果による可能性が否定できないこと、また原発巣に若干の縮小が見られているが、同時に転移腫瘍の増大が認められていることから無効と判定された。

比較臨床試験は5地区の結果が提出された。うち、北陸、滋賀、神奈川地区の3試験は予備的なものでSSMの有効性を実証するには不十分。東海、東北地区は良く計画され実施されていた。東海地区では切除不能例では本剤の効果は認められないが、非治癒切除例では使用後4ヶ月及び10ヶ月付近の生存率に部分的に統計的有意差が出ていると報告されている。』

しかしと続き『群間に除外例や封筒法違反などに著しい偏りがあり、また、全期間を通じての生存曲線の有意差を検定する方法では生存曲線間の差は認められない』としている。

東北地区では『腫瘍縮小効果と自覚症状の改善では差が見られない。一方、生存率、延命効果ではSSM投与群は非投与群に比較して50%生存日数で20日間程度の延長があり、また治療開始後299日及び449日の時点でSSM群の生存率は統計的に有意とされている。しかし胃癌以外では基礎となる化学療法剤がまちまちなこと、臓器の種類によって予後に違いがあることから、延命効果を同列に比較することは適当でない。

胃癌症例(S59例、P59例)についても、S群で50%生存日数が20日程度延びるとされているが、例数が少ないことが影響して群間の差は更に明確でなくなっている。

また、現在の癌治療の水準に照らし、50%生存日数にみられた20日程度の延命では医学的に有意義とは判断されなかった。その結果、これら2地区での比較臨床試験の結果もSSMの有効性を十分に示すとはいえない。一部の臨床試験実施責任者から出た申請資料の内容の訂正申し入れについても、医薬品特別部会、常任部会で慎重に審議したが、その内容はSSMの有効性に関する最終的な結論に影響するものではないと判断された。以上から、中央薬事審議会は、提出された資料をもってしては有効性を確認することはできないと判断した。』

この後ピシバニールとクレスチンの申請時のデータの一部が公表されている。この中でクレスチンの臨床効果は『全国の19施設で576例を対象に行われたが、うち単独投与の種々の癌289例では62例(21.5%)に他覚的改善がみられており、固形癌症例に対し有効と判断される。一方、重篤な副作用は認められず、骨髄障害もない。また、他の抗がん剤と併用による増感作用も報告されている。経口投与という利点もある。よって進行癌の化学療法に対して有効と判定した。』と記されている。

 

その頃、SSMニュース1986/10/20発行No4(丸山ワクチン問題を考える会、発行人 宮川秋男)が「クレスチンに行政勧告(総務庁)」SSMを阻害したクレスチン一派の責任を糾す」の見出しで特集を組んでいる。それによれば



『医薬行政に対する行政監察は異例である。今回の観察実施は本年1月から3月までの3ヶ月にわたって行われたもの。クレスチンがなぜ対象にされたのか?これは、周知のようにクレスチンは承認時に「比較臨床治験」などの条件が付されて認可になったものであった。しかしながら、現在に至ってもその条件が履行されていない。この事実は一連の丸山ワクチン問題と絡んで、薬務行政上放置するわけには行かない、という認識が監察当局にあったからである。ところが、クレスチンに対する付帯条件は法的なものではなく、あくまでも「履行は企業の任意」という程度の行政指導だった、ということになってしまった。。急遽クレスチンを対象にした監察当局は、それなら、薬事法上の医薬再評価規程に違反していると指摘、ついに勧告ということになったものである。厚生省の強い抗弁と別方向からのあからさまな圧力をはねのけて勧告にこぎつけた監察当局の姿勢に留意しないわけにはいかない。(中略)

とくに「選択」8月号と「ジャクタ」10月号のクレスチン提起は医薬品業界にも少なからぬインパクトを与えている(3頁以下のコピーを参照されたい)。内容は、不正な認可と薬効ゼロという二つの重大な問題を明確にしたものである。

ちなみにジャクタの中でこの行政勧告について医事評論家の生天目氏は

『これは降って湧いたような事件なんです。だって国会で取上げられ、しかも行政監察なんて畑違いのところから、厚生行政に疑問が出た。ですから最近、厚生省がいわゆる打診しているんですね。「この程度でどうだろうか」と。「比較臨床治験は昭和63年までには必ず出させると約束するから、何とかその辺で了解してもらえないか」と、総務庁にこう言ってきたらしいですね。』とも述べられている。

さらにSSMニュースは

SSMニュースが再三にわたり、その経過をお知らせしていたが、625日総務庁(旧行政管理庁)は厚生省に対し、クレスチンについて厳しい勧告を出した。「クレスチン事件」の重要な部分は「薬効に重大疑惑がある」という点だ。行政勧告も要点は「クレスチンの効能は、薬事法で定められた薬効の再評価をしていないので確認出来ない状態にある。従って速やかに薬効再評価(治験を含む)を行え」というもの。国会での爆弾発言は一過性の発熱みたいなものと厚生省は受け止めていたのである。だが、企業のトップは「5千億円達成祝賀会」の後だっただけに衝撃度は相当なものだった。(中略)

丸山ワクチンは承認申請以来10年を経過してしまった。ここまで“コジレ”させたのは誰だったのか。これもまた、はばかりなく「クレスチン」だと断言しておく。だが、「サルノコシケケ」では相手にならない。その開発者である桜井欽夫座長(元)と塚越茂委員(元)、さらに付け加えて「ピシバニール」をパスさせた古江尚調査会委員(元)らである。名指しした以上の学者らの言動は、多くの記録が示しているように、極めて不当なものである。丸山ワクチンの患者や家族、さらに支援する学者や文化人や多くの市民にとって、とうてい許しがたきものと言わざるを得ない。「クレスチン」5千億円の拡販の犠牲になった患者や家族の血涙は容易に拭える量ではないのである。

開発学者 クレスチン一派に対して、当会は今後もあらゆる手段を行使し厳しく糾す事を明言するものである。』

と記している。

 

JACTA21号p-116

「日本人の“いのち”を考える特別対論

生天目昭一(医事評論家)VS前山茂(全国ローヤルゼリー公正取引協議会会長代行)

摩訶不思議「薬務行政」の実態を暴露する  薬事法にもの申す」

と題した記事が掲載されている。この中で

『生天目:それと、これは確かな事実ですから、あえて私はお話しますが、クレスチンが今大変問題になっているもう1つは、行政監察の対象になり、ついに勧告が出されたんです。

前山:それは衆議院の行政監察

生天目:いや、行政監察庁ですね。現在は総務庁。

前山:やったんですか。

生天目:525日に出されました。

前山:是非、しっかりやってもらいたいものですね。

生天目:それで厚生省がびっくりしたんですね。何といっても今までこういうケースはなかった。タブーですからね。行政監察の対象になるということだけども中央省庁にとっては大変不名誉なことですから。そこで問題になったのは、行政監察の対象はどこに問題があったかということ。行政監察当局が関心を抱いているのは、クレスチンの承認そのものが適法下に行われたかどうかということが1つです。これは医・薬学の問題ですから、薬が効く、効かないというようなことには行政監察の対象には本来なじまないはずです。しかし、正しい医薬行政にクレスチン承認がかなっていたかどうかということに問題が投げかけられているわけですから、極めて当たり前と言えば当たり前のことなんです。

そして、問題のもう1つが、クレスチンは比較臨床の治験データが出されていないと言うことなんです。

前山:それは問題ですね。詳しくお聞きしたいですね。

生天目:どういうことかというと、比較臨床試験というのはクレスチンと他の薬を使って、どれだけ効いているか効いていないかを比較して裏付けなきゃいけない。この薬だけを使っていても、それは客観的に正しい評価とは言えないわけです。

同じ風邪薬でも鎮痛剤でも、ABという薬を比較してどの程度効くかというものを、ある一定数以上の患者を対象にして初めて裏付けられるわけでしょう。クレスチンの場合はそれがなされてないんですね。クレスチンの承認の時に余り急いだために「比較臨床データやその他のまだ出てないものは、おって実施しなさい」という条件が付されたのです。つまり、データそのものが比較臨床なんていう込み入ったことがすべて省略されているズサンなものだったんです。

前山:それが一番大事なことじゃないんですか、薬にとっては。

生天目:大事ですね。特にガンの薬については、そういう裏付けのないものは今は受け付けていませんよ。ところがクレスチンについてはそれが通ってしまったんです。だから条件を付けられていた。ところが今でもまだその条件が満たされていないんです。だから伊藤議員はこうまで言っているんですよ。「ガン研の内科部長小川一誠氏。愛知がんセンター福島雅典氏などはクレスチンは比較臨床治験をやっていない薬だから使用できない、だから、使わないと言っている」と。

ここまで暴露された以上は、厚生省はクレスチンに課した比較臨床試験を実施させる、そして早くその結果を見極める義務があるでしょう。それをもう10年間放置している。これは当然、行政監察の対象になり、そして勧告ものですね。

前山:本来ならそういう条件がついていれば、条件を満たしてから発売とか認可をすべきですよね。

生天目:その当然のことがやられていないわけです。

以下ピシバニールに関して中外の元副社長がピシバニールを使わず丸山ワクチンを使ったと述べているが、これらは殆ど思い違い、無理解に起因するものと思われるので彼らが医薬ジャーナリストと称して丸山ワクチンを応援することはかえって問題を大きくしたのかもしれない。

また「実話タイムス」8月号および週刊新潮昭和611016日号を引用して、伊藤一二・東京都立駒込病院副院長(当時)らがクレスチンの研究者として名を連ねており、抗悪性腫瘍剤調査会のメンバーであったとしている。


昭和56730日第94国会衆議院 社会労働委員会議事録第20号がネット上に公開されている。

それをそのまま全文紹介する。

『 第094回国会 社会労働委員会 第20号
昭和五十六年七月三十日(木曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 山下 徳夫君
   理事 今井  勇君 理事 戸井田三郎君
   理事 戸沢 政方君 理事 湯川  宏君
   理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君
  理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君
      小沢 辰男君    木野 晴夫君
      古賀  誠君    中野 四郎君
      長野 祐也君    葉梨 信行君
      八田 貞義君    浜田卓二郎君
      牧野 隆守君    金子 みつ君
      小林  進君    佐藤  誼君
      栂野 泰二君    永井 孝信君
      草川 昭三君    塩田  晋君
      浦井  洋君    小沢 和秋君
      菅  直人君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 村山 達雄君
 委員外の出席者
        国税庁直税部所
        得税課長    入江 敏行君
        国税庁調査査察
        部調査課長   草野 伸夫君
        厚生政務次官  大石 千八君
        厚生省公衆衛生
        局長      大谷 藤郎君
        厚生省医務局長 田中 明夫君
        厚生省薬務局長 山崎  圭君
        厚生省保険局長 大和田 潔君
        会計検査院事務
        総局第四局審議
        官       天野 基巳君
        参  考  人
        (癌研究会癌化
        学療法センター
        所長)     桜井 欽夫君
        参  考  人
        (国立熱海病院
        第一外科医長) 梅原 誠一君
        参  考  人
        (国立療養所東
        京病院名誉院
        長)      砂原 茂一君
        参  考  人
        (佐々木研究所
        病理部長)   佐藤  博君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二十一日
 辞任         補欠選任
  石原健太郎君     山口 敏夫君
同日
 辞任         補欠選任
  山口 敏夫君     石原健太郎君
同月三十日
 辞任         補欠選任
  池端 清一君     小林  進君
  大橋 敏雄君     草川 昭三君
同日
 辞任         補欠選任
  小林  進君     池端 清一君
  草川 昭三君     大橋 敏雄君
    ―――――――――――――
六月六日
 一、労働基準法の一部を改正する法律案(森井
   忠良君外三名提出、衆法第一七号)
 二、雇用保険法の一部を改正する法律案(池端
   清一君外四名提出、衆法第三一号)
 三、母子保健法、健康保険法等の一部を改正す
   る法律案(金子みつ君外五名提出、衆法第
   三四号)
 四、老人保健法案(内閣提出第七四号)
 五、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の
   規定に基づき、国会の議決を求めるの件
   (鉄道労働組合関係)(内閣提出、議決第
   一号)
 六、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の
   規定に基づき、国会の議決を求めるの件
   (国鉄労働組合関係)(内閣提出、議決第
   二号)
 七、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の
   規定に基づき、国会の議決を求めるの件
   (国鉄動力車労働組合関係)(内閣提出、
   議決第三号)
 八、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の
   規定に基づき、国会の議決を求めるの件
   (全国鉄施設労働組合関係)(内閣提出、
   議決第四号)
 九、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の
   規定に基づき、国会の議決を求めるの件
   (全国鉄動力車労働組合連合会関係)(内
   閣提出、議決第五号)
 一〇、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(国鉄千葉動力車労働組合関係)(内
    閣提出、議決第六号)
 一一、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全国電気通信労働組合関係)(内閣
    提出、議決第七号)
 一二、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(日本電信電話労働組合関係)(内閣
    提出、議決第八号)
 一三、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全専売労働組合関係)(内閣提出、
    議決第九号)
 一四、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全逓信労働組合関係)(内閣提出、
    議決第一〇号)
 一五、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全日本郵政労働組合関係)(内閣提
    出議決第一一号)
 一六、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全林野労働組合関係「定員内職員及
    び常勤作業員(常勤作業員の処遇を受け
    る常用作業員を含む。)」)(内閣提出、
    議決第一二号)
 一七、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全林野労働組合関係「基幹作業職
    員、常用作業員(常勤作業員の処遇を受
    ける者を除く。)及び定期作業員」)(内
    閣提出、議決第一三号)
 一八、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(日本林業労働組合関係「定員内職員
    及び常勤作業員(常勤作業員の処遇を受
    ける常用作業員を含む。)」)(内閣提
    出、議決第一四号)
 一九、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(日本林業労働組合関係「基幹作業職
    員、常用作業員(常勤作業員の処遇を受
    ける者を除く。)及び定期作業員」)
    (内閣提出、議決第一五号)
 二〇、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全印刷局労働組合関係)(内閣提
    出、議決第一六号)
 二一、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(全造幣労働組合関係)(内閣提出、
    議決第一七号)
 二二、公共企業体等労働関係法第十六条第二項
    の規定に基づき、国会の議決を求めるの
    件(アルコール専売労働組合関係)(内
    閣提出、議決第一八号)
 二三、厚生関係の基本施策に関する件
 二四、労働関係の基本施策に関する件
 二五、社会保障制度、医療、公衆衛生、社会福
    祉及び人口問題に関する件
 二六、労使関係、労働基準及び雇用・失業対策
    に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 厚生関係の基本施策に関する件(丸山ワクチン
 問題)
     ――――◇―――――
山下委員長 これより会議を開きます。
 厚生関係の基本施策に関する件、特に丸山ワクチンの有効性、安全性をめぐる諸問題について調査を行います。
 この際、お諮りいたします。
 本件について、本日、参考人として、癌研究会癌化学療法センター所長桜井欽夫君、国立熱海病院第一外科医長梅原誠一君、国立療養所東京病院名誉院長砂原茂一君及び佐々木研究所病理部長佐藤博君、以上四名の先生方から意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
山下委員長 参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位には、御多忙中しかもお暑いところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。
 本日御出席いただきました参考人各位は、かねがねそれぞれのお立場から国民医療の進展のため御努力いただき、衷心より敬意と感謝の念を表する次第であります。
 さて、がんは、世界じゅうの医学、薬学を初めとする関係科学者の間に、その原因究明のために真剣な研究努力が払われているのでありますが、いまだその原因が究明されないまま猛威をふるい、特にわが国においては、死亡率において第一位の脳卒中に迫り、いまの勢いからすればここ数年の間に死亡率第一位になろうと言われています。
 かような社会的背景の中に丸山ワクチンの有効性についての問題が大きく取り上げられてきており、中央薬事審の抗悪性腫瘍剤調査会においてはすでに十日に「有効性は確認できなかった」という結論が発表されましたし、特別部会でも二十八日に調査会とほぼ同趣旨の内容のものが公表され、あとは来月七日に予定されている最終審の常任部会の発表を待つばかりとなっています。
 にもかかわらず、関係ある諸団体等から、この問題について社会労働委員会においても国民の納得のいくような審議を尽くすべきであるという趣旨の請願、陳情書、意見書等が委員長あてに多数提出されており、これらにこたえ、かつ世論に対して国会がこの問題を究明するのは必然のことであるという立場から、本日の委員会を開会することになった次第であります。
 参考人各位には右の趣旨を御理解の上、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をなるべくわかりやすくお述べくださるようにお願いをいたします。
 議事の順序は、まず参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっていますので、さよう御了承願います。
 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
山下委員長 速記を始めてください。
 それでは、桜井参考人からお述べいただきたいと存じます。桜井参考人。
桜井参考人 私、調査会の座長を仰せつかっておりますので、このたびの丸山ワクチンの審査につきまして簡単に御報告を申し上げます。
 この調査会と申しますのは、ただいま六人の臨床の先生と六人の基礎の先生と、私を含めまして十三人で運営をいたしております。問題につきましては各人がその専門領域で逐次検討をいたしまして、その後でこれを総合的に討論をいたします。そしてその結果を座長が取りまとめまして、これを皆様の御了承を受けまして、上部部会でございます特別部会に伝えるという仕事でございます。
 この丸山ワクチンにつきましては、結論といたしましては、もうすでに御承知のことと存じますが、提出されました審査資料というものについて検討いたしました限りにおいて、これの有効性を実証することが困難であったということでございまして、これを特別部会に上程したわけでございます。
 その理由の要点を申し上げます。
 一つは、薬といたしまして最も大切なことは規格というものでございまして、簡単に申しますと、その薬がいつ何どきお医者様の手に入りましても、常に同じものであって同じ効力が保証されておるということを決めます規定と、それを実証いたします実験方法が確立をしておる必要がございます。この点、丸山ワクチンの規定、規格につきましては不安なところがございました。それは、効果を決めます動物実験のやり方につきまして、その実測の方法が常識的に考えましても非常にむずかしい、細かな数字を出すことができないということが委員の専門の方々の御意見でありまして、それを皆さんが納得したという点で、規格に不十分なところがあるということが一つでございました。
 それから次は、一般の安全性の問題でございます。
 これはいわば毒性の試験でございます。これにつきましては、一般の薬物といたしましてはいささか実験に不足がございます。具体的に申しますと、一定のドーズ、薬の量で試験がしてあって、その用量と作用との関係が出ていないということでありましたけれども、これは丸山ワクチンというお薬が、臨床に使われますときは非常に微量でございまして、一日に千分の二ミリグラム使うというようなことでございますので、そのことを勘案いたしますと大して重大な問題ではないであろうというのが皆様のあれで、その安全性については決定的な問題はないということでございました。もちろん、薬として課せられておりますいろいろな実験につきましては、もう少しこういう実験をしなければならぬということが指摘されてはおります。
 それから、いろいろな動物のがんを使いまして、丸山ワクチンが効果があるかどうかという実験がなされております。これにつきましては、数種のネズミのがんで有効性が証明されております。ただ、そのときに使う量は、もちろん人間の量に体重比で比較いたしますと二百倍とか五百倍とかいう量が必要なものが多いのでありますけれども、これは必ずしも人間に対する効果を否定するものではございません。少なくともネズミの一種類の腫瘍、がんにつきましては、人間の使用量の二十五倍というようなところで若干の抑制効果が出るという結論が出ております。
 この作用機作については、どうしてネズミのがんに効くのかということについてはよくわかりません。しかし、この丸山ワクチンを注射いたしますと、あるネズミの血の中にインターフェロンが出てくるという実験がございまして、大変興味あるものでございます。ただ、現状におきまして、インターフェロンががんに対してどういう効果を発揮するかということはただいまも広く臨床試験が始まっておりまして、インターフェロンの制がん効果に対しては現在検討中でございますけれども、まだ結論が出ておりません。
 臨床試験につきましては、これは最も重要なことでございますが、その結果につきましては、もう御報告あるいはいろいろな報道がなされましたし、時間的にもございませんので、詳しく申し上げるいとまはございません。しかし、一言所感を述べさせていただきますと、臨床試験といいますものは、制がん剤の開発では最も大事なところでございます。ことに免疫治療剤につきましては、現有のところ、少なくとも詳細な理論的展開は過去四年か五年ぐらいからの歴史しかないわけでございます。したがって、基礎実験のデータからこれは人間に効くであろうという予言をいたしますことは、一般の制がん剤の研究に比べてさらにはるかに困難でございますので、効果の判定は臨床領域、臨床の先生方の御判定に待つことがきわめて大きいということでございます。
 この臨床の成績の中で最も慎重に行われました東北大学を中心とするものと、愛知がんセンターを中心といたします二つの比較臨床試験のデータをよく検討いたしました。これは臨床の先生が非常に詳しく検討をされたのであります炉、たとえば愛知がんセンターの研究の例を見ますと、後層別をいたしまして、不完全な手術を行われた胃がんの手術の中で腹膜に転移のある者を分けて層別をいたむますと、非常に有意な丸山ワクチンの効果が出ている例がございます。ただし、こういうふうに後層別をしておりますので大変少ない例になってしまいますので、こういう点は、これをもう一回数をふやして検討に値するものであろうというような意見もございました。私も同感でございますが、そのためには、先ほど申し上げました薬の規格の安定性というものをしっかりしてからやっていただきませんとまた問題が起こるのではないかということを痛感いたしております。時間が来たようでございますので、私が申し上げたいことはここまでにいたしたいと思います。
山下委員長 次に、梅原参考人。
梅原参考人 初めに、参考資料を提出いたしました。よろしゅうございますか。――配っていただきます。
 身分のことについて一言申し上げます。七月一日付で第一外科医長に配置がえを受けましたが、六月三十日までは第二外科医長でありましたから、まさしく私は梅原誠一でございます。
 話しなれないものですから、用意しました原稿を読ませていただきたいと思います。
 私のSSM使用症例は、社会保険中央総合病院における二百西十一例と国立熱海病院における百七十五例であり、総計四百十六例に達しております。
 私が厚生省中央薬事審議会に報告書を提出しましたのは昭和五十一年のことであり、まだSSMの、丸山ワクチンのことですがそう呼びます、構成成分すら明らかにされていない時代でありました炉、すでにこのような報告書に対照例のないこと、効果判定基準をがんこなまでに昭和四十二年外科学会発表当時に用いた独自のものとしたことの二点で、審議会から見れば無価値に近いものであろうことは私自身が予測しておりました。しかしこの時点では、他施設による臨床治験例は少ないことから、第一次申請の旗上げ的な役割りと考えて、社会保険中央総合病院の症例のうち完全な手術のできなかった症例、非治癒切除例と申します手術の全くできなかった症例、たとえば試験開腹に終わった症例及び再発例の百七十四例をまとめて報告書を作成いたしました。
 効果判定基準として学会提唱の基準を用いなかった理由は、延命効果を主とするSSMの効果を制定するには、腫瘍の縮小を目安とする化学療法剤の効果判定基準は不適当であると考えたからであり、また、常に手術との併用にこそこのSSMの効果を期待し得ると主張しております私が、手術例について報告しなかった理由は、これこそ厳密な対照治験で物を言うべきことであり……
山下委員長 ちょっと参考人、あなたの陳述に基づいて、その後で質疑をやるのです。ですから、朗読は結構ですが、よく聞こえなければ後で質疑できませんので、時間を一、二分超過してもいいですから、もうちょっとゆっくり読んでください。
梅原参考人 わかりやすくお話ししますと五分超過しますが、よろしゅうございますか。
山下委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
山下委員長 速記をつけて。
 暫時休憩いたします。
    午前十時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時三十九分開議
山下委員長 これより委員会を再開いたします。
 梅原参考人、陳述をお続けください。
梅原参考人 速記を外していただきたい。冗談を申し上げます。
 私が東京医科大学の学生であった時代に、講義を読み上げる講師がおりまして、私はノートは一番速いんだといばっていたわけです。ところが、聞いていてわからないことがあると、私はよくストップしてもらったものです。私の話でわからないことがありましたら、私が講師に言ったと同じように、委員長の権限で、ちょっととめろ、もう一度言い直せと言ってくだされば幸いであります。先ほどの続きを申し上げます。(「初めからやってください」と呼ぶ者あり)
 私のSSM使用症例は、社会保険中央総合病院における二百四十一例と国立熱海病院における百七十五例であり、総計四百十六例に達しております。
 私が厚生省中央薬事審議会に報告書を提出しましたのは昭和五十一年のことであり、まだSSMの構成成分すら明らかにされていない時代でありましたが、すでにこのような報告書に対照例のないこと、効果判定基準を昭和四十二年外科学会発表当時に用いた独自のものとしたことの二点で、審議会から見れば無価値に近いものであろうことは私自身が予測しておりました。しかしこの時点では、他施設による臨床治験例は少ないことから、第一次申請の旗上げ的な役割りと考え、社会保険中央総合病院の症例中、完全な手術のできなかった症例、手術の全くできなかった症例及び再発例の百七十四例をまとめて報告書を作成いたしました。
 効果判定基準として学会提唱の基準を用いなかった理由は、延命効果を主とするSSMの効果を判定するには、腫瘍の縮小を目安とする化学療法剤の効果判定基準は不適当であると考えたかちであり、また、常に手術との併用にこそこのSSMの効果を期待し得ると主張しております私が、手術例について報告しなかった理由は、これこそ厳密な対照治験で物を言うべきことであり、一般病院に勤務する私には、症例数の点でも、救いを求めて来院される患者さんたちの要望から考えても不可能なことであり、後に専門施設に依頼すべきものであると考えたかちであります。
 さて、私の第一次申請用報告書について申し上げますと、その極値は、刻々と死に近づく闘病生活の途上で患者さんたちが残していってくださったデータの写真集にあるものと思います。写真は事実の記録であり、絵のように作成されるものではありません。
 私の報告した症例の大部分は、一時好転を示した症例でも、死亡いたしましたが、延命効果を主として判定した有効率は、化学療法剤マイトマイシン併用例を含む全症例で四四%、約半数を占めるSSM単独療法で三五%であります。マイトマイシンの投与法は、原則として二十ミリグラムをただ一回だけ静脈注射をするものであり、これは現在の化学療法から見ればかなり微量なものと考えます。
 私の言うやや有効例は主観的なものであるとされることが多いと思いますので、これを無効例に入れてもこの成績があるのでありますが、この主張の根拠として私の写真集が役立つと思われますので、わずかな部数でありますが、この委員会に提出いたしました。委員長に御承認いただければ配付していただきたいと思います。私以外の参考人として出席されている諸先生にもお渡し願えれば幸いであります。
 私は、すでに述べました理由で、現時点における審査の対象はしっかりした基礎実験の成績であり、また厳密な対照例をとった臨床治験成績であるものと考え、私の報告書はとうの昔に廃棄されているものと思っておりましたが、今回この委員会に出頭するに当たり、本会に提出する目的で私の報告書の残部を取り寄せて、驚きました。
 第一に、今回の審査対象にこの報告書も含まれていたことであり、第二には、貴重な私の症例の写真が、粗悪な印刷により私の手元に残しておいた写真貼付による第一次報告書のものとは似ても似つかぬしろものになっていたことであります。
 この報告書により桜井先生に効果判定をお願いしたのだとすれば、無効判定を下されたことに異論を唱えるわけにはいきません。症例報告の文章は幾らでも作文できるものであり、写真が不鮮明であり文章しか当てにならない場合は、否定されてもいたし方がないからであります。
 本日の報告書には、私の病院の複写機によるコピーと、急遽私のスライドからプリントした写真を貼付してあるわけでありますが、よりはっきり治療効果を読み取っていただけるものと思います。
 私は、昭和五十四年十月、第三十四回国立病院療養所医学会総会におけるがん免疫療法の臨床というシンポジウムで、国立熱海病院の症例七十六例について報告いたしましたが、この報告では、やはり腫瘤縮小を目安としてはいても、比較的SSMの効果判定に応用し得るカルノフスキーの判定基準を用いて判定を試み、四〇%の有効例を得ております。しかし、ここでも学会報告では余り耳にしない薬効第II群、すなわち腫瘍の発育がとまりあるいは遅くなり、患者は生存するというグループが二八%を占め、SSMの延命効果を主とする薬効の特徴を示しました。
 委員長、別にここへコピーをとって配付していただきたいものをお渡ししてありますが、よろしかったら配付してください。
 私は、昭和五十三年以来、事情が許す限り術前投与の後に手術標本を検討することに努め、また、やむを得ない併発症のために再手術を行った症例の転移巣などの検討を行って、SSMの効果を探索してまいりましたが、著効を認めた標本の顕微鏡写真を第一次報告書の最後に貼付してありますので、ごらんいただきたいと存じます。これは国立病院療養所医学会総会に提示したものでありますが、卵巣がん再発により腸通過障害を来し、よその病院で化学療法剤フトラフール六〇〇ミリグラムを六カ月投与された後、私の症例となった七十八歳の患者さんであります。免疫力を障害しないとされているフトラフールを継続したままSSMの併用を開始、さらに八カ月後に皮下脂肪組織内の転移巣を切除したものであります。
 最後の写真をごらんください。がん細胞は化学療法剤の影響を受けたようには見えません。がん細胞付近にリンパ球と思われる細胞が攻め込んでおり、しかも戦いの跡は瘢痕化しております。
 現在、各施設による基礎実験でSSMの作用機序は各段階で解明されておりますが、この写真は、それらの各段階を介しての最後の像を示しているものと思われますし、また私の第一次報告書の著効例が示した臨床データの写真の変化を理解するのに大いに役立つものと考えます。
 現在までのところ、がんの自然退縮例の頻度は八万ないし十万例に一例とされております。私が報告した百七十四例の中の著効例、十一例だけをとってみても、腫瘍効果を示した症例はもちろん、きわめて異常な状態に陥りながら延命した症例の頻度は高く、しかもこのうちの三例は現在まで十年以上生存中であります。
 不幸にして私は自験例を持ちませんが、すでに市販されている他の免疫療法剤による治療症例と比較していただいても、決して遜色はないものと確信しております。
 多くの偉大な研究の発端は、単なる事実である事例は数多くありますが、私は治験第一例の効果に驚いて、臨床経験わずか六年余の若輩であった私の願いを許してくださった社会保険中央総合病院の外科で治験を始め、現在に及んでおります。しかし、私自身はその効果を解明するための実験は全く行わずに症例を重ねるだけでありました。
 SSMの基礎実験では、周知のごとくすでに多くの成果が発表されるに至り、また臨床的には、東海地区SSM研究班の治験のように、学会の約束に従った上での研究で外科的な立場からその有効性が確認された現在、私は世間にうそをつかずに済んだと安堵しているところであります。
 委員長、東海地区のデータを、先ほど桜井先生が症例が少ないとおっしゃいましたが、これもコピーをとって配付していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 多くの医師がSSM使用依頼の申し出をその意に反して受ける場合は、現代医学の限界を、当面する患者さんに関して告知する場合ではないかと想像されます。これはたとえば手術したってこのぐらいだよというようなお話をしてしまうと、手術するならSSMの方がよかろうと希望するのではないかと想像されます。
 私は当初マスコミに発表された、昭和四十一、二年のころでございましたが、発表された当時を除いて、患者家族にSSM使用を希望されたことはほとんどありませんし、また可能と考えてお勧めする手術を拒否された経験もありません。私自身が治療方針を立て、SSM併用の許可を得て治療に当たり、トラブルもありません。手術不能例にはもちろん使用しておりますが、患者さんの苦痛をやわらげることに役立っているからこそ、それが実績となって、次の症例の家族がまた治験を承諾してくれるものと考えております。日本医大の研究施設に集まる症例もまた同様であろうと思われます。昭和五十一年に丸山先生が出された御本、単行本ですね、あれには私自身が強い困惑を感じました。あれを読んだ結果と思われますが、手術をきらって不幸な運命をたどった症例を私自身も二、三例は知っております。しかし過去十六年にわたって日本医大に集まる患者さんたちが、すべて無知なるがゆえに列をなすものとは考えられません。やはり実績によりその数を増すものと思われます。このことは過去に話題になってやがて消え去った公認、非公認を問わない多くの薬剤のことを考えれば、明らかなことであります。効いているからこそあそこに集まるんだと思います。
 私は一刻も早くこのSSMがごく自然に臨床医の手に入るようになり、その上で各臨床医が自分の治療手段に組み込むか否かを自由に選択できる状態が実現することを強く希望いたします。そうした段階になってこそ、さらにより正しいSSMの評価がなし得るものと信じております。
 以上です。
山下委員長 次に、砂原参考人。
砂原参考人 私は、丸山ワクチンは結核菌の抽出物質ですが、がんに効いてもいいと考えております。しかしいままで集まっている資料からは効くと確言できないという点で、調査会の報告と一致いたします。
 二番目に、私は、丸山ワクチンをこういう社会問題としてしまったことは非常に不幸だと思います。しかし、そのゆえをもって丸山ワクチンを特に厳しく扱ったり特に甘く扱うべきではないという原則は貫徹していなければいけないと思います。
 私は、一番問題なのは、審査で通ったとか通らないとかということじゃなくて、いままでの丸山ワクチンの研究の態様が非常に問題だというふうに思います。それが大変、わらをつかむというので、いわゆる患者の家族の方などに、確立していないのに、つまり研究と治療のけじめがなしに渡されてしまっている。そういうことの中にこういう不幸な混乱が起こって、私は、患者の方々、家族の方々のために一番それを悲しみます。
 現在新しい物質に薬として市民権を与えるのには確立した方法があります。それが始まりましたのは一九六二年、アメリカのキーフォーバー、ハリスという二人の上院議員のつくりました薬事法の改正であります。本来この委員会、キーフォーバー委員会は、薬の価格を調査する委員会であったわけです。ところが、ちょうどそのときにサリドマイド事件が起こりましたものですから、そういう価格の問題よりも薬の効果と安全性がきわめて重要だということによって改正案ができて、他の多くの先進国はこれにならったわけです。日本だけは法律そのものを、去年まで薬事法を改正しないで、許可の手続というようなことでごまかして――ごまかしてと言うと語弊がありますけれども、きていたというようなことも、日本のこういう薬事行政のおくれだと私は思います。
 それで、一九六二年に確立した筋道によりますと、まず先ほど桜井さんがおっしゃったように規格をはっきりして、動物実験をちゃんとして、動物実験をしないで人間に使ってはいけない。人間に使う場合でも一相、二相、三相と、最初は数人から、数十人から何百人というふうに一遍にたくさんばっと使ってしまっては、危険な薬や効かない薬が治療とまぎらわしい形で使われては非常に非倫理的であるということで、そのステップを踏むように決まっているのです。
 丸山ワクチンは安全だとおっしゃいますけれども、それは結果論であって、最初の新物質が初めて人類に遭遇するというときには、これはどういう危険性があるかわからない。動物には効いても人間には全く効かないかもしれないという前提で使われるべきであって、それを踏み越えてしまって、後になって動物実験をやったり、臨床実験のステップを逆にたどったりなさるから、問題が混乱して、こういう不幸な事態に陥ったんだと私は思います。
 それから一九六二年から二年後に世界医師会のヘルシンキ宣言というものが出まして、人間に対する、これは薬だけではありません、あらゆる人間動物実験はどのくらい自由に、どうやってもよろしい、しかし人間を研究材料とするとき、治療研究、薬を与えることももちろんそうですが、それには一定の仕組みを通らなければいけないということがはっきりとうたわれた。
 一つは、これは研究である、治療でないということを明言して患者に与えることと、それから研究者自身が自分の判断で患者に自分の発見した物質を与えてはいけないということです。第三者の委員会に渡して、それがやって、その研究計画を見て、これは科学的、合理的であって、効かない薬を患者さんに与えて患者さんを不幸にしたり危険な薬で不幸にしないということを、本人を除いた第三者が決めなければゴーとは言えない。
 いま薬事審議会にその薬に関係した人を入れてはいけないというような問題が出ておりますが、私は当然だと思いますけれども、問題はその段階にあるのではないのです。最初に人間に、人類に新しい化学物質を与えるときに、そのけじめがついていなければいけないのです。そうしないと今日のように治療かどうかわからない形になって使われておりますものですから、確定していないものが患者さんに渡ると、効いたか効かないかということを判断なさることが、御家族の方なんかできっこありませんからね、ですから、こういう混乱が起こる。
 これは家族の方だけではありません。医者がそういう判断ができないのです。単なる素朴な経験例だけを集積していたのでは、ある人はこれは雨ごいの太鼓だと言いましたけれども、太鼓をたたいたらいままで雨が降らなかったのが降ってきた、太鼓が雨を降らしたというのと同じで、時間的に後で起こったことに因果関係があるかどうかということは、そうたやすくは決まらないわけなんです。気圧が変化して落ちてきたのかもしれませんけれども……
 スモンを思い出していただきたい。キノホルムというのはもう十数年使われていた薬です。こんなスモンみたいなものが起こったのは日本だけです。そして、これはアミーバ赤痢の薬でありまして、外国では旅行者下痢に幾らか使われていますが、それでも効かないということになっておりますし、それを使う場合でも、数日使って数日休むというような原則がちゃんと通ってきたのです。日本だけはどんな下痢にでも、量もたくさんなら期間もたくさん使って、こういうたくさんのスモンの患者を起こした。
 それを許可したのは厚生省ですけれども、別に薬務局長があれにそう考えてやったものではありませんし、製薬企業が、たくさん長く使ってたくさんいろいろな病気に使った方が得だから、もちろんそれは結果的には得したと思いますけれども、やったわけじゃないのです。それは医者が使ってみて、いろいろな下痢にもよく効くという、それは一人でやったわけじゃない、たくさんの医者がそう言うし、危険でないと言うからこそ、企業が得たり賢しとしてそういうようにキノホルムの幅を広げて、量や期間を延ばして、薬務局もそういうもんかいなというのでなさったわけなんです。
 したがって、たとえばはっきりした薬の効果を決めるために二重盲検ということをやります。これは医者の方にも、ある薬がその患者さんに与えられたかどうかわからないようにして、乳糖みたいなものを与えたのか、それを本当に与えたかわからない、医者自身がわからないようにしなければ、医者が効くと思っていれば効くというような判定をするわけですから、医者さえも盲にしなければ――私はいつもそうしなければならぬと言っているのじゃありません。しかしそうしなければならないほど、こういう効果の判定というのはむずかしいものだということです。
 もちろん個々の患者さんに丸山ワクチンなら丸山ワクチンを使って非常に効果があったという症例は貴重ですから、それは無視してはいけません、大発見はそういう偶然のところから出てまいりますから。しかしそれは個別的な偶然的な事実ではなくて、法則であって、いつ、どういう患者さんに与えても害よりも利益の方が多いということを確認するには、臨床試験という手続が必要だということです。そのことを申し上げておきたいと思うわけです。
 時間が来たようですから、簡単に丸山ワクチンそれ自身について一言、二言申し上げておきます。
 第一に、丸山ワクチンでやはり問題になりますのは、先ほどから話がありましたように規格がはっきりしない。同じ強さのものを使っているのか、きょう使ったものとあす使ったものとは違うのか、たまたまそのときの丸山ワクチンは効いたのか、いつも同じ品質のものかという確かめがいま行われている動物実験では確認できていないということ。
 それから、たとえば一日使う量にいたしましても、〇・二マイクログラムだけ使ったり、二マイクログラム使ったり、二マイクログラムの丸山ワクチンと〇・二を交互に使ったり、どうするのが一番よろしいかということを、さっき申し上げた臨床試験の第一相、第二相でそういうことがきちんと決まっておれば混乱はないのですが、たくさんの患者さんにいろいろなものを使ってしまったらもうわからないわけです。なぜ二種類を使うかという意味がわからないからこういうことになるのだと思います。
 それから三番目に、今度いたしました臨床試験の中で特に東北大学でおやりになりましたのは非常にりっぱな試験をおやりになっていると私は思います。しかしそれにもかかわらず、あれだけでは効いたと言えないという結論については私は調査会と同じ意見です。それはやり方は皆さん調査会はいろいろな欠点を指摘しておられますけれども、それはもちろんないとは言えませんけれども、人間のやりますことですから必ずしも完全にはできませんけれども、基本的な問題がある。たとえば丸山ワクチンを使ったときと使わないときは、使えば八〇%治る、使わなければ一〇%しか治らないというふうな大きな差があるならば二、三十例ずつの例を比較してもできるのです。ところが六〇%と七〇%ぐらい、一〇%ぐらいの効果の差を比較しようと思えば何百人という者が使わなければわからないわけです。
 結局ここにある原理というのは、百円銀貨を投げて表が出るときも裏が出るときもある。表ばかり出るときも裏ばかり出るときもありますけれども、何千回、何万回やっていれば裏が出るときと表が出るときと同じになっていくという原理に立っているわけですから、したがって東北大学などは全体としては非常によくやっていると思うのですけれども、あの数で、数だけの問題ではありませんけれども、あの実験のデザインの範囲では効くということは言えない。しかし効くかもしれないという傾向は認められる。けれどもそれは実際にやってみたら効かないこともあるかもしれない。たとえば東海地区の例で申しまして、ある東海地区は封筒法が乱れておりまして指示されたとおり無作為になっていないということは致命的な欠陥でありますけれども、その封筒法でやられたとおりでなくて実際に飲んだとおりに今度は組みかえてやると例数は多くなるわけですね、違反例も入れるのですから。それにもかかわらず、逆に東海地区で使用される効果があるというのがなくなってしまうという、多いためにかえってなくなる、つまりもう少し試験の例数が多ければより真実に近くなっていくということがある。そういう点で仙台の試験などはもう少し多数の例でやれば効かないか効くかもう少しよくわかるようになるのではないかと思います。
 結論といたしまして、私は研究をなさった方の人道的な気持ちはよくわかりますし、それから製薬企業も一生懸命おやりになったと思うのでございますけれども、どうも基本的な筋道をよく御理解なさらないで、一生懸命善意を持っておやりになっているのだけれども、やはりこの段階では効くということは断定はできないのじゃないか。しかしそれは最初に申し上げましたように、ぼくは大きな効果があるとは思いませんけれども、幾らかの効果を証明することはもう少し研究のデザインを苦心すれば出てこないでもないだろう、そういう段階だなと私自身は思っております。
 どうも超過いたしまして申しわけありませんでした。
山下委員長 佐藤参考人。
佐藤参考人 佐藤でございます。
 ただいまの御説明にもありましたように、動物実験と臨床とが前後するということが大変に問題のようでございますけれども、かのブレオマイシンも動物実験が成功しないうちに臨床に使われました。しかしその後で動物実験の追加がありまして、これは調査会までに十分間に合ったのでございますけれども、このSSMはいまのところ十分な説明のつくだけのものはございませんが大変にユニークな働きでありまして、時間がかかっていることは確かでございます。しかしこういう研究は現段階で非常に進歩してまいっているということを申し上げたい、そしてこういう研究の火を消さないでほしいということを申し上げたいのが一つございます。
 それから、従来の制がん剤は直接効果を目標として一次効果を判定することを非常に強調しておりまして、延命効果は二の次であったかと思います。そして多くの症例の中から適当なものを選ぶというふうな利点がございました。しかし今回のものは直接効果がございません。クレスチンとかピシバニールも本当は直接効果はないものだと私は思っておりますが、申請の段階におきましては直接効果をうたわれております。
 今回のものは全く直接効果をうたっておりませんので、したがって延命効果を要求されることは当然でございますが、この延命効果を要求される研究段階におきましてこのチームの編成に敬遠する者が大変に多かったという残念なことがございます。そして提出してもそれが採用されないというふうなこともあったかと聞いております。そのために症例が非常に少なくて困っているわけでありますが、丸山ワクチン研究会の症例は全くこの考慮の中に入れられてないということもございます。これはいろいろ判定や何かがむずかしいということでありましょうけれども、ここに集まる患者はすべて末期の見放された者であるということを銘記すべきではないかと思います。そしてこの委員会の専門の先生方がいままでの薬では確かに参加してその薬の持ち味というものを非常に研究されていたのでありますが、今回ではだれ一人参加せず、その持ち味を吟味された方は一人もいなかったということもございます。
 それから、ただいまの砂原先生の説明にもありましたように、二重盲検とか封筒法というものが現在では大変にいい方法とされておりますけれども、これは胸の疾患であるとか原因がはっきりしたもので、その原因に直接攻撃を与えるようなものに対しては大変に有効であろうかと思いますけれども、がんはこの二重盲検に対しての対象になり得ないと私は思っております。
 それはがんの患者が大変に個性があるということだけではなくて、がんというものはその患者に発生して患者とともに死んでいく非常に変わった細胞、生物でございまして、一人一人が違うというがん細胞の個性というものもあります。そういう二重の個性を持っている上に、さらにこういう丸山ワクチンのような宿主を対象とするものはその宿主の反応がまたそれぞれに違うという、これで三重の難関を突破しなければいけないというふうなことがございまして、こういうものに二重盲検法でただ投与すればいいというふうなことはとても考えられない。
 それから、ただいまの〇・二とか二ガンマをいろいろにやるという方法も、これはやはり患者の反応を見てその投与法を考えながら投与するという非常にユニークな方法でありまして、これはやはり患者不在の投与法ではないということで、こういう進め方もあるということを銘記しなければいけないと思います。
 以上でございます。
山下委員長 以上で参考人各位からの意見聴取は終わりました。
    〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
今井委員長代理 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。山下徳夫君。
山下(徳)委員 まず桜井参考人にお尋ねいたしたいのでございますが、調査会の基本姿勢の一つとして、今回の丸山ワクチンの調査に当たって、私はどうも素人でございますから納得のできない一つに、審査の対象とされるデータの採用の基準ですか、基本的にはこれはメーカーが提出したものを中心に行われるというふうに伺っておりますけれども、これらのものがたとえば従来の例からいたしますと、いわゆるだれもが認める日本の権威と言われるがんセンターであるとか癌研であるとかあるいは駒込病院とか東京医療センターとかございますけれども、そういうところだけに限定されておるのか。この点は、あなたが今月の十七日、患者、家族の会から要求が出た後の記者会見で、日本の医薬品開発はメーカー独自の研究データだけでは許可されない仕組みになっている、大学の医学部や専門医療施設など公的医療機関の協力で基礎臨床データをそろえることが条件であるというふうに述べておられるのでございますが、これによりますと、あくまでいわゆる公的な医療機関に限定されるのでございましょうか。
 たとえば開業医が長年かかって辛苦の末、われわれ素人が見てもなるほどと思うようなものもございますが、専門家のあなた方からごらんになった場合は、開業医というだけでいけないのでございましょうか、その基準についてまずひとつお尋ねします。
桜井参考人 お答えいたします。
 まず最初のことでございますが、製薬会社が薬を開発いたしまして厚生省に申請書を出します段階で、自分のところの研究データだけであってはいけない。公的な、公的という言葉は不適当かもしれませんが、たとえば財団法人でもその中に入っておりますが、そういう機関の実験データを含めて出すということになっております。
 ただし、これは臨床の問題ではございません。臨床につきましては、製薬会社が独自の臨床データを出すということはございませんので、すべて製薬会社が委託した方々の病院のデータでございます。
 これにつきましては、従来、厚生省の内規といいますか、一つの考え方といたしまして、その中にがんの専門病院を含むということになっております。ですからそれ以外の病院のデータがあってはならないというようなことは一切ございませんし、従来の申請書の中にいろいろ個人の病院のデータとかそういうものは幾らでも入っております。ただし、先ほど御指摘がございましたようながんの専門病院のデータが全然ないということは、私ちょっと記憶がございません。必ず入っておるようでございます。
 それから、いま開業の先生のお話が出ましたが、開業の先生のデータを入れてはいけないというようなことは一切ございません。ただ臨床データといたしましては、いろんな条件がついてございます。たとえば一人の患者さんであれば、その人の確診と言っておりますが、組織病理学的診断が確実についてなければいけないということ。それから治療の経過が一定の経過を追うように、たとえばこの薬をこれだけの量で一週間に二回ほど注射して、こうやっていった。つまりどれだけの薬を使ってこういう結果が出たという評価、プロトコルと言っておりますけれども、そのやり方が決まってデータを出していただくこと。それからもう一つは、その間の副作用、毒性、そういうものをその経過においてチェックしていただくというような条件がございます。これに合致しますということは、臨床試験ということになってまいります。
 それで先ほどちょっとお話がございましたけれども、臨床試験と治療というものの間には、私は医者じゃございませんからあれでございますけれども、大変違いがあるように思います。開業の先生は来られた患者に対して全力を尽くして患者のための御治療をなさるわけでありまして、臨床試験という段階になりますと、ただいま申し上げたような一つの制約がどうしてもつきまとってまいります。それで臨床試験というものに対しては、先ほどからお話のありますような強い倫理規定をもってこれを抑えていきませんといけないというような実態があるわけでございます。したがって、これはなるたけ少ない数でデータを出すというのが原則でございまして、治療と臨床試験とは非常に違うものではないかというふうに私は考えております。多くの開業の先生は、患者のために最善の治療をしていらっしゃいますので、そのデータが、あるいは御提出いただきましたときに、そういう点で不十分であるということがあり得るかというふうには考えております。
山下(徳)委員 開業医は一定の条件のもとにはこれを採択するというお話でございます。そこで私がお尋ねしたいのはどういうことかと申しますと、あなたの記事の中で、いわゆる単独療法について一つでも効いたという例があればよかったのだがなというようなことをおっしゃっておられます。しかも開業医は一定の条件のもとに認められるということであるならば、山形県の酒田市の加納医師のデータについて御存じであれば、御存じであるかないかだけで結構ですから。
桜井参考人 そのデータは申請書の中に入っておりませんので、私は拝見しておりません。
山下(徳)委員 これは厚生省段階で午後の質問になるかもしれませんが、御意見として承っておきます。なるほど加納医師は開業医でございますけれども、過去十年という長い間この問題に取り組んできて、そして手術したがん患者の数が三十八人、その中で三十七人についてはあなたが御指摘なさいました条件、いわゆる病理検査について、新潟医大であるとか東北大学の医学部であるとかあるいは酒田市の市立病院ですか、そういう権威あるとみなされるところで行っておられるということでございます。
 ごらんになってなければ結構ですが、そういう条件がかなっておるものについては、今後どういうふうになさるのでしょうか。そういうものならば今後大いに採用してもいいよ、厚生省が云々というお話がございましたけれども、厚生省のこれらのデータの扱い方について、もしも御意見があるとするならば、むしろあなた方の方が学術的な立場でお決めになるのですから、厚生省にあなた方の方から大いに意見をおっしゃってもいいと思っておりますが、この点ひとつ。
桜井参考人 お答えいたします。
 まことに存じないことでございますけれども、ただいま伺いましたことについて一つだけ問題がございますのは、一番最初に私が申し上げました薬の規格の問題が一つございまして、その規格が完成しておりますことが臨床試験の評価の一つの基準になっております。従来も制がん剤の臨床試験を取り扱いますときに、ある薬で、これは合成品ですからはっきりと構造式の決まったものでございますけれども、それの塩酸塩がございまして、それの臨床試験を一部始めましたところが、不安定であるというのでほかの酸との塩に変えました場合に、との臨床試験は規格が変わってしまっておりますから参考データとするということで、審査の対象でなくなったという例もございます。
 これは大変機械的なことで不思議なこととお考えになるかもしれませんけれども、行政的な立場を踏まえました薬事審議会の調査会では、そういう薬の規格というものを決定いたしまして、その規格で行われたものを評価するということが一つございます。十年前に丸山ワクチンはどういうものであったかということについては規格がございませんので、そういう点、古い臨床データは十分参考にさせていただく価値があると思いますけれども、審査の対象からは外してきたというのが慣例でございます。
山下(徳)委員 参者までに承っておきますが、いまの加納医師の各大学に委託した結果によるデータによりますと、治癒率が四七・四%、五〇%に近い数字になっておりますが、このことは御存じであるかどうかという点だけ承っておきたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 先生の発表を存じておるわけではございませんけれども、うわさと言っては失礼ですが、お話は承っております。四十数%の改善率と言えば全く驚くべき数字でございます。
山下(徳)委員 重ねてお尋ねをいたしておきますが、参考人の御答弁で、開業医といえども一定の条件にかなっておればいいよということで私も意を強くしたのでございますけれども、丸ワクに対して扱われてきた面から見ると、いままで非常に白眼視されたという面もないではなかった、私どもはそういう感じがするわけでございます。しかし実際には、たとえば権威あるがんセンターであるとかあるいはまた癌研究所、そこで手術を受けた患者がその後内科的治療を受ける場合には、町中の開業医に委託される、あるいはそちらの方に行って内科的治療を受けるというのが非常に多いと思っておるのですが、この点はいかがですか。
桜井参考人 お答えいたします。
 私はその数的実態をよく把握しておりませんので、がんセンターがどうなっておるのかよく存じません。しかし私の癌研におきましてはそういう患者さんも確かにおられます。多くは地域的理由で、手術が済んで多少軽快状態になりましたら国へ帰りたいというようなことがありますので、そうする場合にはその国の病院に紹介するとかそういう処置をとっております。しかし多くの患者は外科で手術を終わりまして、さらに化学療法を必要といたしますような状態がありますと、癌研の病院の中の化学療法科に移しまして、そこで化学療法を行っております。
山下(徳)委員 時間がございませんので、もう少しお尋ねしたいのでございますが、次の問題に移りたいと思います。
 この愛知がんセンターの中里医師が中心となって投与されたもので、十カ月目のデータを発表になっているが、薬剤投与による生存率の問題ですね。これは丸ワクの併用の場合に、使用した群が使用しない群よりもかなり高い率である。七〇対四七ですか、これは御存じでございましょうか。
 なおもし御存じであるとするならば、最終的にこれは没になっていますね、この資料は。この理由をお尋ねしたい。
桜井参考人 お答えいたします。
 没になったという御表現は私ちょっと違うように感じますのは、その統計的な差を報告が出しておりまして、その報告にあらわれております差というものをいろいろと研究者御自身が解析をしておられるわけでございます。そしてその発表を読みますと、これは胃がんの手術をされました患者でございますけれども、胃がんの手術ができなかった患者では全然差は出なかった。つまり丸山ワクチンの効果は見られなかった。それから、手術はした、しかし完全に手術ができなかったというのを化学療法と丸山ワクチンで比較をされておりまして、ある経過を追っていきますときに、あるポイントでは差が出てくる。それはその差はSSM、つまり丸山ワクチンを使った方が多少いいという数字が出てきておりまして、それは統計学的に有意になっておるということでございます。
 しかしもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今度その患者さんを層別をいたしまして、腹膜転移のある患者とない患者とに分離してその統計処理をしてみますと、腹膜転移のない方、つまり軽い方の、軽いと言っては語弊があるかもしれませんけれども、ない方の患者さんでは差がない。それで、ある方の患者さんでは差がはっきりあるということが先生の御報告の中に書いてあるわけでございます。
 先ほど申し上げましたのはそういうことでありまして、全体で見ますとわずかな差でありまして、その差は数点、この場所、何月目、何月目ではあってもそのほかの月では差がないので、この程度では確かに統計的に有意であっても、医学的に現在のがんの治療の段階で有意義であろうかということの判定で、有意義ではないであろうという結論があるわけでございます。しかし、これを層別しました腹膜転移のある群については非常にはっきりとした差が出ております。
 それで先ほど私申し上げましたのは、そのところの段階では、ただし症例が二十例くらいになってしまいます、腹膜転移のあるものだけにしますと。ですからそこは大変おもしろいところで、そういうところをもう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないかという見解もありましたということを申し上げたわけでございます。ですから、私たちはあの実験をもう少し展開をされましたらば有意が出るのかもしれないということを感じたことを申し上げたような次第でございます。
山下(徳)委員 愛知がんセンターでデータを出された、封筒法というのですか、これは御承知ですね。
桜井参考人 存じております。
山下(徳)委員 これは何か不正があったということで採用にならなかったと聞いておりますが……
桜井参考人 不正というのは言葉が大変不適当だと私は存じますけれども、封筒法の違反と言っております。これは要するに封筒をあけますと、どちらの薬を使うかと二群に分けておるわけでございますから、どちらに属するかということを封筒法でランダムに、無作為に決めていくわけでございます。それがこちらの群でやれ、つまりSSMを使わないで化学療法だけでやるという群でやれといって出たものを、SSMを使う群に移してやるということでございます。それが全体で六十何例でございましたか、ちょっと数を忘れましたが、そのレンジで九例ぐらい起こっておる。
 そしてその間違いでございますけれども、その間違いが、今度はSSMを、つまり丸山ワクチンを使えという指令が出たものが使わないで、使わない方へ入っているのが一例ということで、統計学者が問題にされますのは、封筒法違反というのは、人間のやることで間違いが起こったりしましても、それが非常に偏って起こっておるということが無作為のせっかくの操作をいたしましたことに対してマイナスになる、そういう意味でございます。
山下(徳)委員 私も御指摘のとおりだろうと承っております。ただ、この違反につきましては、どうしても丸ワクを使ってくれという患者の切なる願いがあったということも聞いておりますが、これは違反は違反ですね。違反は違反で結構だと思いますが、ただ、いまあなたも御指摘なさいましたように、違反の件数ははっきりしているのですね。そうしますと、その部分だけ除いて、あとをお取り上げになるということはできなかったのでしょうか。私はそこがよくわからない。
 たとえば私どもの選挙なんというのは最も厳正なものなんですが、無効票がある場合にも、無効票があったから全部だめだと言わないのです。無効票を除いた他の部分については、これはあたりまえに評価すべきだと思う。いかがでございましょうか。
桜井参考人 お答えいたします。
 無効票が――無効票、失礼いたしました。封筒法違反があったためにだめだという判定を下したわけではございません。先ほど申し上げましたように、その論文の成果に従いましてそこに数点の、二点でございましたか、有意の差がある時期に出るということははっきり書いてありますことで、ただ、その差が非常に小さいということを論じているわけでございます。ただ、その背景に、そういうような封筒法違反もあるので、その封筒法違反の大きいほどそういう無作為の比較臨床試験の正確度というものは落ちることはやむを得ないと思います。
 それで愛知がんセンターの報告を拝見いたしますと、そういう封筒法違反のあるものを全部外してございます。外して実験がしてあります。ですからそれは確かにいま仰せのとおり外してあるわけですけれども、外しますと本当の無作為抽出ではなくなる結果になります。
 それから一つは、やり方としましては、そういうふうに……(山下(徳)委員「簡単で結構です、時間がないから」と呼ぶ)はい。
山下(徳)委員 先ほどあなたは参考人としての陳述の中で、動物実験のやり方について規格で不十分であったということをお述べになっている。動物実験の場合は人体実験に比べると三百倍から五百倍ぐらいが妥当ではなかろうかということもお述べになりましたね。
 そうしますと、ここに出ておりますデータによりますと、これはピシバニールですが、最高人体の一万六千六百六十七倍というのがある。あるいは三千倍とか二千五百倍というのがありますが、これはあなたがいま自分でおっしゃった適当な量からすると大変に飛び離れて多い。一体動物の場合には人間の一万六千六百六十七倍という濃度でもってやって、これで直接アタックして効いたんだよということで、そのままこれが人体に適用できるかどうか。
 特に私がお尋ねしたいのは、この一万六千何倍とか三千倍とか二千五百倍というのは、主としてあなたと塚越さんお二人ですか、あるいはもう一人ですか、が実験の結果のものがほとんどなんです。他のこれにタッチされた方のは、こんな倍率は余り出ておりません。特にあなたのが一万何千倍、そしてそれだけ強力なものを使って効いたよと言うことが妥当であるかどうか。私は専門家じゃないから、あなたに専門家として一言だけ承りたい。
桜井参考人 お答えいたします。
 ただいま私が最初の陳述で申し上げましたのは、丸山ワクチンで幾つかのネズミの腫瘍が消えておる。それを拝見いたしますと二百五十倍から三百倍ぐらいのものが多いということを申し上げたのでありますが、しかし、そのとき同時に申し上げましたことは、その倍率が適当であるというのではなくて、倍率が免疫治療剤においては人間の量と大変違っていても仕方がないのだということを申し上げたわけでございます。
 それでピシバニールの場合は、あれは菌体そのものでございます。菌体そのものでございますから、これは薬といいますよりも一つの粒子でございまして、これが生体の中でどういうふうに動くかということについては、普通の薬の用量というようなものと違う概念になってまいります。そういう意味で、あれは動物のある種の腫瘍では非常にたくさんを使い、人間の場合でもたとえば一ユニットを使うような場合もありますし、三十ユニットも使ったりする例もございます。
 そういう点で、私が申し上げますのは、免疫治療剤の場合に動物実験は三百倍、五百倍が適当であるということを申し上げたのでなくて、動物実験の場合、免疫治療剤では動物におけるドーズは人間のドーズ、用量についての予言性は余りない。だから三百でも五百でもそれはいいのではないかということを申し上げたわけでございます。
山下(徳)委員 こういう問題について質疑を繰り返したいのですが、もう時間が余り残っておりません。あなたのきょうの陳述は学界の権威者がどう御判断になるか、それにまつといたしまして、次に、あなたの論文によりますと、クレスチンの臨床効果が二一・五%と出ております。これは大変な数字だろうと私素人でも思うのです、これだけ治癒率があるということは。ところが私が承っておる中では、このクレスチンの二一・五%の結果が出ている同じ研究の中で癌研究所のものは一つも効いてない。ゼロだということを聞いているのです。また東海大学の分もゼロと聞いております。ただ一つどこでございましたか、がんセンターの分については放射線を非常に強く照射したのだけ一例があるということを聞いておりますが、いま申し上げました二一・五%というすばらしい数字が出ておりながら、私が個々にその大学から聞くのは、あれは効いてないんだよとおっしゃる。そうしますと、いま申しました三つの点はあなたの論文の中にどのように整理してあるのでございましょうか。できますればこの問題につきましては答弁とあわせてデータをお願いいたしたいと存じます。
桜井参考人 お答えいたします。
 クレスチンのことにつきましては、調査会におきまして提出されました論文に従って処理をいたしました。そして昭和五十二年でございますか、そのときの評価の方法は日本癌治療学会基準というものを使っておりました。それに基づいて各臨床家から出ましたものを集計をいたしましたものでありまして、調査会においてはこの臨床成績のそこに書いてある書類を調査いたしまして、その基準として癌治療学会基準というものを用いましたのは、二五%の腫瘍の縮小があるということでありますとプラスとするという当時の評価を用いました。それで見ましてそういう結果になったわけでございます。
 で、調査会におきましては、実験的な面につきましては追試もできますし、時間的にもできるものでありますので、おかしい場合には追試もいたしておりますけれども、臨床については提出された資料についてそれを集計をしていく。そしてその臨床上の表のつくり方の誤りあるいは診断のないものというようなものをよりまして落としていくというような操作をして出してきたものでございます。
山下(徳)委員 もう時間がございませんが、ただいまの問題はあなた御自身が開発され、その論文はクレスチンの認可申請に添付されたものであります。このことが委員としての適格性、除斥という問題まで今日論議されておる。
 この問題はおきまして、少なくともさっき申し上げました四つの権威ある機関とかに正式に委託されたものについてはいまの十三名の調査会の委員はほとんど全部タッチしておられると私は思う、委託するのですから、これはいいのですよ。ただ、この丸ワクについては拒否されている。そういう他のものについては全部はだで感じてそして審査されるのですが、この丸ワクについては、そんなものはうちでやらないよというかっこうで拒否された。一体はだで全く感じてない人たちによって公正なる審査ができるとお考えでしょうか。時間がもう四分くらいしかありません。一言、イエスかノーかで結構です。
桜井参考人 お答えいたします。
 そういうことはございません。ございませんといいますのは、臨床試験を依頼されましたときも基礎実験を依頼されましたときも、われわれはそれを義務として受け取ってやるわけではございません。われわれが学問的にそれに興味を持って協力するときに限りますので、実際の委託試験とは違いますので、やらない場合もありやる場合もあるということでございます。
山下(徳)委員 具体的に申し上げます。私はこれを申し上げるのは、がんセンとか癌研というところは丸ワクに非常に拒絶反応を示しておられるんじゃないかと思うから具体的に申し上げるのです。
 昭和五十二年の五月の中旬、丸ワクに好意を持っておられる癌研の医師から実験してみたいので持ってこいということでメーカーが持っていった。これは当時の丸谷という薬局長を通じて持っていっている。これは丸ワクのA、B各百本ずつ持っていっておりますが、その年の九月にあなたは丸谷局長に対して、丸ワクを薬局に置いていると丸ワクを使っているとみなされるからよくないよ、メーカーに返したまえ。こういうことで丸谷局長が直ちにメーカーを呼んで残ったものそれぞれ五十本ずつを返したということでございますが、これはいかがでございましょう。
桜井参考人 お答えいたします。
 私が丸谷局長にそういうことを言ったことはございません。しかし丸山ワクチンにいたしましてもそれらのものでも、癌研で臨床試験をいたしますときには、臨床試験をやるかやらないかということは、これはどこの病院でもいまそうだと思いますが、院長の許可を受けてやることになっております。勝手にやることはできないようになっております。これは私のところだけではないと思います。多くの病院がそうなっておる。そういう注意を院長がされたことは、私知っております。私はそういうことを守っていただきたいということを院長に申告したことはございます。
山下(徳)委員 もう一つお伺いいたします。
 癌研に服部隆延さんというお医者さんがおられますが、あなたは服部医師に対して丸ワクにかかわるのはよくないですよ、おやめなさいということを言われたことがありますか。
桜井参考人 お答えいたします。
 私が申したことでございますか。(山下(徳)委員「服部さんに」と呼ぶ)いいえ、そんなことは言ったことはございませんし、服部医師ははるか大分昔に癌研をやめておられますので、そんな事実はございません。
山下(徳)委員 時間が参りましたので最後に一言申し上げたいと存じます。
 実は私の妹が胃がんで昨年の九月開腹いたしました。全く手の施しようがなくそのまま縫い合わせました。これは公的な有名な病院であります。あなた方が信頼される公的な何百というベッドのある病院であります。その妹の主人はこれまた大学の助教授をやった医師でありますが、初めは丸ワクを相手にしなかったのですが、私の勧めによって使い出した。初め二カ月もつかと言われたのが、それからすでにもう八カ月たっている今日、私が行きますとエレベーターでおりて車のところまで送ってまいります。
 こういう立場からするならばむしろ私自身が参考人という立場でありますが、こういう人がたくさんいると思う。それなのにわずかの治療でもってこれは効かないという判定を下される。がんのごとき宿命的な病気に対してはあなた方の態度はむしろ何かあったならばひとつ助けてやろうというお気持ちにならなければならないのであって、何かあったらこれを認めないようにしようということがもしあるとするならば、私はこれは大変な問題だと思っております。いままで何かしら丸ワクに対して拒絶反応を示してきた。さっき申し上げたように有名な機関は丸ワクを取り上げようとしない。そしてあなた方自身が、さっき申し上げましたクレスチンですか、直接タッチしてこれはいいよというデータをお出しになっているということでございます。
 ほかにもたくさん申し上げたいことがありますし、他の先生にお尋ねしたいことがありますが、そういう人道的な立場から私お尋ねしたのですから、最後にこれに対するお答えをいただきたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 一番最初の御質問でございますが、癌研やその他の病院が丸山ワクチンの臨床を拒絶したというお話でございますが、そういう病院におきましては大概薬事委員会のような委員会を持っておりまして、そこに入っていって、動物実験やその他安全性の試験、有効性の試験というようなものをよく検討いたしましてからでなければ臨床試験はやらないことになっております。がんセンターもそうであります。そのために、そういうデータが丸山ワクチンにそろっていない場合には臨床試験はできないということになっておるわけでございます。
 それから第二の御質問で、たとえばクレスチンとかというものでございましたが、私たちのところでクレスチンの動物実験をやったデータがあることは事実でございますが、しかし薬の審査といいますのは私たちのところでやった動物試験で通るわけでも何でもございませんので、全般の審査が必要でありますし、先ほど申し上げましたように、現在のがんの薬の許可の大部分は臨床データによって決まってくるわけでございます。ですから、その臨床の成績は決して一カ所から出たものではございませんので、そういうものを審査して決めたということでございます。
山下(徳)委員 もう一言だけ言わせてください。
 いま申し上げましたように、私は卑近な私の妹の例をとったのでございますが、このことにつきましては、公的な病院の院長も、主治医も、顕著なものである、効いたということははっきり認めているのです。にもかかわらず、もしもあなた方がおっしゃるように薬効性がないということで製造が中止された場合には、私の妹に対するこの供給はとだえるわけです。ここのところをひとつもう一言お尋ねしたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 私はこういう薬の研究を閉ざそうとか研究がいけないとかそういうことを少しも考えておりません。もちろんそんな立場にもおりませんので、研究は幾らでもお進めいただかなければなりませんけれども、厚生省の調査会の委員としましては、私たちに課せられております先ほど申し上げましたような薬の規格やその他についてのことを評価するのが義務でございますので、そういう意味で、ほかの薬、従来の薬、これから出てまいります薬、そういうものに対してやはり一定の評価の仕方をしておかなければならないものというふうに考えております。
山下(徳)委員 終わります。
今井委員長代理 八田貞義君。
八田委員 まず、時間の関係で桜井先生にちょっとお尋ねしたいのですが、どうか先生簡単にお答え願いたいと思うのでございます。
 いろいろたくさんあるのですが、まずお伺いしたいのは、化学療法剤といわゆる免疫療法剤とを併用した場合、拮抗作用あるいは相殺作用というものがないかあるか、その点ちょっとお答え願いたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 学問的に化学療法剤には免疫の抑制作用がございますので、免疫剤の効果を減少するのではないかというおそれは十分ございます。ただし、最近になりまして、免疫発現をいたしますための体の中の細胞のいわゆるリンパ球の中に免疫を促進するものと免疫を抑制するものとが出てきて、一つの抗原に対して両方が出てきてバランスをとっておるということが明らかになってまいりましたので、ある制がん剤を使いますと免疫の抑制細胞の方が抑えられてかえって免疫が強くなるという例も多々報告されてまいりました。それですから、一概には化学療法剤は抑制的であるとは申せませんけれども、その心配は十分にあると私は考えております。
八田委員 もちろんいろいろな例がたくさんあるのですが、丸山ワクチンと化学療法剤とを併用した場合、作用機作、仕組みが全然違うのですから、時期的にずらしてやるとかしないと、一緒にやったのでは相殺されるのじゃないだろうか。これは川崎医大の木本教授もちゃんと言っておられるのですね。それについて、先生、ちょっと具体的に、簡単でいいですからお知らせ願いたい。
桜井参考人 お答えいたします。
 従来そういう御指摘のような問題がありまして、免疫療法剤と化学療法剤とを併用いたしますときには、大概の場合、できる限りは、縦に使うと申しますが、化学療法剤を使いまして一定の時間の後に免疫療法剤を使いまして、それから化学療法剤というような使い方をいたすことが可能であれば、化学療法剤並びに免疫療法剤の方の条件で可能であればそういうふうに使うべきであるということが、学界では言われております。それから事実そういうふうにやっておる例もございます。
八田委員 時間がありませんから次に進みますが、比較試験で東海地区の封筒法の試験について、先生、大分違反が多いので問題にされているようなのですが、この封筒法の試験というのはお医者さんにとってはある程度の違反というのは常識としてあるのだ、こういうふうに見られているのですね。それを先生は今度は非常に大問題かのごとく考えられまして、しかもまた、それは全体の確実性、信頼性に欠けるのだというまでに強く言われておるようですが、今度の愛知がんセンターの成績につきまして封筒法違反をどうしてそんなふうに強く全体の信頼も裏切られるというふうにお考えになっておるのか、それについてちょっとお知らせ願いたいのです。
桜井参考人 お答えいたします。
 信頼性が欠けるという表現はよろしくないかもしれませんが、その封筒法の違反例はあの例では全部排除して計算がしてございます。ですからそれをデータとして私たちは検討させていただいたわけでございます。そういたしますと細かいところに差が出てくる。ただし、研究者のおっしゃいますように、腹膜転移のあるなしに分けていくと、ない方では全然差がないということも著者、研究者が申しておられることであります。それで腹膜転移のある方だけでやってみると非常にはっきりとした差がある。これも著者がおっしゃっていることでございます。それを私たちは先ほど申し上げたように評価をいたしました。しかし、その背後にそういうこともある。
 そして封筒法違反ということは起こり得ることであるそうであります。ですけれども、それが非常にアンバランスに起こってきますと、いまも申し上げましたように、片方が九で片方は一、総数は六十ぐらいでございますので、そういうふうに起こってきますと、この比較臨床試験の本質であります無作為の層別ということに数学的な傷がついてくる可能性がある、こういう意味で申し上げましたので、違反があるから信頼できない、違反があるからあのデータはだめだ、そういう意味ではございません。
八田委員 先生、簡単にお願いしたいのですが、違反が非常に多いというふうに言っておられるのですね。これで違反が多いと言っておられるのですが、実際に愛知がんセンターはそれを削除しておるのですね。その違反と言われる部分だけはもう削除して取り除いてそして成績を出しておられる。しかも、先生、二時期において有意の差がある、こういうふうに言われておるのですが、どうも全般的に見て差がないのだというふうに言われておるのは、どういう点を指してそういうふうに言われるのですか。
桜井参考人 お答えいたします。
 差を取り除いてデータを出しておられますので、違反を取り除いて後に残ったもので出しておられますから、それは一つのやり方であると伺っております。私は統計の専門家でございませんが、調査会では統計の専門家を呼びまして参考人として検討していただいたわけであります。ただ、それは、封筒法違反が多いということでなくて、偏っておるということです。そうなりますと、片方が九で片方が一ということになると本当の意味の無作為層別になっていない。ですから比較臨床試験の基本にそれは欠点が出るわけでございます。そういう意味でございます。しかし、もう少し計算の仕方もございまして、間違ったのはそのままそっちへ入れてしまうというような計算の仕方もございますが……(八田委員「時間ですから」と呼ぶ)
今井委員長代理 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
今井委員長代理 速記を起こして。八田君。
八田委員 いま、取り除いた成績について、それはいいのです、取り除いた成績についてはいいのだけれども、しかし、それについて全般的な問題について傾向的には有意の差はないのだ、こういうふうな説明がちょっとあったように思うのですが、それをどういうふうにして確証されたのですか。
桜井参考人 あの報告を見ますと、有意の差が二点で出ております。これは動かせない事実だと思います。それはいまの封筒法違反を取り除いた実験では出ておるわけでございます。ですけれども、結局有意の差というものは統計的なものでございまして、それだけの有意の差を一体医学的にどういう意義があるかということを断定することは、これは臨床家の判定にまたなければならないわけでございます。そのために調査会におきましては、調査会の臨床家が検討いたしまして、この程度の有意差というものは余り現在の治療段階では意義がない、そういう調査会の意向を特別部会に上げて、特別部会の判定にまったわけでございます。
八田委員 私の言うのは、先生、有意差がないんだということはどうしてですか。愛知がんセンターの成績は、佐久間教授もこれは十分妥当だとはっきりこう言っているのですよ。妥当だと言った成績を先生が有意の差がないんですと言われるのは、調査会の意見ですが、調査会としてどうして有意の差を否定したのですか、それをちょっと御説明ください。
桜井参考人 お答えいたします。
 有意の差がないということを調査会は答申しておりませんので、有意の差があるけれどもそれが非常に少ないので、臨床上、有意義ではないというのが調査会の判定でございますので、これは調査会の臨床のお医者さんの考え方でございます。ですから、ここにはいろいろ問題があると思いますので、調査会としてはそういう資料を添えて特別部会の審査を待ったわけであります。それで特別部会の先生たちもその点を御検討になった。これは有意義であるかないかはわかっております。
今井委員長代理 重ねて申し上げます。
 各党ございますので、時間だけはお守りください。
八田委員 もう一問だけ、大切だから。
 先生、私がお伺いしたいのは、せっかく愛知がんセンターが出したデータですよ。しかも違反は全部取り除いてやった成績ですよ。しかも佐久間教授は非常に妥当な成績だと言っているのです。ところがそれがある時期においては有意の差があるが、全般的に見てどうも有効というふうには考えられない。どういうふうな実験をされたのですか。どういうようなお考えでやられたか。非常に大切なんですよ。これはざっくばらんに話してほしい。
桜井参考人 お答えいたします。
 統計的な有意差というものが若干の時点であるということは、専門家に見てもらいまして、調査会で確認をしております。その若干の層、たとえば全経過の中で四カ月目に一群の方はどう、二群のところで何人かの人が生き延び方が違うということでございますね、それが有意であるということ、その次の時点になると同じになってしまうけれども、またその先でもう一回そういう時点が起こる、こういうところでそこの有意性を計算すると有意であるということは、私たちも参考人の先生の計算によって確認しております。
 しかし、そういうことが臨床上に有意義であるのかどうかということ、そういうことにつきましては、参考人の、つまり統計学をやっておられる先生は、これは臨床医の判断に任すということでありまして、その価値については臨床医が判断をしたわけでございます。
八田委員 桜井参考人、この点非常に大切なんですよ。どうして、せっかく愛知がんセーターが出した成績、有意の差を出した成績、しかもこれは統計学者としての佐久間教授も非常に妥当であるというふうに言っておられるのです。その成績を調査会で全般的に見て有効と判断できない。これはどういうふうな方法でそういうふうに判断されたのですか、そこを先生、言ってくださいよ。そうしないと、何回も質問されることになりますよ。大切なところですから、それだけ言ってください。
桜井参考人 お答えいたします。
 その点は、佐久間教授が参考人として計算をいたしまして、佐久間さんの意見でございます。たとえば層別のときに九名の違反が不均衡に起こったというようなところは、やはりこのデータの信頼性に欠けるところが出るというのは佐久間教授の意見でございました。
今井委員長代理 八田委員に申し上げます。大変失礼……
八田委員 大切な問題ですから。
今井委員長代理 大切であろうと思いますが、やはり時間は守っていただきたいと思います。
八田委員 守ります、守ります。
今井委員長代理 もういけません。
八田委員 もう一問だけ。
今井委員長代理 では、時間を限りましょう。もう一問だけ許します。八田君。
八田委員 桜井先生、この点だけひとつ……。そうしないと、何か委員長とけんかしなければならぬですよ。これは大切な問題なんですよ、先生。愛知がんセンターの中里さんに対して、信頼性に関係いたしますよ。そういうふうに有意の差があるというりっぱな成績、それが統計学者に頼んだらばだめになった。どういう方法でやられたのですか。その点だけはっきり言ってくださいよ。その一問だけでいいですよ。これはこういうふうにやったのです、ところが有意の差がなくなったのです、そういうふうにおっしゃってください。
桜井参考人 お答えします。
 統計的な有意差は数学的にありましても、その差が非常に少ないものでありましたときに、それが臨床的に有意義であるのかどうかということは別の問題であるという立場でございます。それは臨床医が判定をすることである。佐久間教授は数字をそこまで出しまして、あとは、この問題のプラスかマイナスかということは現在の医学、がんの治療の実態の中で、その値が数学的に有意でも、有意義であるかどうかは診療医が決めることであるというのが佐久間先生の意見でございました。
八田委員 非常に納得できません。桜井先生、どうして決めたか納得できないですね。質問は、時間が来たので終わりますが、桜井先生、本当に納得できない御答弁であったので、また改めて質問するようにいたします。
今井委員長代理 小林進君。
    〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
小林(進)委員 私は、医学の問題は全く素人でございまして、なおかつ言葉を知りません。あるいは先生方に失礼なことを申し上げるようなことがありましても、ひとつあらかじめお許しをいただきたいと思うのでございます。
 社会党でございますが、社会党は、この丸山ワクチンに対しましては党議によってこれを保険薬として採用すべきであるということを決定をいたしております。その決定に基づきまして昨年末、わが党の飛鳥田委員長が鈴木総理と党首会談をやるときに幾つかの重点項目を並べましたが、その中で、この丸山ワクチンを早期に採用することも党首会談の重大な項目として話し合いをいたしました。これに対して鈴木総理も、これを受けて、努めて善処をする、こういう確約をされておるのであります。同時に、当時の厚生大臣でありました園田直氏にもこの党首会談の内容をそのままぶつけて話し合いをしたときに、園田氏も、ともかく丸山ワクチンは無害である、これは先生方も証明になっておる、それからもう毎日数百名が生きるか死ぬかという生命をかけてその薬を得るために付属病院まで行って狂奔をしているというこの事実、この明らかなる事実は黙視できないのである、これをあえて意地悪く、あるいはまたほかの考えで拒否するようなことがかりそめにもあるとするならば、これは人権問題であり、人道問題であるから、努めて善処いたします、こういう確約をされておるのであります。ところが、どうも総理大臣、前厚生大臣の約束どおり事が進まないのが非常に残念でありまするけれども、そういう立場でひとつ四人の先生方に御質問を申し上げたいと思います。
 何しろ限られた時間でございますので、かいつまんで申し上げますが、まず、桜井欽夫先生には三つの問題についてお伺いいたします。
 いま私の手元に抗悪性腫瘍剤調査会のメンバーの名簿がございます。当社労の委員長からは資料の用い方について激しい御質問がありましたが、私は資料採用の問題の前に、この調査会の人的構成について御質問いたしたいと思うのであります。
 十三名を拝見いたしますが、この中ではいわゆるクレスチン、これは同種の薬でございますが、それの資料をみずから作成をした人が二人も三人も含まれておる。座長のあなた自身も、このクレスチンの資料を作成する重要な役回り、みずから答案を書いてみずから点数をつけていらっしゃるという役割りをしていますが、そのほかにも、あるいはこの中で塚越茂先生しかり、太田和雄先生しかりであります。なお、そのほかに、丸山ワクチンについて最も明確に反対意見を表明していられる古江尚先生ですか、これもわれわれの調査によりますと、ピシバニールの資料の作成をしておいでになる。こういうふうに一人一人調査いたしますと、第三者として公平な立場に立つという人はないということを言わざるを得ないのであります。
 そこで私はお伺いいたしますが、この十三人の中で丸山ワクチンというものを肯定する立場でいらっしゃる方が一体何人いらっしゃいますか。これが一つ。
 しかもまだ、その中で一体この丸山ワクチンというものを、あなたはさっき基礎をやられた方が六人、臨床が六人、それと座長を含めて十三人とおっしゃったが、事実上丸山ワクチンをみずから研さんをし、臨床された調査会委員の方が一体いらっしゃるか、いらっしゃらないか、お聞きしたい。私の調査によると、みんなもうこれは、何といいますか、食わないうちにあれは水だとかあれは効果がないとかいう反対の人だけが集まっている集団なんだな。
 特に申し上げたいが、これは午後の厚生省の部で私は申し上げる。厚生官僚なんというやつはけしからぬやつなんでありますが、この中で同じようなのが、国立衛生試験所の毒性部長だとかあるいは国立病院医療センターの外科部長だとかいるが、大体国立といえばいよいよ厚生省の指揮下にあると見てよろしいが、その中でも、この丸山ワクチンなどというものを真剣に実験し、調査をし、その成果を上げていらっしゃる、御本人を前にして悪いですけれども、梅原先生も同じ国立熱海病院にいらっしゃるんだから、反対の者を入れるんなら賛成の者も入れて均衡をとってしかるべきじゃないか。なぜ入れない。こういう一方的な、全く反対の偏向学者の集団をつくり上げておる。ここに私はまず問題があると思うのでございまして、こんなことをしゃべっていると時間がなくなりますから言いますけれども、この十三人の人たちが本当に丸山ワクチンというものを臨床し、治験とあなた方はおっしゃるかもしれませんが、治験をされた、そういう経験の上に立っていられる方がいらっしゃるかどうか、それが一つ。いいですか、あなたに対する質問を三つ持っているのです。これが一つです。
 第二番目に、皆さん方先ほどから東北大学のこのたびの実験資料は非常にりっぱであるというおほめの言葉がありましたが、その東北大学の後藤教授がお出しになった資料をあなたたちは素直に解釈をしてない。
 東北大学医学部教授後藤由夫、SSM研究論文執筆責任者の野村暢郎というのですか、この方が厚生省薬務局中央薬事審議会抗悪性腫瘍剤調査会の座長桜井欽夫殿ということで、そして自分たちの出した資料をあなたたちは正しくそれを採用していないという、「発言に対する異議申入れ」というものがちゃんと文書で出ている。
 それは一体内容は何かと言えば、時間がないから残念でありますけれども、この東北大学でお調べになりました二百十二人の末期的がん患者をいわゆる丸山ワクチン、化学薬品と両方をやって、その結果が、化学剤と丸山ワクチンを投与した者は、一年半たったけれども三人生き残っておる。片っ方、皆さん方が許可した化学薬品を与えた者は、一年半たったら一人も残らないで全部スーラスーラ。スーラスーラというのは中国の言葉で死ぬということであります。死んだということであります。みんな死んでしまった。けれども丸山ワクチンと化学薬品を併用して与えた者は三人通ったという、その資料をあなた方は努めて過小評価をしておる。その評価の仕方が納得できないと言って後藤教授が異議の申し立てをお出しになっている。
 実に私は貴重だと思うが、しかしあなた方はそれを半分だけ訂正された。たった一人の末期の手術もできないがん患者が生き残っておることだけは認めたが、他の二人はまだ軽症のがん患者だというような理屈をつけて、あなた方はこの異議の申し立てを採用されてない。
 前向きで善意に解釈か、悪意に解釈か。これは天地の開きがあるのですよ。百人ですかあるいは二百人ですか知りませんけれども、三人も一年半も命を長らえてくるというその効果は大変なものだ。キリストは何と言いましたか。九十九匹が正しく行っても一匹の迷う羊がいたらこれを助けろ。ましてや三人ですよ、三人も一年半も命を長らえている。この効果は実に甚大でなければならぬが、それを認めない。これが一つ。なぜこれをやらぬのか、これは第二問です。
 第三問として、これは私も何回かお会いして、この問題については私の非常にいい友人の東大の篠原教授以下六人の方々が署名であなた方をやめさせろという厚生大臣に対する陳情書、さすがに学者の書いた文章ですね、一分のすきもない、りっぱなものであります。
 その中には、あなた方はクレスチンだ、ピシバニールだ、みんな薬屋のひもつきじゃないか。そんなもので一体公正な判定ができるか。人の生き死にに関する問題だ。どこの世界にあったって、反対者がいれば賛成者、中立の第三者というものを構成して物を審議するというのが国会におけるわれわれの常識です。ところが、あなた方の調査会とか審議会だけはこの常識が通らない。なぜ通らないかというと、がんに対する学者が少ないからだ。何を言うか。この丸山ワクチンを肯定する人たちも山ほどいるのです。この人たちを厚生省もあなた方も、あれは学者じゃない、専門家じゃないと言っている。まして臨床の現場においてこつこつと人の命を助けるために働いて、三十六も三十八もちゃんと科学的なデータをつくり上げて、そしてそれを厚生省へ提出している山形県の名医もいらっしゃいますよ。われわれから見ればこれこそ本当の学者であり、本当の名医であると思うのだ。厚生省は、あなた方は、どうした、ああ開業医か、開業医のデータなんというものは机の上にほうり上げてそのまま用いない。一体医者の権威と医者の学問と医者の専門を否定するものはだれだ。われわれじゃない、あなた方自身じゃありませんか。医者がみずからの同僚、みずからの友人、みずからの仲間の研究をみんな否定しているのです。そして自分たちだけ天皇さんになったつもりで、自分のやることだけが正しいと思っている。そのやり方はだめです。一体なぜそういう人たちのこの真摯な態度をあなた方の研究の中に反映させられないのか、これが私のあなたに対する質問ですよ、いいですか。
 もっと言いたいことがありますけれども、いまのこの篠原教授を中心にする申し立て書を一体どうあなた方は取り上げるかということです。
 それからいま一つです。あなたは村山雄一という阪大の教授を御存じでございますか。あなたの先輩ですか。(桜井参考人「違いますけれども存じております」と呼ぶ)そうですか。まあ、よろしゅうございます。この村山さんがやはり丸山ワクチンと同じようにいま結核菌からワクチンのBCGを……(「山村さんです」と呼ぶ者あり)山村、山村雄一。村山じゃない。村山さんは厚生大臣でございます。間違えました。山村雄一でございますが、その人が結核菌からワクチンをいま研究されている。BCGでございますかなここから新しい免疫のワクチンをいま研究中である。
 そこで、この人の研究に丸山ワクチンが邪魔をする、だからこれを抑えるという、そういう学会の、何か聞くところによりますと村山雄一教授は(「山村」と呼ぶ者あり)村山か。あ、山村、山村。どうも村山君とは選挙区が一緒で朝から晩までこれに脅かされているものでありますから、ついどうも習い性となりまして申しわけございませんけれども、その山村でありますが、近くいまの医師会の武見先生が引退されると、彼がその後の日本医師会の会長にあるいはなるのではないか、有力なる候補者の一人であるという風評も聞いておりまして、なかなか医学界のオーソリティーでいらっしゃるという、その人がいまこのワクチンの研究中である。
 そこで、どうも丸山ワクチンなどというものが出ると邪魔になるからこれを抑えるという、そういう一般の風評があると言われますが、私はいまの山村さんのそのワクチンが近くあなたの調査会に持ち出されるような見通しがあるのかどうか、承っておきたい。
 それから、これはあなたではありません。あなたではありませんが、丸山ワクチン、この丸山さんに、おまえはこれを本当に学会から認めてもらいたいならば、いまのこの山村教授のところへ行って、山村さんとひとつ、まあ軍門に伏せとは言わぬけれども、門へ行ってそこでひとつ共同でこの薬を開発するという手続をとられたらいかがですか、そういうことを極力進言をした。これは梅原先生もよく御存じのはずだと思いますけれども、こういう事実を丸山さんが断られてから大変げきりんに触れて、これが今日の混迷を来しておるもとであるというのがもっぱらの風評であります。風評ですから、これは風評にすぎないのかどうかお聞かせをいただきたい。
 時間がありません。これがあなたに対する質問、いま四つです。よく覚えていただきたい。
 それから、これは梅原先生にお伺いいたしますけれども、文藝春秋の八月号、あれはあなたのことを中心にずっと丸山ワクチンのことが書いてありますから、あなたはお読みになったと思いまするけれども、ここに切り抜きがあります、この中には、あなたは日本外科学会に行って二回も丸山ワクチンの、あなたの経験をせられたその事実を中心にして報告をせられておる。なお、その他方々に報告せられておりまして、あるいは七一%とか、数字は細かく言いません、六〇%とか有効率がある、効果があるということを発表せられておる。いまもこれに盛られた文藝春秋の八月号の記事に重大なる間違いがないかどうか、大体事実を報道しているとあなたはおっしゃるのか、私は所見を聞きたいと思うのであります。
 私はあなたの勇気に非常に驚いているのであります。この大ぜいの中で孤立を守りながら丸山ワクチンの有効性を至るところの学会で堂々と論じておられる。あなたは勇気があります、ごりっぱであります。心から敬服をいたしまして、その御意見を承りたい。
 私は第三問日に、時間がありませんから、もうやめろやめろと言っておりますから、三問目に砂原先生に申し上げる。
 あなたは、丸山ワクチンの有効無効は別として、これを患者に投与するまでのステップ、段階が少し間違っている、やはり人間の命に関することだからステップを踏んでいくべきだというお話がありましたが、それに関連して、丸山ワクチンは五十一年に申請をしていま五年たっているけれども、まだ資料が足りない、あるいはアメリカ式の臨床実験書を添えてこいとかと言われているが、この先生のおやりになったクレスチンはわずか一年でもう厚生省の関門を通過しておりますね。それから、ピシバニールはまだ三年ですか、二年半でこれは許可になっておるわけですが、私どもが集めました資料あるいは専門家から聞いたところによりますと、その認可をする条件が違っていると言う。なぜ丸山ワクチンにだけこういう新しい過酷な資料の提出を求めているのか。むしろ五十五年度から、ピシバニールあるいはクレスチンにも要求しなかった、新しい最も困難にして手数を要するそういう実験資料の提出を要求いたしておりまして、大衆の側あるいは使用する側から見れば、むしろこの要求は非常に不公平だ、こういうことが言われておるのであります。
 先生のお話を聞きますと、何か丸山ワクチンだけがどうもステップを踏み違えたようなお話だったのでございまして、話は逆じゃないかというふうに私は考えたのでございますが、この点をたとえて言いましょうか、丸山ワクチンは申請から五年もかかって、しかも五十五年夏から急にアメリカ流の臨床実験における生存率データを義務づけた、そして急に認可の基準を厳しくしてしまった。これを適用すればピシバニールもクレスチンも全部落第するだろうというのが、これは他の専門医、私じゃないのです、専門医の先生の考え方なんですから、この問題についてひとつお聞かせ願いたい。
 もう質問時間が来たと言いますから、委員長、これで終わりますが、私は最後に佐藤博先生にお伺いいたしますけれども、先生は、動物実験と人体は違うぞ、ましてがんは生体から生ずる、個人個人も差があるし、人間の質も違うのだから、そう一律一体にはいかないのだ、人間一人一人の体質、資質がみんな違うように、がんの質も内容も違うのだから、しかも先生の長い基礎学問ですか臨床によりますれば、まあ二〇%ぐらい効用率はあると先生はおっしゃるから、やはりこれは保険薬として採用すべきではないかという主張をされておる。私は実にりっぱな名言だなと、心から敬服をいたしておるのでございますが、こういうことについて改めて先生の御所見を承りたい。
 以上、四人の先生方に御質問を申し上げました。
山下委員長 まず桜井参考人から御答弁願いたいのですが、質問は四方になされております。小林委員の質問だけで持ち時間はすでにオーバーいたしておりますので、ひとつ要領よく、桜井参考人、少し御丁寧過ぎるきらいがありますので、どうかひとつ、その点特に配慮を願います。
桜井参考人 お答えいたします。
 一番最初の質問は、調査会の人員十三人がどうして選ばれておるのか、その中にいろいろな薬に関係しておる者がおるではないかということであったと存じます。
 この調査会の人員の選択といいますのは、これは厚生省で人名を選びまして、それはたくさんの数を選びまして、それを大臣が指名をされるという形でございます。私がたしか昭和五十二年に調査会に入りましたときにはすでにその構成ができておりましたが、さらにその後で数人の方が御参加になっております。それは、やめる方が出てくるからでございます。この選択に当たりましては、制がん剤の専門家に来ていただくということになっておりますので、臨床家といえども基礎の実験といえども、調査会に入ってくる薬には何らかの関係ある者がおると思います。私自身もそうでございます。
 しかし、たとえばクレスチンの例を挙げられましたけれども、私たちはクレスチンが動物のがんに対する効果がこうであるという実験を出しておりますけれども、クレスチンの審査資料というものは膨大なものでございまして、規格から毒性から安全性、催奇性、そして臨床のデータがその主力になるわけでありますが、そういうものに比べますれば、各人が担当いたしております量はきわめてわずかなものであります。それで、その部分につきましては、調査会では皆良識を持って、主張をするようなことはしておりませんので、それで今日まで来ておるわけでございます。
 もちろんそういうお疑いがあるということでありますれば、これに対しては何らかの方法がとられてしかるべきと思いますし、私もそれはやめた方がいいという御意見等ありましたらいつでもやめるべきであると思っております。
 それからその次に、後藤教授の東北大学のデータについての御質問がございました。東北大学のデータは、ごく簡単に申し上げますと、消化器がんでございますけれども、胃がんが大部分でありまして、そのほかに膵臓がんとか胆管がんとかいろいろなものが少数まじりまして、そのほかに肺がんも三例ほどまじっておるという集団でございます。それで、私たちはやはり治療の経過とか薬の使い方、それから効く薬というものも皆、膵がんとか肝がんとかいうのと違う。肺がんに至ってはもちろんそうでありますので、これはやはり胃がんだけで統計を見た方がいいのではないかという結論でございました。後藤教授も同様にそういうお考えであったと見えまして、胃がんだけの集計をしておられます。
 それで、後藤教授の申請書を拝見しますと、胃がんでは差はないという結論が申請書に書いてございました。しかしその中で、問題になりましたいまの点は膵臓がんがあったのでありますが、その膵臓がんの記載を拝見いたしますと、確実な診断つまり組織診断がしてない、マイナス、それから転移マイナスという記載で提出をされておりましたので、これはそういうものとして処理をし、転移がなし、そして組織診断がなければ、そして五百日からの生存だと、もしかすると慢性膵炎ではないかという可能性があるということを申し上げたわけであります。
 しかし、調査会が終了しました後になって後藤教授から、組織診断ができた、それから肝臓に転移が出たという御報告がありましたので、その段階ではもうがんであることは間違いありませんので、特別部会の段階でこれをがんとして訂正をいたしました。
 それからもう一つは、II期というのは、これは申請書に後藤教授が書かれていることでありまして、胃がんの中にII期が何人かございます。それで、私たちの調査会の臨床の先生たちは、もしII期の胃がんであれば手術ができるのではないか、手術不可能例を対象としたと書いてあるけれども手術ができるのではないかというので、そのアンケートを出しました。そうしまして、特別部会の前になりましてそのお答えが返ってまいりまして、II期というのはこういう理由で手術はしなかった、しかしII期と書いてございまして、ただ高齢のため、患者が手術を拒否したためというふうに書いてございますので、私たちはやはりそれはII期として計算をいたしました。御申請のとおりであります。
 それから、もう一つの山村教授のことでございますが、山村教授は私の尊敬する学者でございますけれども私の先輩ではございません。しかし、山村教授はいま御指摘のような免疫の研究をしていらっしゃいまして、これがいつ出てくるかはわかりませんが、これはすでに三年前からただいまの比較臨床試験を始めておられます。比較臨床試験には時間がかかりますので、実はことしじゅうにはそれが完了するやに伺っておりましたけれども、何かこの間の御発表では、それではまだ完了しない、まだ一年ぐらい続けなければならぬというお話でございました。そういうことは私は耳で聞いたことでございます。いつ調査会に出てまいりますか、それは存じません。
梅原参考人 文春の記事が事実かどうかという御質問だったと思います。
 訂正事項が二項ほどあります。
 第一例は感染で死亡したと。三輪先生は長い間けんか相手であり、仕事の仲間でありましてよく知っておりますが、彼はいまや脳外科部長兼任作家でございますので、多少書き違えたところがあるらしくて、あれはがん腫でございます。私の先ほど提出しました報告書に写真が載っておりますが、あれは最後の段階でありました。最初第一例でありまして、写真で克明に腫瘤の大きさを記録するのをちょっとためらいまして、最後の写真を、何といいますかセロハンみたいなものに腫瘤の大きさを撮った写真はございますが、現物の最後の写真は、あれはみごとな腫瘍腫でございます。
 それからもう一項目、中山教授の名誉にかけてここでは訂正しておかなくちゃなりません。私のあこがれの的であった中山教授が私のところへお見えになったように書いてありますが、あれも作家の修飾でございまして、確かに河合良成さんがあの当時、第一報、外科学会に発表した直後に中山先生にお会いしてこの薬の効果を説明し、治験をやっていただいたらどうかというお話がございました。しかし、当時私は、私のような青二才が先生のところへ出しゃばって行くのは無礼に当たる。よって、丸山先生が退院されてから大物同士でお話ししてくださいということで、あの項目も訂正したいと思います。(小林(進)委員「中山さんがあなたに電話したと書いてある」と呼ぶ)それは間違いです。私は謙虚な男です、野蛮ではありますが。
 先ほど外科学会に発表したのは事実かとの御質問ですが、ここに外科学会の会誌の抄録のコピーがございますが、お入り用でしたら提出いたします。
 第一報だけではつぶされる可能性がある。そこで第二報――第一報は名古屋でしましたが、第二報は翌年金沢でいたしました。これはひとえに学会長、名古屋の橋本義雄教授、金沢の占部教授が寛容に私の演題を採用してくだすったたまものだといまでも感謝しております。
砂原参考人 ピシバニールでしたか非常に早く許可になったけれども、丸山ワクチンは三年もかかるのはとおっしゃるのですけれども、先ほどから申し上げましたように、私は丸山先生も個人的によく存じ上げているしするのですけれども、やはり新しいこういう薬を開発するという手続をちゃんとなさる準備がなかった。それから会社の方もそういうことに対して、恐らく新しい製品の開発の経験がないのでしょうが、それでデータがそろっていなかったということだと思うのです。確かに私たちが見てもそうなんです。
 ですから、クレスチンや何かは、それは桜井先生がおやりになったのかどうか知りませんけれども、それはそろっていたから早いのは当然で、むしろ私が申し上げたいのは、さっき申し上げたように、五十一年の前から十何年もおやりになっていて、その間に動物実験や何か当然やるべきことをおやりになっていないで、不完全な形で五十一年にお出しになったというのは、ずいぶんむだなことをなすった、時間の空費であったというふうに私は思います。
 それから、臨床試験をこの場に及んで丸山ワクチンいじめのために持ち出したんじゃないか、そうはおっしゃいませんけれども、似た御発言なんですけれども、実は臨床試験というのを日本へ持ち込んだのは私が最初なんです。
 私は本来は結核の医者でございまして、がんのことは余りよく知らぬと言っちゃなんですが、結核の場合もがんの場合と同じように、いろいろな大学の先生がいろいろな薬をつくられたわけですよ。動物実験はやった、そして自分で効いた効いたとおっしゃって、そのために気の毒な結果、患者は家屋敷を売り払って非常に悲惨な目に遭っている。私はそれを見て、そんなものはだめだ、お金があるなら牛乳や卵でも買って安静にしていなさいということを口を酸っぱくして言った。その経験が私の中にあるわけです。
 ですからがん患者の方もそういう目に遭わしちゃいけないというふうに思うので、私は臨床試験をきちんとおやりにならなければ、ドラマチックな症例というのは、それは無視してはいけないけれども、それだけでは法則にはならぬのだからと申し上げたのですけれども、なかなかお聞き入れにならなかったのですが、この免疫療法剤が出ましてから、これは非常に緩徐なものですから、結局、がんが小さくなったとかなんとかいうことではうまくつかまらないものですから、これでなにしたのだろうと思うのです。
 しかし、私、記憶がきわめて正確とは申しませんけれども、ピシバニールの論文の中には患者についての生存曲線というのがありまして、それは、丸山ワクチンみたいにところどころちょっと有意差になるけれどもあとはだめだというのではなくて、もっときれいな、後になるほど開きが大きいものがちゃんと出ております。それからクレスチンは、がんの患者についてもあったかどうか私はよく知りませんけれども、動物実験について生存曲線がもっときれいに出ております。
 ただ、私は、先ほどの小林議員の御質問の最後におっしゃったことに答えるといたしますれば、だから丸山ワクチンをいいかげんに通せとおっしゃるのは論理の逆立ちであって、それならクレスチンやピシバニールをやめさせろと言えばいいわけだと私は思う。それで、そのためには、先ほど申しました、日本で言いますと昭和四十二年の新薬の取り扱いの一つが変わりましてから、再評価ということをやっているわけです。そして去年の新薬事法で、新しく許可した薬も前からの薬も、六年たったら――つまり基準が変わりますからね。だからさっき言ったように、いままで臨床試験なんというものをそう重視しなかったから幾らか弱々しいものも入っていないと言えないわけですからね。六年ごとに繰り返すようなことになっておりますから、そのときには見直しをすべきであると私は思います。
佐藤参考人 私は、さっき申しましたように、二重盲検法というものはがんに適用できるものではないということは強く思っております。数多くやればいいというものではなくて、がんというものはその人個人が対象でありまして、成績が三%であるかもしれないけれども、その人にとっては一〇〇%であるということが大変問題であろうかと思います。こういうふうに必ず死ぬような病気にプラセボ効果を期待するということが大変無理なことでありまして、にせ薬を与えるということは、人道上だけではなく、私の言う理論から言うと科学的にも成り立っていないのだ、こういう方法はがんには通用しない、ほかの病気には通用してもがんには通用しないということを言っております。
 そして、お医者さんでもがんの専門でない人ががんのことを言うと大変に間違いが起こるので、なるべく発言なさらない方がよろしいんじゃないかと思っております。
小林(進)委員 残念ながらこれで終わります。
山下委員長 森井忠良君。
森井委員 桜井参考人にお伺いいたしますが、クレスチンを御審査なさったときには、癌治療学会基準というのがあって、それでおやりになったということですね。今度の場合、丸山ワクチンの場合は、この基準でおやりになったのかどうなのか、お伺いいたします。イエスかノーだけで結構です。
桜井参考人 そのとおりでございます。
 一言申し上げたいのは、同じ基準でやりましたというのはいわゆる一般臨床試験でございます。比較臨床試験の場合ではございません。
森井委員 よくわからないのですが、もう一度お伺いしますが、そうすると、クレスチンと条件が違っておるのですね。
桜井参考人 違っておりません。クレスチンの場合は比較臨床試験がありませんので、すべて一般臨床試験でございますので、一般臨床試験については同じ基準で見ております。
森井委員 そうすると、再度お伺いしますが、クレスチンの場合は比較臨床試験というのはやらなかったということですか。
桜井参考人 そうでございます。やっておりません。
森井委員 二重盲検法というのが先ほど来出ております。丸山ワクチンの場合はあなたの方はそれをお勧めになった、そういうことでしょうか。
桜井参考人 お答えいたします。
 二重盲検法までは勧めはいたしませんでした。封筒法でもよろしいということです。
森井委員 佐藤参考人にお伺いいたします。
 あなたの所論によりますと、二重盲検法もしくは封筒法についてもがん患者には適用しない方がいいんじゃないか、こういうことでございました。その点若干理由を御説明いただきたいと思います。
佐藤参考人 これは実験でも出ておりまして、同じように胃がんであるとか肝臓がんであるとかと言いましても、同じような形で、同じような広がり方をしておりましても、それぞれ個性があって、違う細胞である。それで近ごろでは胃がんの組織をヌードマウスに入れて試験しておりますが、これでも皆違うのでありまして、それぞれ違う生物を扱っているから、二重盲検や封筒の対象にならないと思います。
森井委員 ついでに佐藤先生にお伺いいたしますが、先ほどの意見の御陳述の中で、今回の丸山ワクチンを審査なさった抗悪性腫瘍剤調査会のチームの編成について少し偏っているのではないか。たとえば丸山ワクチンを積極的に投与して臨床試験をやりたい、そういった方々はほとんどなかった、こう私は聞き取れたわけでございますが、チームの編成についての所感を一言で結構でございますからお願いいたします。
佐藤参考人 私はチームを編成した責任者でございませんので、それははっきりわかりませんけれども、お願いに行っても断られるということはあったと思います。
森井委員 次に、梅原参考人にお伺いいたします。
 ずいぶん苦労なすって、いい資料をいただきました。これは私非常に感銘をしたわけでございます。そこで、これだけ苦労していらっしゃる第一線の臨床医の方々の声がこういった調査会で取り上げてもらえない。これはどこに欠陥があるのか。それが一つ。
 それからもう一つは、日本医大ですでに十余万人にわたって投与が続いているわけですね。そして現に延命効果が日本医大の資料によると出ているというものもある。しかしこれも没になった。したがって、この種の調査会の審議に当たっては、単に申請者だけでなくて、いま申し上げましたような、すでにある臨床の結果あるいは学会で発表された数々の論文、そういったものは当然その道の権威の方が御審議なさるのですから、考慮に入れるべきだと思いますが、梅原参考人の所見を承りたいと思います。
梅原参考人 私は臨床医ですから、それからみずから断っておりますように専門医じゃありません。たとえば胃がんの手術症例、ことしは外科の二十三年生でございますが、まだ百六例でございます。早期がんなどというのは余りございません。東京におります時代に東京のがん検診センターから数例もらったのを加えてもわずかなものです。臨床医の報告は、私の意見を調査会に反映していただく立場ではなくて、先ほども申し上げましたように、私の報告書は二つの理由でとっくに現時点の審査の対象になり得ないと自覚しているものであります。ところが幸いなことに審査していただいたそうなんですが、写真が不備なので、きょう改めてつくり直してきました。臨床医、私個人のことを申しますと、それで十分だと思いますが、それを正しく評価していただけたかどうかは疑問に思っております、写真がぼけておりましたから。
 ただ、私の症例は分母がしっかりしているということでございますね。いろいろと話題になっておりますのは、日本医大には確かに私の百七十四例のうちの著効例十一例、しかも現存している三名がいますよということのような症例はたくさんございますが、残念なことに分母がしっかりしていない。これは確かに大きな欠陥でございます。ですから、症例報告ということで先ほどからの諸先生の御意見を伺いますと、現時点で対照例をとって、一つの規格をつくって、それでどのくらい効くのかという言い方を一つの基準にしますならば、日本医大の症例はちょっと困りものという欠陥を持っております。
森井委員 桜井参考人にお伺いしますが、私の手元に「昭和五十五年度科学研究費がん特別研究審査委員名簿」というのがございます。これによりますと参考人はそこの主査をしていらっしゃるわけですね。そして、これは文部省関係だと思うのですけれども、膨大な研究費の補助金の配分等なさっていらっしゃいます。
 拝見をいたしますと、まことに失礼ですけれども、総括班・制癌剤のスクリーニング特別委員会というのがございまして、これは責任者が参考人になっているわけでございますが、三千九百万円。他の研究費等がほとんどと言ってもいいほど百万単位ですね。参考人が責任者でやっていらっしゃるいま申し上げました特別委員会というのは、そういう意味では高い方からランクされるわけでございます。しかし、これとて私ども決して多いとは思っておりません。恐らく御苦労なすっていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、この際、一言でいいのです、配分に当たってどういうところに御注意なさるのかということが一つ。それが一つです。
 二つ目は、先ほど来ピシバニールの研究等でいろいろ意見が出されておりましたけれども、やはりこういったがんの研究をなさる場合には、文部省、厚生省も研究所を持っていますからざっと十六億ばかり、これも同じように配分をするんだろうと思います。しかし、それにいたしましてもなお不足なさるだろうと思うのですね。そういった不足する場合は、その資金はどこから御調達なさるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 まず第一の件でございますが、私は昭和五十五年まで文部省の学術審議会の科学研究費委員会に属しておりまして、がんの特別研究費、当時十八億でございましたが、それの審査委員会の主査をいたしたことは事実でございます。昨年度をもってやめまして、ただいまは違います。そこに出ておりますのは五十五年度のものだと存じます。
 そして、その配分に当たりまして、文部省のがん特別研究は総括班というものをつくっておりまして、総括班といいますものは約十数人で編成しておりまして、総括班長がおります。そこで議論いたしまして、この研究費をどういうふうに配分するか、そのときに総括班として全体の特別研究の運営に必要なものを幾つか決めまして、俗称サービス班と言っておりますが、全体にサービスになるような班を四つつくっております。一つはスクリーニング、これは日本の方々から参りましたサンプルをそこで効果を決めて通知をしてあげるというサービスをやる。一つは医学情報のサービス。一つは実験動物のサービス。それからもう一つはいろいろな血清とかそういうものの良質のものを一遍にバルクとして買って分配をしますためのサービス。
 これは普通の研究費と違っておりまして、私の場合はその一つのスクリーニングのサービス班でございまして、大体その年は三千九百万円いただきまして、そのうちの三分の二が私のところへ来て、三分の一はここにいらっしゃる佐藤博先生の方に行って、その仕事に協力していただいているわけでございます。
 それから第二の……(森井委員「不足分はどうするんですか、足りればいいのです」と呼ぶ)不足分といいますのは、私たちのところでは絶えず財界募金をいたしております。それで、そういうものが赤字を補っていくようになっております。経団連に募金のお願いをしたりしております。そのほかに、共同研究をやりましたときに、共同研究に必要なネズミの代とかそういうものは会社から実費を取っております。しかし、これは微々たるものでございます。
森井委員 時間がありませんので終わります。
山下委員長 草川胆二君。
草川委員 簡単に御質問をします。
 まず、佐藤先生にお願いを申し上げたいわけでございます。
 佐藤先生が丸山ワクチンについて動物実験の資料を提出をされたわけでございますけれども、人間と動物実験との対比で非常に使用量が高い。三百五十倍というのはいかがなものか、信頼の置けないものだというので否定をされたやにお伺いをします。ところが、いまお話がございました桜井座長のいわゆる実験、ピシバニールの実験では、委員長の方の御質問もございましたように、白血病L一二一〇では一万六千六百六十七倍の倍率でやっておみえになるわけです。片方は、自分の方の実験では一万六千倍でも十分だという御説明がいまございました。ところが、佐々木研究所、もう本当に日本のトップの研究所の佐藤先生の三百五十倍はだめだと言う。こういうのは、私も全く素人でございますし、政治が薬のことに関与することには反対です。だけれども、差別ということについてはあくまでもわれわれは絶対許せない。この原則の意味からいきましてもこれはいかがなものか、こう思うのでございます。
 さらにまた、ピシバニールのいわゆる承認された効能効果のデータを見てまいりますと、単独投与、併用効果、胃がんの場合一九・六の効果あり、併用効果二〇・五の効果あり。ところがこれが肺がんの方へいきますと、単独効果一九・六、併用が二二・九とか、あるいは食道がんの場合は二六・一対二一・一とか、結腸がんの場合は二〇対二八・六とかと比例しないような例もあるわけであります。
 私は、このクレスチンの内容、ピシバニールの効能効果等を見てまいりましても、臨床実験はいたしておりませんし――いま臨床実験の問題も大分出ておるようでございますけれども、いずれにしても納得できかねるものがあるのですが、この点佐藤先生の方から御意見を賜りたい、こう思います。
佐藤参考人 ただいまの三百五十倍という私の丸山ワクチンの投与は、私はそんなに多いものだと思っておりません。きわめて妥当な数値だと思っております。――よろしいでしょうか。
草川委員 妥当だとおっしゃっておみえになるのが否定をされておるわけですが、桜井先生どうでしょう。
桜井参考人 お答えいたします。
 先ほどからたびたび申し上げておりますように、動物実験におきますドーズが不当であるというようなことは私は申し上げておりません。先ほど一番最初に申し上げましたように、丸山ワクチンの場合にはいろいろな実験がされておりますけれども、多くは二百五十倍から三百五十倍ぐらいのところで効いておるということを申し上げたのです。
 ただし、動物実験におきますときには、免疫治療剤では、ことにドーズで臨床上のドーズとの平衡を求めることは大変むずかしいものですということを申し上げております。
草川委員 非常に厳しい要求が丸山ワクチンの場合にされておる、こう思います。
 同じように桜井先生とかつて同じ癌研等で研究をなされたと思うのですが、服部隆延先生の論文というのがございます。これは今回の審査に当たって判断の材料になったかならないのか、お伺いをします。
桜井参考人 今度の丸山ワクチンについてでございますか、御質問は。――それは資料として入っておらなかったと存じます。
草川委員 厚生省、これは非常に重大な問題ですよ。明らかに資料として提出されておるのです。ところが、いま資料として見ていないというのは基本的にこれは問題だと思うのです。これはメーカーからも明確に資料が出ているんだ、服部隆延さんの資料。私、きのう会ってきたんだ。話を聞いてきたんだ。そうしたら、桜井さんと同じグループでおれは研究したんだ、ところがぼくの出した資料については何らのコメントがない、おかしいじゃないかと言っているわけですよ、本人は。この先生はあなたたちのグループですよ。その服部先生が出した資料をあなたは読んでいないというのはおかしいじゃないの。しかも、この先生の資料というものは日本の癌学会の正式な化学療法剤の雑誌にも掲載をされておるわけです。あなたのような権威者がそういう雑誌に出ておるものを知らないというわけはない。一方では、そういういい資料が出ておるのを見もしないで判定をするというのはおかしいじゃないですか。
 委員長、こういう態度で、――参考人にせっかくおいで願っておりますけれども、そんなでたらめな、明らかな事実を隠されて、私どもがお伺いするといったって問題があると思うのですよ、こういうのは。私に与えられた時間はわずか十五分です。これはもっと、一時間も二時間もかけて私ども審議さしていただきたいと思うのです。資料が出ておるのですから。厚生省にも出ておるのです。私は、けさ、出したメーカーの担当者も呼んだんです。確認をしたんです。出したと言うんですよ。その資料を見ていないとおっしゃるのはどうなんですか。自分たちの友達の論文ですよ。
山下委員長 桜井参考人、ただいまのは間違いないでしょうか。
桜井参考人 いまの服部隆延博士はかつて癌研におられましたけれども、臨床の先生でございまして、私たちが一緒に仕事をしたことはございません。内科に属されておりました。そして、数年前から内科をおやめになりまして、いまはどういうお仕事をしておられるか、私よく存じません。私が服部隆延先生と共著の論文を出したことはございません。
草川委員 大きな声を出して大変恐縮でございます。それはおわびをいたします。参考人にせっかくおいで願って申しわけございませんけれども、本当に日本にとってがんというのはいま一番大切なんだから、私が声を上げるだけでは済まぬ問題だと思うのです。先生の本当の御決断があれば三万人の人は助かるかもわかりません。私は昼からも申し上げますけれども、正しい資料をやっていただきたいと思うのです。そうでないと、いまも梅原先生が、自分の出した写真と違うなんということをおっしゃっておられますけれども、そんなばかなことはないじゃないでしょうか。せっかく出したら、私は正式に御検討を願いたいものだと思います。
 そこでもう一つ、せっかくのことでございますからお伺いをいたしますけれども、桜井先生はプロテクトンの吉富製薬の副社長と何か同級生かお友達だそうで、顧問もなすっておみえになるのではないだろうかと言われておりますけれども、制がん剤の発明者で特許も持っておみえになる。この審査に当たって調査会では座長をなすっておみえになるわけでございますけれども、それでは自分のものについて有利だと思われないでしょうか、お伺いをいたします。
桜井参考人 私は癌研の化学療法センターにおりますが、そういう私たちの義務、仕事と申しますのは制がん剤を開発していくことでございます。制がん剤を開発していきますときには必ず会社と協力をしなければできません。なぜなら、われわれのところでは大きな動物の安全性試験もできませんし、臨床試験をやろうとしても臨床のサンプルはつくることができませんので、いずこが開発をいたしましても必ず会社と協力をすることになります。そうでありますので、プロテクトンの場合は私たちの研究室で開発したものでございますけれども、臨床段階では吉富製薬と協力をいたしました。
 ですから、それに限りませず、これからもどれかの調査会の先生方と一緒になってくることであろうと思われます。その場合には、調査会で自分のことについては発言をしないとか、いろいろ内規的なことで今日まで参りました。しかし、そこに大きな疑惑あるいは御疑問があるとすれば、そこのところを改善をしていただく、あるいは私にやめろというお話もございますので、そうすれば私がやめる。私のみではないと思いますけれども。私たちとしてはそういう研究を三十年間やってまいりまして、それをやめるわけにはまいりませんので、そういう立場におりますので、これは調査会の機構としてお考えをいただく、私たちも考えねばならないというふうに感じております。プロテクトンというのは私の研究室でできたことは事実でございます。
草川委員 いずれにいたしましても、先ほど小林先生もお話がございましたように、平等に取り扱っていただきたいと思うのです。先生は先生でそれで結構だと思うのですが、丸山ワクチンについても同じようなことをしていただきたい。
 そして、国立療養所の砂原先生もおっしゃったのですけれども、もう少し資料を出せばいいじゃないか、手続をやればいいじゃないかというのですが、実はメーカーの方から上申書が出ているのです。いろいろな実験を公の機関にお願いをしたのだけれども、なかなか取り上げていただけない、その点をぜひ厚生省の方も御判断願いたいし、調査会の方も御判断願いたいという切々たる上申書が出ておるわけですから、そういう平等な同じ条件さえ与えられるならば、みんなで応援してあげるならば、丸山ワクチンというものはもっと別な運命をたどったのではないだろうか、私はこう思うのです。その点についてはどうでしょう。
桜井参考人 お答えいたします。
 全く同感でございます。先ほども申し上げたことでございますけれども、各病院が臨床試験をやりますときには、その基礎データというものを検討してやる委員会がございますので、それに合うようなデータをつくっていただきたい。たとえば丸山ワクチンで最初私が申し上げましたように、規格などというのは非常に重要なことでございますので、そういうところがちゃんとしておれば、何も癌研はお断りするとかいうことはないと信じております。
草川委員 時間がございませんが、いま癌研は、先ほど先生の方からもお話がございましたように、いろいろな共同研究というので、たとえば呉羽から五十年三月には五十万円だとか、武田から百万円だとか、その他の各社から毎年三百二十万円、あるいは三百万円、四百六十万円、五百万円、これは厚生省の資料をいただいて私は申し上げておるのですけれども、一括処理で桜井先生の口座にお金が振り込まれております。しかし、この企業の名前を一覧表で見ますと、みんな大手で、共同研究といっても五十万とか百万という単位では共同研究じゃないわけですから、実質的な財団法人の癌研が、桜井先生の口座にそういうお金が振り込まれておるということ、しかも、その会計処理が一括の寄付行為として処理をされておるわけであります。共同研究で受け取っておきながら寄付行為として受け取るというのも不鮮明でございますし、こういうような企業の中にはゼリア新薬の名前が入っていないわけです。私はこれもやはり差別だと思うのです。
 癌研が費用が不足をして寄付を求めるならば、全社に求めるべきでしょう。特定の企業だけからお金を取るというのはいかがなものか。この点についてはどうでしょう。
桜井参考人 ただいまのにお答えいたしますが、私たちは、研究の協力を求められることしばしばでございますけれども、委託研究を主とする研究機関でありませんので、来ましてもお断りするものもございます。そのお断りする理由は、私たちがそれに興味を持たなければ、お断りをしております。そして、それはまたほかの研究機関に行って、そこでアクセプトされて、研究が行われているのでありましょうと思います。
 それから金でございますけれども、そういう会社の研究をやりながら、それを全部財団の費用でやるということはちょっとおかしい点がございますので、いま御指摘のような程度の金でございますけれども共同研究費というものを入れてもらっておりますが、それが一括私の口座に入っているわけではございませんで、これは財団の口座に入っております。ただ、その寄付は特定の用途が指定されてございまして、化学療法センターにおけるこういう薬の共同研究に使うのだということになっております。
草川委員 私は時間が五十九分まででございますから、正確に時間を終わりますけれども、いま私が、皆さん方参考人にわざわざおいで願って、大きな声を張り上げたことを深くおわびをいたしますが、なぜ怒ったのかというのは、服部隆延氏の論文が、昭和五十四年に化学療法学会が博多で行われたところで発表されております。そして、かなり生存率が高いということが、これは丸山先生の系統の先生ではございません、十二名連記で報告が出ておるわけでございます。五十五年化学療法学会雑誌ナンバー2にも、それが論文として出ておるわけでございます。そしてメーカー側の方から、一番上にこれを最初に資料を提出をされておるけれどもノーコメントであるというのはいかがなものか、こういうことを申し上げておるわけでございますが、たった一つのこういう貴重な資料ですら桜井先生はお読みになっていない。参考にしていない。では一歩下がって、提出されていないとしても、先生は権威者でありますから、こういう各種の雑誌、学会誌を全部読んでおみえになるはずです。読んでなくて提出された資料だけのいいか悪いかぐらいだったら、だれでもこれはできるわけです。
 なぜ選ばれたかということから考えるならば、もう一歩国民の命を、毎日何百人と並んでおみえになる方がおかしければ、あなたたち並ぶべきじゃないよ、こんなものは効かないよと、あなたは言うべきなんですよ。いま日本で一番の成人病というのはがんですから、だれだってこのがんについては早く治したい。だったら協力をしてあげるという姿勢を桜井先生が持たなければだめなんです。桜井先生が協力をしない限り、もう絶対丸山ワクチンというのは幻のワクチンになるのですよ。三万人の命じゃない、過去の十数万人の人の命にも影響するわけです。だから十数万人の日本の国民の命を一歩進んで桜井先生が見てあげようかという気持ちになるか、それはだめだ、あくまでも学界の権威、手続が必要だ、そんなものは後回しだということをやられるかどうかによって、これは重大な問題になると私は思うのです。その点だけを桜井先生に今後十分お考え願って、人の恨みを買わないように先生がやっていただきたいことをお願いをして、私の質問を終わります。
山下委員長 米沢隆君。
米沢委員 先ほどから再々指摘もされておりますが、今回の調査会の結論を見ましたときに、桜井先生が丸山ワクチンと同様の制がん免疫療法剤であるクレスチン、ピシバニールの製造認可にかかわる基礎データの作成に関与しているということで、いわゆる利害を有しておるということで、本件の審査に関して公平な判断を期待できない、すなわち委員として不適格であるんじゃないか、こういう指摘がなされておるわけでございます。それゆえに調査会の結論にも不信がわく。こういうことが続けられることは本当に重大な問題ではないかと思うのでありますが、そういうことで、私は医学者としての先生の良心を信ずるにやぶさかではありませんが、第三者的には、いまここで指摘される疑念が出てきても仕方がない、やむを得ないという点もあるような気がしてなりません。
 そこで、先生の中央薬事審議会の委員としてのみずからが関与した薬剤を審査する立場はどのようなものであろうか、また、それと利害対立するであろう新薬の製造承認の審査をする立場はどのようなものであろうか、あるいは公平厳格な審査が確保されているという実証等々、ここに指摘される問題等に関して所見があれば簡単に述べていただきたいと思います。
桜井参考人 お答えいたします。
 審査会の中の、私も含めまして、いろいろなほかの薬の開発に関係しておるというような問題であると存じます。これは今日までそういうことでありまして、自分で関係しておることは、何と申しますか口を出さないように遠慮をするというような、きわめてパッシブなことで来ておりますので、ここでただいまのようにいろいろな御疑惑を受けるというようなことになりますことは、調査会としてもはなはだ本意でもございませんし、それから世間に対しても申しわけないことだと思います。
 これはいろんな方法があるわけでありまして、たとえば米国のようなシステムをとって、これは全く官庁の中にこういう審査委員会をつくる、お役所をつくるということも一つでございましょうけれども、当面の問題としましては、私一番考えますのは、審査が行われましたときに、たとえば私はクレスチンをやったといっても本当を言うと動物実験をしたにすぎないのでありましてそれでもってクレスチンの効果が決まるわけではございません。しかし、そういうことを含めて、やはりある程度の審査の内容というものが、これはいろいろ機密の問題もあるのでございましょうから私わかりませんけれども、私たちはこういうデータに基づいてこういうような審査をいたしましたということが御説明できるようなことになることが一番いいんではないか。そして、私たちの審査に不正があれば論外でございますけれども、そうでなくても、私たちにはただいま御指摘のごとく完全なことがたった十三人でできていないかもしれませんので、それを御批判いただく機会というものがあって、御叱正をいただく場合というものがある方が私はいい、これは一つの解決ではないかと思います。
 さきの御質問のときに服部隆延博士の論文を私が見ていないと申し上げました。臨床の領域でありましたので、私がそれを見落としておりましたようでありまして、この点については深くおわびを申し上げます。追加申請書の中に帝京大学のデータが入っておりまして、服部先生はその帝京大学の講師をしておられるそうでありまして、そこのお名前の中に服部先生のお名前が入っておりましたので、これは大変申しわけないことでございました。深くおわびを申し上げます。
米沢委員 今回の調査会の決定、八月七日に最終的な結論になると思いますが、目下言われるところは、現在の資料を見る限り有効性は確認できない。そうなりますと、とりあえず医薬品として製造できない、そういう結論になるんじゃないかと思います。
 そうなった場合に、医学的にはどうも有効性は判断できない、しかし約三万人前後の人が、それががんに効くんだということで列をなしてワクチンを求められておる。そういう相関関係を見ますと、どうもすなおに、謙虚に見ましたときに、現在の医学の基準ではこの丸山ワクチンの有効性については確認できないものであるけれども、御案内のとおり免疫療法剤というのは歴史も浅いし、おっしゃいましたように、効果を判定することも非常にむずかしい。現代の医学では現在のこの丸山ワクチンの有効性について確認できないにしても、何か有効性があるような気がするんですね。現代の医学では判断できないにしても、もっと医学が進みあるいは分析する能力がふえていったならば、また新しい基準がいろんな面で改正されていったならば、この丸山ワクチンの有効性について確認できることがあるんじゃないか、これはいまの段階では神様しかわからないのかもしれませんけれども、現在の基準ではわからないけれども、ひょっとしたらあるかもしれないという、そんな感じが、一方では効かないと言われ、一方では欲しいという三万人前後の人がおるというこの図を見て私は感じるんですけれども、その点桜井先生の御所見を聞かしてもらいたいと思いますし、同時に佐藤先生、その点いかがなんでしょうか。
桜井参考人 お答えいたします。
 最前からも申し上げたことでございますけれども、丸山ワクチンそのものが効かないというような断定を下す材料はございません。ただ、この程度の実験では効いておるというようなことは言えない。
 それは何かといいますと、一つは規格の問題でございまして、これを早く整備していただくことが第一に大事だと思います。
 それから臨床の実験の中でも、確かにいまのたとえば愛知がんセンターを中心としたあれのようにある層別をいたしますと、たとえば腹膜転移があるというようなものでは例数が余りに少ない。二十例ほどでございますけれども、明らかに差があるので、こういうものを明らかに追試していただいて、そういう症例においては効くんだというものを出していただければいいんじゃないかという気がいたしますし、調査会並びに特別部会の席でも、そういうようなことを踏まえて現状においては確認できなかったというような結論になったというふうに存じております。
佐藤参考人 動物実験の段階におきましてはSSMもわずかながらというか、だんだん作用機作というものが証明されてきております。そしてピシバニールとかクレスチンなんかにつきましても、やはり同じようなインターフェロン効果があるんだというようなことも近ごろわかってきたようなことでありまして、以前に言われたような投与量による直接効果というものはクレスチンやピシバニールに求めるのは非常に困難かと思います。その点SSMは非常にユニークな、これからの医学の一分野を担当すると言うと大げさですが、そういったおもしろい物質であろうかと思っております。
米沢委員 梅原先生にお聞かせいただきたいのでありますが、いままでの経験で丸山ワクチン以外の免疫療法剤をお使いになった経験はございますか。もしあったとするならば、その症例と丸山ワクチンを使ったときの症例との比較をしたときに有意差等があったのかどうか、その点経験学的にお聞かせいただきたいと思います。
梅原参考人 私はほかの免疫療法剤を使った実験例はございませんと先ほど申し上げてございます。丸山ワクチンの片がつくまでは私の義務だ。外科学会に発表したのが、公の学会で発表したのが、有効だと言い出したのは私自身でございますので、この片がつくまでは浮気はいたしません。
米沢委員 砂原先生にお聞かせをいただきたいんですが、先ほどの先生のお話を聞かせていただいておりますと、どうも丸山ワクチンの悲劇は、いわゆる基本的に医学の筋道というのですか、薬を認可するまでの筋道を追っていない、そういうところに医学界全体の反発を買っておる、そんな感じがするわけでございます。したがって、実験してくれと言っても受け手がないとか、そんなもの使うためにはもう少し実験をしてこい、したがってうちの病院では使えないと、そんな感じで、結果的には何か意地悪をされるような結果を生んでおるのではないか、学界内でも何となく反発があるのではないか、そんな感じがするのですけれども、それが丸山ワクチンの悲劇みたいな感じが、私は先ほど先生のお話を聞いてしたのですけれども、どうなんでしまうか。
砂原参考人 私も幾らかそう思います。したがって、できるだけそういう要素がなくて物が扱えるようにしなければいけないと思うのですが、何といっても、先ほどから桜井先生がおっしゃるように、規格といいますか、物が安定しているのでないというようなところがあって、そして、治療か研究かわからぬ形で患者さんの家族に渡されてどんどんと広がってしまって、その方から使え、使えというような話が出てくる。どうも逆立ちしているものですから、治療に入るまでに研究のところできちんとおやりになって、そして、たとえば癌研にしてもがんセンターにしても、基礎的なことをこれだけやってくださいと言ってそれをおやりになれば、癌研の人だってがんセンターの人だってどこの人だってそんなに食わずぎらいはしないと私は思うのですけれども、何となく学問それ自身でないようなものが入っているのが、私は丸山さんのお人柄はよく知っていますし、ああいう純粋な方で、それはいいのですけれども、だんだん問題をこじらせているので、これは大変不幸なことで、これからこういうことがないように関係者は気をつけなければいけないことだと思っております。
山下委員長 小沢和秋君。
小沢(和)委員 まず桜井先生にお伺いをしたいと思うのです。
 先ほどからのお話の中で、先生の癌研にもこの丸山ワクチンについて、臨床比較検査ですか、これの依頼が来たけれども、自分の方としては前提になるようなデータなどもそろっていないので断ったというようなお話だったように思うのです。また、別の方には、興味を持たないとそういうようなものについては受けないこともあるというようなお話もあったわけですけれども、私は別の角度から考えると、これだけ社会的にも大問題になっておるような丸山ワクチンについて、本当に効くものか効かないものかというようなことについて、先生が所属しておられる癌研のような権威のあるところで決着をつけてやろうじゃないかということで受けて立った方がよほど世間も納得したろうし、また先生がそういうようなことに興味をお持ちにならぬはずはないのじゃないか。先ほど興味云々という発言もあったのですが、この点まずお尋ねをしたいと思うのです。
桜井参考人 お答え申し上げます。
 興味と言いましたことは大変悪い言葉でございましたが、私が申し上げましたのは、私たちは基礎の研究をしておるのでございまして、基礎の研究の段階で会社が協力研究を申し込んできましたときに、私たちはいろいろな仕事をしておりますのにただそれを全部無条件で引き受けるわけにいきませんので、私たちが興味を持ってやっておりますことに何らかの利益といいますか、学問的な利益のある主題でないと協力をしない、そういうことでございます。臨床の場合とは全然条件が違います。私は臨床家でございませんので、臨床は癌研の病院の院長の支配下にございます。
 ですから、これは私がとやかく言うことではございませんけれども、一般論といたしまして、いまのがんの専門病院はどこでも、臨床をやりますときには、そこの委員会で基礎実験、安全性のデータを検討して、倫理上の問題が起こらないといろいろな問題を皆さんが合意した段階で始まるのが普通であろうと思います。私は、病院の方に丸山ワクチンがどういうふうに会社からアプローチがありまして、それを院長がどういうふうにお断りになったかということは存じません。
小沢(和)委員 いまの桜井先生のお話でも私十分には納得がいきませんけれども、論争はしないことにしたいと思います。
 それから、先生がクレスチンにタッチをしておられた。それで、それにタッチしておられた方がこういう同じような免疫療法剤である丸山ワクチンの審議に参加をしたということからいろいろと問題になっているわけですけれども、けさあたりの新聞を見ると、そういうようなほかの問題にタッチをした方については今後遠慮をしていただくようなルールの改正をやろうかというようなことが問題になっているというようなことも書いてあったのですけれども、先生御自身もそういうような発想が、これが問題になった当時の段階で起こらなかったものだろうか。よく裁判なんかでも、裁判官などが利害関係があるような場合には自分で辞退できるような制度もありますね。私は、良識のある先生はそういうようなことをお考えにならなかったのだろうかという点ちょっと疑念を持つのですが、いかがでしょう。
桜井参考人 お答えいたします。
 調査会の委員の全員と言うと語弊がありますが、多くの方がそのことを大変気にしておられまして、自分たちはこういう薬の開発に関係しておるけれどもそれで調査会にいていいのかという御疑問がございまして、それは厚生省当局に伺いまして、それでも仕方がない、現状においてはやむを得ないからその自分の関係した薬については発言を控えてもらうというようなことで運営をしていこうということになって、それがいままでの調査会のやり方でございました。
 それともう一つは、一つの薬の開発に当たって、全面的に関係しておるという方はおられません。基礎の方で言いますれば、ある動物の、ネズミに対して効いたという実験をしておる人、体の中でどういうふうに配分していくとどこのところにはたくさん行くとかいうような実験をしておる人、安全性の実験をした人、臨床に至りましては、耳鼻領域の先生は耳鼻科でお使いになり、内科の先生は内科でお使いになるということで、そういうものがたくさん集まってまいっておりますので、一人が関係したからそれでもういいことにしてしまうといったようなことは現実には起こっていないわけです。
 ただ、いかにもいまのように自分の答案に自分で採点するかと言われますとまさにそのとおりでございますので、私は、何か改正をすべきであるというふうに感じております。
小沢(和)委員 では次に、砂原先生にお尋ねをしたいと思うのです。
 今度の結論というのは、有効性が確認できなかったということになっておるように思うのですけれども、前提になる資料そのものが不備であるというお話のようなんですね。だからこれについてそもそも十分な検討そのものができない。たとえば規格が確立をしていないとかあるいは臨床比較試験の症例が少ない、しかもその五つの地区でやったうちの三つまでは採用できないとか言ってこれを外したとか、そういうようなことを先ほどから伺ったわけですけれども、これだけ長期間かかって、しかも社会的にも大問題になったもののその申請の内容としては私奇異に感ずるぐらいに初歩的なミスというか、お粗末な話じゃないかという感じも持つのです。
 この点で、本当に世間が納得するように、たとえば規格が確立していないというのはどういうようなことなのか、これだけ時間をかけて議論をしてきたのですから、その辺についてはすっきりしたものぐらい当然出てくるはずのものじゃないかと、私なんか素人として思うわけですが、その辺についてもう少し先生の御説明を伺いたいのです。
砂原参考人 ごもっともな御質問だと思います。
 一つは、私は薬一般のことをやっておりまして、がんのことを特にというのではありませんけれども、現在の審査の形は、企業なりから上がってきたものを審査するという形でございますね。ですから、日本は行政指導というのが好きな国ですから、こうしなさい、こうしなさいと薬務局でやっているのだと思うのですけれども、丸山ワクチンなんかに関係してみますと、もう少し、たとえば五十一年ごろに出てきたときに、ここをもっとということを二十何項目か指示されたらしいのですけれども、日本医大の方々もそれからゼリアの方々もこういうことに非常にふなれな方で、気ははやるけれどもきちっとしていないところがあるので、やるべきことをもっと早くできるような、それは余り協力するとどこの会社にだけ親切にしたのだということになって、実際言えばむずかしいのかもしれませんけれども、来たものはこれはだめだ、だめだと言うのじゃないようなのが親切だと思うのです。
 それから第二の点についてでありますけれども、たとえば臨床試験の問題にいたしましても、東海地区の場合には、先ほどたびたび話に出ましたように、一方の群は封筒法違反があったことではないのです、封筒法違反が丸山ワクチンの群とそうでない群とに余り偏り過ぎている。つまり故意にやっている、故意というのは悪い故意ではありませんけれども、患者さんが希望するからということがあるのかもしれませんけれども、たとえば重い、このものは重いから、封筒法はこう出たけれども、ほかのものをやるとすれば、片一方に軽いのばかり集まって片一方は重い、そういうようなことがあるものですから、動物実験とは違って、動物実験というのは同じ腹から出た遺伝的な同じ性質のものを集めることができますけれども、人間の場合は患者さんのより好みもできませんし、かんなをかけてならすわけにいきませんし、一卵性双生児の片方に丸山ワクチン、ちょうどうまくと言うと怒られますけれども、お二人ともがんになってということはできないのですから、そういう個人個人のばらつきをならすわけにいきませんけれども、集団としてのばらつきをならして、中ではばらついているけれども集団としては比較が可能なものをつくるということですから、それがきちんとなっておりませんと、先ほどの何%有効だとか、危険率幾らだとか、有意差とかいうようなことよりも、そこがきちんといっておりませんと、偏りが初めからありましたら問題じゃございませんので、そういう点で十分いっていない。
 しかし、先ほど申しましたように、仙台の場合なんかは比較的よくおやりになっている。仙台の場合なんかむしろ例数がもっとふえればもう少し――丸山ワクチンというのは、これははっきり申し上げておきたいのですけれども、いままでの資料では驚天動地のがんの薬だとはきわめて思いにくいと思います。
    〔委員長退席、湯川委員長代理着席〕
丸山ワクチンだけが及第点が一般が六十点なのに七十点にするとか、世間が騒ぐから六十点に及第点を下げるとか、あるいはいままでのいきさつが少し気に入らぬから七十点にするというようなことはしないように、これは厳重に関係者がしなければならぬことだと思いますけれども、いままでのところお治りにならないということ、がんというものの研究のむずかしさというものもあるのでしょうけれども、残念ながら現在の資料では――ですから、調査会でも効かないとは一言も言っていないわけですけれども、出てきた材料だけではというので、必要な材料をやれば、それはまただめだということになるかもしれませんけれども、これでよろしいということになるかもしれないということだと思います。
小沢(和)委員 時間が来たようですから、砂原先生にもう一言だけお尋ねをしたいのですが、先ほどからも何人かの方が問題にされたのですけれども、開業医の方などが実際に使った例がたくさん出ているわけですね。こういうようなことが、こういう審議をするに当たって今後、どういうような形でかにしろ、今度のように十何万人にも投与をしたということになったら、そのことが積み重なったらおのずからやはり一つの傾向なり、結論を示すような重みも持ってくるのじゃないかと思うのですね。今後そういうようなことが反映するようなルール化というか、そのことも考えないといけないのじゃないかということをさっきから考えているのですが、その点はいかがですか。これで終わります。
砂原参考人 ごもっともなお話だと思います。
 ただ、毎日の日常の診療の中で使っておりますと、たとえば、がんには自然治癒ということはそうございませんけれども、自然によくなったとかほかの薬を一緒に使ったとか、なかなか見分けがつかない。安全性、つまり薬害の方は、スモンだとかコラルジルみたいな、大きな災害を伴ってではありますけれども、そのうちに正体が暴露します。効き目の画期的な薬は別でございますけれども、ややいいかどうかというようなのは、群衆の中に紛れ込みますとなかなかすりを捕らえることができにくいというようなことだと思います。しかし、その中でも丸山ワクチンの場合なんかは画期的に効いたような経験をされている方も開業医の方であるわけですから、それには前提があって、がんであることの診断だとか、治ったということの判定がきちんとできていなければいけませんけれども、そういうイマジネーションをできるだけ豊富にわかせるということはやはり新しい、大学者というのは余り飛躍的なものは思い浮かばぬかもしれませんから、やはりそういうのを取り上げる必要があるかもしれない。
    〔湯川委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、それは二段目で、ですからそういう旺盛なイマジネーションと、一方で批判的な仕掛け、臨床試験みたいな、それのバランスがとれませんと、イマジネーションだけで、世間があんなにたくさん使う、たくさん使うからかえってわからなくなっているようなことは幾らでもあるわけですから、それは両立しなければいけない。
 ところが、たとえばイギリスあたりですと、開業医の方でも臨床試験にちゃんと参加していらっしゃるところがあるわけですね。ですから、そのときには普通の診療じゃなく臨床試験であって、決めたことはきちんと守らなければいけないんだということで、むしろ臨床家の方々も臨床試験に協力がいただけるようなそういうところへ来るのが理想じゃないかと私は考えております。
小沢(和)委員 終わります。
山下委員長 菅直人君。
菅委員 大きく二つに分けて桜井参考人にお尋ねをしたいのですが、一つは調査会の問題、特別部会の前回の認定にかかわる問題について、それからもう一つは、先ほどから問題になっているいわゆるそのメンバーの構成が果たして妥当であるかどうかという問題に分けてお伺いしたいのです。
 朝からの議論を聞いていますと、桜井座長は規格の問題をしきりに言われているのですけれども、少なくとも、七月十日の調査会が終わったときの記者会見のテープを私はいろいろな形で読ましてもらったり聞かしてもらいましたけれども、あの段階では規格の問題は何も言っておられないわけですね。調査会が終わってから急に規格のことを言われ出して、私自身は非常に不自然な感じがするわけです。そして朝からの一連の経緯を見ておりますと、まず桜井さんが最初に言われたのは、ネズミにおいてはかなり効果があったということを一つ言われております。それから臨床試験においても、愛知の問題は封筒法等々いろいろ問題はあったけれどもある程度の効果があったということも認められています。それから、東北のデータについてもある程度の効果があったということを認められておるわけですね。しかし、臨床的には有意義でなかったとかなんとかということで、先ほど八田先生が最後に聞かれておりましたけれども、なぜこれだけ効果がありながら、それをすべて最終的には判断としてネグってしまっているのか、ここがどうしてもわからないわけですね。このことについてお尋ねしたいと思います。
桜井参考人 お答えを申し上げます。
 まず第一は、動物実験においてある程度の効果があったということ、これは申し上げましたように数種のネズミのがんに効いたということは事実でございますが、しかしそれと臨床試験とを結びつけることはかなり問題点があるということを申し上げたわけです。
 それから、次は臨床の問題でございますが、臨床については、あの場合にも規格にも問題があるということは申し上げましたが、実際の問題としては臨床の問題が一番の大きな問題なので、規格、毒性、そのようなことについては余り重点を置かないで、臨床の結果がどうだったかということを発表してほしいという要求がプレスからございましたので、そういうことを申し上げました。
 それからもう一つは……(菅委員「愛知と東北です」と呼ぶ)愛知の例でも、先ほど申し上げましたように数学的に言いますと、全経過中、二点のところで有意になるような差があるということは報告に書いてございます。しかし、それをどういうふうに医学的に評価するかということは別問題であるというのが統計学者の見解でございまして、そこから先は調査会あるいは特別部会の臨床の先生方の判断にゆだねたわけでございます。
菅委員 その判断の理由を聞いているのです。
桜井参考人 その判断というのは、現在の医学の新治療で、たとえば外科の手術が二種類の手術術式がありまして、片方の手術と片方の手術のどちらがいいかといったときに、一体どのくらいの差があったら片方がいいと断定するかということは、これは現場の臨床家の判断にまつものであろうということでございます。
菅委員 つまり、もう皆さんデータを持っておられると思いますけれども、東海地区のデータでも、先ほどから何度も桜井座長が、一時は差があったけれども、一時は差がなくなって、また差があったと言われますけれども、つまり最終的に十カ月なり十五カ月という長い期間を見ると、かなりはっきりした差が出ているわけですよ。差が一時クロスしているのは、大体五カ月から六カ月あたりのデータで一時接近しているだけで、特に延命率ですから、これは五カ月、六カ月で多少差が縮まっても、最終的に大きな差が出ているわけですね。
 東北の例では、これも御存じのように、百五人の丸山ワクチンを併用した中から三名の方が現在生存しているわけですね。それを併用しなかった化学療法剤では百七名の中で全員が亡くなっておられるわけですね。
 この明らかな差がありながらそれを全部ネグってしまっている。なぜなのか、何度聞いてもわからないのですね。同じ答えですか。
桜井参考人 それは先ほどから申し上げましたように、そこのわずかの差というものをどう判断するかというのは、調査会並びに特別部会の臨床の先生の判断でございます。ですから私は、そういうところには学会としての判断があると思いますので、その判断がもし間違っておるということでございまして、これはその事実が公表されましたときに、日本の癌治療学会なり癌学会などからそれが指摘されるようなことでありますれば、私たちの重大な責任だと思っております。
菅委員 まさに重大な責任だと思うのですね。
 それから、特にこの中で申し上げなければいけないのは、先ほど小林委員の方からもありましたけれども、抗悪性腫瘍剤調査会が終わった後に東北大学の後藤教授の方から異議の申し入れがあって、それを皆さん方は一部採用をされて、特別部会ではその報告書を変えたのだということを言われているわけです。特に具体的に言えば、膵臓がんであると書いてあるものを、しかしこれは長く生きているから多分膵臓がんじゃないのだろうとさっきも言われましたね。それから病理のデータがなかったとか、それから膵臓がんというのは末期の場合はほぼ完全に生存できないと言われている、だから五百日も生きているのだからこれは違うだろうといって、それを外して抗悪性腫瘍剤調査会では判断をされたはずですね。そして、それを申し入れがあったものだから、それだったらわかりました、そういうことで特別部会にかけられているわけですね。
 調査会というのは、がんのまさに専門家が集まっておられて、特別部会にはもちろん桜井さんを含めて何人かは出られたでしょうけれども、私が聞いているのは二人ですが、ほかの方は出ていないわけですね。そのまさに臨床の重要な、ある意味では事実関係の認定が違っていたことについて、どうして調査会で再度諮らないで、そのまま特別部会に持っていかれたのですか。こんなことができるのですか。
桜井参考人 調査会の審査の段階ではそういうデータがありませんので、そこに調査会の資料に書いてございますとおりの判断をいたしました。しかし、特別部会に出ます段階で、調査会の審査が終わりました後で、そういうデータが入ってまいりましたので、これを特別部会に提出いたしました。そして、調査会の報告は特別部会において訂正をするということになっておりますので、それによって訂正をいたしました。
菅委員 そんなことを座長御自身ができるわけですか。臨床医でもない座長が、そういう臨床的な結果を変えて特別部会に報告するというのは、調査会を開かないで一存でできるのですか。
桜井参考人 私が一存でやったわけではございませんで、調査会のデータを特別部会に上げまして、特別部会の専門家たちがそれを審査するように後藤教授のお手紙の資料も提出いたしまして、そこで訂正が行われたわけです。私が訂正したわけではございません。
菅委員 つまり、がんの専門家の臨床医の六名の方は、抗悪性腫瘍剤調査会におられるわけでしょう。特別部会にがん専門の六名の臨床医はおられないわけでしょう。それなのに、なぜ調査会をすっ飛ばして、そういう非常に重要な指摘がありながら、それをすっ飛ばして特別部会に報告したか、それで済むのですか。
桜井参考人 それは特別部会には特別部会でがんの専門家がおられます。私たち調査会から一人臨床の先生が出席されておりますが、特別部会には特別部会でがんの専門の先生がおられます。
 それから、ただいまのように後藤教授のお話は調査会が済んだ後から来た資料でありますけれども、これはすでにがんの転移が肝臓に及んでおり、それから組織診が行われたということになれば、これはそのとおりに、どなたも疑うことではないと思います。
菅委員 これは特別部会を二十八日に強行されたわけですけれども、私はもう一回調査会に戻して、まさに膵臓がんを膵臓の慢性炎症だろうということで扱われたことを、もう一回ちゃんとそうだということを前提として審議をされることを強く望みたいと思うのです。
 こればかりだともう一つ問題ですので、もう一つの点をお尋ねしたいと思うのです。
 先ほどから一人二役といいますか、そういった問題が出たときに、桜井さんは、全面的に関係している人はいないとかいろいろなことを言われていますが、先ほど草川委員からも御質問がありましたけれども、私はここに桜井さんが出された、昭和四十二年に公告になった特許の公報を持っているのですが、たしかこれはいま発売されている吉富製薬のプロテクトンの基本特許だというふうに伺っています。つまり桜井さんは、自分がみずから持った特許を吉富製薬とともに開発をされて、さらに製品化されて、そして認可のときにはやはり座長をされていた。それから、先ほどの質問にもありましたけれども、その吉富製薬の顧問もされていると製薬会社からも聞いています。これは事実ですか。
桜井参考人 全く事実でございます。
菅委員 いいですか、これは午後の問題にもなるわけですけれども、私、昨日からずっと厚生省にもいろいろな話をしているのですが、会社の顧問をされて、また基本特許を自分が持って、先ほど言われたように、自分の研究室がこれを開発したと御自身はおっしゃって、まさに全面的じゃないですか。全面的にかかわって、これを自分のときに座長として認可をされた。
 さつきクレスチンの場合は動物実験でたくさんある中の一部だとおっしゃったけれども、基本特許さえ持って、これがごく一部なんですか、そういう認定なんですか。
桜井参考人 先ほど申し上げましたように、それは申請書になります前には毒性試験とか臨床試験が必要でありますが、臨床試験というのは私たちのところでやったものではございませんから、そういう意味で一部だと申し上げました。
菅委員 それはまさに逃げでして、そういう点で私は今回の問題で、一つは先ほどの東北のデータに対して、非常に重要な臨床的な事実関係の認定が間違っていたにもかかわらず、調査会をすっ飛ばして特別部会にそれを報告すれば済むといったようなやり方が一つ。
 それからさらには、調査会そのものの構成の中で、まさに桜井参考人御自身が果たして適正であったのか。いわゆるこういうものをそういう形でやっておられて、それでいながら座長を現状において続けておられる。もちろんこれは厚生大臣の任命ですから、厚生大臣なり厚生省の責任もあるわけですけれども、私はこれは国民の目から見て非常に不適当じゃないかと思うのですが、最後に桜井さん御自身、このプロテクトン問題も含めてどう思われますか、適任なんですか。
桜井参考人 私は、先ほどから何度も申し上げているとおりに、そういうことでいままで不公平が起こりませんように、そういうことの発言については控えていくというような内規で済んでまいりましたけれども、ただいまそういう御指摘がありまして、そういうことは信用できぬということでありますれば、私は不適任だと存じます。
菅委員 もうこれで終わりたいと思いますけれども、個人的には失礼に当たる点もあったかと思いますが、少なくとも調査会の責任者としての半ば公的な立場もあるわけですから、さらにそれを監督している責任については午後の審議にまつと思いますけれども、そういうことを含めて、先ほど山下現委員長も言われましたけれども、がんについてまさに決定的な薬がまだ見つかっていない。さらに、丸山ワクチンについてはほぼ副作用は全くないと言われている。そして、効果についてもいろいろな見方はあるけれども、ある程度の効果はあるのじゃないかというデータが現実にたくさん出ている。そういうものをまさに採用されて、せんだっての薬事法で改正されたように、六年後の見直しのときに厳密にやられればいいのじゃないか。先ほどから砂原先生も言われておりましたけれども、確かにいろいろな不幸な経過はあったかもしれないけれども、ここでその不幸な経過を不幸な形で終わらせないでまさに国民にとって幸いな形にするには、そういった形で一たん、ある程度の効果があるわけですから、認めるべきものは認めた上で、そして六年後の再審査を、法律をわざわざ変えたわけですから、そういう形でやられればいいのじゃないか。最後に申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。
山下委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
山下委員長 森井忠良君。
森井委員 せっかくの参考人の先生方の御意見を聞かせていただきましたけれども、何せ時間が足りませんでした。まだまだ、お聞きしたいこと、解明をしたいことも山ほどあるような感じがいたします。
 つきましては、本問題に関します委員会の調査は、本日は時間的な制約がございますのでやむを得ませんが、後日改めて開催をしていただきますように、委員長にお願いをいたします。
山下委員長 後刻、理事会を開きまして、決定いたしたいと存じます。
 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時九分開議
今井委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 丸山ワクチン問題について質疑を続行いたします。八田貞義君。
八田委員 厚生大臣にお伺いいたしたいと思いますが、現段階においては有効性が確認されなかったとの調査会特別部会の見解でありますが、参考人の答弁にもありますように、専門的に見れば、丸山ワクチンは今後の研究により医薬品としての可能性を有するものであると考えられます。また、現在三万人の患者に使用されております。これらの点を考慮すれば、厚生大臣は丸山ワクチンの今後をどうするお考えか、お伺いいたしたいのであります。
村山国務大臣 お答え申し上げます。
 まず厚生省の姿勢といたしましては、がんにつきましてはまだ原因もわからず、あらゆる手術から制がん、放射線、それから免疫剤を通じましてまだ未発達の段階で、まことに遺憾に思っておるわけでございまして、一日も早くこれらの薬あるいは医療が発達することを望んでおるわけでございますので、新薬の申請が出た場合に一つでも多くこの試験をパスしてもらうように、これがやはり医学の進歩、薬学の進歩に非常に役立つ、できるだけ多く承認されるものが出ることを望んでおるのでございます。これはまず基本姿勢でございます。
 しかし、新薬の承認は厚生大臣の行政処分にかかっておるわけではございますけれども、先生御案内のように、有効性が認められないときは与えない、あるいは有効性に比べて副作用があるときには与えない、こういうことでございまして、厚生大臣はいわば自由裁量を余り持たない規定になっているわけでございます。したがいまして、厚生省といたしましては、いま考えられる最高の機関と思われます薬事審議会の審査の決定を尊重しなければならぬ、そういうふうに考えております。
 しかし同時に、最後の行政処分は厚生大臣にあるわけでございます。したがいまして、現在丸山ワクチンの服用者はたくさんおられる、患者の方もたくさんおられるし家族の方も非常に、心配しておられる、そういうことを考えますと、この審議会でどういう結論が出るか、まだ先の問題でございますけれども、仮にこの段階では承認できないというような答えが出た場合でも、少なくとも現在の患者の方々が手に入りやすいような措置、これだけは講ずる必要があろう、こう考えているわけでございまして、いまそういうことを一方において考えながらこの問題に対処してまいりたい、こう思っておるところでございます。
八田委員 そうすると、いま厚生大臣は、現在の三万人の使用を考えて、何とか供給に骨を折るという考えで持っていきたい、こういうお考えのようにお聞きしましたが、そのように承知してよろしゅうございますか。
村山国務大臣 先ほど申しましたようなことから、薬事審議会の結論に反するわけにはいかぬと思いますけれども、しかし行政処分でございますから、その与えられた裁量の範囲内で、いまの患者の方々が手に入るように全力を挙げたい、私はかように思っておるわけでございます。
八田委員 どうか厚生大臣、実際に現在使用されている三万人の人は、もしも不認可になれば製造中止になりますから、そうすると一体どうするのだ。自分らの命の綱が切られてしまう。太い綱なんですね、こういった末期がんの患者の人々にとっては。ですから、いまの厚生大臣の御答弁を、ぜひとも行政的にお考えいただきまして、患者の不安をなくすようにお骨折り願いたいと思います。
 終わります。
今井委員長代理 山下徳夫君。
山下(徳)委員 薬務局長にお尋ねいたしますが、現段階における丸山ワクチンは治験薬ですか、治療薬ですか。
山崎説明員 二つの面を持っていると存じます。
 治験、つまりたとえば東北大学でやりました試験で使われましたものは治験薬でございますし、いわゆる千駄木にございます日本医科大学の研究施設において投ぜられておりますものは研究用薬、こういうふうに考えております。
山下(徳)委員 治療薬としては全く現段階においては考えられないのですか。
山崎説明員 治療薬ということがいわゆる正式の承認された医薬品という意味であるならば、それはまだぐあいが悪いわけでございます。
 治験薬といいますものは、実験データを集めるために使われる薬を治験薬と呼んでおりますし、研究用薬は、お医者様自身が御自分の医療の研究のためにお使いになる薬を、いわば研究用薬と呼んでおるわけでございます。
山下(徳)委員 丸山ワクチンは、当初日本医大における一つの治験薬として申請を出されている、これは私も承知いたしております。
 ところが、本来治験薬というものは、一定の病院、一定の医療機関と申しましょうか、そして一定の期間を限って特定の医師または患者に供与されるものが治験薬だと私は理解をいたしております。
 それなのに、今日までもう十何年ですか、にわたって、ほとんどだれでも手に入れられ、どこでも利用できる、しかも十数万人が使っている。これでも治療薬ではないのでしょうか。だれでもいま利用している。
山崎説明員 そういう社会実態があることを否定したり無視したりするものではありませんけれども、いわゆる厚生大臣の承認を受けました治療薬ではない、いわゆる医薬品ではない、こういう意味で申し上げたわけでございます。
山下(徳)委員 ちょっとくどいようですが、厚生大臣の云々ということでございますが、私は一つのカテゴリーとしてどちらに入るかということを、そういう理屈は抜きにして、現段階において――じゃ、もう一つお尋ねしましょうか。
 先ほど大臣の御答弁でも、最終的に来月の七日に開かれる何委員会ですか、常任部会ですか、そこで仮に否定的な結論が出ても患者に対する供給は絶やさないようにしたいというお話であります。本来治験薬ならば、その時点においてもうストップさせるべきなんです。しかしそれにもかかわらず、重ねて大臣は、やはり供給は絶やさないとおっしゃる。いいですか。私は、治験薬というものは、そういうふうに審議会がこれは効かないと言った場合には、もうその時点においてアウトだと思うのでございますけれども、にもかかわらず、繰り返し申し上げますが、それでも使わせるということである。あなたのおっしゃるように云々じゃないのだ。いわゆるそのカテゴリーとして、そこまでいってもやはりまだ治療薬ではないのかということを再度お尋ねいたします。
山崎説明員 社会実態としての、そういう薬として使われている側面と、ただそれは現行法の上で医薬品でないという、そういう意味での側面を私は申し上げたつもりでございます。
山下(徳)委員 非常に何かこだわられるようでございますが、それではいままでの経過をたどってみましょうか。
 先ほど申し上げた、日本医大から申請されてから、昭和五十二年の春ごろになって厚生省は、投与の広がりを見ながら困ったなという態度であった。私はそう伺っております。違うなら違うで結構ですよ。そして五十四年になって厚生省は、これを治験薬とみなして供給行為を続けることはちょっとまずいよということでメーカーに注意を喚起されたと私は聞いているのであります。私は、これは厚生省の措置としては行政当局として当然だとこのことを受け取っているのです。
 いいですか、もう一回言いますよ。そのときに、こう広がってきてはちょっと治験薬とは言えないなということで、供給行為はこれはまずいよということを言われたというのでありますね。それはそうでしょう。さっき申し上げたように治験薬は一定の期間、一定の医療機関において特定の医師、患者に供与さるべきものだと思うものですから、厚生省がこういう挙に出られたことは当然と私は思うのです。したがって、いま申し上げましたようにその後、五十四年の十二月にメーカーの代表と薬務局長の間で、この問題は法律のみで中止すべきではない――これは温情ある判断かもしれません。しかし、あらゆる面を考慮して、むしろ行政的判断に基づいて継続せざるを得ないという相互理解に達した、このように聞いているのですよ。
 だから、こういった一つの歴史的過程を振り返ってみても、勧告されたのは当然だと思うのだ。ここまで広がって、十何万人使って、治験薬ではないよということをおっしゃっている。それでもあなたはあくまで治療薬ということはおっしゃらないわけですか。では何ですか。治験薬とは言えないと言いながら治療薬でもないなら、何ですか。
山崎説明員 冒頭申し上げましたが、治験薬と研究用薬の二つがあると申しました。治験薬という概念は、実際にそれが治療のために使われているかどうかは別にいたしまして、医薬品として承認を受けたものではない、こういうことを申し上げただけでございまして、したがいまして、いまの丸山研究室で使われているものを治験薬であるのか研究用薬であるのかと見るならば、むしろ研究用の薬ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
山下(徳)委員 丸山研究室云々というお話でございますけれども、たとえば癌研においてもがんセンターにおいても使っちゃいけないというたてまえになっているけれども、ここに行っている人たちが陰でたくさん丸山ワクチンを利用しているという事実がある。これは日本医大にリストがありますから、比べてみればすぐわかります。行政当局ならすぐわかる。そこまで広がりを見せておるのにもかかわらず、やはりそういう御回答しかないのでしょうか。この点一言だけ、繰り返すのも大変ですから、大臣、いまのような歴史的過程を振り返ってみて、治験薬とはこのようなものだという一般社会常識にもかかわらずあくまでそういう局長の答弁でございますが、大臣いかがでしょうか。これは理屈は抜き、現状はどうなんでしょう。
村山国務大臣 私の理解しているところを申し上げますと、やはり試験薬といい治験薬といい、これは薬事法上の承認を正式に受けたものではない。しかし、医者がどの薬を使うかということは全くその診療所の良心に従って、その責任において使うわけでございます。したがって、まだ承認を受けていないものにつきましても、それは使うことは当然あり得ることだと思うのです。言葉の問題だ、あるいは法律上の概念の問題だと思っているわけでございます。
山下(徳)委員 では別の立場から御質問申し上げますが、それでは治験薬というのは一体何でしょうか。今後、七日の日に常任部会でアウトと仮に出ても製造は絶やさないという、これは好意でしょう、親心でしょう。私はそれは認めるのです。
 そういうふうにだんだん広がっていって、現在十八万ですかの者が使っているが、これが五十万になっても百万になってもやはり治験薬でしょうか。これは薬務局長で結構。
山崎説明員 量的な規模とかそういうものがおのずから社会的な一つの実態を形成するということはよくあることだと思います。ですから、そういう実態に着目して考えた場合に、先生がそういう治験薬の枠をはみ出しているのじゃないかというような御趣旨の御質問であるならば、確かにそういう社会実態と法律上の定義といいますか、そういう点は相当な乖離があると思います。
 しかしながら、どこまでが一体そう言い切れるのか。これは何人もなかなか言い切れない問題だと思います。いま先生冒頭お尋ねのように治験薬というものは何かということを言えば、法律的に言って申しわけないのですけれども、要するに医薬品承認のための申請データを集めるためにある医療機関にその薬を投与してもらってそのデータを集める、そのために利用されるものが治験薬でございます。
山下(徳)委員 局長、ああ言えばこう言うということで、それで逃げ切れればいいのですよ。今後新しい薬も次々と開発されてくる、その場合にあなたのような御趣旨で行けますか。五十万、百万となったときはその時点で考えるがと言うが、すでに二十万近くになっているが、二十万ではだめだよとおっしゃるなら三十万はどうですか。四十万はどうですか。
山崎説明員 ですから、先ほどの繰り返しになるわけでございますけれども、いわゆる治験薬のためには正式な意味で治験届けというものが出てまいります。ですから、丸山研究室系統で仮に治験届けというものが出てくればそれは治験薬になるわけでございまして、そうでない限りは、先ほど大臣御答弁のとおりお医者様の自由な診療行為の内容としましての研究用のお薬だ、こういうふうに観念しております。
山下(徳)委員 最後に、この問題についてはもう一言にとどめますが、もしも同じようなものが今後開発された場合に、これだけ広がっても治験薬でいいよということであなた方取り締り官庁として行けますか。いいですか、今後そういうものが出て五十万百万広がっても、あるいは二十万、三十万広がっても治験薬でいいよ、治療薬でないよということで指導官庁として行けますか。
山崎説明員 そういう意味ではこの丸山ワクチンは全く異例の広がりを見せているものだと理解しておりまして、今後ああいう規模にあのように拡大する薬はちょっと予想できないのでございます。
山下(徳)委員 この問題はもう時間がございませんから……。そういう回答しか返ってこないということは大変どうも残念です。
 それでお尋ねしますが、ピシバニールとクレスチンは現在化学療法剤として使用されていますか、あるいは免疫療法剤としてか、主としていずれでしょう。
山崎説明員 クレスチンとピシバニールは、当初承認した段階とは非常に学問の進歩もございまして……(山下(徳)委員「時間がないから現段階でいいです」と呼ぶ)現段階では免疫療法剤というような考え方で使われているのではないかと思います。
山下(徳)委員 おっしゃるとおり五十三年あるいはもっと前の五十年ですか五十一年ですか、そういう時点においては免疫療法剤というような扱い方はなかったと思うのですから、それは私もよく理解をいたします。そういうことで丸山ワクチンに対しても申請の当時同じだったと思うのですが、同じ扱いしかできなかったということもわかります。
 そこで丸山ワクチンについては、俗に言う抗がん剤ですか、これは学問的な言葉ではないかもしれませんが、どうも有効性が確認できない、それではということで初めて免疫療法剤というものがここで考案されたと言いましょうか一つのハードルができて、これをクリアしなさい、これはある面においては厚生省の最大の好意だと思うのです。何とかしてがん患者のために救いがあればということで新しいハードルをつくって、これをクリアすればクレスチン、ピシバニールと同じような条件のものはクリアできなくてもいいよ、こういうふうに好意的におやりになったと私は理解しますが、いかがでしょうか。
山崎説明員 好意的といいますかどうですか、とにかくあの時点、第一次、第二次の審査におきましては、クレスチン、ピシバニールと同様の目で単独療法、併用療法という一般臨床試験の結果を見たところどうもぐあいが悪かった。それならばその比較臨床試験というような形でやってみたらあるいは何かいい芽が出るのじゃないか、こういうことでやったことは事実でございます。
山下(徳)委員 その措置は丸ワクについての特例でございましょうか。
山崎説明員 丸ワクについての特例といいますか、要するに丸山ワクチンの何らかの有効性がどこかの場面であらわれるようなそういうものの一つの可能性として追求した、こういうふうに理解しております。
山下(徳)委員 そうであれば、今後申請されるそういった制がん剤について、どちらを基準として審査されますか。いまのは特例に近い御答弁ですね。これで何とかならないかという特例に近いような御答弁ですが、今後新しく出るものについては、ピシニバールあるいはクレスチンが当初受けたと同じような取り扱いで、あるいは丸ワクもそうでございましょうが、おやりになるのでしょうか、特例ならば。
山崎説明員 いまのところの考えでは同じような扱いでやっていくということが筋だろう、このように考えております。
山下(徳)委員 そうすると、あくまでこれは丸ワクに対する特例であって、今後はいわゆる免疫療法剤というと再びお蔵に入ってしまうわけですね。もう丸ワク以後はこれをおやりにならない、あるいは昔はそういう制度はなかった、比較的新しい検定法と申しましょうか、しかし制度ができた以上は今後これも全部やるのだよということですか。そこのところをちょっとはっきりしてください。
山崎説明員 要するに、単独療法で効いているということであれば、その単独療法を見る基準というのは癌学会の基準とかそういうもので見る、こういう意味でございます。
山下(徳)委員 それで、ピシバニール、クレスチンは単独療法で見た。ところが事志と違って、現在はこれが免疫療法剤として使われているということをさっき御答弁でお認めになった。免疫療法剤として当時の認可の基準と違った方向で現在通用されているのはあなたも認めたし、学会の実際の臨床においても、これはだれでもが認めている。
 それじゃどうでしょう。これはクリアさせなくていいのでしょうか。免疫療法剤としてもう一回クリアさせる必要はないのですか。
山崎説明員 基本的には、いわゆる単独療法で基準をパスしておりますので、それにつけ加えて別の基準を持ってくるという考えはいまはございません。
山下(徳)委員 ちょっといまのは理解しかねます。私はもう一回申し上げますが、単独療法ですか、それによって最初基準をクリアしているのです。しかし、あなたはさっき、これは免疫療法剤として使われていると明らかにお認めになったのですよ。そうすると、いま丸ワクが受けているのは免疫療法剤としての延命効果でしょう。ですから、免疫療法剤としてクレスチン、ピシバニールが使われているというのは、やはり延命効果を期待して使われておる、これは常識なんです。そこのところを聞いているのですよ。それであれば、延命効果についてもう一回おまえの方もテストするよということを言わなくていいのかということを聞いているのです。
山崎説明員 免疫療法剤として使われているからという使われ方の問題、これはいわば学問的な観念の仕方といいますか、実際にそれが免疫療法的な効果を発揮しているという側面をとらえたものだと思うのでございます。ところが、クレスチン、ピシバニールはすでに従来の基準でパスしておりますので、それはそれなりに動かすことのできないものだ、かように考えておるわけでございます。
山下(徳)委員 ちょっと私は解しかねますが、たとえば整腸剤というのが許可されて、下痢どめのものを、むしろ秘結剤に使ったらよかったからというのでそれをどんどん使ってもいいのですか。それはもう認めるのですか。ある意味においてはそれは有効性がない、再評価の場合はひっかかると私は思うのですよ。
山崎説明員 薬には一般的に効能効果がありますので、たとえばがんについて言えば、どういうがんに効くというような適応症が掲げられておるわけでございますから、それにのっとって使用するのがお医者さんの準則、こういうことになっておるわけでございます。
山下(徳)委員 そうでない使われ方をしているとあなたは認めているでしょう。
山崎説明員 それは、免疫療法剤とか化学療法剤とかいうその薬の性質をあらわすものと次元の違う区分の仕方だと思います。
山下(徳)委員 では、クレスチン、ピシパニールは、免疫療法剤として一般的に使われる、それが最近の一般的な使い方だとわかっても、今後は免疫療法剤としてのいわゆる延命効果というのは、再評価の立場からやらなくていいですね。もうおやりになりませんね。はっきり、それでもいいのでしょう。
山崎説明員 そういう判断になりますと、また別のこういう判断があるわけでございます。と申しますのは、効果判定の基準というのは、学問、がん治療の進歩というものに応じて変遷がございます。そういう意味で、すでに承認されている免疫療法剤につきましても、仮に学問レベルの水準に照らして見直すべきであるという御意見であるとするならば、そういうものにつきまして今後の推移を見て検討していくべきものだ、このように考えております。
山下(徳)委員 これは午前の参考人の部でただすべきだったのですが、時間がございませんので、御意見として承っておきます。
 わが国における年間のがんによる死亡者は約十六万人ですか、この数字はこれでいいのですか、これは私のメモでございますけれども。仮に東北大の実験によって三%としてみた場合でも、いわゆる三%ということは、十六万人に対して四千八百人に該当するわけであります。毎年毎年、丸ワクを認めることによって四千八百人の命が救われるとするならば、ただ単にパーセントにこだわるべきではないと私は思うのです。これはおかしな例かもしれませんが、いまの宝くじを見てごらんなさい。三千万円の当たりくじというのは百万枚に一枚ですよ。これをパーセントに直しますと〇・〇〇〇一%、しかも銭金だけの問題、それに人が群がっている。一方は三%、しかも人命の問題でありますが、このことについて、やはりこういうがんについてはかぜ引きの薬と違った一つの行政的な立場から基準を考えてもいいというお考えがあるかどうか。
山崎説明員 がんについてはなかなか特効薬がないという現状もございますし、そういうことでがんの薬についての基準も、学問レベルの進歩もございますけれども、いろいろと考え直していかなければならない、そういう問題は確かにございます。先生がおっしゃるように仮に三%であったとすればそういうことになる、そういうことはそれなりに理解できるわけでございますけれども、それにしてもがんの薬についての一つの判定基準というものがございますので、それに従って承認が行われているということでございます。
山下(徳)委員 時間でございますからこれ一問で終わりますが、昭和三十八年の閣議の了解事項として、この種の審議会の委員の任期は四期八年ということに了解されている。しかるに桜井さんは、さっき何か五十二年からどうとかと言っておられましたけれども、通算すると、これは+八年に及んでいるのです。しかも、閣議の了解事項のところで例外というものが確かにあったと思うのです。閣議として、特に例外として云々とあるのですが、これは全く余人をもってかえがたいようなごく特別なものであると私は解釈している。そうでなければ、閣議で何も決める必要はないと思うのです。
 そこで、桜井さんは全く貴重で、余人をもってかえがたいということで十八年もおやりになっているが、ここを通らなければ全部製薬の認可は取れない。認可の前提ですからね。だから、+八年も、すべて座長であったとは思いませんけれども、二十年近くこういうところにいるということはいかがなものであるか。先ほど桜井さん御自身が、不適格であったかもしれないとおっしゃったのです。厚生省に、まあまあいいからと言われたからいたのだと、さっき答弁がありましたね。ここのところはどうでしょう。
山崎説明員 確かに、一審議会の運営の問題あるいは委員の余りに長期にわたる問題についていろいろな御批判があることは十分承知しております。そういう意味で閣議決定、これは一応ルール違反ではないのでございますけれども、それにしても実質が余りに長過ぎるではないかという御批判もございますので、それらの点を含めまして早急な是正措置なり何なりを積極的に考えていきたい、こういうふうに思っております。
山下(徳)委員 簡単ですからもう一言付言。
 桜井さんはさっきみずから不適格とおっしゃった。そしてあなたも、今後はやはり改めるべきだという気持ちがおありのようであります。今後はそれで結構でしょうけれども、瑕疵ある座長によって決められたことは、もう一回もとに戻さなければならぬ。不適格であったということを桜井さんが認めた以上は、もう一回原点に立ち返って、瑕疵のない委員によって再審査されるべきであると思うのでございますが、大臣、これはいかがでしょう。これで終わります。
村山国務大臣 委員の構成につきましては、私はいろいろ考えるべき節があるであろうと思います。という意味は、疑いを持たれるとかあるいは新しい知識を入れるとかそういった観点でございまして、先ほどから四人の参考人の意見を聞かしていただきまして、それぞれ専門の立場でりっぱなことをおっしゃったと私は考えているわけでございます。したがいまして、仮にの話でございますけれども、委員の交代をしたからといっていままでのものが無効であるとかあるいは不公正であるというふうには私は考えておりません。
今井委員長代理 次に、森井忠良君。
森井委員 村山厚生大臣は、過ぐる通常国会の途中で園田前大臣とおかわりになりました。私どもといたしましては、早速大臣の所信をお聞きする一般質問の委員会を開こうといたしましたけれども、やや無理があるということでございまして、また、いきなり就任直後にお聞きするのも失礼かと存じまして遠慮させていただきました。こういうふうに委員会で大臣に御質問をいたしますのは事実上初めてでございます。きょうはすでに御存じのように丸山ワクチンの問題を中心にお伺いをするわけでございますが、いまの答弁をお聞きいたしましても、私どもといたしまして大臣とのおつき合いを少し変えていかなければならぬかなという感じもいたしますものですから、思いつくままに一つ二つ、直接丸山ワクチンとの関係はないかもしれませんが、大事な大臣の所信をこの際お聞きするという意味でちょっとだけ質問させてもらいたいと思うのです。
 一つは、きのう厚生大臣は総理と会談をなさいました。そして総理からいわゆる行政改革についてかなり強い要請をお受けになったように、新聞では報道いたしておるわけでございます。具体的には、予想されます臨時国会におきまして特に厚生年金の国庫負担割合の削減をぜひひとつ提出しろ、こういうことでございました。しかし、実際は厚生省はまだたくさん問題があるわけでございまして、それ以外にも、たとえて言いますと、児童手当の問題あるいは社会保険事務費の保険料肩がわりの問題等々、私どもが記憶をしておりますものだけでもかなりあるわけでございます。
 大臣は、総理の要請どおりお聞きになるおつもりですか、まず所信のほどを承っておきたいと思うのです。
村山国務大臣 率直に申し上げますと、きのうは総理といろいろ話しまして、厚生省として臨調を受けてどういう考えを持っているかということで各項目についてわれわれの現在の考えを申し上げました。
 総理がその中で特に言われましたことは、今度の臨時国会に行革がらみのもので臨時暫定的なもの、これをできるだけ多くまとめて通しておきたい、ついては厚生年金の国庫負担の削減、これは目玉商品だから臨時措置としてぜひ入れたらどうか、こういうお話でございました。私はまた別の見地から、むしろ通常国会の方が適当ではないですかという幾つかの理由を挙げて申し上げたのでございますが、総理はやはり臨時国会の目玉商品だから何とか入れるように努力してくれということできのうの二人の間の会見は終わったわけでございます。今後詰めてまいりたいと思っております。しかし最終的には、もちろんわれわれは来年度のいわゆるゼロシーリングに対して協力する立場にありますものでございますから、できるだけ総理の指示に従って努力してみたいと思いますけれども、きのうは厚生省の考えを述べ、総理はそれに対して強い希望を示された、こういう段階でございます。
森井委員 そうしますと、最終的には総理の指示に従うということですか。
村山国務大臣 それは最終的にどうしてもやるということになりますれば、これは従います。
森井委員 それでいいんですかね。大臣御存じのように、臨時国会では、継続案件になっております老人保健法案がございます。それに厚生年金の国庫負担割合の削減ということは、具体的には年金受給者のみならず年金を掛けておる現役の労働者にも全部響いてくる大きな問題でございます。したがって、私はある意味で厚生大臣の職責をかけてでも、いま申し上げましたように老人保健法案と一緒にこの問題を審議するというふうなことは、これはきわめて重大だと思っておるわけでございます。しかしそれにいたしましても、そういった配慮なしに総理の指示に最終的にお従いになりますか、そこのところをお伺いをしたいわけでございます。
村山国務大臣 省略いたしましたけれども、私の方の考えを種々述べたわけでございます。
 それから、いま委員からおっしゃいました年金の掛金者に対して迷惑をかけるというようなことは考えていないのでございます。
森井委員 国庫負担が減るということは、結果として年金の加入者に影響が出ると思うのですね。したがって、私どもといたしましてはこれはきわめて重大な問題だと受け取っているわけでございます。先ほど申し上げましたように、老人保健法案でもこれは大変な問題ですね。そういうものとあわせて最終的に総理の指示に従うということは、とりもなおさずいまも申し上げましたように臨時国会にかけるということになるわけですから、影響は出てまいりましょう。
村山国務大臣 率直に申しますと、私自身が、恐らくいまの考えでございますといまの臨時措置というものは、どういう形になるかわかりませんが事によると一本の法律で特別委員会にかかるのじゃないかと思います。老人保健法案は何といっても社労の方でお願いしなくちゃならぬ、これは大変な大きな問題でございます。これは私がきりきり舞いをするということは覚悟せざるを得ない、こう思っておるわけでございます。しかし、さっき森井委員がおっしゃいましたような、それが年金の掛金者に最終的に負担になるというような内容は考えていないところでございます。
森井委員 これ以上の議論は、きょうは時間がありませんからいたしかねるのですけれども、これは年金局長いますか。――私の意見だけ申し上げておきますが、国庫負担が減れば当然年金の加入者に影響が出るものと私は思います。したがって、この点十分慎重に対処していただきたいと思っております。
 特に、もう一点、だけですけれども、七千億以上の削減をおやりになるわけでしょう、それしか方法がないのですか。
 たとえば、わが社会労働委員会でしばしば問題になってきておりましたことの一つに、医療費の支払い方式あるいは医療費のむだの排除という問題がございます。出来高払い点数制で、どんなに濃厚診療をしても、どんなに数多い検査をしても、支払基金へ請求すれば無条件で金がおりてくるという仕組みになっていますね。薬価の問題にいたしましても、これは欧米先進国並みの総医療費に占める薬代ということになれば、いまの半分近くにはなるはずです。七千億どころか一兆円でも一兆五千億でもやろうとすればできるわけです。しばしば指摘しておりますものについてはそれは触れないで、いきなり厚生年金でありますとか、あるいはきょう時間がありませんから申し上げませんけれども国民健康保険の一部地方肩がわりだとか、そういったことをおやりになるのは少し短絡的だとお思いになりませんか。政治家としてこの点一言だけお伺いしておきたいと思います。
村山国務大臣 医療費の適正化につきましてはわれわれは最大の関心を持っておるところでございます。そういう意味で、その手段、方法はいま申し上げませんけれども、最大の関心を持っておりますし、現に来年度のゼロシーリングにおきましてもかなりの金額を見積もっておるところでございます。
森井委員 大臣のお気持ちは私には理解できませんが、お気持ちのほどは察しがつきますのでこれくらいにしまして、次に、先ほど申し上げましたとおりあなたの前任は園田厚生大臣でございました。そして、当然のことでありますが通常国会でかなりな部分おつき合いをしていただきましたからいろいろ議論がございまして、その当時の園田厚生大臣の発言が数々ございます。こういったものにつきましては、当然のことでございますが厚生大臣として御発言になっていらっしゃいますので、したがって、村山厚生大臣も園田大臣の答弁につきましては、議事録で明確になっておる限りそれを継承なさるものと理解をいたしますが、この点はいかがでしょう。
村山国務大臣 私も予算委員会のメンバーでございまして、園田大臣の発言はよく聞いておりました。そういう意味で、やはり公正ということが一番大事だということを私はよく考えました。したがいまして、いままでにないことでございますけれども、この薬事審議会における審議の経過並びに結果についてはすべて公表する、そして専門家の領域あるいは関心を持っておられる各方面の批判を仰ぐことが結局この問題を公正に取り扱い、ひいては薬学の進歩につながる道だ、こう思ってやっておるところでございます。
森井委員 抽象的にお伺いいたしましたところ具体的に答弁をしていただきましてどうもありがとうございました。
 そこで、園田厚生大臣は、いま大臣がおっしゃった点もございます、このデータの公表、クレスチンもピシバニールも、そして今度の丸山ワクチンも三つとも公表なさるのじゃないかというふうに私ども考えておりました。いまの大臣の御答弁はそういうふうに解していいかということが一つ。
 それから問題は、公表すると言いましても忘れたころに公表されたのじゃ、それこそ私ども頭が悪うございますから、これは拍子にも合いません。したがって、いつ公表なさるのか、この点についてもどうでしょう。
村山国務大臣 私が公表と申し上げているのは、調査会が済みましてから、調査会長がいままでの審議の経過、それから結果についてプレスを初めといたしまして、これも厚生省に入っているプレスだけでございませんで、広くプレスを通じまして、その他のマスメディアを通じまして説明をしているわけでございます。それが早くも各方面に反響を呼んでいるわけでございます。特別部会における吉利委員長が公表したのもそういうことなのでございます。
 そういう意味で、いわばガラス張りの中でこの審議を進め、その結論もまたガラス張りの中で得たい、これが公表という意味でございます。
森井委員 けさほどの参考人からの意見聴取でも大臣お気づきになりましたように、不満の一つはピシバニールやグレスチンと比べて丸山ワクチンがまま子扱いになっているではないか。逆に言えば厳しい審査が丸山ワクチンには課せられているではないか、こういうことだったわけです。
 そこで、先ほど吉利特別部会長の話が出ましたけれども、あれで発表なさった程度ではこれはもう具体的なデータの公表と言えないと私は思うわけでございます。したがって、細かく出てまいりましたデータの公表と、それからできることならやはり調査会と特別部会の議事録、そういったものをぜひ明確にしていただきたいのと、いままでとかく風評がございましたクレスチンやピシバニールについても当然比較検討しなければ国民は納得いたしません。したがって、これにつきましても申し上げましたような基礎となったデータと、そして議事録とをあわせて公表なさるべきだと思うわけでございます。大変恐縮でございますが、再度御答弁をいただきとう存じます。
村山国務大臣 おっしゃるようなことでございますが、可能な限りひとつ公表してまいりたいと思っております。
森井委員 次に薬務局長。もちろん非公式な話で気にもかけていないと言われればそれもやむを得ませんが、私たちはあらかじめ、きょう社会労働委員会を開いていただきまして、そして丸山ワクチン問題の集中審議をしようということにいたしました。したがって、それを決定いたしました後に、いま申し上げましたようにもちろん非公式で、おれは聞いていないと言われればそれもやむを得ないと思いますが、せめて二十八日の特別部会は延ばせないか、もし延ばせないのならば少なくとも結論をしばらく待ってもらえないか、これだけの要請はできるだろうという気持ちで私どもはそういう非公式な話し合いをしたと思うわけでございます。残念ですけれども予定どおりおやりになりまして、そして予定どおりの結論をお出しになったわけでございますが、私は、今月の十日に調査会の結論が出て、それから委員会で何とかしなければならぬじゃないかという問題になり、そして要するにこの丸山ワクチンの承認を何とか早くしてもらいたいという国民の皆さんの声にも耳をかしながら今日に至りました。これだけのお願いをしても、残念なことに先ほど申し上げましたように予定どおりの行動をなさいました。あえて私は国会軽視とは申し上げません。与党の皆さんは恐らく党議でお決めになったことじゃないでしょうから、したがって、そうは申しませんが、私どもの党のように態度を決定しているところもございます。恐らくはかの野党の皆さんもほとんど同じじゃないかと思います。きょうは与野党を通じてほぼ同趣旨の丸山ワクチンを承認しなさいという立場での質問が続いたわけでございます。にもかかわらず、申し上げましたように、あえて強行と申し上げますけれども、一昨日の特別部会でお決めになった。
 あなた方はどういう立場で、どんな努力をなさったんですか。
山崎説明員 七月十日が最終の調査会の日でございまして、その日にすでに次の特別部会の日取りが決められたという事情もございまして、審議会というのは自主的に御自分で、日取りもそうでございますが、自主的な御判断でやっておられるわけでございますので、私ども事務方としましてもそういう自主性は当然のことながら尊重してまいらなければならない、これが基本原則だと心得ておるわけでございます。
森井委員 薬事審議会には幹事という制度がございますね。幹事は局長もなっておるわけですか。局長は幹事ですか。
山崎説明員 さようでございます。
今井委員長代理 薬務局長に申し上げますが、もうちょっと大きな声で発言をしてください。
森井委員 幹事は部会に出席して意見を述べることができるようになっていますね。私どもがそういった要請をしたことについて意見をお述べになりましたか、述べませんでしたか。
山崎説明員 お答え申し上げます。
 日取りの点についてはすでにもう決定済みでございますので、意見を述べる機会がませんでございました。
森井委員 私は二つ言ったのですよ。日延べはできないか、もし日延べができないのなら、結論を待ってもらえないか。部会には御出席になったんでしょう。せめてきょうは結論を待ってくださいと言えなかったかどうかなんです。
山崎説明員 国会事情その他の状況はそれなりに一般的にお話し申し上げました。私にかわりまして課長がお話し申し上げましたが、何と申しますか、そういう具体的なお話につきましては審議会独自の御判断で行動されるのがたてまえになっておりますので、具体的に結論を延ばせとかあるいは結論を急いでくれとか、こういうことを申し上げることは私どもの範囲を超えている、こう感じておるわけです。
森井委員 もう一つ聞きますが、かつてといいましてもことしの通常国会の社会労働委員会におきまして丸山ワクチンが問題になったときに、園田厚生大臣は、調査会の委員の中に丸山ワクチンに反対をする人はいるのかいないのか、これはいないということでございました、こういう発言がございました。それなら厚生省としてもできるだけ丸山ワクチンがよい方向に向かうように――たしかよい方向に向かうようにという言葉だったと思うのです、厚生省としてもお手伝いをさせるようにいたしております、これは恐らくあなたもおられたところであったと思いますけれども、大臣の答弁があったと思います。お認めになると思うのですが、丸山ワクチンの認可についてあなた方は一体どういうふうなお手伝いをしてくれたの。
山崎説明員 一つは、申請者に対するいろいろな面における指導ということが私どもの当然の一つの職務としてあるだろうと思います。そういう意味におきましては、可能な限り申請者サイドにいろいろと指導をしてきたつもりでございます。
 もう一方の審議会に関する問題につきましては、先ほど来申しておりますように自主的に御判断することでございますが、ただ私どもは、一般論として、やはり審議を早めていただきたいということは前大臣もそう申しておりましたが、そういう方向で進めておりました。
 たとえば五地区の資料というものがなかなか出そろわなかったのですが、そのうち三地区が先に届きましたので、その時点で全部そろわないうちに調査会を開いていただくというようなこともあえてやっていただいた、そういういわば日取りその他の点につきましては審議会にお願いしたという経緯はございます。
森井委員 先ほど同僚の菅議員から桜井座長に質問をしておりましたけれども、今度期せずして、特別部会のときに初めて出された丸山ワクチンの規格が違っておった、具体的に言いますと、申請をしたものとそれから現に使っているものと違いがあるということを言われました。私はこれは驚きなんです。それなら仮にそれが事実だとすれば、私はちょっと信じがたいのですけれども、仮に事実だとすれば、それこそいま使っているものを持ってこい、これは簡単な行政指導でできるはずです。結論が出るまで黙っておいて、あれは規格が違っておったというふうなことが吉利部会長から発表になっておりましたけれども、事務局に携わる厚生省としてこれは冷淡きわまる。後で草川委員からも話があると思いますけれども、数々の文献についても、もし手伝う気があるなら、これも見てください、これも見てくださいというのをあなた方は指摘していいじゃないですか。ほとんどそういったことがなされていない。
 再度、手伝いの意味について御答弁願いたい。やっていないならいないと言ってくれた方がいいんだ。
山崎説明員 これは相当長い時間の経過があるわけでございますけれども、いろいろとゼリア会社に対しまして、申請データその他についても途中の時点、第一次の後、第二次の後というふうな段階におきまして、それぞれ審議会の意見もよく伝え、中身はこうだというようなことで十分指導してきたつもりでございます。そういうことでございまして、私どもは私どものなし得る範囲で十分のことをやったつもりでございます。
 そういう事情でございますので、結果がこうなったからやらなかったんじゃないかというようなおっしゃられ方は多少あれでございまして、私どもはそういう気持ちでおるわけでございます。
森井委員 ちょっとはっきりしてください。規格の問題については私重大だと思うのですよ。それで、もしあなた方が言われるように物質のすりかえがあったと言われるのなら、電話一本で済むことなんです、同じ都内ですから。全部そのままにしておかれたのかどうなのか。それから事実すりかえがあったのかどうなのか、すりかえといいますか申請されたものと違っておるのかどうなのか、この点はぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。
山崎説明員 先ほど午前中に参考人がお述べになりましたものは、ある物質の再現性があるかどうかについて非常に不安がある、こういう意味で申し上げましたので、先生の御質問とちょっと違うかと思います。
 先生の御質問のような面も一つございまして、形式的なものだというふうな割り切りもできないわけではございませんけれども、今回ことしになって申請されたものはSSMの注射液、従来Aと言っておりましたものでございます。ところが、臨床データその他実験に使われましたものは、AとBというものを単独に使ったり交互に使ったりという、そういうものでございます。それは現実実態でございます。
 ただ、これはこういう問題はありますけれども、中身は性質は同じであろう、こういう割り切りが一つございます。ですから、そういう後の問題は後の問題として処理しよう、いわばこういうことで中身の審査に入っていただいた、こういうことが一つございます。
 それともう一つは、実は規格の中身にも関連しますが、フェノールが入っている、入っていないという問題が一つまた別の問題としてございます。
森井委員 だから、いままで試験をしたと同じものを持ってきなさいというふうなことぐらいはあっていいと思うのです。
 いまSSMのAとBの問題については局長が触れておられましたけれども、これは濃度の問題だけですね。したがって、防腐剤がどうかこうかという問題がありますけれども、私は注意をなさればいいと思うのです。特にわざわざ特別部会長が記者会見の場で明らかにされるような中身じゃないと思う。私はためにするけちだと思うのです。けちをつけているに違いない、そうとしか受け取れませんよ。この点は時間がありませんから、厳重に注意をお願いしておきたいと思います。
 次に、私きょう感じましたけれども、確かに私ども理事の段階で、来ていただきます参考人につきましては人選をいたしました。しかし、間接的ではありますけれども、私どもの野党だけの推薦ではありません。間接的に恐らく政府の厚生省の意図の入った方も与党を通じて出されてまいりました。ある意味で私ども公平を保ったつもりでございます。これは大臣もきょうお聞きいただきましておわかりをいただいたと思うのでございます。そういった中で、私は率直なところ、ずいぶん印象を変えました。いままでどこでだれがとは申し上げませんけれども、厚生省の皆さんはもう丸山ワクチンなんというのは取るに足りないものだ、とてもじゃありませんけれども、あんなものを認めるわけにいきませんという趣旨のことを私も何回か小耳にはさんでおるわけでございます。
 しかしきょう聞きますと、れっきとしたりっぱな先生方が、それこそ具体的に申し上げますと桜井座長の孤立の場面がしばしばあったと私は思うわけでございます。まさに孤立でした。たとえば砂原参考人の意見も聞いてみますと、これはいいものだ、しかしボタンのかけ違いで、研究のルールを間違っているというふうなことを申されました。これは私には、反論があるのです。これはもともと皮膚科の専門の先生の問題ですから、動物実験をしろといったって、人間の皮膚と同じような動物というものはどこにおるのでしょうか。私はそう見つかるものじゃないと思う。そういった意味の反論はあるのですよ。あるけれども、総じてみんなが協力をし、あの人はルールとおっしゃいましたが、ルールを何とか正常に戻せばこれもおもしろい実験ではないかということは盛んに言っておられました。
 特に重視したいと思いますのは、桜井座長さんは御承知のとおり癌研です。しかし、後でちょっとお伺いしたいと思いますが、佐々木研究所の佐藤博士、これも日本にとりましては欠かすことのできないりっぱな研究者だという理解を私はしております。これは一体だれに聞いたらいいのですかね。やはり薬務局長。癌研と佐々木研究所と比べてどっちが偉いのですか、俗っぽい言葉で言いますと。
 文部省の研究資金は、お聞きのように三分の二は癌研が取ると言われました。癌研といいますか、桜井さんの方へ取る、三分の一を佐藤先生の方が取る、こういう表現でございましたけれども、一体これはどっちが権威があるのですか。
山崎説明員 私素人でどちらがお偉いとかなんとか、そんなことをおこがましく申し上げる立場にございませんけれども、佐藤先生は医薬品の開発の基礎的な研究分野、特に効力薬理という研究の分野で大変なすぐれた方だ、こういうふうに承知しておるわけでございます。
森井委員 あなた、わからないものを答弁をしてもしようがないからそれは私もこれ以上追及しません。これはもう率直なところどなたに聞いても甲乙つけがたい。ただ、あえて権威主義からいけば、やはり癌研かなということが返ってまいりますけれども、実績からいけば、たとえばピシバニールにしてもクレスチンにしてもやはり佐々木研究所でちゃんとデータをおとりになっているのですね。基礎実験をおやりになっています。きょうは時間がなくて聞けなかったのですけれども、そこではいま申し上げました先発二つの薬、免疫剤と、丸山ワクチンとの間ではほとんど差はなかったというように私どもも聞いています。これは局長、耳に入っていますか。
山崎説明員 正式な意味でといいますか、文献その他で承知しているというような意味じゃございませんが、私はたしか週刊誌だったかよく覚えておりませんけれども、そういうことを見たか聞いたかした覚えがございます。
森井委員 クレスチンを承認される場合に二つ三つ条件がついたというふうに聞いておるのです。たとえば薬効成分の正体の研究と解明、まだ不十分ですから。それから副作用をもうちょっとチェックしなさい、臨床効果の報告をしなさい。表現は適当でないかもしれませんが、そのほかもあるかもしれませんが、幾つかの条件がついていますね。
山崎説明員 クレスチン、ピシバニールにつきましてそれぞれ幾つかの条件がついております。
森井委員 それはもう報告がありましたか。
山崎説明員 ございました。
森井委員 すべて解明するに足りる資料でしたか。
山崎説明員 お答えいたします。
 それぞれ中身がいろいろ複雑でございますけれども、それぞれのものについてその都度報告があり、調査会にその都度それを審議していただいて了解されております。
森井委員 もう時間がないからいいですよ。あとまた同僚の皆さんに追及をしていただくとして、いずれにしてもクレスチンとてこれは完全なものではなかったし、全部が解明されて承認をしたわけではないのですね。このことを明確に申し上げておきたいと思います。
 そこで大臣、私最後の質問ですけれども、ぜひお聞きをいただきたいのは、先ほど来山下委員長からもちょっとお話がありましたように、先ほど桜井座長は、もう私は適格でございませんという意味の答弁をなさいました、不適格者でございますという答弁がありました。これは明確にありましたね。そして言われておりますように、この人たちはすでに承認になっておりますクレスチンあるいはピシバニール、そういった研究に関与をなさって、しかもことしの通常国会で問題を指摘されて、厚生大臣もやはり人選については検討したいという意味のことを話しておる。これは私が質問したのではありませんからいずれ質問者からまた解明があるかもしれませんが、いずれにしても大臣、この際人事を一新する必要があると私は思うのです。これをしなかったらきわめてゆゆしい問題になってくる。
 しかも人選を調べてみますと、たとえば抗悪性腫瘍剤調査会の委員のメンバーを見ますと、同じような系統の人、大要三つになるのですよ。一つは桜井座長等を中心にいたしますいわゆる癌研のグループです。これが三人いらっしゃいます。それから国立衛生試験所、そういった関係の方が三人。そしてあと国立病院あるいは医療センター、そういったところからこれまた私の調査によりますと三人ないし四人なんです。
 いずれにいたしましても偏っていまして、いみじくもきょう、先ほど言いました、権威ある佐々木研究所の部長をしていらっしゃいます佐藤博士から、これはチームが偏っているではないかという指摘がございました。こんなことをしておったら、これはいつまでたってもやはり問題が残る。先ほど行革の答弁、私納得しませんでしたけれども、せめて大臣これはやってくださいよ。もうしばしば言われて、ちょっと言葉がどぎつうございますが、利権ふんぷんたるものです。だから責められて先ほど桜井座長はとうとう、私は不適格者でございますと言い切ってしまいました。
 それで今度また常任部会があるわけです。ここでまた同じような結論が出る。実際には機械的なんです。調査会で出たものは特別部会で恐らく、二十八日何時間かかったか知りませんけれども、先ほど指摘されたようなデータの変更も含めて、極端に言えばこれだけの大きな問題を審議するのにあっという間に終わってしまったと私は見ているのです。こんなことを許して本当に国民の命と暮らし、健康が守れるのかどうなのか。
 特にこのがんの問題につきましては、いろんな意味でまだ未解明な部分が非常に多い。丸山ワクチンはああいう形ですけれども、薬をもらいに行く人はどんどんふえているのですよ。特に七月十日の発表以来、だめだという発表があってからむしろ患者や家族の人がふえておるということを私どもは聞いています。
 大臣、ここまで来ますと、これはとりあえず常任部会を延ばしていただく、これが一つ。そして延ばした上で人選をやりかえてください。それでないと、仮に常任部会でおやりになってまた私どもと意思が違うということになりますと、これは国会審議にも影響してくると思うのです。大臣の所信をぜひお伺いしておきたいと思うのです。
村山国務大臣 私は先ほど四人の参考人の意見をじっくり聞かせていただきました。それぞれの立場、それぞれの専門領域のお話ではございますけれども、いずれもりっぱな人だなということをしみじみ感じたのでございます。それだけまた、がんというものがむずかしい問題であることも、よく認識いたしました。
 いまのお話しでございますが、疑いが持たれることがないような方法を考えてみたいと思います。そのやり方、時期等についてはお任せ願いたいと思います。
森井委員 ほぼ時間が参りましたから、聞きたいことはまだ山ほどございますけれども、はしょらせていただきますが、私どもといたしましても、いま大臣、適当な方法を考えるとおっしゃっていただきましたから、いますぐというのはちょっと無理だと思いますけれども、常任部会が開かれます来月の上旬までには、大臣の決断があるものと期待をいたします。
 以上です。
今井委員長代理 次に、小林進君。
小林(進)委員 午前中にも申し上げましたけれども、わが社会党は、ともかく党議に基づいて、これを保険薬として用いることを決定しているのです。
 それは何が理由かというと、わが委員長飛鳥田君が鈴木総裁にもお話しをしたのだが、彼は切実な経験を持っている。自分の一番身近な――これから先は言いませんけれども、実際にあらゆるがんの手術と化学的療法で手を上げられた末期現象を、丸山ワクチンによっていま命を長らえているという切実な経験を持っている。私も門前の小僧習わぬお経を読むで、なぜ一体こんなことを一生懸命やっておるか。これは大臣、私の身近なところで、いま現実に医者に手術を勧められているのが、手術がどうしてもいやだ、肺がんですから。そこで丸山ワクチンをいま投与しながら二年有余生き長らえているという切実な経験があるんだ、私には。だから、私はだれが何といったってこの問題は論ぜざるを得ない。また、わが党の政審会長の武藤山治、これは一生懸命になって超党派的な、われわれの丸山ワクチンを守る会の有力なメンバーになって、ここにいられる八田さん等とともに、民社の春日君だとか、草川さん、みんなこれ一つのグループで、熱心にこれをやっておる強力なグループをもって、いま国会の中で、これを超党派的に推進している。
 聞いてみると、一人一人がみんなそういう切実な、なまの経験を持っているのです。しかし、皆さん方から言わせれば、いま薬務局長、君なんかの方から見れば、われわれは無知蒙昧の徒だと言うのだろう。無知蒙昧な徒がそんな経験を持ち合って、そんなものは話になるかと君は言うのだろうけれども、しかし、われわれに言わせれば、そういうあらゆる医学の枠を集めたその手術も拒否せられ、化学療法でもだめになって、丸山ワクチンに助けられている、身近なこの経験は、だれが何といったって百聞は一見にしかずだというのだ。君たちがどう言ったところで、われわれの切実な、一つの受けた天の恵みのような喜びを、これはかえるわけにはいかない、そういう立場で論じているのだから、これをやはり真剣に受けとめてもらわなければならない。
 そこで一つ申し上げますが、どれから言っていいか、わずかな時間だけれども、一体クレスチンというのですか、ピシバニール、これの一年間の売り上げは一体幾らですか。
山崎説明員 お答え申し上げます。
 クレスチンが昭和五十五年、昨年の実績で四百十八億、ピシバニールが百七十三億と承知しております。
小林(進)委員 これは、両方合わせて約七百億円に近い売上金だ。これは独占ですよ。がんの独占企業だ。一体クレスチンというのは売り上げ会社はどこですか。呉羽紡績の三共製薬ですか。(森井委員「呉羽化学から三共」と呼ぶ)そうそう、呉羽から三共。それからピシバニールが中外、こういうことになっておりますね。これが約二百億の売り上げ。一体この二つの製薬企業に厚生省からお役人の天下り、どんな方が行っておられますか。
山崎説明員 呉羽化学、三共製薬には私どもの先輩は就職されておりません。中外製薬には坂元元事務次官が就職されております。
小林(進)委員 いま、何ですか、蚊の鳴くような声で、中外製薬の副社長にわれわれの先輩の、何とか元事務次官がいらっしゃるという。あなた方、都合の悪いときになるとだんだん声が小さくなってくるのだが、一つのがんの薬にまつわる、こういう巨大な売上高、そこに厚生省のOBの高級官僚がいる。そこへ現役の厚生省の役人がつながっていると世間の人は解釈している。こうやって製薬会社と官僚とぐすっと結びついて、そこにはいわゆるこれを使用する患者とか大衆の利益をどうしようなんということは一つもない。これがいまの君たちの薬務行政だと国民は考えている。そうでないと言うなら、ないという証拠をひとつ見せてもらおうじゃないか。そうだと思わせる証拠はわれわれの方に幾つもあるんだよ。そうでないという証拠をひとつ見せてもらおうじゃないか。
 たとえて言えば、ぼくは幾つも現場で苦労しているお医者さん方の切実な声を聞いているんだが、これを読み上げていったら切りはないが、仮に申し上げますと、山形県の――山崎君、これは君、わかるだろう。山形県の酒田市の加納勇という診療所のお医者さんなんだ。これはがんに対する臨床データだ。四十六年の四月から五十五年、去年の三月まで、いわゆる切除例だ。がんをみずから切開をした例、三十八例だ。そのうち胃がんが三十二例、結腸がんが四例、腎臓がんが一例、つまり進行がん三十三例だ。そのうちの生存率、一年以上は三十三人中二十六人、七八・八%。二年以上が二十八人中二十人、七一・四%。三年以上が二十二人中十一人、五〇%。四年以上が二十人中十人、五〇%。五年以上が十九人中九人、四七・四%。この病理の標本を二十六例、データを添えて五十一年の十月に厚生省に提出をしたというのです。丸山ワクチンをいわゆる併用したことによってこれほどの顕著なる効果があらわれておる、こう言ってやったというのです。
 そうしたら、山崎局長というんだ。山崎局長というのは君のほかにいるかね。なあんだ、開業医か、開業医のデータかと言って、ぽんと机の上へぶん投げたきり、いまだ今日に至るまで取りざたがないというんだよ。回答一つないというんだよ。実に泣くに泣けないというんだ。厚生省の高級官僚なんか、われわれ開業医や出先が血みどろになって闘ってどんな資料を集めても、こんなものはちりあくただ、人間扱いしないというのだよ。こう言って血の涙を流して泣いたという切実な話があるけれども、そのデータはないかい。ないならないとちゃんと言いたまえ。本人は渡したと言うのだから。これはうそを言ったことになるよ。
山崎説明員 申請者のゼリアメーカーから申請されたデータの中には、当該、先生御指摘のデータは含まれていないということでございます。
小林(進)委員 厚生省に提出をしたのだ、それは。君たちが言うようにどういうルートでどうとか――本人は地方で第一線で働いている人だから、厚生省の厚生大臣あてにやれば、それはその省のどこへ行ったか知らないけれども、ちゃんと人間並みの扱いをしてもらうと考えるのはあたりまえだよ、あなた。それが何だ。申請書の中に入っていないと言うのか。いわゆる調査会の方へ回るような窓口へ行かないでよその窓口へ行ったから紙くずにして捨てたというのかい。どういう扱いをしたのだ、一体。君の手に入らなければみんな捨てたということか。そこに君たちの言う官僚政治の思い上がりがあるというのだ。一休それをどこへやった。厚生省じゅう、行って捜してこい。捜してそれを持ってこい。どこへやった、一体。そういう失敬なことばかりやっているから世の中が混乱してくるのだ。
山崎説明員 先ほどもお答えしましたようなことで、申請データの中にそれが含まれておりませんので、私どもは受け取っていないということが事実でございます。
小林(進)委員 君が受け取っていなければ、あとは飛んでいこうと野となれ山となれ、責任はないと言うのかい。君の耳に入らなければ全部責任はないと言うのかい。君は、そういう末端からちゃんと上がってきて、何月何日に厚生省へ送りましたと本人が言っているのだから、せめて調べてみようという気持ちにならぬのか。一片の人間心があるのならば、血が通っているならば、丸山ワクチン、これは別にしておいても、せめてわれわれの省へ来た書類ですから調査をしてみましょうくらいの返事があってあたりまえだろう、君。委員長、薬務局長に注意してもらいたいのだ。
山崎説明員 お答えいたします。
 先生おっしゃるとおりでございますので、早速調べさせていただきます。
今井委員長代理 よろしい。
小林(進)委員 これは委員長、ひとつよく御記憶にとどめていただきまして、その調査の結果は委員長を通じてまた私に御返事を下さいますることをあえて要望いたしておきます。
今井委員長代理 承知いたしました。
小林(進)委員 私は出先の先生方の血のにじむようないろいろの苦労話も承っているのでございますけれども、鶴見大学の名誉教授の山崎清先生、東京医科歯科大学元歯学部外科部長さん、この先生なども、大変りっぱな先生ですよ。佐藤博先生にまさるとも劣らざる名医ですがね。この人も丸山ワクチンの熱心な支持者なんだ。外科部長を十六年務め、あごの骨のがんを二件手がけたが、顔半分の骨を削り片目をえぐり放射線をかけて、もう化け物みたいな顔にした、そういう手術をしたというのです。その結果四カ月の延命、がん患者の命を四カ月延ばした。それは学界では非常に評価をしてくれた。四カ月の延命をしたということで非常に評価をしてくれたが、評価を受けたその山崎清先生自身は、つくづくいやになった、それから外科部長をやめてしまったというのです。
 切らずに治るということをそこで真剣に考えた。こんな残酷な手術までして人間を化け物にして三カ月、四カ月命を延ばして、それで医学の効果ありなんというばからしい話に私はみずからあきれてしまった、私は外科部長として何とか切らずに治る道がないか研さん努力し、やみの道を歩いた結果、丸山ワクチンに到達をしたというのです。
 先生はうまいことをおっしゃるのだ。この外科手術は信長流だというのだ。敵も味方も皆殺しにしてしまう、ジェノサイドだというのだ。それに比較して丸山ワクチンは秀吉流だと先生はおっしゃるのだ。敵をじっくり追い詰めて兵糧攻めにする、そして味方は安泰にしておく、これが丸山ワクチンだ、私はこれあるがゆえに丸山ワクチンを支持し、その普及に努めているとおっしゃる。
 本当に調査会を設けるならば、こういう先生も十三名の一人の中に任命したらいかがなんですか。こういう御意見も聞いてみたらどうなんですか。(「がたがたになってしまう」と呼ぶ者あり)そうだろう、がたがたになるだろうなあ。あなたの言うとおりだ、がたがたになるよ。いままでの一方的に丸山ワクチンは水でござるなどということでこれを撲滅することを考えていた先生方にとっては、それはまさに頂門の一針だから、調査会ががたがたになるのは――しかしそれで国民は助かるのですよ。こういう先生が調査会に入ることによって国民は助かる。そこをひとつよく考えてもらわなければならないと私は思うのだ。
 これは、私はお名前言いますよ。先生勇気を持っておっしゃるのだから、先生あなたのお名前申し上げてもいいかと言ったら、いいとおっしゃった。これは春日井の市民病院の大橋大造という医務局長です。この先生はこうおっしゃいましたよ。丸山ワクチンを百人くらいに使ってみました、しかしクレスチンやピシバニールが許可されて丸山ワクチンだけが許可されぬのはやはり厚生省と調査会や製薬会社の癒着があるのではないですか、そう思う以外に理由はわかりません、こう言っておられますよ。これはまあよく国民の声を代表する天の声だと私は思いましたがね。こうおっしゃっているのでございます。これが世論なんですよ。
 まだ申し上げましょうか。これは日本大学の田村豊幸教授です。この教授はこう言っていらっしゃる。がんの専門家というのは、専門家であればあるだけ製薬メーカーと関係ができている、丸山ワクチンでも患者を中心に考えないで大学の研究室のような理論を押しまくっている、現場の医師の意見を聞き、副作用とかいろいろのメリットを判断して決めるべきだが、これは一つもやろうとはしない、こういうことを言っていられるのですよ。これはそのとおりでしょう。
 午前中の桜井先生の陳述の中にも、われわれはやはり研究するためには力がない、製薬メーカーと一緒になってそのメーカーの研究室と金を相手にしなければ研究できないといって、みずから特別の密着をしなければならぬことを明らかに告白をしておいでになりましたことは、大臣、あなたもお聞きになったとおりでございますけれども、これが度を過ぎていったのでは国民はたまらない。ここをひとつ明確に解明をしてもらいたいと私は思う。
 最近の話だけれども、山崎君、君はどこかのレセプションがあったその会場の中で大臣と御一緒したそうだ。君は大臣と席を並べながら、大臣、どうもこの丸山ワクチンはがたがたして困る、本当は五十二年のあのときに禁止して打ち切っておけばこんな大騒ぎにならなかったのに、一つ失敗しましたという話をした。これはそばでちゃんと聞いた人がいて、あんな業務局長がいたのじゃ大変だ――これは私はかり聞いたのではない。八田さん、あなたも聞いているのだ。そういう報告を受けているが、君、どうだね、そんなことは言った覚えはないか。言ったのなら言ったとはっきり言った方がいい。
山崎説明員 そういう端的な表現で申した覚えはございません。私の意識の中にございますのは、五十三年時点におきまして第二次の審査が終了いたしました。その時点で、単独の効き方がどうしてもまずかった、こういう結果で比較臨床試験というものをその後要求したわけでございます。そこで何とか芽が出ればそれはそれでいい、そういう今日までの経過があるわけでございます。
 そういう意味におきまして、実はその比較臨床試験を要求したことが、過酷な条件をこの丸山ワクチンだけに負わせたというような解釈が一方でございますので、そういう解釈は違うのだという意味で申し上げたつもりでございます。仮に申し上げたとすればそういうっもりでございます。
小林(進)委員 申し上げたのだから、その気持ちのことは――君たちは白を黒、黒を白とも言いくるめるのがお役人の商売だから、まあいい、言ったことだけ認めていればそれでよろしいです。そばで聞いている者がいるのだから、言わないということであればこれは問題だけれども、そういう意味で言ったのじゃないと言うのなら死一等減じてこれはこのままにしておきましょうや。また後の楽しみにして残しておきましょう。
 それで、君たちがいまも言うように芽が出るのなら出た方がいいという意味で言ったというのならば、君は調査会のその席上にいて段取りして、事実上君がリードしている。だから、調査会の結果も桜井座長と一緒になって君も新聞発表している。重大な役割りをしていることは天下周知の事実だ。それほどなら、君が調査会の中に入って役割りをしているのならば、この篠原教授が言われるような申し立て書の理由にも書いてあるように、いま少し前向きに、好意的に物を処置したらどうかね。
 私は午前中にも言ったから、菅さんも言われたから、くどく繰り返したくないけれども、この東北大学の教授の、百五人の中から三人のがん患者が一年半過ぎて生存、いわゆる化学的療法をした人たちは百七人全部死んだけれども、こっちの方の丸山ワクチンを受けた人たちは三名残ったという後藤教授の報告書を、一名はいやそれは膵臓がんだとか何がんとか言っても本当のがんじゃないからそれはデータにならないとか、「この二例は試験開始時に進行癌であったことを再度確かめました。したがって、記者会見で軽症例であるから長く生きているのは当然で、これらを除いて計算するのが妥当という発言」、こういう発言はあなたと桜井君と二人でやっているのだ。その二人は軽症だから長く生きるのは当然であって、だからこれを計算の中に入れるのは妥当でないというふうな発言は、公平を欠く一方的な見方になります、われわれの貴重な研究にそういう意見を加えて、せっかく三人生きたのを一人も生きないような発表にしてもらったのでは困ります、こういう文書をもってあなたのところへ反対意見書を出している。あなた読んでみなさい。
 私は午前中には時間がなかったからそれを読み上げることはなかったけれども、あなた方の判定が丸山ワクチンに不利のように、不利のように扱っていることに対して、この後藤教授、野村暢郎執筆責任者も耐えかねて、実に切々として文書をもって異議を申し込んでいる。せめてこういう文書でも出てきたら、調査会のやり直しくらいやるのはあたりまえじゃないですか。これは午前中にも言われた。重要な文書ですよ、あなた。あなた方は、東北大学から出ているデータは非常に価値があると言った。その価値があるデータを作成した作成者が、まだわれわれのデータを正しく評価をしてくれないじゃないか、それは間違いです、異議があると言っているのだから、これほど重要な異議の申し立てがあったら、その調査会はもとに戻って、これをたたき台にしてやり直すのがあたりまえじゃないか。
 それが調査会の後から出てきた。特別部会の前に出てきたから、部会に出してちゃかちゃかと決めてしまった。半分は認めたけれども、半分は大したことがないから、この半分の異議は水流しにしておいてそれを認めたという桜井座長の言い分だ。それは桜井座長の言い分だけではないだろう、半分は君の意思が入っているのだろう。厚生官僚としての君の、悪者の意思が半分入っているとわれわれは判断している。だから厚生官僚が一番悪いと言うのだが、何か理由があるならひとつそこで言ってみてくれ。
山崎説明員 その後藤教授からの文書につきましては、先生もいまお述べになりましたように特別部会においてそれを処理したという形になっておるわけでございまして、私はそういう実質的な審議の内容には一切立ち入っておりません。
小林(進)委員 立ち入っていなければ、こういう重要な文書だからその取り扱いをいま少し慎重にしてくれぐらいなことは、君そばにいるんだから、新聞発表も一緒にやっているんだから、一言言ってもいいじゃない。むしろそんなものを無視した方がいいだろうという立場で君は喜んでいる。
 それならこれをもう一回読み上げる。時間がないけれどもこれを読み上げよう。いいですか。
    発言に対する異議申入れ
  七月十日に開かれた調査会後の記者会見のことが日刊紙などで報じられましたが、七月二十六日付サンデー毎日二十頁の東北地区の治験に対する貴殿の発言に
これは桜井欽夫のことを言っている。
 貴殿の発言に事実と異る点のあることが、多くの共同研究者より指摘されました。そこで当日の録音テープをとり寄せて聞いてみました。その結果、論文(申請書)の症例一覧表の記載不充分な部分について貴殿らに誤った判断のあることがわかりましたので異議を申入れる次第です。
いいですか。
  生存者三名についての個所ですが、「このうち二名は病期IIで、つまり軽症で、これは対象から除くということで実験が行われているのに(デザインされているのに)実際にはIIのものが入っている。この二例を除くと差は小さくなる」とあります。
せっかく三人生きているうちの二人を除いてしまったわけだから差はなくなってしまった、こういうことになります。
 われわれの論文には対象例として病期IIのものは除くとは記してありませんので、これは事実と異った発言になります。この胃癌の二症例は手術できなかった例で、レ線所見、内視鏡所見ではっきりした進行癌です。
この二つは内視鏡で見たはっきりした進行がんです。
 ステージIIの判定は手術して転移の有無をみなければわからないわけで、手術しない例にステージを記載したのは妥当ではなかったと思います。これは、恐らく主治医が、体表面から触診でわかる肝、リンパ節などの転移巣や、レ線上肺転移などが認められないことからステージIIと記入したものと思われます。いずれにしてもこの二例は試験開始時に進行癌であったことを再度確かめました。したがって、記者会見で軽症例であるから長く生きているのは当然で、これらを除いて計算するのが妥当という発言は、公平を欠く一方的な見方になります。
これは大変重要ですよ。
 また生存中の一例の膵癌例については組織所見がないことから、その症例は膵炎であるかも知れないと、医師の誤診の可能性を示唆する発言をしていますが、主治医に問合せたところ、この症例は手術で組織を確認し、つい最近血管造影を行い肝転移も認めているとの報告を受けました。したがって「その症例は膵炎かも知れないから、結論的に生存の三例はいずれも症例そのものの選択に問題があるのであって、SSMの効果による延命とは考えにくい」という発言は、軍に一覧表に記載されていることを、公平を欠く一つの視点からのみ把えようとしているとしか受取れません。
  生存の三例はいずれも問題があるので、これを重視することはできにくい、ということはわれわれの研究が杜撰であることをさすものであり、これは東北大学医学部第三内科ならびに関連病院医師の名誉にもかかわることであります。
  この事実に相異した貴殿の発言を早い時期に、公的な場において訂正されることを、代表責任者として強く要望します。
どうですか。東北大医学部を侮辱するものだ、関連医師を侮辱するものだから、公の場所においてその発言を明らかに取り消せと要望しているやつを、何にも調査会にも諮らなければ、ちょっちょと上の方に出してそれで能事終われりとしている。さっきの桜井君の発言なんか能事終われりじゃないか。これは資料提出者に対する実に重大な侮辱です。
 こういうようなごまかしばかりやられていて、そしてわれわれの命に関することを軽率に扱われて、われわれはこんな審議を続けていくことができますか。
 委員長、厳重なる注意をしてくれ、これをどう扱うか。大臣に命令して直ちに調査会を再開して、この問題を中心にしつつ審議をし直すことを、委員長から厳重に申し入れてください。
今井委員長代理 重要な問題でもありますので、理事会でひとつ協議をさせていただきたいと思います。
小林(進)委員 前向きに審議されるというならば、ひとつ委員長を信頼いたしまして、次に移ります。
 次に、私は申し立て書の理由を申し上げますよ。権威ある大学教授、私の尊敬する篠原教授を中心にいたしまして、いま私が申し上げました山崎清博士以下有力者の方々が連名でお出しになっている。この中にいわゆるピシバニールとクレスチンの場合との採用の条件が実に不公平に扱われている。
  調査会は、東北地区のデータについて「大変よくデザインされた試験」であることを認めつつ、五〇%生存率は化学療法群と比べて丸山ワクチン併用群は二〇日間ほど(正確には二四日間である)しか延命しておらず、これは癌の治療の常識から言うと大きな差ではないこと、また内科的には、ステージの一(第二期)が若干まじっているので、これをはずすと統計的有意差がなくなってしまい、延命効果の確証が得られなかったと判定する。
という点、これは非常に扱いが不公平だ、こう言っている。
  まず、内科におけるステージングは外科におけるほど、明確な分類は出来ない。分類上は第二期であったとしても進行癌には違いなく、これについては従来の化学療法では九九・六%(五年生存率)助からない
ということになっている。
  ピシバニール、クレスチンの場合、第二期で延命効果の認められた症例は皆無の筈である。
何もないという。あなたは知っているだろう。しかるに丸山ワクチンの場合は、いまも言うように、「二年六カ月経過した今日なお三名が延命している」のだ。
  また、五〇%生存率時点での二四日間の差は、明らかな有意差と言える。桜井座長のいう「普通は月単位」「外科は年単位」でなければ治療効果ありと認めないというのは、
たった二十四日なんかにその有意差というものを認めるわけにはいかないと言っているけれども、この場合は、何も治療しないものと丸山ワクチンを飲んだものとの差ではない。化学療法したものと丸山ワクチンを併用したものとの、その二人の治療の中において、なおかつ二十四日間の差が出たということは、これは飲まないものの一月や一年の差よりももっと大きな開きだ、こう言う。それを何にも認めていないという。だから、そんな差なんというのは効果がないと言っているということは、いかにクレスチンやピシバニールともこの扱いを不公平にしているかという何よりの証左じゃないかと言っている。
 どうですか、この問題は。山崎君、君は黙ってそばで見ていたのか。
山崎説明員 調査会、特別部会の御審議が、まさしく先生御指摘のような点をめぐりまして行われまして、桜井さんが午前中に申し上げましたように結論としてなった、こういうふうに考えております。
小林(進)委員 時間が参りまして、やめろということでございますから、残念ながらやめますが、このいわゆる被害なし、薬害なし、何も問題がない。
 しかも園田前厚生大臣でありませんが、園田さんも、大きな声では言わぬけれども、私の家内のお父さんをがんでやられたときに、うちの家内は丸山ワクチンをお父さんにささげて非常に効果を上げられたし、運転手もこの丸山ワクチンに助けられた。周辺にそういう人がたくさんある。人間的にも、これをどうしても薬として許可をしたいという情熱に燃えているということを非公式ながら言われておったのでありまするが、いま毎日毎日、またわれわれがこうやって叫んでいるときに、数百名の人たちが行列をなして、日本医科大学の付属病院の丸山ワクチンを買うために並んでいるのですが、これを許可することによって一体どれほどの弊害が出てくるのですか。
 あなた方はかつてスモン病患者をつくり、薬害でもってサリドマイド等で大ぜいの人たちを殺した。薬剤としてみんな許可をして、製薬会社と結びついて多額の金をもらったなんという品のないことは私は言いませんけれども、それほどの大きな被害を出した厚生省が、いま丸山ワクチンで一体どれだけの被害が出るというのか。しかも国民は、いわゆる天啓を待つつもりで、このワクチンを手に入れるために、いま全国から集まってきている。せめて北海道でも沖繩でも九州の果てでも、そこの場所でこのワクチンを手に入れるような道だけ講じてくれと言っているのだ。値段は言わない。保険薬にしようとしまいとそんなことは構わないけれども、この薬一つ手に入れるために飛行機に乗ったり宿屋を予約したりして日本の果てから飛んできて、あの駒込にある日本医科大学のところへ、この炎天の中ですわり込んでいわゆる五千円出して四十日分の薬を買っていく、この苦しみだけはひとつ解消してくれないかというのが切実な願いなんだよ。
 それを解消することによって、一体どんな被害が出てくるのです。どれほどの迷惑を国民に及ぼすのだ。及ぼすのは、五百億円と二百億円のわけのわからぬクレスチンとかピシバニールとかを売っているその薬屋の売り上げが被害をこうむる以外にはあとはないだろう。これを許可することによってどんな被害があるのか、どんなに困るのか、それを教えてください。
山崎説明員 先生十分御存じのように、薬の承認に当たりましては有効性というものがまず基本になければならない、これが薬を承認する場合の法律的な備えでもあるわけでございまして、そういうことでその薬の承認の可否につきまして科学的なレベルでの検討を審議会にお願いしている、こういうたてまえであり状況であるわけでございます。
小林(進)委員 これで終わりますが、大臣、これをあなたが製造を許可されても被害は一つも出ません。日本国民が挙げて喜ぶだけです。それだけです。
 終わります。
今井委員長代理 次に、草川昭三君。
草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。
 私が丸山ワクチンを取り上げるようになってから四年になるわけですが、一番最初にこの問題にかかわり合ったときのことを申し上げますと、厚生省の若い方々四、五人が私の部屋に参りましてレクを受けたわけでございますが、最後に若い方が、草川さんこれはだめですよということを明確に言ったことを鮮明に覚えております。おかしいじゃないかというのがそもそもこの問題にかかわり合った最初であります。ですから丸山ワクチンは、行政側としては最初に結論があるわけであります。
 そして四年間、いろいろな経過があるわけでございますけれども、今日のような混乱もある。しかも途中に、有名な日本の薬学界の最大の権威である大阪大学の山村教授が丸山先生に共同研究を申し込み、丸山先生がそれを断ったことからそもそも混乱が起きておるというのが私の実は前提でもあるわけであります。この前提を厚生省がどのようにつぶしてくれるか、そのかわりのものを問題提起をしていただければ問題がないわけであります。私どもの理事である平石さんのところへ、きょうも故郷である四国の方の患者の方々から、一体将来どうなるんだろうかというようなお電話があったという話を聞いて、全く私は胸が打たれる気持ちになるわけでありますが、ひとつそういう国民の声を背景に、私がかねがね主張しておる、厚生省は差別をしていないということの証明をいまから実証していただきたいどう思うわけであります。
 その前に、きょう午前中に桜井教授の方からいろいろな答弁があったのですが、食い違う点があるので、これは委員長を通じて議事録を出してもらいたいと思うのです。
 私は、佐藤博士のいわゆる動物実験が三百五十倍というのはあたりまえじゃないだろうか、ところが桜井さんはそれを否定したわけです。一部の新聞では、二万倍くらいの動物実験の投与をして、これはおかしいというような報道もされておるわけであります。しかし、桜井さんはただいまの答弁では、佐藤さんの資料については不当とは言っていないと答弁されておるわけです。ところが過日の新聞記者会見では、明らかに信頼性が置けない、きわめて高い投与をしておるので、臨床的に見ると投与量が高いのでだめだということを言っておるのですが、きょうここで私の質問に答えられたものと違うことを言っておみえになります。
 これは重大な問題です。せっかく参考人としておいで願っておるにもかかわらず、過去の向こうで言っておる言葉と違うことを言っておみえになるわけですから、これは議事録を正確に調べていただいて、そして厚生省に当日の記者会見をされたところの議事録を出していただきたいと思うのです。この議事録のテープを消したという説がございますけれども、そんなことは私はないと思うので、一体桜井教授が言ったことがどうなのか、きょうの私への答弁と食い違いがあるのかないのか、明確にしていただきたいと思います。その点、どうでしょう。
今井委員長代理 政府側、何か発言がありますか。
山崎説明員 御趣旨の点、できると思います。そのようにさせていただきたいと思います。
草川委員 では、それを後でまた確かめる機会を与えてください。
 それから午前中に桜井座長が、私が取り上げた服部隆延論文、これは化学療法学会の雑誌にも載っておる論文であります。そしてメーカーが申請した書類であります。それを読んでおみえにならぬと言われたわけです。こんなばかなことがありますか。最大の関心があるメーカーの申請書類の論文を読んでいないと自分みずからがおっしゃった。一体厚生省はどういうようなサポートをしたのですか。
山崎説明員 後で桜井先生訂正されましたように、何か思い違いされたのか記憶が出てこなかったのか、ちょっとよく私どもにはわかりません。
草川委員 だから、そんなことで丸山ワクチンが却下されたわけでしょう。これは世間に通りますか。国民の皆さんに通りますか。専門家の方々がメーカーが出した申請書類の論文、しかも自分の友達である知った方々の論文を読んでないと言われる。それで、だめですよという結論が通る。
 大臣から答えてください。このことがいいかどうか、一言だけ。
村山国務大臣 私が午前中に聞いておったときの記憶によりますと、確かに最初お答えになったときは、読んでいない、こう答えたと思います。その後から私の方の人が、これは出ておりますということをたしか申し上げたはずですが、私は動物実験の専門であって臨床でないから自分は読んでいないが臨床の方では読んでいるはずです、こう答え直されたと思っております。
草川委員 素人と違うのですよ。しかも座長ですよ。彼はそもそも医者じゃないのです。薬学の専門の先生にすぎない。しかしいろいろな実験をしておるわけですよ。自分の専門でないから読んでない、ところが座長としてまとめて結論を出しておる。
 そんな程度の結論ですから、いま小林先生がおっしゃったように、もう一遍これはやり直してくださいよ。やり直していただけるようなことをぜひ私は要求したいと思います。
 さらにもう一つ、きょうは時間がございませんから余り申せませんけれども、実はこの審議会でいろんな資料が配られております。この中でこれも某新聞が発表しておるものでありますけれども、FDA、アメリカの食品医薬品局からのデータというのが審議会に配られております。ところが不思議なことに、この中のデータ、いろんなデータがあります。たとえば「本ワクチン単独で他覚的に効果の見られた症候数」これが、けさ私がいただいた厚生省からの資料ですけれども、二と出ております。ところが同じFDAの書類で丸山先生のところへ出されておる資料には「本ワクチン単独で他覚的に効果の見られた症候数」四と出ております。これには時系列的に一年間の差がありますよ。これはわかっております。一年近い、細かく言えば半年くらいの差がある。だけれども、少なくともアメリカのFDAから丸山先生のところに来た書類には本人の明確なサインがあります。メイヤー博士のサインがあります。ところが厚生省の方に配られた書類の中にはサインがないのが配られておるわけですよ。
 一体、基本的なこういうアメリカからの資料、しかもこれは丸山先生の方が頼んだ資料じゃないのです。アメリカの方もいろいろな患者が打ってくれと言うので調べた結果として出ておる。末期的でもうだめだという方々に投与したのだけれども、四件助かったという資料が出ておるのです、丸山先生の方には。ところが、審議会の方には二しか生存がないという資料が配られておる。
 こういう基本的なデータが食い違っておるようなことは明らかに差別だとぼくは思うのです。だったら、前の資料も出しながら時間的におくれたら新しい資料も両方出して、先生どうでしょうかと審議されたらどうなんでしょうか。その点どうですか。
山崎説明員 これは御指摘のように、アメリカのFDAの治験といいますかそういう状況の資料でございまして、参考といいますか、審議の参考という意味で、先生の丸山博士あてのFDA書簡及び厚生省がFDAから受け取りました書簡、いずれも調査会に審議の参考として配付いたしております。
草川委員 だから、厚生省の方の顕著の例が悪いというのが一部の新聞に発表されておるのですよ。この資料というのは、厚生省の課長あてにアメリカのFDAから来ておるわけです。少なくともだれかがある新聞にリークしておるわけですよ。そして効かない、効かないということが大きく出ておるわけです。私の方はその新聞を見て、おかしいなというので調べてみたら、数字が違う。四という数字が出ております。まだほかにもありますよ、いろいろなたくさんの例がありますから。これはいまおっしゃったように、アメリカのこの資料も大したことないとおっしゃるかもわかりませんけれども、少なくとも――これは委員長に見せますけれども、二つの書類があるというのはおかしいじゃないですか。ちょっと見てください。これは二つあります。
 こういうことが私は疑問に感ずると言うのですよ。私はこんな立ち入ったことを言いたくないのです。専門家の先生だからお任せしておけばいい。ところが、こんな話がぼつぼつ出てくると、どうやら私が一番最初に言いましたように、ボタンのかけ間違いというのはかなり深刻だ。しかも、けさの先生じゃないけれども、自分が提出した写真が悪い写真にすりかえられておるということを参考人みずからがおっしゃるというのは、これはまたいかがなことか。これは現代の最大の疑問ではないだろうか、こう思うのです。
 きょうは時間がございませんから、ひとつこの問題について明解な――いまの局長の答弁に私は満足いたしません。そして全員の方々に、前に出ておる資料もあるわけですから、こういう資料もあります、あるいは後から出た資料はこうですとか、もちろん別にアメリカだけが最大の問題ではないのですけれども、本当に末期的な、亡くなる人たちに渡して、アメリカでも四人、たとえば厚生省が配った資料でもいいのだけれども二人も助かったというのなら、それこそ一つの参考資料として私はもっと温かい目があってもいいのではないだろうか、こう思うのが主題であります。
 そこで、いまこの審議会にいろいろな先生が参加をしておみえになるわけですが、そういう先生は丸山ワクチンについてはきわめて厳しい対応を示しておみえになるのですけれども、一体どういうようなことをやっておみえになるのかというので、抗悪性腫瘍剤調査会の十三人のメンバーの方々のそれぞれの研究所における内容について私は調査をいたしております。こんなことは本当はやる必要はないのです。だけれども、権威がある権威があるとおっしゃるから、その権威がある先生方はどのようなところでお金をもらって研究をしてみえるのかということで、たまたま癌研の話もいたしましたが、たとえばこの十三人の中で、厚生省ですから国立病院の担当者の方の問題を取り上げてみましょうか。
 国立病院の医療センターの外科部長木村先生、木村先生の名前を挙げるのは大変不穏当でございますが、たまたま厚生省ですから返事が来ますから……。この方も病院ですけれども製薬メーカーからの資金の供与を受けた事実があるかないかという資料請求を私は厚生省にしました。そうしたら厚生省としては、国立病院医療センターとしてはそういう供与を受けたことはないけれども、個人としてはあるという答弁が返ってきました。これは正式な答弁です。
 これを見ますと、五十二年までは中外製薬から、これはピシバニールのことですけれども、八十万。これは大した金額でないかもわかりませんけれども入っておるわけです。五十二年には中外あるいは武田から百十九万円というものが受け入れられております。これが五十二年までは個人のふところに入っておったわけですよ。そこで会計検査院の方が、ちょっとこれはおかしいじゃないか、正式に入った金なら金で取り扱いを決めろということで検査院は厚生省に申し入れをして、五十三年の四月からは国立病院医療センター受託取り扱い要領というようなものをつくって研究費は院長名義の預金口座に入るようになったわけです。そしてその通帳は院長の特別用の印鑑もつくらなければいかぬよということで、一つのプールにするというのですか、一つの財布をつくるようになったのですけれども、こういうやり方で特定のメーカーとだんだん深みが深まっていくというのはおかしいじゃないか、こう私は思うわけであります。やり方は明らかに不明朗だと思うのです。そして本当に寄付を求めるなら、財政法上に基づく収入に挙げなさい、支出に挙げなさい、特別会計でもそういう処置をしなければいかぬと思うのです。
 この点はどうですか。厚生省としてどういうお考えですか。こういう特定の医療メーカーとこういうやり方がいいですか。
田中説明員 医薬品のいわゆる治験薬を受託する場合には、先生いま御指摘のとおり、現在国立病院・療養所におきましては、医務局長通達によります受託研究費の取り扱い準則というものに基づいて、各病院におきまして受託研究費審査委員会というのをつくりまして、これは院長が主宰する委員会でございますが、そこにおきましてその治験薬の研究を受託するかどうかということを審議いたしまして、適当と思われるものについて受託をやっておるわけでございます。
 その受託研究費の経理についてでございますが、これも先生ただいま御指摘のとおり、各病院で決められました取り扱い準則に準じまして院長が任命いたします出納員が帳簿等を整えて出納上これを記録して経理の明確化を期しているところでございます。
草川委員 だから、どっちにしてもいいか悪いかと聞いているのですよ。
 会計検査院にお伺いします。会計検査院として、こういうやり方はいいのかどうか、簡単に一言だけお答え願います。
天野会計検査院説明員 国立病院等におきましては、受託研究にかかわる収入支出につきまして国の会計事務に準じた経理を行っておりますが、国の歳入歳出に計上しておりません。しかしながら、先生御指摘のとおりこれらの受託研究は国の職員が国の施設及び設備を使用して実施しているものでありますので、本院といたしましても研究に要する経費の収入支出につきましては国の歳入歳出に計上すべきであると考え、厚生省に対し予算上必要な措置をとるなどその検討をかねてから求めているところでございます。
    〔今井委員長代理退席、戸沢委員長代理着席〕
草川委員 ですから、会計検査院も不適当だと言っているのですよ。そういう人が抗悪性腫瘍剤調査会の調査委員になってはだめなんですよ。しかもお金は大手メーカーからの寄付金ばかりなんですよ。それは情がわくでしょう。しかも国家公務員として給料をもらっているわけですから、本当に実費を取るなら取るで予算に立てて支出をする、会計検査院の言うとおりにしてください。そしてかかるいろいろなメーカーと深入りになるような方々は調査会から外す、これが原則です。これを強く私は申し入れをいたします。
 そして、いま私どもが調べておる中で一番問題になりますのは、実は国立大学の先生方も予算が少ないわけですから、受託研究をしなければいけない場合に、どうしてもメーカーとの癒着というのは深まってくるわけです。一体幾らぐらい新しい薬の治験薬は要るのですかと私どもずいぶんいろいろ何社からも、大阪からも、いろいろなところへ行って調べてきました。口を閉じてなかなか申しませんけれども、平均的に言われるのは、一人の患者に対して予算は十五万円、これが相場だというのです。一体何人ぐらいの患者かというと、千人くらいの患者のデータがないと抗悪性腫瘍剤調査会の方ではパスしないだろう。大体一億から二億要るというのですよ。ただし、これは一年間ですよ。二年かかれば二倍の二億ぐらい新規の開発費で学者に渡す金が要るというのです。その中のごく一部が、私がさっき言った国立病院などでは表へ出てくる金額なのですよ。二百万とか三百万。そして、大学のトップの先生には大体最低でも一千万円の現金が入る。そして、あとはその教室の連中の会議費、あるいはフラスコ代、印刷代、いろいろなものを含めていくと、結局、最低でも二億は要るでしょうというのが結論なのです。
 その金はメーカーのどういうようなところから出るのか、メーカーで調べてまいりますと、メーカーの方も経費では落ちません。だから、使途不明金という形で製薬メーカーは学界のトップの方々にお金を渡すわけです。
 国税庁に聞きますが、いま使途不明金の多いのは、建設会社と製薬業界だという話がありますけれども、それはどうですか。
草野説明員 お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘の件でございますけれども、私どもが把握しておりますのは、国税庁で所管しております資本金一億円以上の法人について実地の調査を行ったものにつきまして、全体の計表は持ってございますけれども、ただいま御指摘のような業種別の計表は持ち合わせてございませんので、いま明確にお答えすることができないわけでございますけれども、感触として一般的に申し上げますと、先生御指摘のように、建設業界あるいは製薬業界といったものは使途不明金がわりあいに多い部類に属するということを考えております。
 以上でございます。
草川委員 いまおっしゃったように、結局、大体一億とか二億という金を学者先生に払わなければ通らぬわけですから、それは出し方としてはいまのようなことになると思うのです。
 では、国立大学の先生が一体、年収入一千万なら一千万ですけれども、一千万円以上のいろいろなことをやっておみえになりますけれども、明確な確定申告をしておるかどうか、これも私は調べましたけれども、非常に疑問があります。
 ある製薬メーカーは、どういうようにしてお金を渡すかといったら、現金で渡すと汚職になるから、絶対現金を渡すことはいたしません。ではどうして渡すかといったら、学会があるときに、あらゆるエージェントを通じて飛行機の切符を全部買います。たとえばパリへ先生が行かれるときにはパリ行きの切符を、日航であろう、パンアメリカンであろう、SASであろう、いろいろな会社の切符を全部買って渡すというのです。そして、窓口のエージェントがそれを全部払い戻しをするというのですよ。そして、先生のところヘキャンセル料だといって持ってくるというのです。これだったら汚職にならぬというのです。こういう具体的な事例があるのです。
 国税庁の所得税課長に聞きますけれども、かかる薬事関係の教授がそのような不当な所得を持って薬の認定に参加をするということは私は許せぬと思うのですけれども、確定申告を本当にしておるのかどうか、細かい例を聞く必要はございませんから、こういう事例に対して興味があるのかどうか、関心を持つのか持たぬのか、それだけお聞きします。
入江説明員 改めて申すまでもございませんけれども、私ども税務当局にとりまして、適正かつ公平な課税を確保するということは最大の眼目でございます。そういうような観点から、いろいろ種々の資料、情報の収集を図り、かつそれを課税に活用しているわけでございますけれども、先生のおっしゃいましたような個々の事案、あるいは個々の事案の基礎になります情報、それを国税庁として、特にお医者さんに着目して事績を取りまとめているというような状況がございませんので、個々にはお答えしかねます。
 しかし、いずれにしましても、先生おっしゃいましたように、私どもにとりまして公平な課税をするということは重要なことでございまして、そういう意味で、いま先生がるる御指摘になりましたようなことにつきましては非常に関心を持ってお聞きいたしました。今後、そういう御指摘の趣旨も踏まえまして、より一層公平な課税が図られるように努力してまいりたいと思います。
草川委員 私は余りこういうことを申し上げて個人的なことをやりたくないけれども、余りにもいまの調査会のメンバーの方々が科学的だとか客観性だとかということを言われるので、では、あなたたちが一体どれだけ科学的な、客観的なことをやっておみえになるのですか、客観的に証明されることをやっておみえになりますかということを聞きたいために言うわけであります。
 しかも、これは私は過日も申し上げたのですが、日本とアメリカとの抗がん剤の生産量は、これはもう厚生省と私との間には数字に間違いはございませんが、時間がないので申し上げませんが、結論だけ言いますと、日本は人口当たりについてアメリカの六倍の抗がん剤の生産をやっておるのです。これは間違いがないのです。六倍の抗がん剤の生産を上げながらも、がんの死亡率というのはアメリカよりもいま多いのではないですか。あるいは成人病と言ってもトップなのですよ。だから、いまできている薬がいかに効かないかということなのですよ。全然効いていないのですよ。客観的だとかどうのこうのと言っていま言ったような先生が認めた薬が役に立っていないのです。
 だから、副作用のない丸山ワクチンという話があればわっと飛びつくのです。そこで神話が生まれるのです。だから私たちは丸山先生にも申し上げているのですが、神話をつくってはいけない。だけれども、こういうことをやればやるほど神話ができてくる。これは近代国家としてきめて不幸なことだと思うのです。だから私は冷静な平等な取り扱いをやれということを言っておるわけです。
 しかも、過日大騒ぎになっております薬価の引き下げについて、中外製薬のつくったピシバニールというのは、平均一八%の薬価の切り下げ、抗生物質は三割から四割下がっておる中で、たったのマイナス一〇%より中外製薬は打撃を受けておりません。呉羽、三共がつくっておりますところのクレスチン、年間四百億売っておるのも、わずかマイナス七%より打撃を受けていない。強いのですよ、この二つの抗がん剤は。いま小林先生から質問がありましたように、ここには厚生省の大幹部も天下っておみえになります。
 そしてこの背景には、さっき申し上げたように、阪大の山村教授という非常に強い影響力を受けておる。そういうところにいま製薬業界というものは握られておるわけですよ。これに盾を突いた人間は、薬だって全然認可されぬわけですよ。だから厚生省はいろいろなメーカーの連中に、せめてこの調査会のメンバーにうまいことをやって、そしてこの人たちの協力を得るようにしろというような行政指導を内部的にもしたことがあるのですよ。もっとひどいのは、阪大の山村教授のところに丸山先生の申請書類が行っておるわけですよ。そういう内部の資料を私は持っておる。そんなばかなことが許されますか。他人の申請した書類がライバルのところに入っておるのですよ。これはだれが持っていったかわかりませんね。
 そういういまの医学界、薬学界の実態というものにメスを入れるのが近代工業国家ですよ。だからこそ前厚生大臣の園田さんは裏の裏まで承知をしておるということを私の質問に対して言われたと思うのです。そして、私はことしの予算委員会で、鈴木総理にこの場でお願いをしたわけです。この調査会と、申請者のゼリアと丸山先生との関係というものはもうこじれにこじれ切っておるから、こうなっては大臣が、あるいは厚生省が仲を取り持って糸をほぐす以外に、丸山ワクチンは幻のワクチンに終わるから、どうかひとつお願いをすると言って、私は予算委員会で総理にお願いしたわけです。鈴木総理は意を体して努力しましょうとおっしゃった。
 その後厚生省は本当に調査会との間を取り持って、少なくとも進行ぶりに協力したかと言ったら、違う書類を出してみたり、一部の新聞には一番悪いデータを与えてそれを大きく書かせるというような手の込んだことをやっておみえになる。これは正義ではないと思うのです。やるなら平等にやってもらいたいと思うのです。それは大臣の意向かわかりませんけれども、私は大臣がかわったからそうなったと思いたくない。しかし、少なくとも園田さんは大衆の心がわかったと思うのですよ。前の野呂厚生大臣も、本当に効くのかどうか、どうしたらいいかと言って、学者を集めて相談をされた。橋本厚生大臣だって、スモンのときには製薬メーカーを呼んで、徹夜で泣かせて製薬メーカーを説得してスモンの交渉をやったじゃないですか、厚生省は。
 厚生省は、そういう実績があるのですよ。だったら、いまもお話があったように、丸山ワクチンのようないわゆる副作用のないものについてもう少しヘルプ、応援ができないのか、支援が。だからこうなった以上は、少なくとも条件つきに、もう二年か三年の間にとにかく国立がんセンターもあるいはいろんな国立の病院もみんな動員して、おい早くいい実験をやろうじゃないか、ゼリアを呼んで、もう製造をやめるなんということを言うな、とにかくもう少し生産をして、全国に、北海道から九州まで治験をやる場所をたくさんつくって、早くこの問題について、効くのか効かぬのか、効くならばこうやったら効くのか、あるいは丸山先生がかねてから主張しておるように、これは本来は単独投与なんだ。がんのある者がさあっと治る薬じゃないのですよ。私どもも承知しているんだ、免疫療法だから。われわれが打っておいて、強くなってがんにならぬようにする薬なんだ、本当は。だから制がん剤でないかもわからない、本来の意味から言うならば。そういうことも含めて、単独投与で効果があるような研究をやってやろうじゃないか。そして、いましばらく待ってくれということを私は厚生大臣が言うべきだと思うのです。
 私は、率直なことを申し上げまして、一昨日までアラブにおりました。サウジアラビアの厚生大臣にも会ってきました。サウジも抗がんの、いわゆるがんセンターをつくりたいということを私どもに言いました。がんの問題は世界の問題だと言っておるのですよ。少なくとも日本が意地悪をして、この問題だけは認めないというようなことにならぬように、それこそ科学的にこの問題に対処をしていただきたい。
 要は、厚生大臣の決断いかんだと思うのです。かつての古井厚生大臣は、ソ連からのポリオの生ワクチンの輸入については薬事審議会の決定を待たずして厚生大臣の判断で輸入を許可しました。私は、現在の厚生大臣ならそれができると思うのです。あなた自身の決断です。既成の古びた権威を尊重することによって国民の厚生行政なり医療行政なり、私がいまがたがた言っておるように、先生方の収入がどうのこうのというところに目が向かぬうちに前向きの対応を立てられる、すなわち条件つきの認可をするように認めるのが私は厚生大臣の任務だと思うのです。
 最後に、私もこの問題については本当に命をかけたいと思うのです。国会議員の命をかけてもこの問題の促進を図りたいと思うので、大臣の見解をお伺いをしたいと思います。
村山国務大臣 いま草川委員の御発言、心からよく聞きました。いろいろな点で示唆されるところがたくさんございます。
 しかし、先ほど申し上げましたように、きょう参考人のお話を聞きましても、それぞれの立場で真実を吐露しておる、私はそういう心証を受けておるわけでございます。まだ常任部会が残っておりますけれども、何と申しましても行政処分の権限は私にあるわけでございますけれども、効くか効かぬかという話になりますと、厚生大臣は残念ながら素人でございます。したがいまして、現在の段階では、薬事審議会の意見はそれなりに尊重しなければならない。しかし、同時にまた、行政処分は私がやるわけでございますので、意のあるところを十分伺いましたので、善処してまいりたいと思っております。
草川委員 どうもいろいろありがとうございました。ぜひ私どもの意向をくんでいただきたいということと、さらに、非常に審議の時間が短いわけでございますので、先ほど森井先生の方からおっしゃられた促進方をお願いして終わりたいと思います。
 以上です。
戸沢委員長代理 米沢隆君。
米沢委員 午前中から種々議論がなされておりますが、結論的には、今回も丸山ワクチンの製造認可にかかわる申請は却下される見通しになりました。そうなりましたならば、いまいろいろと使われておりますこの丸山ワクチンは今後どういう運命をたどるのでございましょうか。
山崎説明員 最終答申はまだ出ておらないわけでございますが、仮にも先生御指摘のようなことになりますれば、私どもは、一つは、現在丸山ワクチンを多数の方々が使われているというそういう実態はそれなりに無視することはできないというか、重んじなければならない、こういう側面があるわけでございますので、患者、家族の皆様方の不安を招くことのないように、申請会社に対しまして慎重な配慮を要請しておるわけでございます。
 片や、そういう次元とは別の次元におきまして審議会の議論の過程というものを考えてみますると、現在提出された資料では必ずしも有効性が確認できない、したがってまた、医薬品として現在では承認できない、しがたい、こういうような結論であるわけでございまして、そういう意味は、逆に言えば、決して無効だと言い切っているわけでもないわけでございますので、将来の試験研究の積み重ねという努力が一方において必要なことである、かように考えておるわけでございます。
米沢委員 一応製造認可が今回の場合だめになる。そうなりますといままでと同じようなかっこうで、試験用としてあるいは研究用として丸山ワクチンが使用されるであろう、そういう前提に立って考えれば、今後、申請するデータ等をもう少し加えて判断しやすいようなデータをつくっていけば認可されるということになるわけでありますが、そういう段階になるまでに丸山ワクチンをもうゼリアがつくらないと言い出したらどうなるんだろうか。そのときに一体厚生省としてどういうような対応をなさるおつもりなのか、それが第一点ですね。まずそれから聞かせてください。
山崎説明員 これはだめになったことを前提にしての話であることはもちろんでありますが、私どもとしましても、ゼリア新薬会社と十分よくその辺の事情を話し合ってまいりたい、かように考えているわけでございます。
米沢委員 仮定の話で恐縮でありますが、ゼリア新薬がもうたえ切れないと、こうなったときには、日本医科大学が実験用としてつくらざるを得ないですね、もしそのまま研究用として使っていこうとされるならば。ということになりますと、需要に対してはかなり逼迫した状況になると思うのでありますが、そういう段階では一体政府はどうなさるのですか。
山崎説明員 仮にかなり需給関係が逼迫してくる、このことだけでも現投投与を受けておられる患者さんの不安は増すだろうと思われますので、その辺の事情も十分踏まえてゼリア会社と十分話し合ってまいりたい、かように考えております。
米沢委員 先ほどからの答弁を聞いておりますと、この丸山ワクチンについて、今回の場合、認可はノーだけれども、患者がたくさんおることにかんがみて、患者の皆さんが丸山ワクチンを取得できるような方法を考えたい、そういう御答弁を大臣もなさっておられますね。それは、結局いままでと同じような状況を確保してあげるという努力をするということなのか、一歩進んで、先ほどから話になっておりますように、わざわざ遠いところから買いに来なくても、少なくとも各地区ごとに行ったら取得できるようなところまでしてあげるということなのか、全然そんなことは考えてないのかどうか、そのあたりをちょっと聞かせてもらいたい。
山崎説明員 その辺も、今後十分相手方との関係においていろいろと議論していかなければならないと思いますけれども、当面私どもは現在の状態が急変するようなことのないような、そういう指導方針で臨んでまいりたい、かように考えております。
米沢委員 当面はいままでと同じようなかっこうの状態を確保する。その後認可されたら、少なくとも保険薬なんかに指定されましたら各地に出回ることになるわけですが、認可されない段階でそういう患者の要望について対応する用意は、検討はされるというふうにとっていいのですか、それとも全然検討するということすらいまの頭にない、こういうふうに理解していいのですか。
山崎説明員 当面の措置は別にしまして、将来問題として考えた場合に、やはり先ほど申しましたようにこの薬の開発ということ、つまりちゃんとした医薬品としての承認という、こういう道につなげるのが本筋の道筋であろう、かように考えております。そういう意味で、治験用薬としての薬のあり方、こういうものの問題として今後考えてまいりたい、かように思っております。
米沢委員 丸山ワクチンは、すでに先ほどから議論になっておりますように、もう十数万の人が使用済みだ。現在でも三万人前後の人が使っておられる。これは治験薬だとかあるいは研究用薬だとおっしゃいますけれども、治験薬だとか研究用薬として使用されるというよりも、実態的にはもう治療薬的なものに商品化されておるというふうに理解をしなければならぬ、そう思うのですね。
 ところで、現在のところ医薬品として認可されてない、こういう薬が一般的に使用される、十数万の人が使うわけですから、一般的に使用されているということは、薬事法上はどういう取り扱いになるのですか。
山崎説明員 薬事法上は、一つは治験届けを受けましての治験薬の位置づけがございます。もう一つは、これは薬事法ではございませんが、お医者様の研究用の薬としての使用、こういうことがある、かように考えます。主として丸山研究室での扱いの問題は、中には治験用の位置づけをすべきものもあるかもしれませんが、現在では研究用の薬のそういうラインに乗るものであろう、かように考えておるわけでございます。
 先生の御指摘は、しかし実態として十数万人、現在時点では三万人近くということでございますが、そういう形での薬の供給というものが現実に実態としてある、この現実をどう認識するか、こういうお尋ねであろうと思うわけでございますが、その辺は長年の間にこういう形に出てまいったわけでございまして、いままでも薬事法上これをとやかくと私ども言ったこともございません。その辺は量がどのくらいになればと、そういう問題でもなかなか解決しにくい問題でございますので、とりわけて現在、薬事法上どうのこうのと言う考えは持っているものではございません。
米沢委員 薬事法上全然問題がないということは、この丸山ワクチンについては結構なことかもしれませんが、一般論として、認可されてない薬があるいは治験用あるいは研究用薬として使われる、その場合の法的な規制がないなんというのはおかしいような気がするのですが、一体どうなるのですか。
山崎説明員 治験用薬につきましては、その治験という目的、趣旨にかんがみまして、先般の薬事法改正の中に一条文を加えさせていただいたというようなことで、一つのルールがございます。研究用薬というものは、何といいますかお医者さんの自由な診療の範囲あるいは研究の範囲に含まれる、そういうものであろうというふうに考えるわけでございまして、丸山ワクチンにつきましてはきわめて異例の状態がある、こういう認識をしておるわけでございます。
米沢委員 それならば、たとえばこれからも制がん剤等については、各社とも血眼になって開発に努力しておりますから、いろんな研究用薬が開発されていくと思うのですね。そうなった場合、研究用薬というものは勝手に患者に投与していい、あるいは注射していい、薬を飲ましてもいい、こういうことになっておると後で何か問題が起こることになりはしませんか。
山崎説明員 その辺が実は午前中の、たとえば砂原先生の陳述の御意見にもございましたような事柄が一つあるわけでございます。しかし幸いに、この丸山ワクチンにつきましては副作用がないという一つのものを持っている、こういうようなことでもあるわけでございまして、仮にも別の薬でああいうような普及のあり方というものがあって、しかも副作用があるというようなことになれば、これはもう大変なことでございます。そういう意味で、研究用であろうと何であろうと、その辺は十分対処していかなければならないわけでございますけれども、何せきわめて異例のそういう状況が一つ生まれている、こういうことでございます。
米沢委員 いま私は丸山ワクチンに限って物を言っておるのじゃありません。今後いろいろ開発されるであろう研究用薬が、医者なら患者に勝手に使っていいか。副作用がなければ本当にいいですよ。しかし治験をし研究をし、それが本当に認可に至るまで何回となぐ何万回となく患者に投与され注射されたりする、こうなりますと、普通の医薬品がいろんな手続を経てオーケーになった、それを使うというのとは別の課題として、われわれの研究課題として考えておかないと、大変なことになりはしませんかということを言っておるわけですね。
 逆に、たとえばこういう研究用の薬として、ある程度の規制と言うと言葉が悪いかもしれませんが、いろいろある程度のデータをそろえて、有効である、そして副作用がある程度ないという、そういう有効なデータを提出し、それで大体オーケーをとったような研究用でないと、人体に投与するなんというのに、それが法的な規制もなければ、お医者さんと患者の関係だなんて言われると、大変なことになるような気が私はするのでございます。
 そういうものについて法的な規制がない、法的な取り締まりとかあるいはこれだけはしろという、そういう法規制がないがゆえに、結局丸山ワクチンなんかでも認可申請にかかわって長年にわたって審議が続いていく、そういう状況を逆につくっておるのじゃないかという気がするのですね。研究用薬なんていつ使ってもいいのだから、ゆっくり時間をかけて審査しようということにもなりかねない問題を含んでおるような気が私はしますよ。
 同時に、この丸山ワクチンについては、商品化の方が先行して裏づけのデータの方が後追いしておるものですから、これは医薬品の認可に関しては大変不幸な道をたどっておると私は思うのです。こういう状況をつくり出したのも、やはり研究用薬として何らかの指導なり規制なりあるいはこれだけは守ってくれという、その部分を法的にびしっとしないからである。これはおかしいのじゃないか。もしこれが万一副作用でもあるようなものだったら大変なことになる。これはないからいいようなものですね。逆に、こういうものがないがゆえに審査がおくれているのじゃないかという気がするのですね、ゆっくりやれるのだから。あるいはまた本当にデータをそろえてから商品化するという、その順序が狂ってくるということを許してしまうのじゃないかと私は思うのですね。
 そういう意味で、今回私はこの丸山ワクチンの勉強をしてきて初めて気がついたのですが、ちょっと法的な不備じゃないか。そのあたりを御検討いただいて、研究用薬としてでも人体に投与したり注射したりするわけですから、認可した医薬品の薬害等については非常に厳しくなりつつある段階において、開発の段階で薬そのものが放置されておる、野放しになっておるということは大変問題じゃないか。その点を踏まえて今後の検討課題にしてもらいたいと思うのです。どうですか。
山崎説明員 通常の薬の場合は、こういう事象が生ずることはまずないわけでございまして、治験用の場合、研究用の場合通じまして、お医者様の倫理規定、ヘルシンキ宣言というものが倫理の奥底にあるわけでございます。動物実験から始めて、健康人にそれが試験投与されていく。それに至るまでの間、何遍となく基礎実験が繰り返し行われる。そこで人に適用しても大丈夫だという踏み切りがついてから、健康人あるいは少数の患者、さらには少し幅を広げた患者さんに投与して、その実験成績を持ってくる、こういうことが通常のルールとして行われるわけでございますので、まずこのようなケースになり得る可能性はほとんどない、こう言い切っていいんだろう、私はかように考えております。
米沢委員 この丸山ワクチンに関しては、たくさんの方が使うことになってしまっておる。だから、ほかの研究用薬についてはそんなことになるはずがない、それはおかしいと思うのですね。なる可能性なんて何ぼでもありますよ。ある薬を、たとえばがんならがんに効くという研究をされておって、これを何とかやろうといったときに、それはある程度医学的な検討を加えられて、副作用がどうだとか薬害がどうだという少々の議論がなされたとしても、それは確かに長期投与されたり、結果的には思わぬ副作用を生むような、そんなのは何ぼでもあるんじゃないですか。そんなのがなかったら、でき上がった医薬品が副作用があるとかいって後から問題になるようなことはないと思うのですよ。
 ですから、でき上がった医薬品の薬害については大変厳しく取り締まらねばなりませんけれども、研究用薬の分も、確かに研究用はぴしっと決まってないから研究用なんですから、そういう意味でむずかしいところがあるかもしれませんけれども、研究用薬についてもある程度の法的な何かをしないと、結果的には人体実験で殺してしまったりすることがあるんじゃないですか。それはあり得ないことないでしょう、皆さん。どうですか。
山崎説明員 薬の承認を前提としました道筋はいまでもすでにでき上がっていると言ってもいいんだろうと思います。ただ、その研究の内容その他について、法的な規制その他が及ぶということが果たしていいのかどうか、これは今後検討さしていただきたいと存じます。研究の自由という問題が一つあるわけでございますし、そういうものとの絡みも当然出てまいると思います。
 ただ、いずれにしましても、お医者様の倫理規定として強く働いておりますのがヘルシンキ宣言に代表されるような倫理規定で、それは薬の投与という問題、あるいは開発、研究、そして薬として登場するまでの道筋なりあり方というものを宣言したものでございますが、そういうものに一般的に道義的に拘束されるということだろうと思っております。
米沢委員 研究の自由よりも生命の尊厳の方を大事にしてもらいたい。そういう観点からぜひ御検討をいただきたいと私は思います。
 それから、これも先ほどから問題になっておりますが、たとえば審議会のメンバーが、それぞれのいろいろな会社の薬を開発する場合にタッチをされて、そういう方が審査のメンバーになる場合には大変むずかしい問題が出てくるんじゃないかというような話がずっと出されております。今回の場合にも、御案内のとおり不適格ではないかという申し立て書が出されるなどいろいろ物議を醸しておるわけでありますが、確かにその委員が本当に医者の良心に基づいてやったかしれないし、横からがたがた言われるようなものではないかもしれませんけれども、形式的にはそういう疑念を持たれざるを得ないような委員がおるということ、ひいてはそういうことから結果的に結論さえ不信の目で見られるということで、今後あらゆる場面にこういう場面が出てくると思うのですが、それを放置していたならば、いつまでたってもまず不信感先にありきで納得してくれない。そういうのがあたりまえだとしておりますと、私は不幸だと思います。仕方がないんだということではどうもおさまらない。
 そういう意味で、けさの新聞等読ませてもらいますと、薬事審議会の規程を改正しようとかいうような話が出ております。けさの桜井先生なんかの話によりましても、本当にわれわれ学者がやらぬでも、役所でそういう審査するような機構をつくってもらった方がいいとか、あるいはまたもう少し審議の経過を公表することがベターではないか、その方がわれわれとしてもやりやすいとか、いろいろな発言がなされておりましたね。そういうことを踏まえて、今後審議会のメンバーの構成なり選任の仕方なり、そのあたりどういう改定を具体的になさろうとされておるのか、その点をちょっと説明してもらいたい。
山崎説明員 そういう線でいま問題を鋭意詰めておるところでございまして、第一に、委員がたまたま御自分の研究する分野で発表された文献、リポート、こういったものが、具体的な、個別的な、開発する薬の会社の資料として登場する、たまたまそれが委員の先生の一部と重なるケースがあるわけでございまして、いまの体制からすると、その発生すること自身は避けられない、かように考えております。そういう意味であれば、審議会の方の運営の仕方で、その辺の工夫をぜひ近々にやりたい。
 具体的に申しますれば、たとえばデータの作成、こういうものに関与した人が委員である場合には、当該データの評価等について審議する議事に加わらないとか、そういうものを考えておるところでございます。
米沢委員 あと、たとえば審議の経過を公表するとか、提出された資料を公開するとか、そういうものまで踏み込んでやられるお考えですね。
山崎説明員 データの公表問題につきましても積極的に考えてまいりたいと思います。
 ただ、一つの条件は、ごく小部分でありまするけれども、企業秘密の問題が、製剤の方面について多少残っております。それから、提出されたデータなり論文の主要なものは、提出申請前にほとんど学会誌なり学術誌に発表していることが原則である、こういう指導を強くしておりますので、その辺の公表関係は実態とは大分違ったものになろうと思いまするけれども、いずれにしましても公表を原則にしまして、議事の経過その他を公表することを考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
米沢委員 一つ心配なのは、たとえば一流の学者、一流の方に何しろ委員になってもらうというのが、まず皆さんの努力目標でしょう。一流の学者なんというのは、大体みんな何らかの形で医薬品の開発にかかわっておられるのではないかと思うのです。特に専門的な立場で審議されればされるほど、その専門家については、いろいろな専門薬の開発について携わっておる。そうなると、なる人がいなくなるのじゃないかと思うのですね。あるいはまた、ここまでやかましく言われると、おれはもうなりたくない、こんなところに連れてこられてやかましく言われるのはかなわぬと言うて、何か逃げるようなことになってしまうのじゃないかという心配も私は一面するのですよ。これは非常にむずかしい話です。
 そういう意味で、口では簡単に言えますけれども、大変むずかしいところがあると思いますので、できればやっぱり資料の公表等で、おれたちもそれにかかわったけれども、その中に入っておる、しかし、こういうかっこうで、こういう結論を出したのだという、そちらの方をもうちょっと積極的にやってもらった方が、学界の進歩というものに対してはやはり皆さんの協力が得られるのではないかという個人的な見解を私は持っております。
 それから、今回の審査に関しましていろいろと不評であるのは、たとえば日本医科大学のワクチン療法研究施設がやったような一般臨床試験というのは、みんな排除されておる。なぜこんなのを排除するのだろうか。これは確かに専門的に言うたら、規格がどうだとかいろいろありましょうけれども、治ったという一般の臨床試験の例を排除するという、そのやり方がどうもおかしい。私もそんな疑問を持つんですね。治ったという臨床例について、確かに専門家の立場からは、こういう例でないといかぬ、こういう例でないといかぬ、いろいろなモデルケースみたいなものを持ってこいと言われるかもしれませんけれども、研究用薬と言われますように、いま悪戦苦闘して、ふやしてみたり減らしてみたり、一生懸命やっておられると思うんですね。そういう意味で、治ったというのは、いわゆる一般の薬を使って治ったという臨床例なんかとは違った、別扱いでやはり考慮の中に入れるという、そういうシステムにならないと、私は、非常に疑問もわくし、不信もわくし、正当な評価につながらないのではないかという感じがするんですね。
 そこで、聞かしてもらいたいのは、ちょうど委員の不適格を申し立てたというその申し立て書の中には、先ほど言いましたように、日本医科大学のやった「一般臨床治験例は、調査会においては一切評価の対象とされていない。」とか、また、「権威ある癌専門施設の権威ある専門医師の入った多施設研究グループの手がけた臨床データでないと調査会においては評価されず、」とか、「また丸山ワクチンについては、申請者の再三の臨床実験の要請をこれら権威ある施設、専門医は拒否し、厚生省も」それにあっせんしてくれなかった、したがって差別だというふうに、一連の流れがこういうふうな感覚でなされておるわけですね。
 そういう意味で、こういう審査をされる場合、いろいろな学問的なむずかしさはあるかもしれませんけれども、やはり一般臨床例みたいなものは、あらゆる角度からすべてを吸収してそれを審査するというシステム、一応学問的にはいろいろ理屈があるかもしれませんが、やはりそういう治ったという一般臨床例等についてはあらゆるところから集めて、聞かしてくれ、見せてくれという、そういうシステムを入れないと、いつまでたってもこんな欲求不満が出てくるのじゃないでしょうか、どうなんでしょうか。
山崎説明員 お答えを申し上げます。
 いまのシステムから申しますると、申請者サイドで、御自分でいろいろ実験、試験をやられた、そういう成績のいろいろな資料を、取捨選択といいますか、その中で御自分でひとつ系統的にそれを整理、収集する、そしてその整理、収集し、さらに整理、評価して、それをデータとしてこちらに提出していただく、こういうたてまえ、ルールになっておるわけでございまして、そういう意味で劇的に効いた症例なども、そういうものも整理、収集、評価してお出しいただければ、十分それはそれで足りるといいますか、こちらの目に触れることができるわけでございます。
 何せ、全国のいろいろな例を私ども自身で集めるということは、現実問題としてはとてもできることではございませんので、それはもう挙げて申請者サイドに、御自分の治験計画に基づいたデータが当然発生するわけでございますから、それを整理、収集、評価して出していただく、こういうたてまえになっておるわけでございます。
米沢委員 今回の場合には、申請者が治験例を集めて持っていったのではないですか。しかし、それは除外されたのではないですか。そうじゃないのですか。
山崎説明員 少なくとも私どもは、データとして出されているものを突き返すとか除外するとか対象にしないとか、こういうことではございません。出しているものは全部評価の対象になっているわけでございます。
米沢委員 出したけれども、いろいろ判定の基準に合わない臨床例であるから除外して考える、こういうことになったのじゃないですか。
山崎説明員 この丸山ワクチンにつきましては、第一次、第二次、今回第三次というそれぞれ歴史があるわけでございまして、たとえば第一次に出したもの、この中では、確かに個別症例のいろいろなケースを申請データとして提出されたものがあります。しかし、これをその当時の審議会の目にさらして評価してもらいますと、こちらから見れば、それは評価にたえない、約束事の目から見て、いろいろな無理がある、仮にこういう無理なものがあるならば、それは今後もお出しになってもなかなか無理ですよ、そういう意味で、次からの資料の問題についての御注文といいますか、そういう関係は生じております。
米沢委員 もう時間も来ましたけれども、今回のこの丸山ワクチンに関しては、全国でもかなりの人数の方が欲しいということで行列をなさるような状況でありますから、でき得る限り製造認可できるようなかっこうで、データの提出等々、できる限り助言、助力をしていただいて、再審査の道を早くつくっていただく、そういう御努力を厚生省としても、つとに心がけてもらいたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。
戸沢委員長代理 小沢和秋君。
    〔戸沢委員長代理退席、今井委員長代理着席〕
小沢(和)委員 いままでにもうすでに大分審議をされまして、私が聞きたいと思っておったことも、すでに質疑の中でかなり出てきております。ですから、できるだけそういうような重複を避けながら質問をいたしたいと思うのです。
 まず第一にお尋ねをしたいのは、この丸山ワクチン問題についての今後の厚生省の対処ですね、許可にならないだろうというような見通しに現在なってきている。許可にならない薬を、国の方が積極的に手に入れることができるようにいろいろと手を打つということもおかしいじゃないかという話もあるけれども、しかし現実問題として、先ほどから話があっておるように、これを入手したいということで行列をする人も出ておる、あるいは全国各地から飛行機や汽車に乗って集まってきておるということも、これは現実であります。先ほどからのお話で、政府としては、当面は生産の継続を要請し、そして日本医科大学に来れば渡るようにしたいというお考えのようですけれども、私、政府がどうせこういうような態度でおられるというのであれば、全国各地から来なくても、それぞれの地域で手に入れることができるような方法というのも、そこまでやるなら考えた方がいいのじゃないかと思うのです。この点についてお考えになっているかどうかということをひとつお尋ねしたいのです。
山崎説明員 先ほどもお答え申し上げたのでございますが、今後のあり方につきましては、一つは、やはりこの丸山ワクチンが将来といいますか、もちろんだめな場合を前提としての話でございますけれども、薬として認可、承認される、こういう方向において、治験用の薬として各臨床施設において治験が継続される、こういう関係においてその供給の確保があり得るという側面が一つであります。もう一つは、研究用の薬としてお医者様の自由な診療の範囲内のものとしてそれを位置づける、この二つの考え方があるわけでございまして、それを具体的に今後どうやっていくか、これは相手もあることでございますので、今後の課題にさせていただきたい、かように思っております。
小沢(和)委員 その課題にするということはわかりましたけれども、しかし実際、私は九州の出身ですよ。こういうようなところから欲しいということで、私の知っている人などもこっちへ来たりしているということも私は知っているわけです。だから、どうせこういうような継続をして供給ができるようにしたいというのであれば、思い切ってそういうような措置もその中に含めて考えた方が現実的ではないかというふうに、私思っているわけですよ。その点でもう一度答弁願いたい。
山崎説明員 おっしゃるお気持ちはよくわかるのでございますが、それにしましても、臨床研究の場という条件が一つそこに存在しなければなりませんし、場合によれば治験の場という存在が不可欠の前提であろう、かように考えておるわけであります。
小沢(和)委員 いまの話はどうも余りよくわかりません。わかりませんけれども、いまの段階では言いにくい問題でもあると思うから、供給を保証するというのであればそこまで考えた方が現実的だということを私はもう一遍だけ申し上げておきたいと思うのです。
 そこで、私は丸山ワクチン問題がこういうような形で議論になっておるということはある意味では不幸なことじゃないかと思うのです。やはり医薬品として本当に効果があるのかどうかということが一番の根本問題ですから、冷静に研究なり実験なりをとことんやって早く結論を出すということが一番肝心だろうと思うのですね。
 そういう立場に立って次のお尋ねをしたいのですけれども、こうまでなってきた以上、国自身の責任で追試などをやるというようなことは考えられないのか。何かそういうようなことを考えているというようなニュースもちらほらしているように伺っているのですが、どうでしょうか。
山崎説明員 メーカーがみずからそういうことを行うというのが本来のたてまえであります。そのたてまえはちょっと崩せないのではないか、かように考えておりますが、御趣旨もわからないではありませんので、その辺も今後の課題にさせていただきたいと思っております。
小沢(和)委員 それから、これはつい先ほども議論になった点ですけれども、丸山ワクチンが医薬品として許可もされてないのに十数万人の人にすでに投与されておるというのは私も全く異常な事態だと思うのですね。こういうような事態については、局長は先ほど来、いや、今後はそういうようなことは考えられないというふうにおっしゃっているのですけれども、ほかにも何とかワクチンというようなことでかなり投与されておるというケースもあるというようなことを私はすでに聞いているのですよ。
 そうすると、本来の順序を踏まずに、実際は治療のために大量に薬がどんどん許可もされずに使われていくというような事態というのは、これは今度のこの経験からいって、いまの仕組みの中ではもう防ぎようがないということになるのか。もしそうだとしたら、これは私は大問題だと思うのですね。その辺どうお考えですか。
山崎説明員 防ぎようがないのかとおっしゃられますと、一つは薬事法という問題があるわけでございまして、そういう状態に立ち至って実質上の販売なり流通なりというような関係が生ずれば、それは薬事法違反ということになるケースも一般論としては当然あるわけであります。
小沢(和)委員 いや、そういうケースもあると言うけれども、実際に現在丸山ワクチンはこういうような状態になっている。たまたま丸山ワクチンについては副作用がないということはもうほとんど一致した見解になっているからいいけれども、これがもし副作用、たとえばスモン患者みたいなのが出てくるというような薬であったとしたら、これは本当にぞっとする話じゃないかと思うのですよ。いまも申し上げたように、すでに別のワクチンなどもそういう手続も経ずに大量に使用されるような状況になってきているというような話も私は聞くし、だからこういうようなことについて今後これを教訓としてこんなようなことが起こらないようにどういうふうにしたらいいのかということについて国として真剣に考えないと、一般論としてですけれども、本当にこれは大問題じゃないのでしょうか。その点どうお考えですか。
山崎説明員 この問題を離れまして、一般論としては先生のお説はごもっともだと存じております。そういう関係ですでに私どもは薬事法という法律を持っておりますし、そういう面で十分対応できる、かように考えておるわけであります。
小沢(和)委員 いや、その薬事法という法律を持っておるという事態のもとで現在のようになっているわけでしょう。だとしたら、この薬事法ではそういうような事態については有効な対処はできないということが現実によって証明されたということじゃないのですか。だから、こういうような事態が今後起こらないようにしていくという上ではもっと考えなければいけないという点があるのじゃないのか。
 私は素人だからちょっとそういうような問題意識を持つという程度のことしかできませんけれども、その点いかがですか。
山崎説明員 先ほども申し上げたのでありますが、この丸山ワクチンにつきましては全く異例の経過なり何なりをとっていると私は認識しておりまして、そういう面から見まして、全く同じようなことが今後も別のことで起こるというふうには私は考えられないと思っておるわけでございます。
 そういう一般論としてでございますが、仮にもそういうものが生じ、またそれが何らかの弊害を持つ、こういう状況になれば、もちろん現在の薬事法で十分対応できる、かように考えております。
小沢(和)委員 いまの点は必ずしも十分に納得できません。その点だけ申し上げておきたいと思うのです。
 次に、新薬の許可をめぐる問題について二、三お尋ねをしたいと思うのです。
 私も今度の丸山ワクチン問題などについて改めて勉強してみて思ったのですけれども、いまのように新薬の許可を申請する場合には、薬のメーカーの方が大学病院なり信頼のあるどこかの病院なりに依頼をして、そして実験をして、そのデータを提出して審議を求める、それに基づいて書類でその審査をして決める、こういうような仕組みになっているということになりますと、これはどうしてもそういうような製薬企業と、そういう非常に権威があると言われるような大学やその他の病院の医師などとの間に癒着の関係というのが生まれてくる。私はやはりそういう必然性というか非常に大きな危険性がそこにあるのじゃないかと思うのですよ。だから、少なくともこの癒着の関係を断ち切るような機構をつくっていく必要があるのじゃなかろうか。
 だから、製薬メーカーが直接こういうようなところに依頼をして実験をするというようなことじゃなくて、こういう薬の有効性については第三者機関なりが、費用などを当然メーカーなどから徴収しなければいけないでしょうけれども、その第三者機関でやる。そして、客観的にそこで明らかになった資料に基づいて審議会が検討する、こういうような仕組みをつくるということが癒着を断ち切っていく上で必要ではないかということを感ずるのですが、いかがですか。
山崎説明員 先生の御提案、検討に値するものだと存じまするけれども、現在は各企業が独自に臨床試験を行っておりまして、それもきわめて広範に行われておりますし、対象医薬品もさまざまな、多種多様なものでございまして、その数もきわめて膨大なものになる、こういう関係だろうと思います。そういうのを、まあ第三者機関とおっしゃいましたけれども、何か一つの機関に取りまとめて臨床試験を整序された姿でやっていくような組織をと、こういうお話だろうと思うのでございますけれども、それは一つは大変予算的に膨大なものになるということが当然予想されますのと、確かにメーカーと医療機関との癒着というのか何といいますか、メーカーと医療機関との関係がいままで個別個別に行われていたものが整序される、こういう意味合いがあると思うのでございますが、だから技術的にたとえば臨床試験を取りまとめるにしましても基礎的なデータを、動物実験その他のデータをどう評価してからそこに進むのか、こういういろいろな技術的な問題があります。あるいは、どの段階からそういう第三者的な機関というものが関与すべきものなのか、技術的にもいろいろと難点も多いと思いますので、いまさしあたって現実的にその問題をこなしていくのは困難があろうと思います。
 私ども、欧米先進諸国におけるそういう新薬開発のあり方あるいは承認までのプロセスのあり方につきましても、さような姿というのはちょっと見つけていないのでございます。
小沢(和)委員 いま局長は西欧先進国の事例なども研究したというようなお話がありましたのですけれども、たとえばアメリカなどではFDA、食品医薬品管理局というような機構があって、新薬の審査をするための専門の職員を千人も抱えているというような話も聞いているわけです。
    〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
私がさっき言った第三者機関というのとこのFDAと必ずしも一致している話じゃありませんけれども、しかし私は、アメリカにこういうような機構があって、その開発からさらに安全性、有効性などについての臨床試験などに至るまで国の責任でやっておるというようなことについて、もっと研究をしてこういうような考え方を積極的に導入をしていく必要があるのではないかというふうに考えるのですが、どうですか。
山崎説明員 確かにそれも一つのお考えだと思いますし、私どもの部内の考え方もそういう方向を否定する考え方は必ずしも出ておりません。ただ、いままで長年にわたりましてへまあ日本的なと申しますか日本のあり方というものが、審査スタッフをもちろん持っておりますけれども、おおむね高度の科学的、技術的な審査というものは外部の審議会というものに任せるといいますかゆだねているという、そういう実態が定着してきているわけであります。
 いま何も行政機構改革というような時期だからこういうことが実現が無理だとかなんとかいう意味ではないのでございますけれども、技術的な問題といたしまして、アメリカのFDAなんかでも、そういう恒常的な、常駐的な審査スタッフを内部に多数抱えるという方式というのは技術の進歩というものをあるいは阻害している面もあるのではないかという反省も生まれているように聞いておるわけでございまして、つまりその審査スタッフ、担当官がどうしても技術刷新から取り残されてくる、こういう弊害もある、こんなことも問題意識としてあるようでございます。まあ、あれやこれやいろいろと、利点もありますが、考えなければならない点もあろうかと、かように考えております。
小沢(和)委員 いま弊害もあるなどというようなお話もありましたけれども、一番の問題は、メーカーがお互いの思惑あるいは学閥がらみなどというような話も今度出てきましたけれども、そういうようなことによって新薬の開発などにいろいろな邪魔が入ったりしないように、国の責任でそこのところを進めていくという点で私そういう提案をしているわけです。
 大臣にこの機会に一言お尋ねしたいと思うのですが、いま臨調というようなことが大分問題になっていますけれども、私は、やはり国の責任においていま言ったような安全性あるいは有効性などについての臨床試験などをやる、こういうような機構を設けるというようなことはぜひ検討する必要があるのじゃなかろうか。臨調というような状況の中でも、私は、国家百年のためには、こういうようなことは考える必要があるのじゃなかろうかということを考えるけれども、大臣はいかがお考えか。
 それからまた、ついでですけれども、先ほど臨調の問題について、大臣は最終的には総理大臣の指示に従わなきゃならぬというお話だったのですけれども、しかし私、いま臨調の関係でいろいろ出ている問題というのは、総理大臣の意向に従わなきゃいかぬということで一方的に従ってもらったんじゃ困るような問題が余りにもたくさん提起されているように思うのです。厚生大臣としてこういうようなものは困るというようなことで毅然とした態度をとってもらわなければならぬ問題がたくさんあると思うのですけれども、その辺についてどうお考えなのかということも、ついでですから一言だけお尋ねしておきたいと思います。
村山国務大臣 前段の問題でございますけれども、きょう参考人からいろいろ伺いまして非常に得るところ多かったと思うのでございます。何分やはりがんが原因がわからないというところに最大の問題があると思います。そういう意味で、いまのところいわば薬事審議会の審議というのは統計的な審議をやっているわけでございまして、統計的に合わないのはいま排除している。これも一つのやり方でございます。しかし、ある参考人が言われましたように、しかし効いているという事実はたくさんある、こういうわけでございます。それをいかに科学的に証明できるのか、ある参考人はこういう点に気をつけてやるべきだというようなことを言われたのを、私は非常に参考にして聞いておったのでございます。
 いずれにいたしましても、そういう意味では、がんはもう医療器械の発達とともに、まだ解明はできませんけれども、日々進んでいるのじゃないかと思うわけでございます。そういう意味で、これからもう判定基準そのものも、だんだんいろんな判定基準が出得る可能性を持っているということを深く感じているわけでございます。
 そういうことで、一方におきまして丸山ワクチンの問題、決して無効だなんか言っているわけでないので、出されたデータから従来の方式でやると有効性が認められなかったというにすぎないのだろうと思っているわけでございます。
 いま小沢委員が指摘されましたその検査のやり方の、一種の公的機関をつくったらどうか、これも確かに参考に値するわけでございますが、同時にまた、公平を期するという意味はまたいろんなやり方が私もきょうお話を聞いて考えさせられました。人選のやり方あるいは運営の仕方、これによってかなり担保できるのじゃないのか。また今度は、公平にいたしますと、やはり企業というものは本当に真剣に開発する努力をするわけでございますので、弊害ももちろんあると思いますけれども、それ自身薬学の進歩に大きな影響を持っていることも確か、この両方を殺さないようにどう組み合わしていくか、小沢委員のことも頭の中へ入れながら今後検討してまいりたいと思っておるわけでございます。
 それから、第二の問題でございますが、臨調について、私は、最終的には総理の意見に従う、こう言いましたけれども、これは一般論として申し上げたわけでございまして、もちろんいま言われている中でどうしても受け入れられない点はあるわけでございまして、その点はきのうも総理に申し上げておいたわけでございます。それは、私の判断でこれとこれは受け入れられませんと一々具体的には申し上げません。しかし、事柄によりまして、私も国務大臣の一員であり、そしてまた、今度の財政を見直すという姿勢そのもの、これには賛成しておるわけでございますので、最終的に譲り得る範囲において総理の意見をやはり尊重してまいりたい、こういう意味でございます。
小沢(和)委員 もう時間もぼつぼつ迫ってまいりましたので、あとお尋ねしたい問題は二問ですが、続けて申し上げて回答をいただきたいと思うのです。
 一つは薬価の問題なんです。
 丸山ワクチンは、その指導料ということで、これは四十日分ですかね、五千円ということになっておるわけですね。これは指導料ということだから単純に薬価だというふうに言うことはできないと思うのですけれども、しかし私は、この丸山ワクチンというのが製造している原価などと全然無関係に、まるっきり大赤字でこういうような値段が決められているのではないのじゃなかろうかという感じがするわけです。これと対照的に、クレスチンとかピシバニールというようなものの薬価を見てみると、一日の薬代がクレスチンの場合には三千二百五十四円、ピシバニールの場合は五千三百三十三円。製法やらその他がいろいろと違うんだというようなことが言われてはおりますけれども、しかし私は、こんなことを言うと素人の議論だと怒られるかもしれぬけれども、たしかクレスチンというのはサルノコシカケ、そもそも山の中からただで持ってきたものを原料にしているじゃないかというふうに言い出したら、このクレスチンというものにしたって、三千二百五十四円、これはちょっと高過ぎるんじゃなかろうかということを改めて今度感じたんですよ。
 そういう点からお尋ねをするのですが、近く薬価基準の算定方式の見直しというふうなこともけさの新聞ですか、報道されております。私たちはかねがね、やはり薬についても製薬の原価というものをもとにして適正な価格をはじき出すべきだということを言っているのですが、今度の場合も何かやはり実勢価格というのが大体において基準になるような考え方のようですけれども、この辺ですね。製造原価というようなものをもっと重視して、これをベースにするというような薬の値段の決め方をしないといけないのではないかということを、もう一度、これは丸山ワクチンの問題に関連してひとつお尋ねをしたいのです。
 それから最後に、これは大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、抜本的ながん対策、さらには成人病対策ということでちょっとお尋ねをしたいと思うのです。
 御存じのとおり、いま、がんに限らず、心臓病とかあるいは高血圧とか糖尿病とかいうようないわゆる成人病というのが死亡原因の上位にずらりと出てきているわけですけれども、これはいわゆる先進諸国に共通した現象。日本でも生活様式が西欧化するにつれて急速にそういうふうになってきているということが言われている。やはり生活様式とこういうようなこととの関係が非常に大きくあるんじゃないかということを私も感ずるわけです。アメリカなどでは上院に栄養問題特別委員会というのを一九七五年から置いて、二、三年かけて、こういうような食生活とがんなどとの関係を権威のある人たちを呼んだりしていろいろと研究をしている。動物性の脂肪やたん白質のとり過ぎががんなどととも非常に関係がある、四十万人のがん患者のうち三十五万人は食事やあるいは体内に入る化学物質が何らかの意味で原因しているというようなことまで言われているのですね。
 私は、こういうような抜本的な、生活様式にまで立ち入って国民の健康を守るというような研究を日本でも力を入れてやらなければいけないんじゃなかろうか。私たちには、いわゆる西欧的な食生活というのは何か非常に理想だというようなイメージがあるのですね。ところが、アメリカなどでは非常に反省が起こっておる。この辺についても日本でも厚生省を挙げてどうしても取り組むべき時期に来たんじゃなかろうか。その辺についてどうお考えか、最後にお尋ねしたいと思います。
大和田説明員 前段の問題につきましてお答え申し上げます。
 新薬の価格算定方式でございますが、これは御承知のようにいわゆる類似薬効比較方式というものをとっておりまして、すでに市場価格によって価格が設定されておるという既収載品目の価格と比較して割り高にならぬように、そういうことで薬価を算定しているところでございまして、先生おっしゃいましたような原価方式はとっておらぬ。原価計算方式の議論、当然私どもも承知しておるわけでございますけれども、やはり開発経費であるとか設備費とか品質管理費といったようなことで算定の方式が非常にむずかしいということで、原価方式を採用することはなかなか困難であるというふうに考えておるわけでございます。
 この新薬の算定につきましてはいろいろ議論がある。したがいまして、私どもも、これは五人の斯界の専門家の方々にお集まりを願いまして、新薬の薬価算定に関して議論をしていただくということで、すでに今月の十七日でございますけれども初会合をしていただきまして、このあり方につきまして検討を願っておるところでございます。私ども、その先生方の検討の推移を拝見しながら適正な新薬の算定方式というものを考えてまいりたいというふうに考えております。
大谷説明員 後段についてお話し申し上げます。
 成人病につきましては、先生御指摘のように治療よりも予防、予防よりも生活だ、特に食生活が大事だというふうなことは当然のことでございまして、厚生省では昭和五十三年度から国民健康づくり計画ということで生活の健康教育に力を入れてきておるところでございます。
 ただ、がんと食生活の問題につきましては大変むずかしい問題がございます。たとえばわが国では胃がんあるいは子宮がんにつきましては減少の傾向になってきておりますが、大腸がんでありますとかあるいは乳がん等については若干増加しておりますし、特に肺がんあるいは呼吸器がん等につきましては非常に増加をしておる、こういうふうになっております。呼吸器のがんにつきましてはたばこ等のことが言われておりますが、大腸がんでありますとか乳がん等につきましては食生活のパターンの変化、欧米化というものが非常に関係があるのではないかというふうに言われております。
 ただ、この問題につきましては、なかなか簡単にそういうふうにはまいりませんで、食生活の欧米化というものが、たとえば高血圧の問題でございますとか脳卒中等の問題に非常によい傾向も与えておるわけでございますし、また栄養等の問題につきましても非常によい結果も与えており、一律的には申せないのでございますけれども、食生活とがんの問題につきましてはなお十分な研究をいたさなければならないということで、私どもは非常に注目しておるわけでございます。
小沢(和)委員 終わります。
山下委員長 菅直人君。
菅委員 きょうは、私は社会民主連合の委員なんですけれども、新自由クラブの皆さんの御好意で、この丸山ワクチンの問題については積極的な姿勢ということでは一致をしておりますので、その質問時間を私の方にお譲りいただいて合わせて質問させていただくということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。
 大臣、この丸山ワクチンをめぐるこれまでの経緯はいろいろなところでお聞きになって御存じだと思いますけれども、多少お話をしたいと思うのです。といいますのは、一昨日でしたか、朝のテレビに大臣が世相講談か何かに出ておられて話しておられるのを聞いて、これは大臣、御存じないことも結構多いのではないかなという気がちょっとしたものですから申し上げるのですが、たとえばあの場で、中央薬事審議会のいろいろな公表の問題についても、たとえば委員のメンバーなんかはいつでも公表してきたのだというような感じのことを言われていたわけですけれども、実際には、半年ほど前までは私たちが一生懸命要請をしてもなかなか委員の名前すら教えていただけない時期があって、それをやりとりをしながらやっと引き出すことができたという現実があるわけですね。
 それから、たとえばもうすでに認可がおりたクレスチンとかピシバニールについて、私も三カ月以上前からそれのいろいろな申請の書類とか調査報告書とかをぜひ出してほしいということでずっとかけ合ってきたのですが、一昨日実は調査報告書はいただいたのですけれども、それの中身になるいわゆる申請データについては出せないといいますか、いまだ私の手元には届いていない。
 しかし一方で、これはきょうも来られていますけれども、行政の、たとえば生物製剤課の皆さんなんかは、またいろいろな関係者は、丸山ワクチンというのはきわめて効果が薄いのだ、これまでの薬に対して効果がこんなに違うのだということをいろいろな機会に発現されているわけですね。私もこの耳でラジオを通して聞いたことがありますけれども、それでは私がその効果を言うときに、たとえば丸山ワクチンは三%とか非常に小さい、これまでのクレスチンとかピシバニールはかなり大きい。ではどういう基準で大きい、小さいを言われているのだということを聞いても、その中身は教えていただけない。
 次第にわかってみますと、調査報告書なんかを見ますと、クレスチンについて二一・五%という数字が書いてある。しかし、これは延命率の効果ではなくて、いわゆる外観的云々と書いてありますけれども、簡単に言えば、がんの腫瘍が一時的にしろ縮小した効果をとって――二十何%というのの大部分はそういうデータなんです。しかし、いまの免疫の学界では、私も門前の小僧であちこち聞いて大分わかってきたのですが、一時的に免疫効果でがんが縮小するということはほとんど効果に入らない、またはそういうことはあり得ないはずだ。たとえば佐藤先生なんかもそういう意見なんですが、つまり免疫剤というのはそういう効果ではなくて、前に小林先生も言われておりましたけれども、まさにじわっと抗体を強めていくような効果だ。ですから、従来の二一・五%というものと丸山ワクチンの三%というのは基準そのものが全く違うわけなんです。しかし、そういうものをあちらこちらで非常に効果があるものと効果がないものだということを言われ、それをマスコミの中でもそのまま受け取って報道されることがあるということがこれまで多々あったわけです。ですから、その中身を知りたいと言ってもなかなか出してもらえなかったのがこれまでの経緯なわけです。
 それで、大臣に所見をお聞きしたいのですが、これまで先ほどどなたか前の委員の方も言われておりましたけれども、丸山ワクチンの一連のことに対して、行政自体が非常に冷たかったというのが、私に限らずかなり多くの方の感じなんですね。ですから、これまでが冷たかったか温かかったかはともかくとして、少なくともこれから、またこれまでの経緯を含めて、行政上の差別とか行政上冷たい扱いをさせないその責任は厚生省の長である大臣にまさにあると思うわけですけれども、そういったことを含めて、行政上の立場として中薬審の公正な審査に責任があるのではないかと思うのですけれども、その点についての御所見を伺いたいと思います。
村山国務大臣 公正な審査という問題を中心にしてお話し申し上げますと、私が聞いている限りでは、丸山ワクチンは、前に申請されたそのときには日本癌学会の判定基準によった。その場合のあれはやはり縮小効果あるいは自覚、他覚症状等のものであって、その基準はもう御存じだと思いますが、それでやりました。それで、残念ながら縮小効果が見られないということ、あるいはデータが統計的に不備であるということで、それならせめて、ちょうどアメリカで盛んになりました比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか、こういう忠告をしたというふうに聞いております。
 それで延命効果の結果は今度の調査会が報告したとおりでございまして、評価はいろいろあるだろうと思います。私が冒頭に申しましたように、このがんというものは未知の分野がまだ非常に多うございますし、きょうの参考人の発言の中にも、ことによるとがんというものは個人差が非常にあるのじゃないかということさえ言っているわけでございます。未知であるだけに、それだけに、今後大きく伸びなければいかぬし、そしてまた、現在の医療器械の発達をもってすればある程度検証がきくこともあり、また判定基準もあるいは変わり得るかもしれぬ。これは本当に私素人でございますけれども、きょうのお話を聞いてそういう予感がしているわけでございます。
 公平という問題については、これは絶対に公平にやらなければならぬと思っておりまして、一つでもいい薬が出ることを望んでおりますし、丸山ワクチンももちろんその例外ではございません。特に丸山ワクチンについては多くの人がこれを使用しており、多くの家族の方がおられるということはよく承知しております。願わくは通過することを願っておったわけでございます。そういう意味で、今後とも公正を担保する意味であらゆる努力をしてまいりたいと思っております。
菅委員 公正を担保するあらゆる努力をしていただけるということで、この点についてもう一つだけ申し添えておきたいのは、いま大臣みずから言われました従来の基準ですけれども、これはきょうの参考人の意見の中にもありましたように、もともといわゆる免疫療法の基準ではたしかないはずなんですね。いわゆる抗がん剤と言われるがん細胞を直接攻撃する薬に対しての基準であって、その基準も見直さなければいけないということで補助金をとられて、きょう来られた桜井さん自身がまたそれの研究をされて新しい基準に近いものをつくったりして、その中にも比較臨床実験といった問題が入っているわけです。ですからある意味では、今回丸山ワクチンについて本来審議されるべき内容は、私はまさに比較臨床実験のデータをどう見るかということだと思うわけです。
 それがきょうの朝からずっと議論があったわけですけれども、私もいろいろな方と話をしていると、どうも常にすりかえがあるわけです。それじゃ従来と同じにやりましょう、従来と同じであればがんが縮小する効果は丸山ワクチンには認められないから、それならだめですよ。そして延命効果は、これは確かに有意差はあるが、臨床的には有意義でないなどと桜井さん言われていましたけれども、そういった言い方で逃げてしまう。それじゃクレスチン、ピシバニールについて延命効果が調べられているかというと、これまでのデータによればこれは全くないわけです。そういう点では、丸山ワクチンの基本になっている判断というのはまさに免疫療法に適する初めての判断だということをよく御理解いただいて、それを公正にやっていただきたい。そういう意味では単純な比較にならないものをいつも比較している、私が申し上げたのはそういう意味なんです。
 それを含めて次の問題に移りたいのですが、中央薬事審議会のいろいろな規定の改正等を報道で、また個別にも私伺っているのですけれども、きょうの先ほどの議論では、たしか薬務局長でしたか、その評価等について議事に加わらない等の運営をやりたいということを言われていましたね。しかし、前回、三月十九日に私が局長にいわゆる一人二役のことについて具体的にお聞きしたときに、「自分の意見を通常控える、これが慣例になっている」という形で薬務局長は答えられているわけです。
 しかし、その後いろいろわかったところによると、桜井さん自身ですけれども、座長として全部の意見を自分で取りまとめて、特別部会に持っていって、その中でも審議に加わり、さらに常任部会まで行ってクレスチンについても加わっているわけです。それを局長は、「自分の意見を通常控える、これが慣例になっている」から公正なんだということを私に対して言われたわけなんですね。今回また、評価等について議事に加わらないという言い方をされているのです。半歩ぐらいは進歩していますけれども、これじゃ単なる審議会の中の慣例を、内部的な規定を多少変えるだけにしかならないんじゃないですか。
 本来、中央薬事審議会のメンバーの選任は審議会令、薬事法三条に基づく政令で決っているはずです。ですから、当然選任の問題については少なくとも政令で決めなくてはおかしいし、これまでの経緯がそういうことを示していると思うわけです。
 ついでに言えば、こういった選任の問題でどういう人を外さなければいけないかということと同時に、いわゆるデータの公表、特に認可が終わった後についてはすべてのデータを公表するといった公表の制度の義務化、もう一つは、これは私の提案なんですが、異議申し立て制度ですね。いま事実上薬の認可については、おかしいと言って厚生大臣にあてて異議申し立てができたとしても、中央薬事審議会に対する異議申し立てというのは審議会ですからできないわけです。しかし実質的にはそこで決まっているわけです。ですから、中央薬事審議会に対して一定の結論が出た段階で異議申し立てができるような制度の導入、つまり委員の選任の問題に加えて、公表と異議申し立て制度の導入をぜひ検討いただきたいと思うわけですが、大臣なり局長なり、いかがお考えでしょうか。
山崎説明員 具体的な御提案でございます。先ほども私が答弁いたしましたが、先般菅先生からお尋ねがありましての答弁の趣旨は、俗な言い方をすれば一人二役、そういうことでデータを作成した委員がそのデータについて審議の場にたまたま一致することがあり得る、これはいまの実態から見てやむを得ないことであろう、こういうふうに私は思っておるわけでございます。
 ただ、そのあり得た場合にそれをどう解決していくかという、そういう調整の問題として考える場合に、それを公正の担保という見地から考えてみますると、いまのやり方というのは、要するにそのデータ、論文が審議会の皆さん、たとえば十三名の方々全部に渡りまして、名前も列記されておるわけで、仮に知らない方がいらしても、あ、これはあの委員の論文であるかということはその場でも十分わかるわけです。そうなればそのデータを作成した当該委員の方は、このデータについての評価なり何なりについて当然その身を控えてのことになる、こういうことで申し上げているわけでございまして、そういう意味が慣例化しているので、それを規定に書きたい。これは選任の問題でなくて運営の問題であるといまのところ私ども考えておるわけでございまして、そういう意味で、政令の問題ではなくて審議会規程自身の問題として解決したい、こういうことでございます。
 あと、公表の義務化あるいは異議申し立ては、それぞれ今後の課題にさせていただきたいと思います。
菅委員 これはあえて大臣にお聞きしたいのですが、いまの問題で運営の問題だというふうに言われましたけれども、たとえば薬メーカーの社員、端的な例で言えば研究所にいる社員とかまたは取締役とか顧問とか、そういう関係者が中央薬事審議会の認可に携わる委員になっている可能性というのは、もしそういうことがあったとしたら、これは適正なんでしょうか、どうでしょうか、大臣。
村山国務大臣 かなりいろいろな疑惑を招く要素にはなると思います。ただし、この運営をどうするかという問題をもうちょっと詰めてみなければならぬと私自身は思っております。そういうことを総合的に判断いたしまして、いやしくも公正について疑われることがないように考えてみたい、かように思っております。
菅委員 局長には個別にいろいろレクチュアを受けたりしたときにもお伺いしたのですが、同じことなんですけれども、そのときには、薬メーカーに関係をしているそういった人は認可の過程に携わる委員にはしていない、あった場合にはそれは遠慮してもらうことになるだろう。これは、私がそうなるのですかと聞いたときにそういう趣旨のことを個別には言われたわけですが、その点について薬務局長、そのとおりですか。
山崎説明員 個別の医薬品の承認、こういう任務を負っているたとえば抗悪性腫瘍剤調査会なり新医薬品第一調査会に、本来の職務としての製薬会社の役員が参加していることはございません。
菅委員 大臣は午前中の私の質問のときにちょうど退席されていたのでお聞き漏らしになったかと思いますけれども、薬務局長はおられたのに聞いておられなかったのかもしれませんが、プロテクトンという薬、これは吉富製薬がいま販売をしているわけですが、これの基本特許を持っておられるのは先ほどの桜井先生なわけです。ここに特許の公報もありますが、御本人も認められました。そして吉富製薬の顧問をやっておられるわけです。これも御本人が認められております。つまり、会社へのかかわり方というのはいろいろありますけれども、社員であること、取締役であること、そしてこの薬についてはみずからが最初に開発をしてオリジナルな基本特許をとって、そしてそれを吉富製薬と組んで製品化をされて、顧問にもなられている。しかも自分が審議委員になって、抗悪性腫瘍剤調査会の座長になって半年目に調査会に申請を出しているのですね。そして自分の手で許可を出して、いま実際に売られているわけです。
 局長、これはどういうことなんですか、それは会社に関係がないと言うのですか。御本人が吉富製薬の顧問であることを認められたわけですよ。
山崎説明員 会社の役員でそういう新薬の承認に関係する調査会の委員になっている方はいらっしゃいませんというふうに申し上げたわけでございまして……
菅委員 それはおかしいじゃないですか。先ほどそんなことは言われませんでしたよ。それから、私が昨日個別に話したときもそういうことを言われなかった。それでは顧問はいいと言うのですか、報酬を受けている顧問は構わないと言うのですか。おかしいじゃないですか。
山崎説明員 製薬メーカーとの関係の度合い、濃度、密度、いろいろあると思うのでございます。少なくとも桜井先生の場合、御本職は財団法人癌研究会に属しておられるわけでございまして、その吉富製薬の顧問というものがどういう具体的なかかわりを示すか、それは実態との絡みで判断しなければならないのではないか、こういうふうに思っております。
菅委員 この特許は四十年ごろ出ているわけですけれども、私が漏れ伺っているところによれば、その当時から、それに近い時期から吉富製薬におられて、そしてその後癌研に来られたというような経緯も聞いているわけですね。その立場、立場でいろいろなものにダブられていたかもしれませんが、かなり長期間にわたって顧問を続けられているということなんですね。これじゃ同じことじゃないですか、会社のことと。どうなんですか、それは。こういう人は外すという約束を先ほどされたばかりじゃないですか。
山崎説明員 でございますから、何といいますか、選任の問題その他についても課題にしなければなりません。ただ、その方の御本職あるいは別の会社とのかかわり合いというものは、その派生する問題としてこれまた十分考えさせていただきたいと思います。
菅委員 それじゃ大臣に直接お尋ねしますけれども、私はこれは約束からいってもおかしいと思うのですよ。つまり、それは会社には社員もある、取締役もある、顧問もある、監査役もある、いろいろな関係があります。しかし、相当長期間にわたって会社の顧問をやっておられたことを御本人が認めている。それを本職はこうであったからこうでないとか、それは全く認められないと思うのですよ。こんなことだったら何を聞いても、いや、そんな形式は、それじゃ給料が安かったからあの人は関係ないとか、ほかにも仕事を持っていたから関係ないとか、そんなことを言われていたんじゃ話を聞いたって意味ないじゃないですか。
 大臣はこの問題をどうお考えですか。適任じゃないでしょう。ちょっとついでですけれども、桜井さん御自身がきょう朝のこの席で、そういうことを含めて適任ではないんじゃないですかと私が申し上げたら、私も適任じゃないと思いますとみずからおっしゃったわけですよ。大臣はどうなんですか。
村山国務大臣 先ほども申し上げましたが、具体的な名前は別に差し控えさせていただきますが、疑いを持たれるようなことはないようにいたします。
菅委員 それは現時点で、将来ということではなくて、現時点の抗悪性腫瘍剤調査会を含めて疑いを持たれないようにされるというふうに理解をしていいわけですね。
村山国務大臣 その時期その他は私にお任せ願いたいということを申し上げているわけでございます。
菅委員 しかし、いま丸山ワクチン問題がここまできている段階で、将来の先の先の話ではないわけですよ。その中に不適任者がいるということなのです。つまり、抗悪性腫瘍剤調査会の一番重要なメンバーである座長が不適任者だと本人みずから認めている。その人物がいまなお座長として、このままいけば常任部会に出ていかれるわけですね。それを少なくとも常任部会が始まるまでに、国民の疑惑を招かないような形にちゃんと処理されると約束していただけませんか。
村山国務大臣 先ほども申し上げたのですが、少なくとも私の心証は、きょうずっと参考人の四人の方の話を伺いまして、どういう立場にあるかということはつまびらかにいたしませんけれども、きょう発言を聞く限り、それぞれの立場で本当に学者として真剣にやっているという心証を私は受けておるわけでございます。全くそれぞれの考えが違いますけれども、端的にそれぞれの立場で学者としての意見を述べているように私には思われるわけでございます。
 しかし、おっしゃるように疑いを受けるようなことはやはり今後は避けなければならぬ、こう思っておりますので、私もその時期その他についてはお任せ願いたい、こう申し上げているのでございます。
菅委員 この問題はちょっとこのままでは引き下がれませんので、時期についてはと言ってそれが一年先だとか半年先だったら、結局食い逃げですよ。ピシバニールに関係しクレスチンに関係し、みずから基本特許をとったプロテクトンに関係をして、さらに顧問をやって、それで今度はライバルメーカーがつくっているといいますか、一種のライバル関係にある丸山ワクチンの審議にああいう形でかかわっている。それがいつになるかわからない。疑惑を招いたら困るから何とかするけれども、いつになるかわからない。
 これはちょっと委員長の方でどうかしてもらえませんか。
山下委員長 後刻理事会で御相談いたしましょう。
菅委員 あわせてもう一つだけ申し上げて、時間もなくなりましたのであれしたいと思うのです。きょう朝のときにも申し上げたように、今回の問題で先ほどほかの委員の方からもありましたが、抗悪性腫瘍剤調査会が七月十日に審議をして一定の結論が出て、一昨日特別部会に出したわけですけれども、二つの点でこの審議はおかしいと思うわけです。その一つがいま言ったメンバーの問題そのことです。それからもう一つが、先ほど小林先生からもお話がありましたように、その事実認定そのものが明らかに間違っていた。東北大学のデータについて間違っていた。それを本来のがんの専門家が、臨床医を含めて中心にいるところで、審議しないまま特別部会に持っていった。
 先ほど言いましたように、いまの調査会というのは直接には異議申し立ての制度がないわけですよ。ですから私は大臣にぜひお願いしたいのは、この結果がどうなろうとも、私はやり直すかまたは諮問をし直してもらいたい。つまり新しい調査会メンバーを選任後、申請が出ているのは厚生大臣に出ているわけですから、諮問の結果がおかしければもう一回再諮問ということも大臣の権限でできるはずなのです。ですから、こういうおかしな形でやられた審議については再諮問をしていただきたい。そのことについて御答弁をお願いしたいと思います。
村山国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、今度の審査が不公平に行われたという感じを持っていないのでございます。皆さんがその人的構成についておかしいということは言えるかもしれません、あるいは疑うに足るというようなお話かもしれません。しかし、私はずっと聞いてまいりまして、そういう立場を離れて、学者は学者として真剣な討論をしておる。そしてまた、いまの運営でございますけれども、基礎医学は基礎医学の立場で、臨床は臨床でそれぞれがみんな分業でやっているわけでございます。そういったことから言いまして、今度の審査が公正を具体的に欠いているという心証を実は得ていないのでございます。これは私の心証でございます。
菅委員 それでは最後に一言だけ申し上げて終わりにしますが、先ほども申し上げましたピシバニールの調査報告書の中にこういう一項があるのです。「臨床の側において、作用機序の特異な本剤使用への強い要望があることを考慮し、特別部会への審議送付を決定した。」この最後の末尾に書いてあるわけです。
 これはどういうことかといいますと、当時免疫療法として初めて開発されたピシパニールはかなり副作用が心配をされている。この中にも書いてあるわけです。しかし、いまがんというものを考えたときに、こういう免疫療法というものは臨床のお医者さんの中で非常に要請が強い。だからそういう点も勘案して、いろいろ注意項目も入っていますけれども、注意をしながら使ってもいいのじゃないかということで出しているという一項目があるわけです。
 私は丸山ワクチンについても、まさにいまのがんという治らない、なかなか治りにくいという現状、さらに副作用がないという現状、さらに手術後の再発防止なんかで効果的な免疫療法が非常に要求されている。これは患者だけではなくて、すでに相当多くのお医者さん自身がそういうことを要請する署名を集めて、何千人という方がそういうことを言っておられるわけです。さらに加えれば、クレスチン、ピシバニールについては、何でも六年後の見直しというのは、あるいは事前にさかのぼらないということでやらないそうですけれども、去年から少なくとも今後認可されるものは、認可された時期から六年後には確実に見直しをするということを薬事法の中で決められているわけですね。そういう点でもすべて勘案をしてみれば、まさにこれが認可になって全くおかしくない。そういうお医者さんや患者の要請も非常に強いわけですから、そのあたりもあわせて大臣には判断をいただきたい。先ほど心証だからと言われましたけれども、そういった結果がそうでない方向に向いているとすれば、やはりその心証を変えていただいて御判断をいただきたいということを最後に申し添えて、私の質問を終わらせていただきます。
山下委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後六時七分散会』

 

この後第95回国会衆議院法務委員会(昭和561113日)でも小林議員は同様な内容を質問しながら、患者の要望が聞けぬなら「人権問題ではないか」と薬務局長を追求しているが内容は割愛する。ここでもクレスチン申請時の臨床成績と「がん集学的治療研究財団」がクレスチン、ピシバニールにのみ偏って評価するのは財団への拠出金が関係製薬会社5社から出ているためだと質問している。

その後もクレスチンの審査基準について国会質疑は続いている。

昭和61年の第104国会衆議院社会労働委員会議事録第4号もネットで公開されているので概略を採録する。

第104回国会 社会労働委員会 第4号

昭和六十一年三月六日(木曜日)

    午前九時三十分開議

出席委員

  委員長 山崎  拓君

   理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君

   理事 高橋 辰夫君 理事 浜田卓二郎君

   理事 池端 清一君 理事 村山 富市君

   理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君

      愛知 和男君    伊吹 文明君

      稲村 利幸君    古賀  誠君

      自見庄三郎君    谷垣 禎一君

      戸井田三郎君    友納 武人君

      長野 祐也君    西山敬次郎君

      野呂 昭彦君    浜野  剛君

      林  義郎君    網岡  雄君

      金子 みつ君    河野  正君

      永井 孝信君    森井 忠良君

      沼川 洋一君    橋本 文彦君

      森田 景一君    森本 晃司君

      伊藤 昌弘君    浦井  洋君

      小沢 和秋君    菅  直人君

 出席国務大臣

        厚 生 大 臣 今井  勇君

 出席政府委員

        文部省大臣官房会

        計課長     坂元 弘直君

        厚生政務次官  丹羽 雄哉君

        厚生大臣官房総

        務審議官    北郷 勲夫君

        厚生大臣官房審

        議官      木戸  脩君

        厚生大臣官房会

        計課長     末次  彬君

        厚生省保健医療

        局長      仲村 英一君

        厚生省保険医療

        局老人保険部長 黒木 武弘君

        厚生省生活衛生

        局水道環境部長 森下 忠幸君

        厚生省薬務局長 小林 功典君

        厚生省社会局長 小島 弘仲君

        厚生省児童家庭

        局長      坂本 龍彦君

        厚生省保険局長 幸田 正孝君

        厚生省年金局長 吉原 健二君

        社会保険庁医療

        保険部長    花輪 隆昭君

        社会保険庁年金

        保険部長    長尾 立子君

 委員外の出席者

        公正取引委員会

        事務局取引部流

        通対策室長   野崎  修君

        警察庁刑事局保

        安部公害課長  上野 治男君

        大蔵大臣官房参

        事官      塩田 薫範君

        大蔵省主計局主

        計官      中島 義雄君

        厚生大臣官房政

        策課長     岸本 正裕君

        社会労働委員会

        調査室長    石川 正暉君

    ―――――――――――――

(中略)

 

○山崎委員長 これより会議を開きます。

 (中略)

○山崎委員長 伊藤昌弘君。

○伊藤(昌)委員 厚生省と中央薬事審議会ががんの薬を判定、認可する問題などについて質疑をやらせていただきたいと思いますが、がんの病はがん細胞によって衰えた体があらわす症状でありまして、がん細胞を攻撃するだけでがんが治るというものではございません。弱った体が問題でありまして、この体を治療しなければがん細胞は再発をするのであります。がんには制がん剤、免疫剤、補助剤があるのですが、薬事審議会は制がん剤の評価はできるけれども、それ以外の薬物については評価の基準を持たない、これが大事でありましょう。私は評価の基準を持たないと考えるのですが、業務局長、いかがでしょうか。なぜかといいますと、がん病のすべてを制がん剤の基準で行うことはむちゃくちゃであるからです。弱った体に作用する別の薬が必要なんで、制がん剤だけの基準ではこれはいけないと思うからお尋ねするわけですが、答えてください。

○小林(功)政府委員 今おっしゃいますように、制がん剤といわゆる免疫療法剤とございますが、現在のところ、検討はしておりますけれども、免疫療法剤については基準はございません。ただ、従来制がん剤として承認をしておりますのはいわゆる腫瘍縮小効果で、この基準はございまして、これに従って承認をした例が幾つかあるということでございます

○伊藤(昌)委員 ピシバニールとクレスチンは免疫剤として身体に働く薬であって、がん攻撃の薬ではないと私は考えています。しかし、抗がん剤としてこれを認可してしまった、がん攻撃の薬として認可してしまった。今、局長はがん縮小ということをおっしゃったが、それはがん攻撃剤です。しかし医者は抗がん剤としての使い方をしていない、抗がん剤とは違った使い方をしているのです。私の言い方は違っていますか。

○小林(功)政府委員 実際に医療の現場でお医者さんかどういう考え方で使っているか、これは私どももつまびらかにしませんけれども、少なくとも中央薬事審議会でこれを新薬として承認するかどうかということで判定した際は、あくまで腫瘍縮小効果に着目をして、それに効果があるという判断をして承認がおりたものと考えております

○伊藤(昌)委員 中央薬事審議会が薬の使い方まで触れることは誤りであります。やるべきことは別にある。これは免疫剤だから抗がん剤と異なった使い方をしているのに、一回の使用費は高い費用の制がん剤と同じに決めている。制がん剤は高い、免疫剤は安い。それを十年間、免疫剤を制がん剤と同じ高い費用で決めている。これでは、長期使用であるから財政のためにはよくない。今の薬価基準は高過ぎる、だれが考えても高過ぎる。これは癒着があるのではないかと疑われてもいたし方がない。疑いたくないが疑いたくなる。大臣、いかがですか。

○小林(功)政府委員 先生も御案内と思いますが、現在日本で承認されているがんに対する薬の中でいわゆる免疫療法剤はございません。現在は腫瘍縮小効果の判定基準で承認された薬だけであります。したがいまして、薬価についても、免疫療法剤と制がん剤とおっしゃいますけれども、比較をするわけにはまいりません。制がん剤は制がん剤としての新薬の薬価というものを一定のルールでつけている、こういうことでございます。

○伊藤(昌)委員 クレスチンを制がん剤などという学者はいません。いたら教えてほしい。最初、中央薬事審議会で制がん剤として認可をしたが、その制がん剤として認可をしたときのデータと、その後十年たってたくさん量を使用したそのデータとはおのずと違っておるはずだ。それをはっきりさせなければ医者の側だって困りますよ。抗がん剤の能書きを使われたら医者は迷いますよ。許可をしたときには抗がん剤かもわからぬ。しかしその後使って、抗がん剤と言われないデータがかなり出ておるはずだ。大臣、私の言うことはおわかりでしょう。それだけ頭に入れておいてください。

 クレスチンなどに続いて申請している薬は今幾つありますか。――時間がないから後でいい。覚えておいてくださいよ。効く薬ならばたくさん許可をしてお互いに競争させなければだめです。一品じゃだめです。何でクレスチンだけに利益を与えなければならぬのですか。一、抗がん剤、二、抗がん剤を補助する薬、三、免疫賦活剤、この三つを混同することなく、ごちゃごちゃじゃなくそれぞれ正しい薬価を決めなければだめです。がんの薬は三種類に分かれるのだから、だれが考えだってそうだ。

 大臣、こんなことを申し上げては悪いのですけれども、日本の大臣は一年以内にかわっちゃうのです。こういう重要な問題は大臣の任期中にしっかり調査をして、そしてだれが見てもなるほどということに直していただきたい。これはひとつよく研究をしていただきたいのであります。大臣はこういう問題については専門家でおありにならぬので余り答弁を求めるとお気の毒だから、後でよく研究しておいてください。

 六十年十一月、レンチナンが承認されましたが、適応症は限定をされた。すなわち、手術不能、再発胃がん、この二つの患者に絞って抗がん剤のテガフールという薬と併用するという条件つきなんです。私は薬剤師なんです。薬というものは早くから使うものです。命を捨てる直前にしか使っちゃいけませんなんというそんな薬は聞いたことがない。手術不能やがん末期は死の直前、死の直前でないと使ってはならないという使用方法は私は聞いたことがない。テガフールと一緒でないと使ってはならない、こういう医事という医師の裁量権を侵すのはおかしいと私は考えたが、この両薬併用は実は治療ではなくて生存期間延長としてこれを認可している。いいですか。治癒ではなく生存期間延長にしても、なぜ早期に使わせないか。

 早期に使っていいのはクレスチンだけだ。これはだれが考えてもクレスチンの保護と思うじゃありませんか。今、日本には比較臨床治験データというものはないのです。しかし、比較臨床治験データのない薬なんというのはないのですよ。ないのはクレスチンだけです。それからレンチナンだけです。どうですか、これについてどうお答えになられますか。

○小林(功)政府委員 クレスチンにつきましては、先ほども申しましたとおり、腫瘍縮小効果があったという判定を中央薬事審議会がしたわけであります。したがいまして、そういう直接的な効果があったということで評価され、承認したものでありますから、比較臨床試験成績は必要としないというのが一つのルールでございます。

○伊藤(昌)委員 監督官庁がそれでどうするのです。国の税金を五千億円も――五千億じゃないか。ちょっと伺うが、クレスチンというのは一年間の使用費は幾らですか。

○小林(功)政府委員 売上高は年間約五百億でございます。

○伊藤(昌)委員 五百億の十倍、五千億円、そしてがんの薬はクレスチンしかない。そういう重大な薬を監督をする官庁が今のような答弁でよろしいか。

○小林(功)政府委員 ある申請された物質が医薬品として適当かどうかという判断をする場合、いろいろなメルクマールがございます。ただ、がんの場合には、これは腫瘍が縮小したということで医薬品としてふさわしいという判定は従来からやっているところでございます。

 ただ、レンチナンのようなものは、先ほどおっしゃいましたいわゆる延命効果を期待するものでありますから、これについては比較臨床試験は要りますけれども、腫瘍そのものが縮小するという直接的な効果が期待されるものは、比較臨床試験は期待をしていないわけであります。

○伊藤(昌)委員 大臣、五千億円も使ってこんな程度なんです。本当に真剣に検討してくださいよ。これが民主主義国家のお役所の仕事かね。五千億円ですよ。それで今のような答弁だ。がん縮小効果なんか今あるわけがない。あったらデータを出してほしい。僕は後で資料要求しますからね。臨床データがないから答弁できないのです。

 中央薬事審議会が十年前に許可をしたことをそのまま言っているだけのことです。こんなのありますか、先生方。臨床データがないのに、この薬は生存期間延長の効果しかないのだから、再発胃がん、手術不能だけにしか使ってはならない、こんなあいまいな話は小学校の生徒だって笑いますよ。だって、これらは免疫剤なのに抗がん剤で許可しているのですから、これはむちゃくちゃであります。いわゆる古いデータそのまま振りかざしている。新しいデータを出しなさいと言うんだ、私は。出さなかったらだめですよ。もう済んだことはいいから、出すことに努力をしなければだめです。

 昭和五十一年にクレスチンが承認されてから九年間、免疫療法剤の承認はストップされてしまいました。クレスチンは、今言ったように、今までで五千百億円、これは一品商品としては世界医薬品市場類例を見ない。クレスチン認可後なぜほかの薬の承認をしなかったのか。局長、ちょっと答えてください。簡単でいいですから。

○小林(功)政府委員 その後も申請は幾つかありましたけれども、医薬品として承認するに足りるだけのデータがそろってなかったというケースであります。

 それからちょっとつけ加えさせていただきますが、先ほど、臨床試験はないということを言った覚えはありません。臨床試験はあるのでございます。ただ、比較臨床試験、例えばダブルブラインドとか、そういうものはこういう腫瘍縮小効果の場合には要求していないということを申し上げたわけであります。

○伊藤(昌)委員 比較臨床治験というものはいつでも出せるような態勢にしておかなければいけない。また順番にやっていきますからね、飛ばすと皆さん方わからなくなるから。

 そればかりではありません。クレスチンを擁護するために、またBRMの本質を考えないで、いわゆる桜井基準と言ってよいかどうかわかりませんが、当時厚生省で桜井先生が中心になって――今までは抗がん剤の基準しかなかった。ところが世論がやかましくなったものだから、今度は免疫療法剤の判定基準を桜井先生がおつくりになったわけです。これは本当の判定基準じゃないのです。悪い言葉で言うと、言葉の羅列です。そして残る六品目、六品目だと思うが、後で検討してくださいよ。六品目のものを合格させなくした。

 すなわち、クレスチンが合格したときのハードルはこんなに低いのです。またげばまたげるものです。ところが、それを桜井先生を中心にしてハードルを高くしてしまった。だから、六つの残った薬はハードルが高過ぎて飛び越えられない。だから、クレスチンも一遍高いハードルの内側に入れて、用意ドンでみんなやらせなかったら不公平ですよ。だれが考えたってわかる。クレスチンは桜井基準のハードルを越えないでだれでもまたげるハードルを越えた、やさしかった。そこで、人体の薬なんだから、桜井ハードルを新たに越えさせなければならぬ。そうでしょう、大臣。どうお考えになりますか、常識的に。私の言うことは間違っておりますでしょうかね。ちょっとお答えいただきたい。常識でいいですよ。

○今井国務大臣 私が答えるのはまさに常識以外にないわけでございますから、そのハードルの高さというのがどういうのかよくわかりませんけれども、やはり当時は当時でそれなりのハードルで越えたものでございましょうから、もうちょっとよく聞かせていただきましてから私の意見を申し上げたいと思います。

○伊藤(昌)委員 何もびくびくすることはないのですよ。いわゆるクレスチンのときのハードルというのは、抗がん剤としてのハードルを越えたのです。今度はいわゆる免疫剤としての新たなハードルをつくったわけです。だから、免疫剤としてのハードルをクレスチンにも越えさせなければならないでしょう。おわかりですね。抗がん剤のハードルは越えた。ところが、厚生省は免疫剤のハードルをおつくりになった。その薬は免疫賦活剤という種類の薬だから、免疫剤のハードルを越えさせなければだめでしょう。

○小林(功)政府委員 クレスチンの場合には腫瘍縮小効果というハードルがあったわけでありまして、それを越えたわけでございます。その後で出た薬の中には、腫瘍縮小効果はないけれども、別な要素で承認ができるかどうかというのが問題になったわけでございます。その際に桜井試案というのが出たわけで、もっともこれは試案でございますから公に決めた基準ではございませんけれども、いわば先生の言葉をおかりすれば、腫瘍縮小効果というハードルと別のハードルをもう一つ用意した、こういうことであります。どちらかを越えればいいという趣旨でのハードルということが言えると思います。

○伊藤(昌)委員 国民のために医療というものはあるものなんです。そんな逃げるようなみっともないことをしなさんな。大臣、いいですか、ここで答えられなくても真剣に考えてくださいよ。がんの患者がどんどん死んでいるのですからね。年に五百億円の金を使っているのですから、考えてください。私だってこんなことは言いたくはない。言いたくはないけれども、余りにもひどいから立場上やはり言わなければいかぬでしょう。代議士が言わなければだれが言うのですか。私な言わなかったら、製薬会社は厚生省のやり方が間違っておると思ったって文句を言いに行きませんよ。

 クレスチンの研究開発は、癌研究会癌化学療法センター所長でありました桜井先生、それからセンター部長でありました塚越先生が中心でありますと私は聞きます。もし違っておったら教えてください。この桜井先生と塚越先生が開発に参加したかしなかったか。僕はしたと思っていますから、間違っていたら教えてください。自分が研究した薬を承認させて莫大な利益を上げて、次に競合した薬の認可基準を難しくして、ハードルを上げて通さなくする、これは悪巧みだと疑われてもいたし方ない。私はこの二人の先生は品格があるから悪巧みだとは思わないけれども、今の厚生省のやり方を率直に批判するならば、この二人の先生の悪巧みと国民に思わせます。この先生は悪い先生じゃない。そんな悪巧みをするような先生じゃない。しかし、今のようなやり方を続けていくと、この先生方を非難しなければならないようなことになる。すなわち一人二役、悪い言葉で言うと、マッチポンプと言われてもいたし方ありません。これは厚生省の良識いかん。そういうことでは気の毒です。

 桜井先生は薬事審議会に入っておられたと私は思っておりますが、もし間違っていたら教えてください。間違っていなかったらそのままで結構。薬事審議会の抗悪性腫瘍剤調査会のクレスチン審理は、わずか二回しかやらなかった。こんな大事なものを二回しかやらない。五十一年三月二日法曹会館で開かれた会合に桜井先生は座長として出席した、私の調べでは。これも間違っていたら訂正してください。自分がつくった薬を自分が審査をし、自分が座長になって決める。もしこれが本当だったら、これは不見識きわまるもの。やらせる厚生省がよくない。その後の特別部会、常任部会は形式だけと私は聞いている。間違っていたら教えてください。

 教えてくださいということは、これは形式だけじゃありません、記録はこうでありますということを出してください。実質二回、短時間の審理で承認をしてしまいました。桜井先生は一人二役、いや一人三役。研究開発をしました、承認をいたしました、そして私に言わせればあいまいな判定基準をつくってハードルを高くいたしました、こんなふうに思わざるを得ないじゃないですか。私は思いたくない、疑いたくない。しかし、一連の筋を見ればそう思わざるを得ないじゃないですか。一人三役。大臣、後でよく検討してください。私は物を扱うならこんなことは言わない。物を扱うのでなく人間を預かっているんだ、国家の財政を預かっているんだ。

 日経ビジネスも六十年十二月九日号で「クレスチンは日本だけの薬」という見出しで抗がん剤特集をやった。私も調べた範囲では、効いたという医者はいない。医者は何となく使っている。日経産業新聞では、効き目のないむだ薬という酷評が医療関係者の間で言われております。そうしたらにせクレスチンが全国に出回ってきた。にせものを長期間患者に使ったが、これは重大な問題ですね。もちろんにせものだから効くはずがない。そうですな。それでもお医者さんたちはにせものを平気で使っていた。ということは、本物でも効かないのだから、にせものに気づくわけがない。これほどはっきりした比較臨床治験はないはずである。大臣、いかがですか。

 これが事実であるとしたならば何たることか。効かないのだから、にせ薬だってわからない。大臣、これが本当だったらどうお思いになりますか、ちょっとお答えください。常識でいい、私も常識でしゃべっているのですから。

○今井国務大臣 私、まさに素人ですから、おかしいなと思いますね。

○伊藤(昌)委員 さて、今度は局長に伺いますが、六十年、昨年の九月二十一日、東京プリンスホテルでクレスチン発売八周年記念大会というものを開いたといううわさを聞いたか聞かないか。厚生省でどなたが出席をしたか。

○小林(功)政府委員 そういう催しがあったことは私聞いておりませんし、したがいまして、だれが行ったかもわかりません。

○伊藤(昌)委員 それじゃ、恐れ入りますが早速製薬会社に調べて、そして私に報告してください。もしこれがあったとしたならば、厚生省から必ずどなたかが出席しているはずだ。うそを言ってはいけませんよ。国会の場というのはうそを言うところじゃない。あなたと私が議論をしているということは、これは国民に対してなされるもの、二人だけの論議じゃない。国民にわからせる心で質問をし、国民にわからせる心で答弁をしなければ、国会の答弁、議会の答弁とは言えません。逃げてはだめだ、ごまかしてはだめ、堂々とやらなければ。もしこの会が開かれていなかったら、ひとつ間違いだということを指摘してください。

 大臣、クレスチンは年間患者一人当たり百七万円かかっているのです。私の家内が医者だから計算さしたら、一人当たり患者の負担が百七万円。それを使わせて、それで数万人の患者を死なして、亡くなった方などは、八周年やるということはもう七回忌やってみえる。自動車の販売ならまだしも、効かない薬で人を死なして、そして販売高五千億円達成祝賀パーティーをやったとしたならば、何たる非常識かと言われてもこれはいたし方ない。そんなところへ厚生省がもし出ていったとしたならば、これは不見識と言わざるを得ない。

 小川一誠癌研臨床部長、それから福島雅典愛知県がんセンター内科部長、仁井谷日医大教授が、がん専門医でありますが、クレスチンを使っていない。なぜお使いにならないのですかと聞いたら、不確定要素が多過ぎるから使わない、臨床効果が確立していないから使わない。私は、これは悪いという意味で言っているのじゃないですよ。今のクレスチンのいわゆる治験の状態はそういうことだということを申し上げているだけですよ。悪いと言っているのじゃないですから勘違いしないでくださいよ。

 クレスチンは抗がん剤として承認されています。薬事審議会の審議の結果を見ますると、今局長が盛んにおっしゃっておった、「腫瘍に対する直接効果とともに」と書いてあります。すなわち、がんの縮小があったと薬害が言うのです。これによると、分類は明らかに抗がん剤になっているわけであります。つまり、がんを直接攻撃する、そんなおかしな話はないのです。エールリッヒの定義である化学療法の分類での抗がん剤に入っているわけであります。

 なぜ免疫剤を抗がん剤にしたか。悪く言えば値段を高くしたかったから抗がん剤にしたと、疑う方は勝手であるけれども、こんなことをやっていたら疑われると思う。はっきりさせなければならぬ。三共にも気の毒。抗がん剤は副作用が大きいから、したがって薬をお休みする期間があるのです。抗がん剤というのは毎日使ってはいけないのです。したがいまして、抗がん剤というのは一回投与する薬価は割合高く立てられておるのです。その高いところに基準を合わせて高いお金を払ってある。実際は、これは抗がん剤ではなくて免疫賦活剤である。これに抗がん剤として認可したために高い値段をつけてしまった。これは全くむちゃくちゃであります。こんなおかしなことは厚生省のやることではない。

 新しい薬価基準では――今の薬価基準はいつ改定をなされたか、その薬価基準の値段は、旧と今と比較をするとクレスチンは下がっているかどうか、ちょっと答えてください。

○幸田政府委員 クレスチンの薬価でありますが、収載をされましたのが五十二年五月で、当時の一グラム当たりの値段が千百四十一円九十銭であります。

○伊藤(昌)委員 昔から言わぬでもいい。旧と今でいい。

○幸田政府委員 現在は六十年三月からでありまして、一グラム当たり九百九十一円四十銭ということになっております。

○伊藤(昌)委員 その前の薬価基準は。

○幸田政府委員 その前の薬価基準は千三十円六十銭であります。

○伊藤(昌)委員 幾らか下げたわけですね。

○幸田政府委員 はい。率にいたしまして三・八%の引き下げであります。

○伊藤(昌)委員 同じ免疫剤で、私は丸山ワクチンを今勧めておるわけじゃありませんよ、丸山ワクチンが一番聞こえておるから申し上げるが、丸山ワクチンというのは一年間に七万二千円。一本四百五十円、ですから一年間で七万二千円。同じ免疫剤のクレスチンは一年間に百七万円。Aという薬は七万二千円、Bという薬は百七万円。大臣、同じ種類の薬でどうお思いになりますか。大臣、素人のお感じでいいです。

○小林(功)政府委員 先生も御存じと思いますが、クレスチンは正式に医薬品として承認されて薬価に載っている。それから丸山ワクチンは、承認申請はありますけれども、まだ承認になっていないわけであります。要するに、治験用の段階でございまして、有償治験の価格ですから、それを両方そのまま比べるというのはいかがなものであろうかと思います。

○伊藤(昌)委員 それにしても、お役人の一番偉い方が堂々とその程度の答弁では、あなたは世の中を知らな過ぎる。百七万円と七万二千円、承認されれば十何倍になっていいのですか。大量生産すれば安くなるわけですよ。あなたは頭はいいかもわからぬけれども、悪いが、物を知らない、世の中を。頭のいいのとそれから腹の悪いのとは違います。そんな答弁を堂々と国会でするものじゃありません。

 全然違った薬なら別ですよ。大量生産すれば安くなるのです。丸山ワクチンなんというのは大量生産しないでしょう。本当に考えてくださいよ。とんちんかんなことを言ってはだめですよ、あなたは一番偉いのだから。

 また、癌研究会の有名な斉藤達雄先生の講義用資料、対象は厚生省がん予防技術職員研修会にも、クレスチンは抗がん剤となっている。そしてその資料を見ますと、クレスチンは十一例判定可能例、そのうちで効いたというのはゼロ。厚生省の資料だ。とすると、細胞縮小という直接効果はうそである。今局長が言ったこと、うそである。これはあくまでも生体防御賦活剤であります。前記三人の学者の方々がいわく、BRMの判定基準は確立されていないのだから。だから、斉藤先生の講義資料にもあるように、効き目はゼロ。この資料は厚生省の内部資料であります。だから、クレスチン認可には問題があるから、もう一度検討し直していただきたい。薬害の――まあこんなことは言うのはよしましょう、けなすことになるから。

 もう一つの資料、昭和六十年十一月二十六日、社会労働委員でありました草川代議士の文書質問に対しまして、これは厚生省の文書答弁ですよ。「財団法人がん実学的治療研究財団は、」「延命効果の比較臨床試験を打っているが、その試験はいまだ終了していないと聞いている。」と厚生省は文書で出された。五年間たって試験がまだ終了していないはずはない。なぜならば、リューマチのようなものは長くかかりますから試験期間は長い。しかし、がんの場合は勝負が早い。勝負の早い患者を対象にして比較臨床試験が出てこないわけはない。試験がまだ終了されていないわけはない。これは常識であります。堂々と厚生省はそういう答弁を文書でお出しになった。ここにあります。出したか出さないか聞いたってしようがない、厚生省の答弁ですから。時間がむだになりますから答弁は要りません。よく検討しておいてください。

 財団ができてから五年、クレスチンが認可されてから十年になるのです、大臣。そして五千億円の売り上げをし、国家財政をむだ遣いし、多くの人々を死なし、人命に関するこの大問題を預かるのに、比較臨床試験が全くないということはどういうことでありましょうか、厚生省の怠慢、無責任、その極だと言わざるを得ません。国民はそう思います。大臣、常識的にちょっとお答えくださ

い。今私が申し上げた、十年になるが比較臨床治験ができていない、五千億円の金を使った、多くの人を死なした、こういう大問題について厚生省が今のような姿勢でおるということは無責任だと私は思うが、大臣、どうお思いになりますか。おかしいなとでもいい。

○今井国務大臣 もう先ほど答弁申し上げたように、私も素人でございますけれども、少なくもクレスチンという薬は、薬事法にのっとりまして専門家で構成されます薬事審議会というもので審議されまして認められたものだと私は理解をいたしております。したがって、それとこれとは別問題じゃないかなという感じがさっきからいたしておるものでございます。

○伊藤(昌)委員 大臣だっておかしいとお思いになる。これはおかしくないと思ったら、おかしい人。比較臨床試験はクレスチン認可のときの条件つき認可と見てもよいと私は思う。そうは書いてないけれども、比較臨床試験を添付しないで薬事審議会は許可をした。その後、本態をよく研究しなさいよという条件をつけておる。その文書は、私はちゃんとここに持っているのだから、当たり前のことだ。それをメーカー側はやらなかっただけ。世間がやかましくなって、五年たって財団をつくった。その財団はメーカーが何社か金を持ち寄ってつくった。それから五年たったけれども、まだ依然として治験が出ておらない。こういう種類のものなんです、抗がん剤というのは。

 さて、BRMの比較臨床試験結果は、今のところでは出ないものなんです。出ないものだから出せない。出したら笑われちゃう。厚生省の講義資料と同じ。出したら笑われちゃう。だから出せないもの。そういう立場に立って、これからこの薬にどう対応するかということを考えていかなければだめ。マンネリじゃ、このままじゃだめ。一般的に思うに、こんなことをやっていると莫大な金が動いていると疑われてもいたし方がない。私は疑います。

 もう一度、悪いけれども中央薬事審議会にも考えていただきたい。抗がん剤でもない薬を抗がん剤として認可をし、かつ認可の前に試験データを整えておかなければならないのに、そのデータなしで許可をして、その治験データのようなものを後でお出しなさいという条件をつけたけれども、またそれが果たされていない。さきに述べたように、いつまでたってもそのデータはできるわけがない。すなわち、効き目がはっきりしないからであります。だから私の言うのは、いい気になってこんなたくさんもうけさせてはいけないということだ。多くの人々を死なしておきながら、癒着と思われたっていたし方ない。

 大臣、よって、がん治療薬という最重要な医薬品こそ、厚生省は権威ある姿勢で、我々が本当にありがとうと頭の下がるような、惰性の癒着を引き裂いて権威ある姿勢で、今までにどんな使われ方をしたか、また効果のあるなしを早急に調査をして、大臣、これからが問題です。使われた総量に比較をして、延命の効果がないか、あるいは余りにもわずかで、その格差が大きければ保険医療費乱用として、薬価基準に関する問題としてこれを取り上げ、見直しをしたり、または薬価基準から外す作業を直ちにやらなければならないか、あるいはBRMでも薬によっていろいろ作用がありまして、一、免疫賦活、二、新陳代謝高進、三、組織修復、これだけいわゆる作用が違うのです。局長、このようにいろいろあって、BRM効果を一概に線引きすることは困難であります。よって、薬の持つ特徴を十分に生かした判定はそれぞれの薬についてなさるべきもの。特徴があるのですから、その特徴というものをよく見きわめて、そしてそれぞれの薬の特徴を認めて判断しなければならないと私は思います。

 そういう考え方に立って、幾つかの薬を適薬であるならばこれを認可をする、そして使い方は医師の判断で、こういう患者にはどの薬を使おうかということを判断させる。しかし値段は、丸山ワクチンがこんなに安いのだから、できるだけ安い費用で、それ以上の過当競争ができないくらい――私はまた将来今の薬価基準について徹底的にやりますからね、全部調査してやるから。おかしな過当競争ができないように適正価格、そしてメーカーとしての権威を保って、小商人のようなまねをしないで、いわゆる競合品がそういう姿勢でやってもらえるように、それで国家も得する、患者も得する、疑われることもなし、その理念が人命の健康を守る源の考え方でなくてはいけないと思う。今のやり方は狭い、いわゆる言いかがり的判断だから、すぱっとした答えができやしない。大所高所から見た判断ではないと私は思います。私の言うことが間違っておったら反論をしていただきたい。何も行政側は我々の言うことに服することはないのですから、間違っていたら間違っているとおっしゃっていただいていいのですから、それで私は学びますから。

 最後に大臣、復習しますよ。最初に抗がん剤の目的でテストして、いわゆるそれなりの効果があった、これは局長のおっしゃるとおりです。それなりの効果があったあったと今一生懸命言っているわけだ。あったことを認めましょう。それなりの効果があったから中央薬事審議会は認められた。しかし、今は分類が違うのです。前は抗がんの分類、今は免疫の分類。分類が違ったのだから、どう効能が変わったのか。わかるでしょう。分類が違ったのだから効能が変わるのは当たり前なんですよ。どう効能が変わったのか、はっきり区切りをつけるべきである。もし言うことを聞いてくれなかったら何遍も私は同じことをやりますよ、ここで。はっきり区切りをつけるべきである。

 例えば、現在でも直接効果が一体あるのか、がんを縮小するだけの直接効果が今でもあるのかどうか、十年間やっているのだから、使っているのですから、実際使った症例を集めて検討しなければならないと私は思います。そうでないと、効能などについて正しくない能書きができ上がるのです。私が医者だったら迷います。そうなっては医者が困る。ですから大臣、業務局に言ってください。わかりやすい、その後の治験資料を出してください。出さなかったら、私は疑っているから何遍も何遍も同じことをやらなければならない。すなわち、人命、それから国家の財政――したがいまして、私はここで真剣に今問うたわけであります。いつかやるのでなくて、直ちに取りかかっていただきたい。ぜひ御答弁をお願いをします。

 これで終わります。

○今井国務大臣 お話はだんだんわかってまいりました。御趣旨につきましては、先ほど申し上げましたように、中央薬事審議会で厳正に、公平に審議をされまして承認されたもので、私は学問的に正しい評価をいただいたものだと理解をいたしております。

 ただ問題は、新薬につきましても承認後に蓄積されましたデータをもとに逐次再評価を実施するということは至当だと思いますので、本件につきましてもその枠組みの中で取り組んでまいりたいと思います。それで、今のいろいろなお話にもありましたので、よく私も検討いたしまして、先生の御懸念を晴らしてまいりたいと思っております。

○伊藤(昌)委員 委員長、どうもありがとうございました。

(中略)

○山崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会

     ――――◇―――――

 

この中で伊藤委員が癌研斉藤先生の講義用資料としてPSK単独投与11例があり、有効例はゼロとしているが、これは「抗酸菌病研究雑誌第30巻第1号、第2号」に公表された“末期消化器癌患者に対する癌化学療法の効果と生存期間-わが部門における15年間の成績-”に記載された11例と思われるが、これは胃癌の例であり、食道癌では11例中1例に有効例があったと記されており、いわばいいとこ取りの発言である。クレスチンの申請ではきちんとその旨が記されている。

 

この国会審議を受けて週刊新潮は科学欄で「国会で追及」の抗がん剤-副作用もないが、効果もなし-の見出しでこれを報告している。

 

104国会では内閣委員会でも丸山ワクチンの進行状況についての質問があり厚生省の答弁がネットで公開されている。

それを引用すると

第104回国会 内閣委員会 第10号
昭和六十一年四月十六日(水曜日)
   午前十時三十二分開議
出席委員
  委員長 志賀  節君
   理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君
   理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君
   理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君
   理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君
      池田 行彦君    石原健太郎君
      内海 英男君    菊池福治郎君
      塩川正十郎君    月原 茂皓君
      中村喜四郎君    二階 俊博君
      堀内 光雄君    井上 一成君
      上原 康助君    矢山 有作君
      鈴切 康雄君    日笠 勝之君
      滝沢 幸助君    柴田 睦夫君
      三浦  久君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 今井  勇君
 出席政府委員
        青少年対策本部
        次長      倉地 克次君
        厚生大臣官房審
        議官      木戸  脩君
        厚生省健康政策
        局長      竹中 浩治君
        厚生省保健医療
        局長      仲村 英一君
        厚生省保険医療 
        局老人保険部長 黒木 武弘君
        厚生省薬務局長 小林 功典君
        厚生省社会局長 小島 弘仲君
        厚生省児童家庭
        局長      坂本 龍彦君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部少年課長  根本 芳雄君
        総務庁長官官房
        審議官     勝又 博明君
        総務庁行政管理
        局管理官    菊地 徳彌君
        青少年対策本部
        参事官     高岡 完治君
        大蔵省主計局主
        計官      中島 義雄君
        国税局間税部酒
        税課長     宗田 勝博君
        文部省体育局学
        校保険課長   下宮  進君
        厚生省薬務局生
        物製剤課長   松村 明仁君
        厚生省保険局医
        療課長     谷  修一君
        内閣委員会調査
        室長      石川 健一君
    ―――――――――――――
(中略)

志賀委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を求めます。今井厚生大臣。
    ―――――――――――――
 厚生省設置法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕

(中略)

小林(功)政府委員 御質問の中の丸山ワクチンについてお答え申し上げます。
 先生も御承知のように、丸山ワクチンにつきましては、昭和五十六年八月に、中央薬事審議会におきまして「提出された資料をもってしてはその有効性を確認することができない」という趣旨の答申が出たわけでございます。その際に「附帯意見」がつきまして、その「附帯意見」を踏まえまして、その後三年間にわたりまして試験研究が実施され、その結果が五十九年十一月に提出されたわけでございます。ところが、そこの段階でもまだ承認審査を行うに十分な資料が得られていないというように判断されました。ただ、その際、この丸山ワクチンが既に多数の患者に使用されているという現状も勘案しまして、さらに三年間治験の延長が認められたものでございます。
 そこで現段階でございますが、現在はこのメーカーでありますゼリア新薬工業におきまして、医薬品としての恒常性を確保し得る規格及び試験方法の設定に向けまして引き続き作業が進められておりますほか、ヒトへの至適用量を設定するための検討が現在行われている、そういう状況でございます。

(中略)

小林(功)政府委員 第二点の丸山ワクチンの件でございますが、先ほど申しましたように、メーカーが中央薬事審議会で付されました「附帯意見」を踏まえまして、今懸命に努力をしておる最中でございます。現に、前回から見ましても、一部ではございますけれども進んだ部分もございます。したがいまして、私ども行政といたしましても、早い時期にその研究成果がまとまるように必要に応じて助言を行ってまいりたいと考えております。

(後略)

このように規格試験方法やヒトへの至適用量の設定が未だに出来ない状況を説明している。

 

昭和57年には予算委員会でも小林議員が丸山ワクチンに関する質問をしているので、これも引用する。

第096回国会 予算委員会第三分科会 第3号
昭和五十七年三月一日(月曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席分科員
   主 査 海部 俊樹君
      上村千一郎君    亀井 善之君
     小宮山重四郎君    橋本龍太郎君
      藤本 孝雄君    大原  亨君
      沢田  広君    野坂 浩賢君
      長田 武士君    草川 昭三君
      木下敬之助君    小渕 正義君
      瀬崎 博義君    辻  第一君
   兼務 井上  泉君 兼務 岡田 利春君
   兼務 小林  進君 兼務 米沢  隆君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 森下 元晴君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      工藤 敦夫君
        厚生大臣官房総
        務審議官    正木  馨君
        厚生大臣官房審
        議官      吉原 健二君
        厚生大臣官房審
        議官      下村  健君
        厚生大臣官房会
        計課長     坂本 龍彦君
        厚生省公衆衛生
        局長      三浦 大助君
        厚生省医務局長 大谷 藤郎君
        厚生省薬務局長 持永 和見君
        厚生省社会局長 金田 一郎君
        厚生省児童家庭
        局長      幸田 正孝君
        厚生省保険局長 大和田 潔君
        厚生省年金局長 山口新一郎君
        厚生省援護局長 北村 和男君
        社会保険庁年金
        保険部長    小林 功典君
 分科員外の出席者
        内閣総理大臣官
        房参事官    造酒亶十郎君
        法務省民事局第
        五課長     田中 康久君
        法務省入国管理
        局入国審査課長 宮崎  孝君
        外務大臣官房外
        務参事官    藤田 公郎君
        大蔵省主計局主
        計官      篠沢 恭助君
        大蔵省銀行局保
        険部保険第二課
        長       松田 篤之君
        文部省初等中等
        教育局中学校教
        育課長     福田 昭昌君
        文部省初等中等
        教育局特殊教育
        課長      戸田 成一君
        文化庁文化部国
        語課長     室屋  晃君
        運輸省自動車局
        保障課長    黒野 匡彦君
        建設大臣官房政
        策課長     佐藤 和男君
        日本国有鉄道旅
        客局サービス課
        長       佐野  実君
    ―――――――――――――
(中略)
     ――――◇―――――
海部主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

(中略)

次に、小林進君。
小林(進)分科員 厚生省にお伺いいたしますが、ことしの二月の十二日にピシバニール、クレスチン、丸山ワクチンの臨床の成績を発表されました。それからこれは昨年の七月十日にもピシバニール、クレスチンの臨床の成績を発表をされました。
 まず、昨年の七月十日のデータはだれが作成をして、いつ発表されたものなのか、まずそこからひとつお伺いをいたしたいと思います。大臣から答えてもらいたい。
森下国務大臣 私がまず答えるべきでございますけれども、この件につきましては薬務局長より答弁をさせます。
持永政府委員 昨年の七月に発表いたしましたピシバニール、クレスチンの臨床成績のまとめでございますけれども、これは丸山ワクチンの承認前の段階で発表をしたものでございまして、これはいずれも申請データ、そういったものを中心にしたものでございます。
小林(進)分科員 その丸山ワクチンは関係なしだよ。七月十日に発表したデータは、だれが作成して、何年の何月に発表したものを昨年の七月十日に発表したのかと聞いているのだ。時間がないからぱっぱっと答えろ。
    〔亀井(善)主査代理退席、主査着席〕
持永政府委員 薬事審議会でまとめたものでございます。
小林(進)分科員 厚生省が作成して、薬事審議会がピシバニール、クレスチンをいわゆる認可するための資料として出した。このデータに基づいてピシバニール、クレスチンは認可になったのだろう。そうだとすれば、この資料を作成したのは五十年か五十一年か。
持永政府委員 そのとおりでございます。
小林(進)分科員 それを一々おれが言わなければならぬような答えはやめろ、時間がないから。三十分しかないからと先ほどから言っているじゃないか。
 それならば、七月十日に発表をしたこの資料は、これはいわゆる薬事審議会がこれに基づいて両薬をいわゆる保険薬として認めたのだから、これは公文書だろう。
持永政府委員 公のものでございます。
小林(進)分科員 公のものと公文書とどう違うんだ。そういうこわっぱ役人みたいな返事をするのをやめろ。今度ことしの二月十二日に発表されたピシバニールとクレスチン、丸山ワクチンの臨床のデータ、去年の七月十日のと同じ品物なんだろう。
持永政府委員 今回発表いたしましたピシバニールとクレスチンのデータでございますけれども、これは昨年の段階で公表したものと多少数字のとり方その他が違っております。
小林(進)分科員 どうして違うの。
持永政府委員 昨年のデータは、ピシバニールでございますけれどもピシバニールにつきましては、単独投与の有効率の数字で申請者が出しました全症例が四百七例ございます。四百七例ございました中で、昨年のデータにつきましては、主な投与経路、いろいろな形での投与がございますけれどもその中で、静脈それから腫瘍それから胸・腹腔、そういった症例について整理をしたものでございます。この症例の中には、筋肉内投与でございますとか皮下投与でございますとかそういったものは含まれておりません。一方、昨年の七月の数字は、実は一人の患者さんに複数の投与をした例が幾つかございます。その複数の投与をした場合には、その複数をそれぞれ一つずつ計算をしたという形になっております。
 今回のことしの二月に新聞に出ましたものは、単独の投与の症例が四百七ございまして、その四百七例についてまとめたものでございます。したがいまして、この中には、先ほど申し上げました昨年の七月の段階で入っておりませんでした筋肉内投与あるいは皮下投与、そういったものも今回の症例の中には入っているということになっております。
小林(進)分科員 丸山ワクチンは、クレスチンとピシバニールと一緒になって国民は全部興味を持って見ているものなんだ。それを、君たちが去年の七月十日に、かくのごとくピシバニールとクレスチンは効果がありますと発表したその公文書というのを、同じものを、いま聞いてみると、薬事審議会に出したという公文書、その出していたものと全く内容も違えば数字も変えたものを、厚生省が勝手に修正をして加減をしたり乗除をしたりして、そしてこれを世間に発表している。どういう意味なの。これ一向支障ないの。厚生省というのはそういうのを自由にやる省なの。
持永政府委員 今回の二月の新聞公表は、実は丸山ワクチンについていろいろ御議論がございました、その中で、ピシバニール、クレスチンについて審議概要を公表しろ、こういうような御指摘もございまして、それに基づいてやったものでございます。その中で、ピシバニール、クレスチンにつきましても、当然薬事審議会の御審議を経て公表しております。この場合に、クレスチンの場合につきましては、症例全患者につきまして、全患者を一とした形で整理しましたために、数字の整理の上でピシバニールの従来のやり方が、先ほど申し上げましたように、一部の投与を除いておりますとか、あるいはダブり、重複を計算しているとかいうようなことがございましたために、そういったものを整理してクレスチンと整合性のある形での数字をまとめたということでございます。
 いずれにいたしましても、有効率は、これも先生御承知と思いますが、単独につきまして、ピシバニールを見てみますと、昨年の七月に出したものは三六%になっているということでございます。
小林(進)分科員 ともかく、もう時間がないのだから僕はこの問題は議論をしないが、いやしくも公文書だ。しかも、きちっとした数字を挙げて出しているものだ。文章ならば、一字一句を違えたとか、あるいは修辞を違えたとか、形容詞を違えたというならばいいけれども、数字だよ。数字を変えるということは、厚生大臣、千字を違うのも一字を違うのも違いには間違いないのだ。こういうような数字を――これはみんなでたらめですよ。ピシバニールなんて一字や二字の修正じゃないですよ。全部と言っていいくらい数字を変えている。しかも効用率だって一体何だ。去年の七月十日、これを薬事審議会に出してその認可をとるときの有効率は三六%じゃないか。それで、ことしの二月十二日かのものになると、有効率は幾らになっている。三四・六だろう。有効率まで変わっているじゃないか。この有効率なんというものは、〇・一%だって患者やこの薬を活用する者にとっては生き死にの問題だ。われわれが、丸山ワクチンは百分の一%の効果があるか、二%の効果があるかといま争っているさなかで、君らは平気で三六%有効率がありますの、三四・何%でございますのと、勝手にみんな修正をしておる。統計と称する数字が君たちの恣意によって左右でたらめやられてたまるかね、一体。こんなことは私は了承できません。時間がないから議論はしないけれども、でたらめです、こんなことは。しかも公文書だ。公文書というものをその後、君たちの手管によって自由に上げたり下げたりしておる。こんなことは悪質も悪質の最たるものです。
 そこで言うけれども、そういうわけで、君たちは薬事審議会に出した公文書というものを、こういう悪意をもって、ピシバニールのみならずクレスチンにおいても一カ所訂正しているから、これは私は了承できない。これはまた改めて議論をする。
 それから、次に言うけれども、一体このデータの作成者はだれかというのは厚生省だな、七月十日のデータの作成者は厚生省だろう。厚生省がつくって薬事審議会に出して、それで認可になったのだろう。それから二月十二日の変更したデータも、これは厚生省だろう。薬務局がつくったんだな。薬務局というものはそのとおりだ。いつでも大衆をごまかすようにやっているんだ。間違いないな。私の言うことがうそだと思ったらうそだと言ってくれ。私の言うことが本当だったら黙っていてよろしい。それは認めたことになる。
 繰り返して言うけれども、厚生大臣、これは人間の命に関することですよ。その効率が何%あるかなんかということは、これを見る人にとっては生死に関する重大問題。それを三六%の効率がありました、今度はこっちに来たら三四%の効率でございました、勝手に効率の比率までみんな変えているというような、そんな数字をわれわれは一体信ずることができますか。
 それから、速記録間違うと悪いから言ってみますが、二月十二日のデータはピシバニールの効率は三四・六%、七月十日の薬事審議会に出した文書では三六%。それからクレスチンの方は両方同じなんです。二一・五%という効率を上げておる。
 そこで、第二問としてお聞きするけれども、この三四・六%なり二一・五%の効率があるという君たちのデータがある、このデータに基づいて使用している認可後の治療において、一体このデータどおりの効果が発揮されたかどうか。どうせ君たちはそれが商売だから追求をしたと思うが、追求の結果をひとつ教えてもらいたい。われわれもやっているんだから。
持永政府委員 認可後の追求と先生おっしゃいますが、認可後私どもが具体的に症例に当たって、どのくらいの有効率があったという具体的な数字はつかんでおりません。ただ、少なくとも薬事審議会において議論をされた上で両剤とも認可されたわけでございますので、その薬事審議会の認可に当たっての内容どおり有効率があると私どもとしては考えておるところでございます。
小林(進)分科員 実にずうずうしい答弁を君やるね。実際、薬事審議会のデータが出たから何も追求しないで、それはもうそれだけの効果が出たものと君は考えているわけだ。君はいまそう言ったんだ。それでよろしい。しかしわれわれの方は、これは生き死にの問題だから、あらゆる手を伸ばして、友人、知人からわれわれの仲間に全部手を伸ばして聞いているけれども、ピシバニールあるいはクレスチンが三四%も二一%も効果がありますなんて返事が来たのは、悪いけど一件もない。それは私は病院を通じ、あるいは診療所を通じ、開業医を通じ、聞いているけれども、君が言うように効果があると考えるなんて返事を持ってきた専門家は一人もいない。どっちが一体悪いんだ。われわれはもう緻密に返事を聞いている。また、君が言うように審議会が決めたデータだから間違いないといったら、何で一体その審議会で決めた薬を何百種類も廃棄をしたり、やめたり、取り下げたり勝手にやる必要があるんだ。第一、どの薬を審議会が通しても君らは次から次へと廃棄をしておきながら、ピシバニールに関する限りは、審議会で決めたのだからこれは必ずそのとおりあるものと確信する、君たちが言っていることは朝令暮改もひどいじゃないか。矛盾だらけじゃないか。それほど審議会の言うことが権威があったら、何で一体審議会で認めた薬を何百種類も廃棄したり、取りやめにしたりする必要があるんだ。君たちがわれわれを愚弄しているという証拠を私は挙げて言っている。だから、いまも言うように、たまの一件でもよろしい、ピシバニール、クレスチンを使ってこれくらいの効果はございました――われわれの方は、あんなものは全く効き目がありませんという返事がだっとはね返ってきているんだ。しかしそれを君は必ずデータどおりに効果があると言うのだから、一件でもよろしい、その実績を示してくれ。ないと言うならば、それは返事を求める必要はない。次の質問に進みます。
 追試の件として、君たちはがん集学的治療研究財団というものをつくらされたのかつくったのか、つくったんだろう。自民党の八田代議士が、丸山ワクチンもこのがん集学的治療研究財団のいわゆる研究薬の中に加えてもらえないか、これは厚生大臣を通じ、彼が懇切丁寧な申請書を出したわけでありますが、それをどう取り扱うか、この中に加えてすることにしたのか、それは土足でけって却下したのか、無視したのか。これは厚生大臣にお伺いしましょう。あなただって御返事ができるでしょうから。どうですか。
持永政府委員 まず、丸山ワクチンの開発問題でございますけれども、医薬品の開発は、先生も御承知と思いますが、従来、医薬品メーカーがみずから開発計画を持って推進しているわけでございます。それで、丸山ワクチンにつきましても、丸山先生とゼリア新薬工業が中心になりまして今日まで開発したわけでございまして……(小林(進)分科員「そんなことは何も聞いてない。人の聞かないことを言うなよ。時間もないんだから」と呼ぶ)
 先ほど要望のございました中に、国が助成してがん集学的治療研究財団に研究を依頼したらどうかという御要望がございましたけれども、これにつきましては、いま申し上げましたように、国が直接助成するというのは、これはなかなかむずかしい問題だというふうに考えております。
小林(進)分科員 あれ、君はいつの間に変わっちゃったんだ。嫌なのが出てきたな、これは。
 それで、一つ言うのだけれども、君に何も助成しろと言っているのじゃないんだよ。助成はしている。大鵬だの三共だの中外だのというのが金を出し合ってこういう研究財団をつくったことはわかっているのだ。君ら監督官庁、主管官庁として、ピシバニールやクレスチンだけじゃなくて丸山ワクチンもその中に入れることのあっせんをしてくれという申し入れをどう扱ったかと聞いているのだ。ごまかさぬで、時間がかかるのではっきり言え。
大谷政府委員 この財団は、臨床の場で用いられますところの種々の集学療法の最適効果の組み合わせを研究する財団でありまして、製造承認されたものを用いる旨、財団に設けられた委員会で申し合わせが行われています。また、そういった意味で、規格及び試験方法が未確立な段階で財団が集学的治療研究の一環に組み入れるということはきわめて困難ではないか、こういうことがございます。
 したがいまして、丸山ワクチンをこの財団が使用して研究するかどうかにつきましては、財団の運営の基本にかかわる事柄でありますし、また、すでにこの事業が進行中でもございますので、財団の自主的判断に任せるべき性格のものではないか、このように考えるわけでございます。
小林(進)分科員 こういうのは官僚答弁と言うのだ。私は、やったかやらないかと聞いているのだよ。じゃ、いまの答弁はやらぬということなんだな、君たちは。われわれ国会議員の仲間が、これを研究の中に加えてくれと言ってあっせんを依頼したことに対して、何らのモーションも起こさなかったということなんだな。それじゃ、そのようにひとつとりましょう。君たちは、自分たちの気に食わないことは、どんなにわれわれが誠実を込めて文書で提出をしても、それを一片の価値も認めないで何もモーションを起こさなかったということだ。わかった。それが厚生官僚の実態だ。また改めてひとつけんかする。
 それから、次に言う。次には、クレスチンだけは、薬事審議会でたったの三回の審議会で許可になっておる。これは一体三回とはどういうことですか。どうしてこんなたった三回ぐらいで許可になったんだ。その理由を、早く。
持永政府委員 クレスチンにつきましては、五十年の十月二十九日、五十一年の三月二日ということで、抗悪性腫瘍剤調査会で審議が行われています。
小林(進)分科員 なぜたった三回くらいの審議でこれが許可になったんだ。それを聞いているのじゃないか。
持永政府委員 この審議の結果、医薬品としての有効性が判断されたということだと思います。
小林(進)分科員 余り調子のいいことを言うなよ、君。このクレスチンを推進してつくった本人がここで言っている。この本の中にこれは言っている。「クレスチンはたったの三回の審査で認可になっていますが、何故ですか。」という質問に対して、「ピシバニールに較べて副作用が少なかったからです。」、こう答えているのです。副作用が少ない。ないとは言わないのだ。だから、たった三回ぐらいの、さっさっさっと拍手で終わったということなんだ。なぜ一体こういうふうにして、ピシバニールやクレスチンなどはたった三回ぐらいの安易なやり方で――君は、薬事審議会は権威がある、権威があると言うけれども、内容を見れば全く権威も何もないじゃないか。さっさっさっと通過している。余りあっさり通過したから、どうしてこれは通過したのだと言ったら、副作用が少ないから通過したのだと言う。させてもらった塚越本人、彼は自分でつくって自分で審査委員になっているのだから間違いない。こういう回答をしている。ここでも君たちの答弁のインチキがあることは明らかです。いいですか、これ見てください。これまた後日のけんかの種。
 それからまた、次に一つ申し上げましょう。
 悪性腫瘍に対する免疫療法剤の評価法に関する研究という、そういう特別の基準を設けて、いわゆるピシバニールやクレスチンと同等の基準において一体どうして丸山ワクチンの審査をやらなかったのか。いま言うように、ピシバニールやクレスチンは三回とか安易な形で従来の認可方式をたどってきて、丸山ワクチンの場合になったら、途端に、いままでのいわゆる認可方式、審査方式を全部やめて、そして私がいま言った新しい長ったらしい研究の基準を設けて、そうして一々これをつぶしていった。一体どうしてこの審査方法に差別を設けたのか、どうして差別を設ける必要があったのか、お聞かせ願いたい。
持永政府委員 丸山ワクチンにつきましての一般臨床試験成績の評価につきましては、日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定されたわけでございますが、これはクレスチン、ピシバニールも同様でございます。認可基準は異なっておりません。
 それから丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかったというような経緯がございまして、その有効性の確認のために他剤との併用における試験をさらに行うことが必要であるというふうになったわけでございます。
小林(進)分科員 それは君の言うとおりで、後の方だけでよろしい、単独使用とかなんとか。みんな変えちゃったじゃないか。クレスチンやピシバニールと全然やり方を変えて、別な基準でやったじゃないか。そのとおりなんだ。――もういいです、時間がないから。それでいいです。君たちがインチキだということが一つ一つみんなわかってきたわけなんだから。
 そこでお伺いしますが、いままでは計算上は抗がん剤が百二十有種類、これが許可になっている。それを申請して許可になるまで、この間にけちをつけられたものは一つもない、私の調査では。効くも効かないもないよ。単に私どもはピシバニールだのクレスチンだのと言っているけれども、これだけじゃない。これに準ずるもの百二十種類だ。厚生省は一つもけちをつけたものはありません。全部さっさっさっと許可をされているが、それを却下したものは一つでもありますか。あったら教えてもらいたい。却下をしていない。したなんと言ったらインチキだ。にもかかわらず、丸山ワクチンだけについて、こうまで、単独投与の場合だなんだ云々だとけちをつけながらも、審査を変えて、基準まで変えて、そうして却下をしている理由は一体どこにあるか、聞かせてもらいたい。
持永政府委員 丸山ワクチンにつきましては、これも先生すでに御承知のことでございますが、薬事審議会の答申で、現段階では有効性を確認することはできない、こういう答申があったわけでございます。その答申を受けまして、厚生大臣としては、薬事審議会のそういう答申がある以上は、それを尊重するという立場をとらざるを得ないわけでございまして、そういう意味合いで、薬事審議会のそういう答申がありました以上、厚生大臣としてこれを承認するわけにはいかなかった、こういう経緯でございます。
小林(進)分科員 時間が来ましたから、主査、先を急ぎますけれども、君、百二十種類もけち一つつけないで認可している。却下したものが一つもない中で、君たちは薬事審議会というものを隠れみのにして、こうやって丸山ワクチンだけを却下しているが、それではそのいわゆる審議会の出したデータについて、東北ブロックあるいは東海ブロック、後藤博士その他の教授が、われわれが出したデータをなぜそのまま採用してくれないかと言っている。これに全部けちをつけた。全部けちをつけたのは審議会じゃないよ、厚生省だよ。君たちがけちをつけたんだよ。第二期だの三期だのと言って、後藤教授にはそういうけちのつけ方をしたり、あるいは東海の、東海大学ですか、中部ブロックにおける分には、いわゆる封筒方法でやった、その正確度が、一部開封されたとかという理由で不採用にしているが、その問題も、わずかな、こんなつめのあかほどのことである。問題にならぬものにけちをつけて、これを却下する理由にしている。私が先ほど言うように、今度は、君たちが出したデータはこのとおり、直してはならない数字までもみんな変更し修正をし、そうして問題を出している。これは悪党のやる仕事と言わないでまともな人間のやる仕事と言えるかね。これは、もうそれでいい。
 そこに対して後藤教授も東海の諸君も、厚生省あるいは薬事審議会のやり方は了承できないと言って文書でもって異議の申し立てをしている。これに君たちがどれだけ対応したか。その異議の申し立てさえも軽く受け流しているじゃないですか。そういう失敬なやり方があるか。それは了承できませんよ。
 そこで、もう時間が来ましたから申し上げるのだが、厚生大臣、こういう悪者どもの役人におどされたら、あなたの政治生命は終わりますよ。あなたに申し上げますが、あなたは厚生大臣になる前までは国会における丸山ワクチンを推進し、認可をし、保険薬とする一つの団体、政党を超越した団体の中の有力なメンバーだった。しかも、あなたは大幹部であった。そして、われわれと一緒になってこれを実現しよう、推進しようということで一生懸命おやりになった……
海部主査 どうぞ、どうぞ。お続けください。最後までどうぞお続けください。小林先生、どうぞ。
小林(進)分科員 いいですか。
 そういうことをおやりになったので、あなたはまた厚生大臣として――役人がでたらめだ。有効なる資料は全部けちをつけて、そしてみんな効力がないようにしてしまったり、そして今度は資料の数字まで変更してしまった、これをやっているのです。こういう諸君だ。こういう諸君の言に乗せられていまこれをそのままに見逃されていると、あなたの政治生命は終わりになりますよ。野にあれば丸山ワクチン推進論者の第一人者であった。今度は、その地位につけば、たちまち手のひらを返してこれを阻止するような形をとられたならば、本当にあなたの政治生命は終わります。そこはひとつ考えていただいて、これを許可するような方向に持っていっていただきたいと思います。
 そこで私は言うのです。厚生省は、大鵬薬品工業の何とかという薬も非常に危険性があると言ったら再審をするという態度に出ていられるのだね。ならば、この丸山ワクチンについても、状況も変わったのだから、薬事審議会のメンバーもかわったのだから、いま一度調査をするというお考えはあるかないか。たとえば私どもその後全部追跡をしておりますけれども、くどいようだが東北の後藤教授のやっているあのブロック、東海でやっているブロック、その後の経過も、丸山ワクチンを使用した者はみんな生きているのです。千日たってもまだぴんぴんして生きている。他のいわゆる抗がん剤あるいは化学剤を使った者は全滅です。全部死んでいるのです。そういうデータを彼らは努めて追求しようとしないのです。こんな者は大企業の回し者と言っていいです。いかに侮辱されたっていいです、薬務行政が正当の方向に動かないのだから。世間はみんな不思議に思っている。というわけで、いまそういう情勢にあなたも立っておられますし、厚生省自身も丸山ワクチンのその後、治療した者の結果というものをちっとも見ようともしなければ採用しようとしない、これでは百日たったところで問題の解決になりません。どうかひとつ、これを森下厚生大臣の大臣権限でいま一度薬事審議会にかけていただいて新しいデータを集めていただきたい。そのデータの一つとして、いま丸山ワクチンは、おれが注射してやると認可証を取れば、日本大学に行って講習を受けてそれから治療ができることになっておる、その医者を厚生省は治験者として認定をする、こうなっておる。いま治験者が数千人いるか一万人いるかわかりませんけれども、治験者として認定をしたのならば、そのデータは、これは厚生省が認めたお医者さんが上げた資料だから、あなた方が当然データとして採用する資格があるはずだ。その治験者たる医者が丸山ワクチンを使った、その資料をあなた方は集約して再審査のときのデータにしてそれをちゃんと審議会にかけて、そしてこの問題をいま一度審査していただく、これが私の最後の質問の趣旨です。これをやっていただけるかどうか。
森下国務大臣 丸山ワクチンにつきましては、小林議員おっしゃったとおりでございまして、私も八田先生から以前にいろいろ知識は承っておりますし、そのグループに属したことも事実でございます。
 そこで、ただいま厚生大臣でございますので、その立場を離れまして申し上げなければいけないということも御理解願いたいわけですが、薬事法に基づく治験薬として現在供給継続を図っております。中央薬事審議会の附帯意見に基づいた試験が行われ、新たに得られた資料により改めて審議が行われることを期待しております。
 以上申し上げまして、御答弁にかえさせていただきます。
小林(進)分科員 終わります。
海部主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。

(後略)

 

  

さて丸山ワクチンがらみで問題になった免疫療法剤の評価に関する研究は「悪性腫瘍に対する免疫療法剤の評価法に関する研究班」主任研究者桜井欽夫(癌研癌化学療法センター所長)で行われた。(厚生省厚生科学研究費による研究班。昭和54年度)

1回昭和54726

2回昭和54925

3回昭和541211

4回昭和55225

5回昭和55329

の計5回開催され、研究報告は「医薬品研究」11(4)7647681980)に*資料*として掲載された。(「癌の免疫療法剤とその評価」と題し桜井は総説を個人で書いている。癌と化学療法7(10)昭和5510月p-1725

この中で免疫療法剤の基礎研究にも言及しているもののそれは一般の抗悪性腫瘍剤の場合に準じており、特に問題は無い。

臨床研究については「多数の患者を用いて行われる免疫療法剤のみの単独使用による臨床研究は、人道上懸念がある。したがって、化学療法、その他の治療法の併用によりその効果を評価しなければならない。二つの治療法の併用により、免疫療法剤の治療効果の評価を行うためには、基本となる治療を対照とする比較治療試験によらなければならない。」とし、「この試験方法については、厚生省がん研究助成金による「抗がん剤の効果増強の評価とその効果判定に関する研究」班(班長:斉藤達雄)が昭和52年度より昭和54年度にわたる3年間の研究において結論を得て報告している。免疫療法剤の臨床研究と治療効果の評価は、原則としてこれに依るべきである。」としてRandomized Controlled Trialが導入された。Randomized Controlled Trialについての細かい注意点を列挙し、評価に誤りの無いようにすべきとしている。

(分担研究者として東市郎、石原和之、小倉剛、斉藤達雄、下山正徳、徳永徹。助言者として小田嶋成和、戸部満寿夫、小川暢也、橋本嘉幸が上げられている)

 

この研究が「免疫療法剤の承認審査に役立てる」ことを目的としていたため、丸山ワクチングループが「クレスチンはこれに基づいて評価されておらず、クレスチンもこれに基づいたデータが必要と承認時に宿題が出されており、未だにその答えが未提出である」と批判したが、クレスチンは免疫療法剤として承認されたものではなく、腫瘍縮小効果に基づいた抗がん剤として承認されたものであるので、この批判は場違いである。

 その後レンチナン、ソニフィラン、ベスタチンなどのいわゆる免疫療法剤が承認されたが、何れもこの基準に則って実施された臨床研究をもとに効能効果が決められている。

 

医学者の立場から非常に分りやすい説明がなされているのが国立療養所東京病院名誉院長:砂原茂一が記した“いままた、なぜ丸山ワクチン”なのかという”暮しと健康19813月号”の特集である。

                 暮らしと健康

「医学」の問題か「社会学」の問題かを考える!の中で篠原教授らが厚生大臣宛に提出した丸山ワクチンの製造認可の促進、健康保険採用という請願書の全文を紹介しながら、丸山ワクチンの問題点を整理し、丸山ワクチンが医学的(科学的)な根拠を持つ資料をきちんと提出して、公正な審査を受けられるよう望むとしている。

面白いのはクレスチンが承認されたので、その大元であるサルノコシカケが特効薬としてヒソヒソ話で広がることは全くなくなった。篠原さんも「手に入りにくいから秘薬になる」のだから、「たくさんある抗がん剤の1つとして認めればいいのだ」といっておられる。おそらくそうすればワンサとある抗がん剤の中の平凡な一員となり、一件落着するかもしれないが、そうすれば、もはや効くか効かないかの判定が全く不能なままいつまでも存続することになり、これを皮切りに、同じような怪しげな薬の氾濫によって日本の医療そのものが一層滅茶苦茶になるので、クレスチンと同様なきちんとしたデータを早くまとめる事が必要

などと論じている。

 

SSMニュース(1986/10/20)には塚越茂氏はこう述べているとして一問一答を載せている。
SSM
ニュース

生天目(当会代表幹事)が会談し
『-クレスチンは一般制癌剤として認可されたものですね。
塚越:そうです。とくに免疫療法剤として区分しておりません。
-先生は長年抗がん剤の基礎研究をされていますが、抗がん剤はあまり効かない、つまり限界に来ているのですか。
塚越:そうですね。
-がんの免疫療法剤の開発は、日本が世界で一番盛んですね。
塚越:そうです。アメリカは非常にシビアにやっているようです。
-クレスチンとかピシバニール、薬理機作、作用機序良く判っていませんね。当然だと思いますけど先生はどうお考えですか。
塚越:えー。まあー。
-クレスチンはたったの3回の審査で認可になっていますが、何故ですか。
塚越:ピシバニールに比べて副作用が少なかったからです。
-その年の1210日に先生は抗悪性腫瘍剤調査会の委員に就任しています。間違いありませんね。
塚越:橋本嘉幸先生が東北大へ転任されたので、その後任に、ということでお引き受けしました。
-先生が研究開発されたデータを先生が採点することになるのですが、その点はなんとも思われなかったのですか。
塚越:私は躊躇しました。言われる通り不明朗にとられますね。
-それで、どうしました。辞退するつもりはなかったのですか。
塚越:「具合が悪いのでは」と薬務局の人に話したら「今までもそういうケースはあるんだ。気にすることはない」と言われたのでお引き受けしました。
-非公開ですから、つまり“密室ですから何かと都合がよい”こういうふうに国民は思いますよ。
塚越:ですから私は、クレスチンについてはこちらからは発言しませんでした。
-でも委員の皆さんはよくお知り合いの仲です。言ってみれば一族です。控えたと言われても密室ですからね。
塚越:こういうふうに、開発協力者と採点者が同一人になるのは専門家が少ないからでしょうね。
-ある新聞が「丸山ワクチンは併用条件で認可になる」と報道していますが、これはおかしいです。併用するしないかは臨床医の裁量の問題です。薬事審の権限外です。越権行為ですよ。
塚越:そうです。その通りです。
-桜井座長が言ったものですかね。
塚越:私はそれは知りませんが、桜井先生に聞いてください。
-産経新聞が「免疫療法剤の審査は、外国の基準も参考にして行う」という桜井座長のコメントを載せていますが、これもおかしいですね。一定基準なんかあるんですか。
塚越:とくに無いと思いますが、桜井先生に聞いてください。
-この免疫療法剤評価法は桜井座長が主任研究者として作成されていますが、いつ作られたのですか。
塚越:558月に発表しました。
-丸山ワクチンについてはどうお考えですか。

塚越:個人的には承認すべきだと思います。』

 

クレスチンも再評価の時に、抗がん剤としての直接効果に基づいた臨床データを収集すれば問題は起きなかったと思われたが、その時点では呉羽、三共及び各先生で色んな意見が飛び交い、又本社の医薬品関係部署が主体となって臨床試験を担当したので、結局最悪の結果を招くことになる。

 

(*参考資料

Livedoor ブログ

Birth of Blues」2008年9月15日

「丸山ワクチンはなぜ認可されなかったか」

より

 

「置き去り20世紀の奇談」2001-1-4.11(週刊新潮) 記事より

 

--------------------------------------------------------------------------------

丸山ワクチンはなぜ「認可」されなかったのか。 祝 康成 

 

 「間違いなく効くね。ただどうして効くのかと、言われてもみんな生きている。がんは残っているが元気だ、としか言えないんだ」

 東大法学部名誉教授の篠原(75)が、膀胱ガンを宣告されたのは、昭和48年、48才の時だった。切除手術を受け、放射線治療の苦しみとガン再発の恐怖の中ですがったのが丸山ワクチンである。以来、25年間、ワクチンを打ち続けており、再発がないまま今日に至っている。篠原は、丸山ワクチン患者家族の会代表でもある。 

「ぼくの先輩は10年間、打ち続けて、もう治ったろう。と止めた途端、再発して亡くなった。主治医には内緒でワクチンを使っていて、解剖したその医者が不思議がっていた。身体中、いたるところに古いガンがあり、どうしてこの人は10年も生きていられたんだろう。と首を捻っている。ワクチンを止めてから、ガンが一気に復活したんだな」

  丸山ワクチンは、平成4年、90歳で亡くなった丸山千里、日本医科大学名誉教授が作り出したガン治療薬、戦時中、皮膚結核の治療用ワクチンを開発した丸山が戦後、結核患者にはガンが少ない、ことに気付き、丸山ワクチンの研究開発に乗り出したエピソードはあまりにも有名である。

 昭和39年に投与が始まって以来、これまで丸山ワクチンを使用した患者は35万人にのぼり、現在も年6000人近い新規患者が、投与を始めている。

  東京千駄木にある日本医科大学ワクチン療法研究施設を訪ねると、それこそ頬をつねりたくなる「奇跡の体験談」がごろごろ転がっている。たとえば、横浜在中の男性(70)の話はこんな具合。

「女房が使い始めて26年になります。末期の結腸ガンで、医者に余命三ヶ月と言われてね。腹がパンパンに膨らんで手術で切り取った腹の内部はわずかしか空いていなかった。さずがにこれはダメだと思いましたよ。しかし、丸山ワクチンを打ち始めたら、みるみる健康になって、いまじゃ風邪もひかない。丸山先生は命の恩人ですよ。」

  篠原はこんな話を披露する。「最近、末期で丸山ワクチンだけで治癒した有名人というと、平成10年に亡くなった安東民衛(戦後革新勢力の指導者、享年70)だね、最初は食道ガンでね、当初は完全にとったから、大丈夫ということだったけど、暫くしたら肺に転移していることがわかった。それで抗ガン剤を打つとなったら、安東は、絶対イヤだ、丸山ワクチン一本でいく、と。すると医者は、まあ、この体では来年の桜は見られませんな、と言ったらしい。安東は結局2回、桜を見ましたよ。”ざまあみろ、おれは桜を見ているよ”と笑っていた」

  最後まで痛みはなく、散歩に出かけたり、篠原とビールを飲んだりしていたという。

「抗ガン剤を打つと、毛は抜けるし、寝たままでしょう。健康な細胞まで殺して命を縮めてしまう。しかし、丸山ワクチンは副作用もなく、精一杯生きられる。安東は、本当に感謝して死んだからね」

  ところが周知の通り、この丸山ワクチンは、まだ厚生省の認可が下りず使用の際は、煩雑な手続きを強いられることになる。まず投与を希望する患者とその家族は担当主治医に「承諾書」を書いてもらったうえで日本医科大を訪ね、レクチャーを受けて丸山ワクチンを購入(40日分9000円)主治医の元へ持ち帰り、ここでやっと注射してもらうことが可能になる。昭和5612月より、2回目以降の丸山ワクチンの郵送が認められたが、それまでは丸山ワクチンの購入のつど、直接日本医科大に出向いて長蛇の列に並ばねばならないという、不認可薬ゆえの苦労を強いられていた。それでもワラにもすがる思いの患者は、日本全国はもちろんのこと、海外からも日本医科大へと集まった。

  丸山ワクチンは有償治療薬という摩訶不思議な名称のもと、例外的に投与を認められた、世界で最も有名なガン治療薬なのである。

  では、丸山ワクチンは何故、認可されなかったのか?その背景を探ってゆくと、医学界の想像を絶する権威主義と、薬品メーカーを巻き込んだ利権争いの構図が見えてくる。

 

 医学界のドンの反発

 22年前、皮膚ガンを宣告され、自らも丸山ワクチンを投与し続けている医事評論家の生天目(73)はこう語る。

「医学界の主流派は東大です。その東大の植民地でしかない私大の日本医科大の、しかもマイナーな皮膚科の無名の医者丸山千里が、自分の名前を冠したワクチンなんてとんでもない、という意識でしかなかったんですね」

  昭和51年、丸山は製造認可を申請するが、56年、厚生大臣の諮問機関である中央薬事審議会は「有効性を確認できない」と不認可に、ただし厚生省は「引き続き研究する必要がある」とし、治療薬として全額自己負担なら購入可とする、玉虫色の判断を下す。ここから丸山ワクチンの先の見えない迷走が始まった。

「中央薬事審議会なんて、年4回会合を開くだけだから、膨大な書類にハンコを押すだけの機関なんですよ。昭和36年の薬事法施行により発足して以来、すべての申請に「可」のハンコを押してきた。実質上の認可は厚生省がやるわけで、厚生省の窓口が受理した申請は全て承認されていたのです。ところが中央薬事審議会は、わざわざ丸山ワクチンのために「否」のハンコを作ったと言われています」

  この露骨な丸山ワクチン潰しの陰には、ある男の意向があった、と囁かれている。医学界のドンと呼ばれた山村雄一・元大阪大学総長(平成2年没、享年71)である。当時、取材にあたった新聞記者が明かす。「山村先生は免疫学の第一人者で、牛型結核菌のワクチンでガン治療をやっていた。ところが、牛型結核菌というのは副作用を取り除く技術がなかなか確立できない。それで丸山先生に、人型結核菌から副作用を取り除いた技術をそうやって開発したのか、教えろ、とかなり高圧的に迫った」

  昭和51年、丸山が製造認可を申請する数カ月前のことだった。当時の丸山の反応を長男の丸山茂雄(59、ソニーミュージックエンターテインメント副社長)はこう記憶している。「親父は断ったんです。そのときは。そんなばかなことができるわけないじゃないか。というような反応でした。」長野県生まれの丸山は、幼い頃から病弱で、とても30歳までは生きられない。と言われたほど。

  大正11年、のち日本医科大学となる日本医学専門学校の予科に入学し、卒業後は大学に残って研究ひとすじの生活で、権威とはまったく無縁の人生だったという。

「普通は医学部の教授と言ったら、一週間に一度、助教授とか引き連れて大名行列みたいに病院を回るでしょう。ところが親父は患者さんの元へ毎日、一人でい行くわけですよ。土曜日曜はもちろん、元旦まで行っていた。だから、患者さんは感激して退院後、自宅までお礼に来られる。親父は現金は絶対に受け取らないから、自分の家でとれた米とか野菜を持ってね。御中元とか御歳暮の時期は、生鮮食料品が山のようになっていました。」

  この温厚で生真面目な丸山が、唯一、激情を発露させた時期がある。昭和25年、日本医大と早稲田大学の合併問題が持ち上がった時だ。日頃は無口な丸山が、学生を前に、

「日本医大がこのまま医科大学であるなら、いつまでたっても東大の支配から抜けだせないだろう」と、演説までブッっている。周囲も驚いたこの変貌の裏には、妻の父親が早稲田に野球部を創設した安部で、岳父の影響を強く受けた丸山が強烈な早稲田ファン、という事情もあったらしい。しかし、合併は敢え無くとん挫し、推進派の急先鋒だった丸山は当時の大学に睨まれ、以後、冷遇されることになる。給料もボーナスも大幅にカットされ、長女が通う都立大学の月謝も滞るという困窮生活も経験している。

  一方、山村雄一は、丸山とは対極の人生を歩んだ。昭和16年に大阪大学医学部を卒業すると海軍の軍医となり、激戦地となったガダルカナルにまで赴いている。戦後、九州大学医学部教授を経て、母校大阪大学に戻るや、トントン拍子に出世し、昭和42年に医学部長、54年には大学総長の地位まで昇り詰めた。総長時代は、「アメリカのスタンフォード大学のように広大な医学部にせなあかん」と北千里に広大な土地を購入し、医学部、工学部などを一挙に移転させるというビッグプロジェクトを成し遂げている。学外では、日本免疫学会会長、日本癌学会会長等を歴任し、昭和61年に学士院賞を受賞、63年には文化功労者にも選ばれ、まさに栄光と名声に彩られた学者人生だった。

  この挫折知らずのエリート学者に唯一、屈辱を味わわせた人物が、『東大の植民地』日本医大の無名の医者、丸山だったわけだ。当時、取材に赴いたジャーナリストは、山村が、さも憎々しげに「皮膚科出身の丸山が、人類を危機に陥れるガンという病気に果敢に挑まれているようだが、けしからん」と言い放つのを耳にしている。

 また、山村と親交のあった医学者はこう証言する。「山村先生は尊大でしたね。威張っていた。山村先生は丸山ワクチンには反対でした。それは間違いない。実際にそういう

内容の手紙をもらいましたよ。なぜ反対だったかは知りませんが、もし丸山先生に先を越されたことへの嫉妬だとしたら下らん奴ですね」

 <凄まじいアラ探し>

  もっとも、丸山ワクチンにも弱点はあった。科学的データの不足である。

  当時の中央薬事審議会のメンバー、古江尚、帝京大学名誉教授(74)は、丸山ワクチン反対派の頭と言われた人物だが、「なにも闇雲に反対していたわけではない」と言う。「わたしは悪者にされていましたけれど、データ不足を解決できれば認可しよう、という立場でした。薬事審議会でわたしが問題にしたのは、製剤以前の問題。つまり、常に同じものが使われなければならないし、検証しなければならない。その方法がまだ未解決であったこと」そして、もうひとつが、丸山ワクチンの独特の投与の仕方、濃いA液と薄いB液を交互に打つ、という投与方法だった。「ABABという投与の仕方が全然検証を経ていないし、データも無い。ただ単に丸山先生が経験上、これが一番良い、と言うだけだった。なぜ、ABABなのか、という科学的証拠がなかった」

  もっとも、大規模な臨床試験を行った学者はいた。後藤、東北大学名誉教授(75)である。確実な効果が出ていたにも関わらず、審議会はことごとく無視したという。後藤が、怒りもあらわにこう言う。「初めから、これは潰そうという話しですからね。このデータは嘘ではないか。とまで言っているんだな。先生が臨床した膀胱がんの患者は慢性**の誤診でしょう、と。こんなふざけた話はないから、調査会に異議申し入れ書を送りましたよ」

  審議会内部の反応について、古江がこんなショッキングな証言をする。

「後藤先生のデータは立派なものでした。わたしは、この審議会の委員の中でもこんあいい臨床を出来る者はいないだろう。この結果をもっと真剣に考えるべきだ。本当に無効と言っていいのか、と迫ったんですが、無駄だった。相手が無茶を言うんですよ。重箱の隅をつつくようなことをね。たとえば動物実験で、マウスに関する実験はあるが、ウサギについてはない。、とか。そんな身も蓋もないことを言うなよ、と嘆きたくなるくらい、醜いアラ探しだった。結局、事前に厚生省との間で拒否ということが決まっていたんですね。われわれ委員会は、いい面の皮ですよ。ああ、俺は飾りなんだな。と痛感しました。だって、何を言っても通用しないんだから」

  臨床実験のデータを無視された後藤が言う。

「なせ、そこまでして丸山ワクチンを潰さなくてはならなかったか。と言えば、がん学者はみんな他の製薬会社はそれぞれコネがあるんですよ。やっぱり丸山先生はがん学者じゃないわけです。学者というのは、専門以外の人間を認めたくないんだね。たかが皮膚科の医者が、というような偏見を持っていたんですよ。

 巧妙に仕組まれた罠

 ここに医学界主流派の丸山ワクチンへの「本音」を物語る興味深い話がある。匿名を条件に話してくれたのは、丸山と親しかった新聞記者だ。

 「丸山ワクチンの患者の一覧表があるんです。日本医大の名誉教授のロッカーにカギをかけてしまってあるんですが、分厚いやつでね。丸山先生は、自分が死んだら、その一覧表をぼくにくれる、と言っていたんだけど、まだ生きておられる時にちらっと見たことがある。ずいぶん有名人もいたんですよ。政治家とか芸能人とかね。その中で一番多いのは東大の医者たちですよ。猛反対していた学会主流派の東大です。あれだけ反対していたのに、最後は丸山ワクチンに頼ったんですね。丸山先生が東大でワクチンを開発してたら、間違いなく認可されていただろう。という話は何度も聞いたね」

  もし、認可されていたら、製薬メーカーには莫大なカネが転がり込むことになる。一般的に抗癌剤は「がんには効かないが、株には抜群に効く」と揶揄されるほどで、それが注目を集めている丸山ワクチンなら、歴史的なヒット商品となったのは間違いない。

  昭和50年から51年にかけて、認可された2つの抗癌剤のケースを見ると、それがどんなにボロい商売かが分かる。「中外製薬」が開発販売した注射薬の「ピシバニール」と「呉羽化学工業」が開発し「三共」が販売した粉末薬の「クレスチン」である。

「抗癌剤は大別すると2種類あり、直接がん細胞を叩く、化学療法剤と、人間の体内にある免疫力を強化する免疫療法剤に分けられる。この免疫療法剤の第1号が50年に認可されたピシバニールで、第2号が51年認可のクレスチン、そして、第3号になるはずだった免疫療法剤が丸山ワクチンです」(医事評論家)

  ともかく、ピシバニールとクレスチンの売れ方や凄まじく、発売10数年間で1兆円を上回る売り上げを記録、なかでもサルノコシカケの培養菌糸から抽出したクレスチンに至っては副作用が皆無で、しかも内服薬という利便性もあり、57年には年間売り上げが500億円と、全医薬品中の第1位に躍り出た。しかも、トップの座を62年まで6年間も譲らず、日本の医薬品史上、最大のヒット商品となっている。

  ところが、平成元年12月、厚生省はこの2つの抗癌剤について、「効能限定」の答申を出した。つまり、単独使用による効果が認められないので、化学療法剤との併用に限定するというもの、要するに「効果なし」というわけだ。

 がんに効くと、もてはやしておきながら、一転、効果なし、ではガン患者も家族も死んでも死にきれない。患者の命を無視した国と製薬業界のあり方に、国公立、大手民間など約2330病院が加盟する最有力の病院団体「日本病院会」は激しく抗議。「これまで両剤に投じられた1兆円にのぼる医療費は無駄使いだったことになり、死亡したガン患者や家族、さらに健康保険財政に大きな損害を与えた」と厚生省と日本製薬団体連合会を非難している。

  1兆円もの医療費を、詐欺同然に巻き上げてしまった。その無茶苦茶なやり方には呆れるほかないが、一連の騒動を細かく検証してゆくと、丸山を嫌い、認可を阻止し続けた一派の動きがあぶり出されてくる。

  ガン患者にとって常に誠実な医者であり続けた丸山千里は、巨大な利権が蠢く医薬品業界という伏魔殿の中では、あまりにも無力すぎた。丸山は、実に巧妙に仕組まれた罠にはまり、犠牲となってゆくのである。

  「こんなことが許されていいのか」―医学界で今もそんな声が渦巻くガン治療薬・丸山ワクチンの不認可問題。一徹な職人気質の医学者によって生み出されたこの薬は、医学界の不条理な権威主義や官民の癒着の中で苦難の道を辿ることになる。患者を置き去りにした不可解な認可審議は、なぜ許されたのか。気鋭のライター・祝康成氏が医学界最大の奇談を解き明かす。

  長嶋茂雄と丸山千里の、こんなエピソードがある。語ってくれたのは、生前の丸山と親交のあった研究者である。

 「あれはたしか昭和47,48年頃のことでした。丸山先生の机の上に、長嶋茂雄の直筆のサインボールがドンと2箱、置いてあるんですよ。なんでも、膠原病に悩んでいた亜希子夫人に丸山ワクチンを差し上げたら、えらく喜ばれて、後日、サインボールを持ってきてくれた、というんですね」

  つまり、丸山ワクチンは難病中の難病、膠原病にも効いた、という話になるわけだが、その効能のほどはともかく、サインボールの後日談が丸山の闊達とした人柄を物語る。

  「丸山先生は患者さんに、おたく、坊っちゃんいますか、野球は好きですか、長嶋のサインボール、あるけどどうですか”と、どんどん配っちゃうんですよ。患者さんが“うちは子供、2人いるんですけど”と言うと“ああ、失礼しました。もう1個、どうぞ”と、もう長嶋サインボールの大盤振る舞いでした」

  だが、この無欲で誠実で、患者に愛され続けた丸山は、丸山ワクチンという画期的なガン治療薬を生み出したがゆえに、医学界から疎まれ、非運の人、となる運命にあった。

  丸山ワクチンと同じ免疫療法剤でありながら、昭和50年に認可されたピシバニールと翌51年認可のクレスチンが医薬品史上、最大のヒット商品となったのは、前回述べた通り。しかし昭和51年に認可申請が行われた丸山ワクチンは56年、厚生大臣の諮問機関である中央薬事審議会が不認可としている。そしてこの裏には、医学界主流派の露骨な“丸山潰し”があった。取材に当たった新聞記者が語る。

  「クレスチンとピシバニールが認可された後、薬事審は急遽、認可基準を上げて、丸山ワクチンを弾いたんですよ」

  従来の基準なら、丸山ワクチンは間違いなく認可されていたという。

 「もともと、丸山ワクチンにいい感情を持っていない学者たちが、この基準を盾に、不認可にしたのです」

  当時の流れを時系列に検証していくと、なんとも不自然な認可の形態が浮かび上がってくる。例えばクレスチンは、申請から認可まで、わずか1年しかかからず、しかも審議はたったの3回。ピシバニールも認可まで2年である。専門家に言わせれば「前例の無い異例のスピード」だという。

  一方、丸山ワクチンは、51年の申請から53年にわたって計3回、厚生省薬務局から追加資料の提出を求められ、しかも資料提出の直後、今度は薬事審と厚生省に比較臨床試験までやらされている。その結果が56年の不認可とは、どう考えても丸山ワクチンを狙い撃ちにした、“苛め”である。厚生省は「新しい基準に沿ったまで」と涼しい顔だが、実はこの新基準には大きな疑惑が存在する。

  当時、新たに認可基準を設けたのは、中央薬事審議会の抗悪性腫瘍調査会だった。

 「この調査会の座長を務めた、桜井欽夫(よしお)・元癌研究会癌化学療法センター所長が疑惑の人物。桜井氏は、クレスチンの開発にも携わっており、審議会の委員として、認可に賛成している」(新聞記者)

  つまり桜井は、自分が開発したクレスチンを自分で認可したわけだ。同時に、もし認可されれば、クレスチンの手ごわい競合商品になったに違いない丸山ワクチンを門前払いした新基準も作成しているのだから、さすがに国会でも問題になった。昭和56年7月30日の衆議院社会労働委員会で、

「薬審会の委員として自らが関与した薬剤を審査する立場はどのようなものか」と、薬品メーカーとの関係等を厳しく追及された桜井はこう答えている。

  「そういうことは信用できぬ、ということであれば、私は不適任だと存じます」

  疑惑はまだある。丸山ワクチンを徹底して忌避したといわれる山村雄一・元大阪大学総長との関係だ。

  「当時、文部省の『科学研究費がん特別研究審査会』の主査が桜井さんで、副主査が山村さんだった。55年当時で予算が18億円。この分配を2人は取り仕切っていたのです」(医事評論家)

 噴出する疑惑

  丸山ワクチンの不認可後、基礎研究に従事した野本亀久雄(64)=がん集学的治療研究財団副理事長=もこう語る。

  「私は、丸山ワクチンとは何か、癌にどのような影響を及ぼすものかを2年間、徹底的に研究した。山村が一番潰したがっていたのは私ですよ。私が丸山ワクチンは効かない、と言わないから。どんな妨害があったかは言いたくもない。医学界のトラブルというのは生易しいものじゃないんだから。文部省の補助金分配にしても、いまやっていたら逮捕だろうね。文部省のパイの山分けをやっていれば、それは強いよ。ただ、私はそんなもの、一銭も貰っていなかったから関係なかったけどね。それまで山村に恩恵をこうむっていた人が、山村が“ただの水”と言ったらそれになびくのは当然なんだ」

  丸山ワクチンを擁護するデータを出した研究者が、補助金をばっさり切られた、などという話もあるが、ともかく丸山が、山村、桜井という医学界の大物2人と対立する立場にあったのは間違いない。

  薬事審のメンバーの1人もこう証言する。

 「桜井と山村は非常に親しかったですね。彼らにとって、我々はチンピラみたいなものです。桜井は、初めから丸山ワクチンを不認可に持っていく姿勢だった。あれでは裏に何かある、と勘ぐられても仕方ありません」

  さて、当の桜井欽夫は、今なお囁かれる数々の疑惑に対してどう答えるのか? 東京三鷹市の閑静な住宅街にある自宅で、88歳になる桜井は取材に応じた。「女房が死んで1人暮らしだから、この広さでも十分」と語る自宅は木造平屋建ての、こぢんまりとした古い家である。

  「みんな大豪邸でも構えていると思うらしいんだよね。もう建ててから50年近くになるよ。敗戦記念建築って呼んでいるんだ。三鷹にも、さすがにこんな家はないからね」

  歯切れのいい口調で語る桜井は、疑惑のクレスチンにまつわる、こんな話を披露する。

  「右翼が騒ぎ出したことがあってね、クレスチンで儲けてけしからん、ということらしい。“街宣車で行くぞ”という電話があって、警察にも相談したけど、結局来なかった。この家を見て呆れたらしいね」

  薬事審の新基準については「あれは丸山ワクチンが出てきたから作ったもの」と認めつつ、こう語る。

  「あのとき、免疫の基準というものはこれでいいのか、という世論が起こってくる。それでインターナショナルな情報を集めて作ったんです。厚生省に、丸山ワクチンを認めない基準を作れ、と言われたわけじゃない」

  だが、自らが開発に関与したクレスチンの爆発的なヒットも大きく影響した、という。

  「クレスチンが馬鹿売れするから、大蔵省が“こんなに税金はつぎ込めない”と悲鳴をあげ、厚生省を攻撃したんだ。困った厚生省は調査会に任せちゃったわけだな」

  早い話が、調査会は大蔵省と厚生省の意を汲んで、丸山ワクチンを不認可にする新基準を設けた、というわけだ。

  しかし厚生省は平成元年、クレスチンとピシバニールについて「効果なし」の答申を出し結果的に1兆円もの医療費が、医者と医薬品メーカーの懐に消えている。丸山ワクチンは、まったく効果のない、この小麦粉同然の抗ガン剤のために認可を阻まれた、といっても過言ではない。

猛烈な官民癒着

  桜井は山村との関係は「親しくしていた」と認め、こう語る。

  「学問のレベルで言えば、山村先生は丸山先生なんて問題にしていなかったと思う。山村先生は結核菌の第一人者で、結核をやりたい人間はみんな先生のところへ行ったんだから。大きなグループがあって、研究費も方々から入って、私立大学の一研究者とは違うよ」

  丸山を歯牙にもかけなかったはずの山村が、こと丸山ワクチンの認可に限っては、大いに注目し一貫して反対の立場をとっていた。

  「山村先生は結核の専門家だから、実験の根本を詳しく知っている。スタッフも優秀だし多くの論文も書かれていたし玄人なんですよ。対して、丸山先生の論文は素人みたいなものだったからね」

  「一人のお医者さんがいくら一生懸命研究してね、病理検査もしないで、癌に間違いないとか、それが治ったとかいうのをただ記載して出されても、ホントに信用していいのか分からないでしょう」

  医学界の大御所から見れば“一人のお医者さん”に過ぎなかった丸山には、ワクチンの製造元が弱小メーカーの「ゼリア新薬」という、致命的なハンディもあった。ゼリア新薬の元幹部が証言する。

  「当時、癌治療薬の市場は年間800~1000億円と言われていました。うち、クレスチンが市場の半分に当たる500億円を売り上げています。うちは、丸山ワクチンがクレスチンの3分の1から4分の1でも売れてくれれば、と考えていました。そうなれば年間200~300億円の売上げになる。これは裏を返せば、年間べースで1億円の経費を使っても元がとれる、ということです。製薬メーカーは、ひとつの商品がヒットすればビルが建ったり、株価が2桁上昇することさえあります。ですから新薬を認可してもらうためなら、カネに糸目を付けず、人海戦術で接待します」

  だが、この弱小メーカーのトップには、経費をばら蒔いて実を獲るだけのしたたかさが無かった。

  「うちの社長は丸山先生に似て職人気質のところがありました。丸山ワクチンの申請にしても、我々が“厚生省の官僚や審議会の先生方に根回しをする必要があります”と、接待の必要性を意見したのですが、社長は“良いものは必ず認められる。そんなカネは必要ない”と。おかげで、経費を捻出するために領収書を誤魔化したりして、たいぶ苦労しました。うちは経費が使えなかった分、他社に比べると厚生官僚や薬事審の委員へのパイプが細い。つまり、ゼリアは他社に比べると、政治力は格段に落ちるのです」

  では、本物の接待とはいかなるものなのか? ある中堅メーカーの幹部が、医薬品業界の想像を絶する内幕について、重い口を開いた。

  「まずハイヤーで厚生省や病院まで迎えに行って、赤坂の料亭で食事をする。その後は銀座のクラブを2~3軒ハシゴしてハイヤーで帰すのです。無論、ただで帰すのではなく、“今日は大変勉強になりました。これは奥様へのお土産でございます。それとお車代を”と言って、三越や高島屋で適当に買ってきた甘味類と、その下に現金を忍ばせる。少ないときで5~10万円、多いときは50万円でした。しかし大手は常に50~100万円渡していた」

  そのほか、ここぞという時のスペシャルコースもある。

  「クラブで飲んだ後、女性が5人くらいいるお店に行くわけです。そこで官僚や医者に“どのコにしますか”と囁くと、相手もニヤけながら“あのコがいいな”と指さすのですよ。まあ、売春クラブですね。当時で10万円でした。無論、ホテル代もかかりますから20万円。その前のクラブとかひっくるめると50~100万円ですね」

 今も続く迷走

  ただし、大手の接待はこんなものではない、という。

  「大手メーカーと昵懇になった先生が急にクルマを買い替えることはザラで、一戸建の大きな家や別荘を突然建てる人もゴマンといました」

  圧巻はパーティである。

  「大手がよく使う手は『新薬試験中間発表会』などと称して、帝国ホテルやニューオータニで200~300人を集めてパーティを行うのです。しかし研究発表も立食パーティも形式だけ。肝心なのはその後。全員に帰りハイヤーを用意しますが、その際に車代を渡します。金額は少ないひとで10万円、多いひとだと数百万円は渡していましたね。うちも同じようなパーティを開催したことはありますが、ある先生から“やはり大手とは違うな”と厭味を言われたことがありました」

  高級官僚の天下りポストも、大手はしっかり用意していた。 「ピシバニールを製造・販売していた中外製薬は昭和54年、厚生省の坂元貞一郎事務次官を副社長に迎えています。坂元副社長は、薬事審の委員の前で“おれの目の黒いうちは絶対に丸山ワクチンは認可させない”と言っていました」

  一方、ゼリアの社内は、丸山ワクチンがなかなか認可されない現状を「山村先生と丸山先生は同じ研究をしているので、ライバル関係だから仕方がない」と考えていたと言うが、そのうち、こんな噂が飛び交い始めた。先の元幹部が明かす。

  「山村先生が丸山ワクチンに対してあまりに酷いことを言うので、うちにも何か恨みでもあるのでは、とみんなで疑心暗鬼になっていったのです。当時、社内では“ある社員が山村先生の娘さんと婚約している”という噂がまことしやかに流れました。そんなコネがあるのなら何とかしよう、とみんなで該当者を探したが見つからない。そうこうしていると、今度は“その婚約は破談になったので、山村は丸山ワクチンばかりかゼリアも憎いのだ”と話が変わってきたのです。そこまでくると、我々もバカらしくなって、何もしませんでしたが」

  他メーカーの、なりふりかまわぬ実弾攻撃に比べれば、なんとも呑気な話ではある。生真面目で誠実な医師の丸山と、融通の利かない弱小メーカーが組んだところに、丸山ワクチンの不運があった。

  加えて、丸山の周囲にも、“宝の山”の匂いを嗅ぎ付けて、欲の皮の突っ張った人間たちがうごめくようになる。丸山と付き合いのあった大学教授が、こんな話を披露する。

  「丸山ワクチンの製造は、丸山先生の取り巻きの人間たちによって、実に多くの製薬会社に持ち込まれているんです。第一製薬とか協和発酵、大鵬薬品にも行っている。大鵬薬品は乗り気になって“共同開発にするから、データを出してください”と伝えたら“1億円出せ”と言われたそうです。もちろん、丸山先生はお金のことなんか頭にない人でしたから、ご存じないですよ」

  ひたすら、ガン患者のために、と孤軍奮闘した丸山は「認可を見るまでは死ぬわけにはいかない」と執念を燃やし続けたが、平成4年3月、90歳で亡くなった。

  その9ヵ月前の平成3年6月、丸山ワクチンを濃縮した『アンサー20』が認可されている。しかし抗ガン剤ではなく、放射線治療の白血球減少抑制剤としての認可だった。「親父はもう寝たきりだったけど、“うーん……”と言ったきりで、うれしそうじゃなかったな。あくまでも抗ガン剤としての認可を待ち望んでいただけに、不本意だったのでしょう」(長男の丸山茂雄)

  アンサー20の認可で医学界の偏見はかなり軽減したとも言われるが、主流派による妨害は相変わらず続いている。

  東京・丸の内で丸山ワクチンのシンポジウムが開催されたのは平成11年12月のことだった。患者家族の会の事務局長、南木雅子は準備段階でこんな体験をしている。

  「主催を承諾してくれた産経新聞社に、癌研究会の理事が直接乗り込んで“丸山に関わるシンポジウムを主催するなら、今後、癌に関する取材協力は一切しない”と言ってきたのです。産経新聞は、広告やチケットを刷り終えていたにもかかわらず、慌てて主催を降りてしまいました」

  丸山ワクチン迷走の終着点は、未だ見えていない。(了))

その後丸山ワクチンはクレスチン開発でもお世話になった野本先生を頼り、基礎実験を充実させて申請し、平成3年6月28日付けで「放射線療法による白血球減少抑制剤」として認可されたが、癌の治療では相変わらず有償治験が続行されており、未だに医薬品としては未完成である。 

 




0 件のコメント:

コメントを投稿

  32 ゾロ品 クレスチン製造は基本特許(昭和43年10月3日 制癌剤の製造方法 特許登録番号968425 昭和51年公告)により昭和63年10月3日までの20年間は特許法によって守られていた。 特許が失効すると医薬品メーカーはある条件下で同一類似品(後発品)を承認申請出来る。...